DPP-4阻害薬のみで血糖コントロール良好. 長年HbA1c 6%前半で推移していた患者
ある日突然口渇感など増悪し, 来院時DKAであった. HbA1c 13%(3ヶ月前は6.8%, その前は6%前半で推移)
よくよく病歴を調査すると,
15年前(50歳台)でDKAで発症. HbA1c 16%. その際インスリン分泌能を評価され, 低下していると判断. インスリンが導入された.
その数年後にコントロール良好となり離脱. で、受診を自己中断.
初回DKAから10年後に再度DKAあり. その際もインスリン分泌低下あり、導入.でその3年後にインスリン離脱し、以後内服のみで安定.そして、今回のエピソードと。
これで3回目のDKA, いずれもインスリン枯渇状態であったが, 数年でインスリン離脱
この病態は一体なんなのだろうか?
これは非典型的なDMの一つ. Ketosis-prone DM: KPDと呼ばれるタイプ
典型的なType 1 DMではないのにDKAを生じるタイプ
・通常DKAはインスリンの枯渇により生じるため, DKAを来す患者では大抵がType 1 DMでインスリン導入となるが, 中には経過中にインスリン分泌能が改善し, 導入の必要が無い患者もいる.
・このような患者群では長期間のフォローで, インスリン枯渇(増悪)と分泌正常(寛解)を行き来する症例がある.
寛解期には軽度の高血糖のみか, 薬剤を必要としなくなるレベルまで改善.
このようなタイプをKetosis-prone DMと呼び, 自己抗体をもつタイプ(GAD抗体, IA-2抗体)A+β+, もたないA-β+と表記する.
β細胞機能の改善がえられない, 不十分なものをβ-と表記.
人種により差があり, Afro-Caribbean, Hispanicで多い. Asia人では少ない.
Ketosis-prone DMの特徴
臨床特徴
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Labの特徴
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誘因の無いDKAを来す.
DKA時にDMが診断されることもある Afro-Caribbean, Hispanicで多い. インスリン非依存性と依存性±DKAの期間がある Type 2 DM-likeな要素が多い (肥満, 耐糖能障害, Metabolic syndrome) β細胞機能の変動でHbA1cもバラツく DKAを来たす患者群では男性が多い(2.6:1) 初期治療としてインスリンが推奨される |
β細胞抗体は28%で陽性
C-ペプチドはDKA時には低値. その後は>60%で改善する. 空腹時C-ペプチド(nmol/L)/glu(mmol/L) >11はインスリン中断可能を示唆. Type 1 DMのHLAパターンならば1-2年で インスリン依存性となる |
それぞれのタイプの特徴
(J Clin Endocrinol Metab 88: 5090–5098, 2003 )
・β+群では, 6ヶ月でインスリンを中断できるのが約半数
・12ヶ月時点で投薬中止できるのが1-2割.
経口血糖降下薬のみで管理可能なのが3-4割となる
KPD 111例の解析(Sub-Saharan African)
(Diabetes 53:645–653, 2004 )
最終的にインスリン離脱できたのが75.7%
・インスリン投与が必要な期間は離脱群では14.3±25.9wk
KPDの再燃, インスリン依存のリスク
・3-5年にかけて再燃のリスクが高い.
・また経過ごとに徐々にインスリン依存のリスクは増大する.
再燃時のHbA1c, 体重の変化
・A,B: 寛解のままの患者のデータ
・C,D: 再燃をきたした患者のデータ. 半年~3ヶ月前よりHbA1cは上昇
その前から若干体重が増加する経過をとる
他の報告では,
106例のKPD患者をDKA後半年間フォローした報告では, インスリンを中止できたのは50例と約半数. (Diabet. Med. 22, 1744–1750 (2005) )
新規に診断されたDMでKPD(A-β+)を疑う患者11例を前向きに1年間フォローした報告
C-peptideの変動
・半年以上かけて分泌能は改善する経過. 反応性も改善する
1年後の投薬、管理内容
・SUやMetforminのみ, 併用, 生活療法のみと改善を認める.
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アジア人では少ないが, β細胞機能が低下〜回復を繰り返し, DKAを繰り返す症例があることは覚えておくと良い.
なんかおかしい2型糖尿病のDKAではKPDの可能性も念頭に