70歳台女性. フォーカス不明の発熱, 炎症反応高値で入院となった.
最初は特に症状も乏しく経過観察していたが, Day 3になり右手関節の発赤, 腫脹が出現.
CRPはこの間 16mg/dLから14mg/dLと横ばい〜低下傾向であり,
XPにて石灰沈着像も認められたため, 偽痛風の可能性を考慮し, まずはNSAIDにて対応
しかしながらその翌日も改善は認められず, 感染症除外目的に穿刺を施行
すると以下のようなGram染色像が得られた.
結晶もあるが, GPRが貪食されている.
GPRは中型でやや紡錘状のハの字. これはCorynebacteriumっぽい.
化膿性関節炎でコリネ?
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化膿性関節炎とCorynebacteriumで調べると, まずCorynebacterium striatumがヒットする.
Corynebacterium striatumはヒトの皮膚, 粘膜に常在する細菌
・人工物や免疫不全患者への感染の報告がある.
・心内膜炎, 肺感染症, 骨関節感染が報告されている.
骨, 関節のC. striatum単独感染症例を後ろ向きにReviewした報告
(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2019 Mar 22. doi: 10.1007/s10096-019-03542-x. [Epub ahead of print]
Monomicrobial bone and joint infection due to Corynebacterium striatum: literature review and amoxicillin-rifampin combination as treatment perspective.)
・2施設において, 2012-2017年に11人より, 12件診断(9例が人工関節, 1例がプレート, 髄内釘感染症, 関節炎 1例含む). このうち5/11が免疫不全患者であった.
・Literature reviewでは12例の骨, 関節感染症の報告があり, 5/12が免疫不全患者.
化膿性関節炎は8例, 人工関節感染症が1例, 骨髄炎が3例
部位は肩, 肘, 膝, 股関節など様々
感受性は抗MRSA薬とアミノペニシリン系で良好
・抗MRSA薬を使用し, 感受性が判明すればアモキシシリンなどへの切替を検討すると良い
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変わった細菌が関節液のGram染色で認められ, 驚きました.
免疫不全もなく, 人工関節でもなく, 術後でもない手関節のCorynebacteriumは珍しい.