ふと気になり最新のReviewをチェック.
コクランより2018年にCVカテーテルのフラッシュに関してMetaがありました.
CVカテーテルにおけるフラッシュ
ヘパリン vs NSフラッシュを比較したMeta(Cochrane)
(Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 7. Art. No.: CD008462.DOI: 10.1002/14651858.CD008462.pub3.)
・CVCのフラッシュとしてヘパリンを用いる群とNSを用いる群で比較した11 RCTsのMeta(N=2392)
・ヘパリンの濃度は様々で10-5000IU/mL
アウトカム;
・閉塞リスクはヘパリン群で有意に低い: RR 0.70[0.51-0.95]
ただし, NNTBは42[32-250], Quality of the EvidenceはVery low.
・CVCの開存期間は有意差なし: MD 0.44d[-0.10~0.99]
CVC関連敗血症 RR 0.74[0.03-19.54]
死亡リスク RR 0.76[0.44-1.31]
出血リスク RR 1.32[0.57-3.07]
HITリスク RR 0.21[0.01-4.27]
2017年のMeta-analysisでは,
・ヘパリンフラッシュは<30日の短期留置群において, 有意な開存維持効果が得られる: RR 1.52[1.02-2.27]
・全体の評価, >30日の長期留置群では有意差は認めない.
・HITリスク上昇も無し
(Critical Care (2017) 21:5)
A-lineにおけるフラッシュ
1951-2012年に発表された10論文のReview.
(JVascAccess 2014;15(2): 123-127)
・ヘパリンの濃度は1-5U/mLと様々
フラッシュも間欠的〜持続様々
間欠的では8h毎が多い.
アウトカム
・48h以上の長期間のA-line開存率はヘパリン群で良好.
・ヘパリンフラッシュ群で, HITの報告は無し.
同じく2014年発表のCochraneでは,
ヘパリンフラッシュとNSを比較した7 RCTs(N=606例)を解析したところ
Studyの背景, 統計的な不均一があり, Metaができない結果であった.
Studyのまとめ
・これら報告の結果をみると,
両群で同等〜ややヘパリンで開存期間が延長する結果が多い.
とはいえその差は数時間〜1日程度.
----------------------------------
CVCやA-lineのフラッシュについてはヘパリンを用いたほうが, 長期的な閉塞リスクは低下する可能性がある. ただし, Evidenceレベルは低い点から, 必ずしもそうせねばならないわけではない.
実際論文の執筆者は, 「ルーチンのヘパリン使用を推奨しない」、と結論しているものがほとんど.
また, HIT(ヘパリン誘発性血小板減少症)はヘパリンフラッシュでも生じるよ, とよく言われているが, これら報告におけるHITの発症率は著しく低く, 両群で差はつかない.
症例報告レベルでは, ヘパリンフラッシュにより重度のHITを生じた報告もあるが, 非常に稀である, と認識しておいてもよいと思う.
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2019年5月31日金曜日
2019年5月28日火曜日
抗凝固療法, アスピリン使用患者におけるPPI: COMPASS trial
参考: 抗凝固療法使用患者におけるPPI併用の意義
COMPASS trialにおけるPPI使用症例の比較が発表されました.
COMPASS trial: 安定した動脈硬化性血管疾患の既往がある患者を対象とした3x2 partial factrial designのDB-RCT.
(N Engl J Med 2017;377:1319-30.)
・患者は冠動脈疾患もしくはPADの既往がある群.
20年以内にMI既往, 多枝病変, 狭心症既往がある患者
<65歳の冠動脈疾患患者では, さらに2つ以上のリスク因子を有する群(喫煙, DM, GFR<60mL/分, 心不全, 1ヶ月以上前の非ラクナ梗塞)
・除外項目: 出血リスクが高い, 最近のStroke, 出血性梗塞やラクナ梗塞, 重症心不全, GFR<15mL/分, DAPT, 抗凝固施行, 他の抗血小板療法, 心血管疾患以外で予後不良な状況
上記患者群を
・Rivaroxaban 2.5mg bid + ASA 100mg
vs Rivaroxaban 5mg bid単独
vs ASA 100mg単独群に割付け, 血管イベントリスクを評価.
さらに, 上記のうち, 臨床的にPPIが不要と判断された患者において
Pantoprazole 40mg vs Placebo群に割り付け上部消化管出血リスクを比較した.
Rivaroxaban, ASAの比較については省略.
結果としては, ASA単独と比較して, Rivaroxaban 2.5mg bid + ASA群において, 有意に脳梗塞リスクは低下し, 脳出血リスクは有意差なし. Rivaroxaban 5mg bidでは脳梗塞リスクは低下するが, 脳出血リスクは上昇する.
この結果により, Rivaroxaban, ASAの評価は途中でStudyは終了となっている
Pantoprazoleの比較は平均3年間継続
(Gastroenterology (2019), doi: https://doi.org/10.1053/j.gastro.2019.04.041.)
母集団
アウトカム
・PPI使用の有無で, 上部消化管出血リスクは同等
COMPASS trialにおけるPPI使用症例の比較が発表されました.
COMPASS trial: 安定した動脈硬化性血管疾患の既往がある患者を対象とした3x2 partial factrial designのDB-RCT.
(N Engl J Med 2017;377:1319-30.)
・患者は冠動脈疾患もしくはPADの既往がある群.
20年以内にMI既往, 多枝病変, 狭心症既往がある患者
<65歳の冠動脈疾患患者では, さらに2つ以上のリスク因子を有する群(喫煙, DM, GFR<60mL/分, 心不全, 1ヶ月以上前の非ラクナ梗塞)
・除外項目: 出血リスクが高い, 最近のStroke, 出血性梗塞やラクナ梗塞, 重症心不全, GFR<15mL/分, DAPT, 抗凝固施行, 他の抗血小板療法, 心血管疾患以外で予後不良な状況
上記患者群を
・Rivaroxaban 2.5mg bid + ASA 100mg
vs Rivaroxaban 5mg bid単独
vs ASA 100mg単独群に割付け, 血管イベントリスクを評価.
さらに, 上記のうち, 臨床的にPPIが不要と判断された患者において
Pantoprazole 40mg vs Placebo群に割り付け上部消化管出血リスクを比較した.
Rivaroxaban, ASAの比較については省略.
結果としては, ASA単独と比較して, Rivaroxaban 2.5mg bid + ASA群において, 有意に脳梗塞リスクは低下し, 脳出血リスクは有意差なし. Rivaroxaban 5mg bidでは脳梗塞リスクは低下するが, 脳出血リスクは上昇する.
この結果により, Rivaroxaban, ASAの評価は途中でStudyは終了となっている
Pantoprazoleの比較は平均3年間継続
(Gastroenterology (2019), doi: https://doi.org/10.1053/j.gastro.2019.04.041.)
母集団
アウトカム
・PPI使用の有無で, 上部消化管出血リスクは同等
・画像や検査で証明された上部消化管出血はPPI群で少ないものの, その差は0.2%程度.
NNTはおおよそ500と多い.
・抗凝固療法, ASA投与群別の評価.
ASA 100mg投与群でのみ有意差を認めるが, Absolute risk reductionは微々たるもの.
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DOAC(rivaroxaban)やASA使用患者におけるPPIの予防投与は,
明らかな上部消化管の病変からの出血リスクは軽減するが, NNTは500オーバーと実感するのは難しいレベル.
でのPPIによる上部消化管出血リスク軽減効果はNNT 200程度であり,
「DOACやASAを使用しているからPPI」ではなく,
さらに+αのリスク因子を考慮し, PPIの開始, 継続を検討する必要がある.
2019年5月24日金曜日
β-Dグルカンの偽陽性
β-Dグルカンは深在性真菌症やニューモシスチス肺炎の診断に有用な検査であるが, アルブミン投与やIg投与, 輸血, 透析, 抗真菌薬などで偽陽性となることが指摘されている.
実際どの程度これらの因子が影響するのか?
アルブミンとβ-Dグルカン
ICUでβ-DGを評価した267例の後ろ向き解析.
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2015 Feb;34(2):357-65. )
・BG試験におけるIFIに対する感度, 特異度を, アルブミン投与, Ig投与, 輸血施行群で評価, 比較
・全体の評価では, カットオフ 95.9pg/mLで, 感度82.9%, 特異度56.7%
・アゾール系抗真菌薬の使用, IVIG, RBC輸血はBG試験の感度, 特異度に影響は認められず.
・アルブミン投与のみ, BG試験の感度, 特異度に影響あり
>30gのAlb(20%製剤で>150mL)を2日以内に投与している場合, BG試験の感度は低下する. 感度36.2%[25.0-48.7], 特異度84.7%[77.5-90.3]
この場合のカットオフは203.7pg/mL
中国における前向きStudy: ICU患者267例において, Alb投与前後のβ-DGを評価.
(Zhonghua Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue. 2015 Aug;27(8):672-6. )
・β-DGの変化(ng/L)
IFI否定群では 11.25±2.33 → 10.99±1.07, p=0.085
IFI疑い群 53.14±5.53 → 49.22±8.11, p=0.693
IFI濃厚群 90.30±9.38 → 85.41±10.11, p=0.860
IFI群 100.98±19.24 → 103.21±17.66, p=0.449
アルブミン投与してもβ-Dグルカンの上昇に関連しない報告もあれば, 大量投与により偽陽性が増加する報告もある.
実際アルブミン製剤にどの程度β-Dグルカンが含まれているかを評価した報告もある.
人血清アルブミン5%製剤の国産製品3種類(A-C)と海外製品1種類(D)における含有量を評価
(Therapeutic Research 2013;34:1261-1269)
・β-Dグルカン(pg/mL)
・海外製品の含有量が高いが, 国産製品の含有量は多くはない.
・30pg/mLと仮定すると, 5%製剤250mLで7500pg.
血漿量を2500mLと仮定すると, 1本投与にて3pg/mL上昇する計算.
免疫グロブリンとβ-Dグルカン
日本国内で使用可能なIVIG製剤7種で各製剤3ロットずつβ-Dグルカンを測定.
(感染症誌 2017;91:1-6)
・含有量は製剤により差がある
・最も高濃度の300pg/mLを5g(100mL)投与すると
血漿量2500mlでは12pg/mL上昇する計算となる
同じ論文で, IVIG投与前にβ-Dグルカンが陰性であった51例で投与後のβ-Dグルカンを評価
・投与期間は2.9±1.2日, 投与量は15g(2.5~150g, 50mL~3000mL)
・投与前後のβ-Dグルカン:
・使用終了~3日[1-6]で評価され, β-Dグルカン値は有意に上昇を認めた.
>20pg/mLは5/51で認められ, 最も上昇した症例では44.5pg/mL上昇
・上昇例と非上昇例では製剤や投与量, 期間に差は認められない.
透析膜とβ-Dグルカン
Literature reviewでは,
透析膜は, Unmodified cellulose膜でβ-DGが偽陽性となる
Modified celluloseでは結果が割れている.
(Mycoses. 2015 Jan;58(1):4-9. doi: 10.1111/myc.12267.)
・Unmodified celluloseでは, 透析後の数値は平均100pg/mL
・日本からの報告では,Modified cellulose膜を使用した透析において, β-DGが中央値2778pg/mLに上昇した報告がある
日本国内より, 透析前後のβ-Dグルカンを評価した報告
(Kidney International, Vol. 60 (2001), pp. 319–323 )
・β-DグルカンはCellulose膜でのみ顕著に上昇を認める.
Cellulose triacetate, PMMA膜では上昇しない.
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この辺の感覚を踏まえておかないと, ICUで過少・過大評価に繋がるかもしれません.
結構β-Dグルカン値を解釈でこの辺の議論になることが多いです.
実際どの程度これらの因子が影響するのか?
アルブミンとβ-Dグルカン
ICUでβ-DGを評価した267例の後ろ向き解析.
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2015 Feb;34(2):357-65. )
・BG試験におけるIFIに対する感度, 特異度を, アルブミン投与, Ig投与, 輸血施行群で評価, 比較
・全体の評価では, カットオフ 95.9pg/mLで, 感度82.9%, 特異度56.7%
・アゾール系抗真菌薬の使用, IVIG, RBC輸血はBG試験の感度, 特異度に影響は認められず.
・アルブミン投与のみ, BG試験の感度, 特異度に影響あり
>30gのAlb(20%製剤で>150mL)を2日以内に投与している場合, BG試験の感度は低下する. 感度36.2%[25.0-48.7], 特異度84.7%[77.5-90.3]
この場合のカットオフは203.7pg/mL
中国における前向きStudy: ICU患者267例において, Alb投与前後のβ-DGを評価.
(Zhonghua Wei Zhong Bing Ji Jiu Yi Xue. 2015 Aug;27(8):672-6. )
・β-DGの変化(ng/L)
IFI否定群では 11.25±2.33 → 10.99±1.07, p=0.085
IFI疑い群 53.14±5.53 → 49.22±8.11, p=0.693
IFI濃厚群 90.30±9.38 → 85.41±10.11, p=0.860
IFI群 100.98±19.24 → 103.21±17.66, p=0.449
アルブミン投与してもβ-Dグルカンの上昇に関連しない報告もあれば, 大量投与により偽陽性が増加する報告もある.
実際アルブミン製剤にどの程度β-Dグルカンが含まれているかを評価した報告もある.
人血清アルブミン5%製剤の国産製品3種類(A-C)と海外製品1種類(D)における含有量を評価
(Therapeutic Research 2013;34:1261-1269)
・β-Dグルカン(pg/mL)
・海外製品の含有量が高いが, 国産製品の含有量は多くはない.
・30pg/mLと仮定すると, 5%製剤250mLで7500pg.
血漿量を2500mLと仮定すると, 1本投与にて3pg/mL上昇する計算.
免疫グロブリンとβ-Dグルカン
日本国内で使用可能なIVIG製剤7種で各製剤3ロットずつβ-Dグルカンを測定.
(感染症誌 2017;91:1-6)
・含有量は製剤により差がある
・最も高濃度の300pg/mLを5g(100mL)投与すると
血漿量2500mlでは12pg/mL上昇する計算となる
同じ論文で, IVIG投与前にβ-Dグルカンが陰性であった51例で投与後のβ-Dグルカンを評価
・投与期間は2.9±1.2日, 投与量は15g(2.5~150g, 50mL~3000mL)
・投与前後のβ-Dグルカン:
・使用終了~3日[1-6]で評価され, β-Dグルカン値は有意に上昇を認めた.
>20pg/mLは5/51で認められ, 最も上昇した症例では44.5pg/mL上昇
・上昇例と非上昇例では製剤や投与量, 期間に差は認められない.
透析膜とβ-Dグルカン
Literature reviewでは,
透析膜は, Unmodified cellulose膜でβ-DGが偽陽性となる
Modified celluloseでは結果が割れている.
(Mycoses. 2015 Jan;58(1):4-9. doi: 10.1111/myc.12267.)
・Unmodified celluloseでは, 透析後の数値は平均100pg/mL
・日本からの報告では,Modified cellulose膜を使用した透析において, β-DGが中央値2778pg/mLに上昇した報告がある
日本国内より, 透析前後のβ-Dグルカンを評価した報告
(Kidney International, Vol. 60 (2001), pp. 319–323 )
・β-DグルカンはCellulose膜でのみ顕著に上昇を認める.
Cellulose triacetate, PMMA膜では上昇しない.
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この辺の感覚を踏まえておかないと, ICUで過少・過大評価に繋がるかもしれません.
結構β-Dグルカン値を解釈でこの辺の議論になることが多いです.