病院受診歴なし, 喫煙は20-30 pack-yの70歳台男性.
3週間前より咳嗽を自覚. 持続するために近医受診し, XPで肺浸潤影を指摘.
内服抗菌薬を開始. その後も改善乏しく, 1週間前より入院加療となりABPC/SBTが開始された.
その後も肺炎の改善が得られず, 意識障害が進行. PaCO2 110mmHgと高値であり, 転院となった.
来院時GCS E1V1M4, RR 26, SpO2 79%(8L), BP 120/50, HR 128bpm
呼吸は浅く, 両側のAir入りは不良. Wheeze聴取せず. 両肺で湿性ラ音を聴取.
胸部XPでは両側びまん性の斑状影+
胸部CTでは以下のような所見:
やたら気管支壁の肥厚と小葉中心性陰影が目立つ印象.
また中枢気管にも違和感を感じ, 縦隔条件でじっくり見直すと,
中枢気管の全周性の壁肥厚が顕著.
抗菌薬に反応しない増悪する病態.
全周性の中枢気管〜末梢気管まで壁肥厚が強い, 気管気管支炎
さてこの病態は?
この時点である疾患を疑い, 気管内吸引を行いグラム染色へ.
すると以下のような所見を認めた.
診断
アルペルギルス性気管気管支炎
(おそらく)偽膜性アルペルギルス性気管気管支炎(Pseudomembranous Aspergillus tracheobronchitis)
アルペルギルスによる気管気管支炎
(The Scientific World JOURNAL (2011) 11, 2310– 2329)
侵襲性肺アスペルギルス症の一部に侵襲性気管気管支炎が含まれ, この中には潰瘍形成や偽膜形成のパターンがある.
アスペルギルス気管支炎 148例+8例のLiterature review
(Medicine 2012;91: 261-273)
・背景疾患は悪性腫瘍, 血液腫瘍, 幹細胞移植, 臓器移植, 自己免疫性疾患, COPD, 慢性肺疾患など.
・免疫抑制療法中の患者も多い.
臨床症候と画像所見
・症状は呼吸器症状, Wheeze, Stridor, 血痰など.
・画像では気管気管支壁肥厚や肺浸潤影が認められるが, 約半数が正常
([Am J Med Sci 2013;346(5):366–370.] )
気管支鏡所見
・偽膜形成や閉塞病変, 潰瘍性病変が認められる.
・原因菌はA fumigatusが多い.
([Am J Med Sci 2013;346(5):366–370.] )
(Clin Microbiol Infect 2010; 16: 689–695)の論文では, 気管支鏡所見から, 侵襲性アスペルギルス性気管気管支炎を4タイプに分類
・Type I: 粘膜の炎症, 粘膜発赤, 表在性の潰瘍があり, 偽膜を形成しているパターン
・Type II: 炎症や潰瘍が深部達し, 基質層や気管軟骨の障害, 気管構造の破壊を認める
・Type III: 著明な偽膜形成やポリープ, 壊死性物質により, 気管内腔の50%以上を閉塞している病態
・Type IV: 上記の混合型(2タイプ以上)