主訴 2週間前からの高熱, 関節痛・炎症.
2週間前より倦怠感、発熱、食欲低下を認め、他病院を受診。その際膝関節腫脹、疼痛があり、関節穿刺を行った。関節液培養陰性。結晶陰性だが偽痛風とされた。
その後も発熱が持続。体幹や四肢に皮疹も持続。近医にて抗菌薬なども使用されたが改善乏しく、紹介となった経過.
所見:
体温は39度台が持続。
有意な所見としては, 両側膝関節腫脹、左手母指PIP関節腫脹・圧痛
背部に境界明瞭、やや皮膚硬化や落屑を伴う皮疹を認める。
殿部には均一に広がる紅斑を認める
両側下肢にも軽度紅斑を認める。
検査:
血液培養は陰性。CRP20台と高値。
白血球15000, 好中球優位87%
LDH 400台, CPK上昇や肝障害は伴わない. フェリチン4-5000台と著明に上昇
胸腹部CTでは軽度の肝脾腫、腹腔内リンパ節がやや目立つ程度(反応性腫大)
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という流れで, 成人Still病を疑い
夜間のSpike fever時の評価をするとサーモンピンク様の一過性の皮疹を認めた。
夜間のSpike fever時の評価をするとサーモンピンク様の一過性の皮疹を認めた。
また、背部や下肢の皮疹も日々変動を認めている.
まだ悪性腫瘍などの除外が未であるものの, 可能性としてはAOSDを疑う状況と考えている.
さて, AOSDではサーモンピンク様の一過性の皮疹が有名であるが, 他にはどの様な皮疹があるのか?
典型的なAOSDの皮疹
(Rheumatol Int (2012) 32:2233–2237)
・Spike feverと同時に出現し, 解熱で改善する
・体幹, 下肢で多く, サーモンピンクの丘疹を呈する
・病理では皮膚上層に非特異的な炎症性細胞の浸潤を認める
非典型的な皮疹
・持続性の掻痒感を伴う丘疹や紅斑で, Koebner現象による線状の皮疹や
・表層に落屑や硬化を伴う皮疹を認める. 主に体幹で多い
・病理では, 皮膚上層の異常角化を伴う好中球浸潤が認められる
蕁麻疹: AOSDでは蕁麻疹, 蕁麻疹様の皮疹も認められる.
・皮膚描記症を伴うこともある
その他: 膿疱水疱性病変, 痤瘡様皮疹, 紫斑, びまん性の持続性の紅斑, 固定皮疹, 色素性,痒疹様皮疹, オレンジ皮様浸潤性病変が報告されている.
・さらに白斑, 慢性遊走性紅斑, 血管浮腫, PAN, Sweet病の報告がある.
81例のAOSDの解析では, 46/81が典型的な皮疹+非典型的な皮疹双方あり.
(Medicine (2017) 96:11(e6318))
・非典型的な皮疹の頻度
持続性の掻痒感を伴う丘疹や紅斑は61/81(75%), 掻痒感は53/61で伴っていた(87%)
・皮疹の色は紅斑~褐色斑, まれに紫色とされていた
また落屑や皮膚肥厚と共に出現していることもあり
・部位は体幹が最多. ついで四肢伸側
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AOSDにおいて, サーモンピンク疹は典型的皮疹であるが, 非典型皮疹として落屑や皮膚硬化を伴う持続的な皮疹も多く認められる. またKoebner現象を伴うような線状の皮疹もある(そういえばこの間の京都GIMでの症例はこれでしたね)
この症例で認められた皮疹は背部〜殿部の紅斑で, ちょうど2つ目の写真の真ん中の皮疹に類似。軽度の皮膚硬化と落屑も伴っており, AOSDの皮疹としても矛盾しない印象.とはいい, 典型的ではないので, 他疾患の鑑別も重要なのはいうまでもないですが。