また一方で, 二次性が否定された特発性自己免疫性血小板減少症(ITP)において, 抗リン脂質抗体が認められることが1割〜5割程度であるとされ, 抗リン脂質抗体陽性例では血栓症リスクが上昇することがわかっているため, 治療やフォロー時に注意が必要である.
ITPにおける抗リン脂質抗体陽性率
インド北部において, 新規診断ITP 50例と慢性ITP 50例で抗リン脂質抗体を評価した前向きStudy
(Clin Appl Thromb Hemost. 2017 Sep;23(6):657-662.)
・二次性ITPは除外.
・全体で12%で抗体は陽性
急性例で8.1%
慢性例で18%であった.
・抗体はβ2GP1抗体が多い
>15歳でPLT<5万/µLを満たすITP症例を後ろ向きに解析. 抗リン脂質抗体陽性率を評価した.
・SLEやAPSの診断基準を満たす症例, HCV, HIV患者は除外
・上記を満たす215例中, 抗リン脂質抗体陽性は55例(25.6%)
陽性例のうち, それぞれ4例がフォロー中にSLE, APSの基準を満たした(両者基準を満たした1例を含む)
・また, 抗リン脂質抗体陽性例はITPにおける血栓症リスクとなる
新規に診断されたITP症例 149例(二次性は除外)の解析
(Blood. 1994 Dec 15;84(12):4203-8.)
・このうちPLT<5万/µLであったのは52.3%でPSLによる治療が行われた.
・診断時にLA activity, 抗カルジオリピン抗体が陽性であったのが69例(46.3%)
新規診断のITP 82例(二次性を除外)を対象とし, 抗リン脂質抗体を評価した前向きCohort
(Blood. 2001 Sep 15;98(6):1760-4.)
・37.8%で抗リン脂質抗体陽性であった.
・5年間のフォローにおいて, 血栓症イベント(-)は, 抗体陽性例で39%のみ. 一方で陰性例では97.7%と有意に抗体陽性は血栓症リスクとなる結果
・また, 38ヶ月のフォローにおいて, 抗体陽性例の45%でAPSの診断基準を満たした
抗リン脂質抗体陽性のITPにおける血栓症リスク
ITP症例における抗リン脂質抗体と血栓症リスクを評価したMeta-analysis.
(Autoimmun Rev. 2016 Mar;15(3):203-9.)
・LA(+)は血栓症 OR 6.11[3.40-10.99]
動脈血栓症 OR 5.52[2.40-]
静脈血栓症 OR 5.13[2.31-11.40]
・aCL(+)は血栓症 OR 2.14[1.11-4.12]
動脈血栓症 OR 2.12[0.84-5.33]
静脈血栓症 OR 2.00[0.83-4.81]
・抗β2GP1抗体についてはデータが少ない
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二次性を否定したITPにおいて, 抗リン脂質抗体陽性例がそれなりにおり,
さらに陽性例では血栓症リスクが高いという知見.
このような患者では免疫抑制療法やトロンボポエチン受容体作動薬の使用の際には注意した方良い.
どのように注意すべきかはエビデンスもまだなく曖昧だが, PLTの目標値を3-5万ギリギリにしておく, トロンボポエチン受容体作動薬使用時にはアスピリンも使用するなど考えられる(no Evidence).
ITP患者において抗リン脂質抗体を意識して評価していなかったので, 今後注意してみようと思いました.