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2018年11月22日木曜日

症例: 70歳台男性, 難治性肺炎, CO2貯留

病院受診歴なし, 喫煙は20-30 pack-yの70歳台男性.

3週間前より咳嗽を自覚. 持続するために近医受診し, XPで肺浸潤影を指摘.
内服抗菌薬を開始. その後も改善乏しく, 1週間前より入院加療となりABPC/SBTが開始された.

その後も肺炎の改善が得られず, 意識障害が進行. PaCO2 110mmHgと高値であり, 転院となった.

来院時GCS E1V1M4, RR 26, SpO2 79%(8L), BP 120/50, HR 128bpm
呼吸は浅く, 両側のAir入りは不良. Wheeze聴取せず両肺で湿性ラ音を聴取.
胸部XPでは両側びまん性の斑状影+

胸部CTでは以下のような所見:

やたら気管支壁の肥厚と小葉中心性陰影が目立つ印象.
また中枢気管にも違和感を感じ, 縦隔条件でじっくり見直すと,

中枢気管の全周性の壁肥厚が顕著.

抗菌薬に反応しない増悪する病態.
全周性の中枢気管〜末梢気管まで壁肥厚が強い, 気管気管支炎

さてこの病態は?























この時点である疾患を疑い, 気管内吸引を行いグラム染色へ.
すると以下のような所見を認めた.













診断
 アルペルギルス性気管気管支炎
 (おそらく)偽膜性アルペルギルス性気管気管支炎(Pseudomembranous Aspergillus tracheobronchitis)


アルペルギルスによる気管気管支炎
(The Scientific World JOURNAL (2011) 11, 2310– 2329)


侵襲性肺アスペルギルス症の一部に侵襲性気管気管支炎が含まれ, この中には潰瘍形成や偽膜形成のパターンがある.

アスペルギルス気管支炎 148+8例のLiterature review
(Medicine 2012;91: 261-273)
・背景疾患は悪性腫瘍, 血液腫瘍幹細胞移植, 臓器移植, 自己免疫性疾患COPD, 慢性肺疾患など.
免疫抑制療法中の患者も多い.

臨床症候と画像所見
・症状は呼吸器症状, Wheeze, Stridor, 血痰など.
・画像では気管気管支壁肥厚や肺浸潤影が認められるが, 約半数が正常
([Am J Med Sci 2013;346(5):366–370.] )

気管支鏡所見
・偽膜形成や閉塞病変, 潰瘍性病変が認められる.
・原因菌はA fumigatusが多い.
([Am J Med Sci 2013;346(5):366–370.] )

(Clin Microbiol Infect 2010; 16: 689–695)の論文では, 気管支鏡所見から, 侵襲性アスペルギルス性気管気管支炎を4タイプに分類
・Type I: 粘膜の炎症, 粘膜発赤, 表在性の潰瘍があり, 偽膜を形成しているパターン
・Type II: 炎症や潰瘍が深部達し, 基質層や気管軟骨の障害, 気管構造の破壊を認める
・Type III: 著明な偽膜形成やポリープ, 壊死性物質により, 気管内腔の50%以上を閉塞している病態
・Type IV: 上記の混合型(2タイプ以上)