重症の代謝性アシドーシスに対するNaHCO3の投与については長年議論されている分野. 投与しても予後には関係しないとの意見が多く, 現在はあまり行われていない治療かもしれない. このへんは施設毎でやり方が異なる.
この度フランスよりランダム化比較試験が発表された
(Lancet 2018; 392: 31–40)
BICAR-ICU; フランスの26施設のICUにおけるRCT.
重度のアシデミア(pH≤7.20, PaCO2≤45, HCO2≤20mmol/L)で, さらにSOFA≥4もしくはLac ≥2mmol/Lを満たす成人患者を対象.
・NaHCO3を投与しない群 vs 4.2%のNaHCO3をpH>7.30を保つ様に投与する群に割付け, 死亡リスクや臓器障害, 腎障害リスクを比較.
・透析の基準は統一: ICU入室時にK>6.5mEq/L+無尿, 肺水腫+無尿
割付後24hで尿量<0.3mL/kg/hが24h以上, pH<7.20, K>6.5mEq/L
・投与速度は125-250mLを30分で投与, 24hで1000mlを上限とする.
・除外項目: 呼吸性アシドーシス, 消化管, 尿からNaHCO3喪失が認められる群(≥1500ml/dのVol lossがある群), CKDステージIV, ケトアシドーシス, スクリーニングの24h以内にNaHCO3投与されている群
母集団
・敗血症性ショックは50%程度
・pHは7.15
アウトカム
・全体では死亡リスクや臓器障害リスクは有意差なし.
・AKIN 2-3では, 死亡リスクの軽減効果, 臓器障害リスクの軽減あり.
透析治療リスクや導入までの期間は有意に改善
透析治療リスクや導入までの期間は有意に改善
*AKIN 2-3はベースラインからのCr2倍以上に上昇、尿量<0.5hが12h
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透析の導入基準が24h後のpH<7.20なので、Control群で透析導入が多く, 早くなるのは当然
AKIN 2-3群において死亡リスクを改善させるというのは興味深い結果
ベースラインからのCr2倍以上に上昇、尿量<0.5hが12hの患者群における重度のアシドーシスではNaHCO3を投与するマネージメントはありか