β-Dグルカンは深在性真菌症やニューモシスチス肺炎の診断に有用な検査であるが, アルブミン投与やIg投与, 輸血, 透析, 抗真菌薬などで偽陽性となることが指摘されている.
実際どの程度これらの因子が影響するのか?
アルブミンとβ-Dグルカン
ICUでβ-DGを評価した267例の後ろ向き解析.
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2015 Feb;34(2):357-65. )
・BG試験におけるIFIに対する感度, 特異度を, アルブミン投与, Ig投与, 輸血施行群で評価, 比較
・全体の評価では, カットオフ 95.9pg/mLで, 感度82.9%, 特異度56.7%
・アゾール系抗真菌薬の使用, IVIG, RBC輸血はBG試験の感度, 特異度に影響は認められず.
・アルブミン投与のみ, BG試験の感度, 特異度に影響あり
>30gのAlb(20%製剤で>150mL)を2日以内に投与している場合, BG試験の感度は低下する. 感度36.2%[25.0-48.7], 特異度84.7%[77.5-90.3]
この場合のカットオフは203.7pg/mL
中国における前向きStudy: ICU患者267例において, Alb投与前後のβ-DGを評価.
(Zhonghua Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue. 2015 Aug;27(8):672-6. )
・β-DGの変化(ng/L)
IFI否定群では 11.25±2.33 → 10.99±1.07, p=0.085
IFI疑い群 53.14±5.53 → 49.22±8.11, p=0.693
IFI濃厚群 90.30±9.38 → 85.41±10.11, p=0.860
IFI群 100.98±19.24 → 103.21±17.66, p=0.449
アルブミン投与してもβ-Dグルカンの上昇に関連しない報告もあれば, 大量投与により偽陽性が増加する報告もある.
実際アルブミン製剤にどの程度β-Dグルカンが含まれているかを評価した報告もある.
人血清アルブミン5%製剤の国産製品3種類(A-C)と海外製品1種類(D)における含有量を評価
(Therapeutic Research 2013;34:1261-1269)
・β-Dグルカン(pg/mL)
・海外製品の含有量が高いが, 国産製品の含有量は多くはない.
・30pg/mLと仮定すると, 5%製剤250mLで7500pg.
血漿量を2500mLと仮定すると, 1本投与にて3pg/mL上昇する計算.
免疫グロブリンとβ-Dグルカン
日本国内で使用可能なIVIG製剤7種で各製剤3ロットずつβ-Dグルカンを測定.
(感染症誌 2017;91:1-6)
・含有量は製剤により差がある
・最も高濃度の300pg/mLを5g(100mL)投与すると
血漿量2500mlでは12pg/mL上昇する計算となる
同じ論文で, IVIG投与前にβ-Dグルカンが陰性であった51例で投与後のβ-Dグルカンを評価
・投与期間は2.9±1.2日, 投与量は15g(2.5~150g, 50mL~3000mL)
・投与前後のβ-Dグルカン:
・使用終了~3日[1-6]で評価され, β-Dグルカン値は有意に上昇を認めた.
>20pg/mLは5/51で認められ, 最も上昇した症例では44.5pg/mL上昇
・上昇例と非上昇例では製剤や投与量, 期間に差は認められない.
透析膜とβ-Dグルカン
Literature reviewでは,
透析膜は, Unmodified cellulose膜でβ-DGが偽陽性となる
Modified celluloseでは結果が割れている.
(Mycoses. 2015 Jan;58(1):4-9. doi: 10.1111/myc.12267.)
・Unmodified celluloseでは, 透析後の数値は平均100pg/mL
・日本からの報告では,Modified cellulose膜を使用した透析において, β-DGが中央値2778pg/mLに上昇した報告がある
日本国内より, 透析前後のβ-Dグルカンを評価した報告
(Kidney International, Vol. 60 (2001), pp. 319–323 )
・β-DグルカンはCellulose膜でのみ顕著に上昇を認める.
Cellulose triacetate, PMMA膜では上昇しない.
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この辺の感覚を踏まえておかないと, ICUで過少・過大評価に繋がるかもしれません.
結構β-Dグルカン値を解釈でこの辺の議論になることが多いです.