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2019年1月4日金曜日

SGLT-2阻害薬は第二選択にせねばならないのか?

抄読会にて, あたらしい2018年のADA, EASD 2型糖尿病ガイドラインのあらましを勉強しました.

( 2018 Dec;41(12):2669-2701. doi: 10.2337/dci18-0033.)

Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes, 2018. A Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD).


メトフォルミンが第一選択なのは以前と変わらず.
新しく, SGLT-2阻害薬やGLP-1作動薬の優先順位があがり, 心血管イベントリスクが高い患者では第二選択に推奨されています.

個人的には, メトフォルミンは第一選択で使用していますが, 第二選択でSGLT-2阻害薬やGLP-1作動薬は使用していません.
後者は良い薬剤と思いますが, 現時点では注射薬しかありません.
前者は診療する患者群が高齢者で, 高度肥満患者が少ないため, そもそも選択肢に挙がりませんでした. 比較的若い, 肥満を伴うDM患者では使用しています.

この個人的なマネージメントは修正する必要があるのか?
そこでSGLT-2阻害薬と心血管イベントアウトカムについて評価した主要なStudyを復習してみました.

EMPA-REG: Empagliflozin(ジャディアンス®)のRCT
(N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2117-28.)
 2DM患者 7020例を対象としたDB−RCT.
 通常の治療 vs Empagliflozin 10mg, 25mg/dを使用した群に割つけ心血管イベントリスクを比較.
・患者は2DM, BMI≤45, eGFR≥30ml/min, 心血管疾患既往があり
 過去12wkに血糖降下薬の使用歴がなく, HbA1c 7.0−9.0%
 または血糖降下薬使用歴があり, HbA1c 7.0−10.0%を満たす患者群

母集団


・アジア人は20%強含まれている
・母集団のBMIは30.7±5.2, 30.6±5.3

アウトカム

Empagliflozin使用群では有意に死亡リスク, 心血管イベントリスクが低下.
 心血管由来の死亡リスクは HR 0.62[0.49−0.77], NNT 45.5
・具体的な項目では, 心不全入院リスクが有意に低下を認める.
 また心血管死亡リスクの低下も認められる.

サブ解析:
HbA1c <8.5%, BMI<30で特に有意差あり


CANVAS, CANVAS-R trial: Canagliflozin(カナグル®)のRCT
(N Engl J Med 2017;377:644-57.)
2DM患者を対象とし, canagliflozin vs Placeboに割付け, 心血管系イベント, 死亡例リスクを比較したDB-RCT
・患者は2DM(HbA1c ≥7.0%, ≤10.5%)
 30歳以上 且つ 症候性の動脈硬化性疾患の既往がある患者
 50歳以上 で以下の2つ以上のリスク因子を有する患者(DM既往が10年以上ある, 降圧薬使用下でsBP>140mmHg, 喫煙, アルブミン尿あり, HDL<38.7mg/dL)
 さらに上記に加えてeGFR ≥30mL/min/1.73m2を満たす患者を対象
・上記患者群を
 CANVAS trialでは, canagliflozin 300mg, 100mg, placebo3郡に割付け
 CANVAS-Rではcanagliflozin 100mg(wk13より300mgに増量可) vs Placeboに割付け, 心血管イベント, 腎機能を評価

母集団
・アジア人は12-13%程度含まれる. 母集団のBMIは32.0±5.9

アウトカム
・心血管死亡, 心血管イベントは有意に低下するが, 細かく見ると有意差があるのは心不全入院のみ.
・アルブミン尿や腎機能低下リスクは有意に低下する

サブ解析
有意差はないものの,
 BMI<30, HbA1c ≥8%, アジア人心血管疾患の既往(-)では心血管イベント抑制効果は認めない
β阻害薬や利尿薬使用患者でよりアウトカム改善効果が期待できる

DECLARE-TIMI58: Dapagliflozin(フォシーガ®)のRCT
(Dapagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. DOI: 10.1056/NEJMoa1812389)
2DMで動脈硬化性疾患リスク, 罹患がある患者を対象とし, DapagliflozinPlaceboに割り付け, 心血管イベントリスクを比較したDB-RCT.
・患者は40歳以上の2DM, HbA1c 6.5-12%, CCr ≥60mL/min, 動脈硬化性心血管疾患や, そのリスク因子を有する患者*
 *男性55歳以上, 女性60歳以上で高血圧, 高脂血症, 喫煙者の1つ以上を満たす患者で定義.
上記患者をDapagliflozin 10mg vs Placeboに割り付け比較
 SGLT-2阻害薬以外の血糖降下薬は使用可.

母集団
・アジア人は12.7%, 母集団のBMIは32.1±6.0, 32.0±6.1

アウトカム
心不全入院は有意に低下する
 腎機能増悪リスクも有意に低下.

サブ解析ではBMI別に評価したものはない

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これらの報告から得る印象ですが,
・SGLT-2阻害薬は心不全リスクを有意に低下させるのは明らかであること,
・虚血性心疾患リスクについては本当にリスクを低下させるのかはよくわからない.
・Studyのほぼ全てがBMI30前後の肥満〜高度肥満患者群を対象としているため, 
高齢者で, そこまで肥満が強くない, むしろ痩せ気味なDM患者に対して優先順位を上げて使用せねばならないかというと, それは違う.

 ということで, 今のマネジメントを変える必要は乏しいと思いました.
 比較的若く, 肥満患者では良い薬とは以前から思っています.