心筋梗塞の70%がFibrous capの破裂が原因で, 残る30%の大半を占めるのがプラークの融解による内皮細胞の暴露.
・これにはストレスや血行動態の変化, O2需要量の増加による破裂や凝固, 心臓の酸素消費量が増加が関連し, これら因子はACSのTriggerとなる
・特に感染症は以前より経験的にもACSのTriggerとして報告されている
感染症とACSの関連を調べたStudyのMeta-analysisでは
(Lancet Infect Dis 2010;10:83-92)
・気道感染症では発症1-2wkにおいて, ACS発症Riskを2-3倍となる
特に感染後最初の数日間は高Risk(72hr以内では約5倍)
・Influenza感染との関与も報告されており, InfluenzaシーズンではACS発症率が30%増加する ⇒ Influenzaの予防接種はACS発症Riskを軽減する可能性がある
FOREVER cohort: オンタリオにおいて, 呼吸器感染症(インフルエンザ)とACS発症リスクを評価したCohort study.
(N Engl J Med 2018;378:345-53.)
・35歳以上で, 2009-2014年にウイルス性呼吸器感染症を診断された患者と, 2008-2015年に急性心筋梗塞で入院した患者群を評価.
・呼吸器感染症診断から7日以内にMIを発症した場合は関連性ありと判断し, 感染症診断の1年前~1年後(7日以内を除く)でのMI発症をコントロールとした
インフルエンザと診断され, さらにAMIを発症したのは332例
インフルエンザ診断とMI発症のリスク
・診断7日以内はMIリスクが上昇
・インフル以外でもRSVや他のVirusでリスクは上昇
ただしインフルの方がリスクは高い
・特に高齢者でリスクは高い傾向がある(有意差はない)
---------------------------
これは以前より言われていたことですが, 風邪や感染症, 急性疾患で入院した患者ではその後MIを発症する可能性があります.
院内発症のMIとかもありますよね.
風邪のあとに倦怠感がとれない, 呼吸苦があるといった場合には注意しています
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2018年1月23日火曜日
脳梗塞後のてんかん発作:SeLECTスコア
脳梗塞後のてんかん発作は急性, 亜急性, 慢性の3つ
・急性は発症24h以内の痙攣発作
・亜急性は7日以内
・慢性は7日以降の痙攣発作. 脳梗塞後の組織変性により長期的にてんかん発作の原因病変が形成される.
脳梗塞既往がある患者で問題となるのがこの慢性期でのてんかん発作.
脳梗塞後1年間のてんかん発症率は3-15%
(Lancet Neurol 2016; 15: 185–97)
脳梗塞後てんかん発作のリスク因子
・前方循環系の脳梗塞は他の脳梗塞よりもリスクが高い
・皮質の梗塞もリスクが高い
特に前側頭皮質, 縁上回, 上側頭回の梗塞でリスクが高い報告がある
ラクナ梗塞は梗塞後てんかんの11%で認められる.
脳梗塞後のてんかんリスクを評価するSeLECTスコア
スイスにおける脳梗塞症例1200例において, 脳梗塞後のてんかん発作(発症>7日)のリスク因子を評価し, スコアを作成(SeLECTスコア).
さらにオーストラリア, ドイツ, イタリアの1169例でValidationを施行した報告.
(Lancet Neurol 2018; 17: 143–52)
・TIA, Stroke既往, 出血性梗塞, 痙攣既往, フォロー中に再梗塞(+), 他にてんかん発作のリスクがある患者は除外.
脳梗塞後のてんかん発作リスクは1年間で4%[4-5], 5年間で8%[6-9]
・リスク因子は5項目あり, 頭文字をとってSeLECTスコアとした.
・重症度, 大血管動脈硬化, 早期痙攣, 皮質障害, MCA領域の5項目が関連
スコアと1年, 5年間のてんかんリスク
・スコア 0ではリスクは1%前後
・スコア 9では6-8割で発症する.
リスク分類
・急性は発症24h以内の痙攣発作
・亜急性は7日以内
・慢性は7日以降の痙攣発作. 脳梗塞後の組織変性により長期的にてんかん発作の原因病変が形成される.
脳梗塞既往がある患者で問題となるのがこの慢性期でのてんかん発作.
脳梗塞後1年間のてんかん発症率は3-15%
(Lancet Neurol 2016; 15: 185–97)
脳梗塞後てんかん発作のリスク因子
・前方循環系の脳梗塞は他の脳梗塞よりもリスクが高い
・皮質の梗塞もリスクが高い
特に前側頭皮質, 縁上回, 上側頭回の梗塞でリスクが高い報告がある
ラクナ梗塞は梗塞後てんかんの11%で認められる.
脳梗塞後のてんかんリスクを評価するSeLECTスコア
スイスにおける脳梗塞症例1200例において, 脳梗塞後のてんかん発作(発症>7日)のリスク因子を評価し, スコアを作成(SeLECTスコア).
さらにオーストラリア, ドイツ, イタリアの1169例でValidationを施行した報告.
(Lancet Neurol 2018; 17: 143–52)
・TIA, Stroke既往, 出血性梗塞, 痙攣既往, フォロー中に再梗塞(+), 他にてんかん発作のリスクがある患者は除外.
脳梗塞後のてんかん発作リスクは1年間で4%[4-5], 5年間で8%[6-9]
・リスク因子は5項目あり, 頭文字をとってSeLECTスコアとした.
・重症度, 大血管動脈硬化, 早期痙攣, 皮質障害, MCA領域の5項目が関連
スコアと1年, 5年間のてんかんリスク
・スコア 0ではリスクは1%前後
・スコア 9では6-8割で発症する.
リスク分類
2018年1月22日月曜日
人工呼吸器管理と横隔膜萎縮
人工呼吸器管理では横隔膜の活動は低下し, 徐々に横隔膜は萎縮する
またその萎縮が予後へ影響する可能性がある
(NEJM 2008;358:1327-35)
ICUにて人工呼吸器管理をされている成人症例で横隔膜厚を評価し, 呼吸器離脱との関連を評価.
(Am J Respir Crit Care Med Vol 197, Iss 2, pp 204–213, Jan 15, 2018)
・191例で連日エコー検査にて横隔膜厚の変化と予後を前向きに評価した.
・患者は人工呼吸器管理されて36時間以内の群(最初の53例は72時間以内で導入された)を対象
導入されてから24h以内に抜管された症例や, 過去6ヶ月以内に48h以上の呼吸器管理をされていた患者は除外
呼吸器管理期間と横隔膜萎縮の関連
・4日間[3-5]の経過で78例(41%)が10%以上の横隔膜厚の減少あり
ほぼ不変が35%, 10%以上の増加が24%
横隔膜厚の変化とアウトカム
・横隔膜厚の減少は有意に人工呼吸器離脱率を低下させる(HR0.69[0.54-0.87]/10%低下)
・再挿管や気管切開, 急性呼吸不全の合併, 在院日数にも影響する
Day 3における呼吸時の横隔膜厚の変化と呼吸器管理期間の関係
・生理的な呼吸では, 横隔膜厚変化は15-30%
・呼吸器管理患者でもこの範囲ではもっとも呼吸器管理期間が短い
--------------------
横隔膜が過度に使われる場合はそもそも呼吸状態が悪い.
横隔膜が萎縮し, 廃用すると人工呼吸器離脱が遅れる.
良い塩梅での呼吸器設定や、早期の呼吸リハビリは重要と言える.
今後、ICU管理のチェック項目が1つ増えそう? まあ肺エコーついでにやればよいだけですけども
またその萎縮が予後へ影響する可能性がある
(NEJM 2008;358:1327-35)
ICUにて人工呼吸器管理をされている成人症例で横隔膜厚を評価し, 呼吸器離脱との関連を評価.
(Am J Respir Crit Care Med Vol 197, Iss 2, pp 204–213, Jan 15, 2018)
・191例で連日エコー検査にて横隔膜厚の変化と予後を前向きに評価した.
・患者は人工呼吸器管理されて36時間以内の群(最初の53例は72時間以内で導入された)を対象
導入されてから24h以内に抜管された症例や, 過去6ヶ月以内に48h以上の呼吸器管理をされていた患者は除外
呼吸器管理期間と横隔膜萎縮の関連
・4日間[3-5]の経過で78例(41%)が10%以上の横隔膜厚の減少あり
ほぼ不変が35%, 10%以上の増加が24%
横隔膜厚の変化とアウトカム
・横隔膜厚の減少は有意に人工呼吸器離脱率を低下させる(HR0.69[0.54-0.87]/10%低下)
・再挿管や気管切開, 急性呼吸不全の合併, 在院日数にも影響する
Day 3における呼吸時の横隔膜厚の変化と呼吸器管理期間の関係
・生理的な呼吸では, 横隔膜厚変化は15-30%
・呼吸器管理患者でもこの範囲ではもっとも呼吸器管理期間が短い
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横隔膜が過度に使われる場合はそもそも呼吸状態が悪い.
横隔膜が萎縮し, 廃用すると人工呼吸器離脱が遅れる.
良い塩梅での呼吸器設定や、早期の呼吸リハビリは重要と言える.
今後、ICU管理のチェック項目が1つ増えそう? まあ肺エコーついでにやればよいだけですけども
2018年1月19日金曜日
NIVやNasal-high-flow, O2投与患者における挿管リスク因子
21 ICUにおけるRCTのPost hoc analysis.
急性呼吸不全でHIVやNasal high flow管理となった患者において, 気管挿管, 人工呼吸器管理へ移行するリスク因子を評価した.
(Crit Care Med 2018; 46:208–215)
・患者はRR>25/min, P/F≤300, PaCO2 <45mmHgを満たし, 酸素投与(≥10L/min), NIV(VT7-10mL/kg, PEEP 5cmH2O), Nasal high flow(50L/min)のいずれかで管理された群を対象
・重症好中球減少症, Acute-on-chronicの呼吸不全, 心原性肺水腫, Shock, 意識障害症例は除外
・管理開始1時間経過しての各パラメータと, その後の挿管/人工呼吸器管理リスクを評価した.
気管挿管基準は以下とした.
・呼吸状態の増悪, 改善が乏しい: 以下の2項目を満たす
呼吸数>40/min,
呼吸補助筋の過度な使用が持続,
多量の喀痰,
動脈血pH<7.35,
SpO2<90%が5分以上持続
・血行動態不安定
・神経所見(意識状態)の増悪
患者は310例で, 45%が気管内挿管を必要とした
・このうち92%が呼吸状態の増悪, 改善が乏しいことで挿管を行なった
Baselineのパラメータと最終的な気管挿管リスク
・Baselineでは, 呼吸回数が多いほど挿管リスクが高い
急性呼吸不全でHIVやNasal high flow管理となった患者において, 気管挿管, 人工呼吸器管理へ移行するリスク因子を評価した.
(Crit Care Med 2018; 46:208–215)
・患者はRR>25/min, P/F≤300, PaCO2 <45mmHgを満たし, 酸素投与(≥10L/min), NIV(VT7-10mL/kg, PEEP 5cmH2O), Nasal high flow(50L/min)のいずれかで管理された群を対象
・重症好中球減少症, Acute-on-chronicの呼吸不全, 心原性肺水腫, Shock, 意識障害症例は除外
・管理開始1時間経過しての各パラメータと, その後の挿管/人工呼吸器管理リスクを評価した.
気管挿管基準は以下とした.
・呼吸状態の増悪, 改善が乏しい: 以下の2項目を満たす
呼吸数>40/min,
呼吸補助筋の過度な使用が持続,
多量の喀痰,
動脈血pH<7.35,
SpO2<90%が5分以上持続
・血行動態不安定
・神経所見(意識状態)の増悪
患者は310例で, 45%が気管内挿管を必要とした
・このうち92%が呼吸状態の増悪, 改善が乏しいことで挿管を行なった
Baselineのパラメータと最終的な気管挿管リスク
・Baselineでは, 呼吸回数が多いほど挿管リスクが高い
酸素投与, NIVなど管理後1hでのパラメータと挿管リスク
・酸素投与群では呼吸回数
・Nasal high-flowではDiscomfort
・NIVでは呼吸回数, P/F<200, 呼気VTが挿管に関連する
挿管リスク因子とそのOR
-----------------------------
初療時以外にも, 管理中の呼吸数のフォローはその後の気管挿管・人工呼吸器管理を予測する因子として重要.
「酸素投与やNIVを行なっていても呼吸回数が早いなぁ。。。いやだなぁ。。。」という感覚は大事という根拠になります
Nasal high flowでは関連性は乏しく, 頻脈が嫌なサインとなりそう
VAP予防の10項目
スペインにおける181施設のICUが参加(全体の75%)した前向きStudy(Pneumonia Zero project).
(Crit Care Med 2018; 46:181–188)
・VAP予防も10項目を行うように介入(7項目は必須, 3項目は強く推奨)した前後のVAP発症率を前向きに評価.
・患者は成人例で24時間以上ICUに滞在する症例を対象
2010年4月~6月の3ヶ月間に入室した患者群でVAP発症率のBaselineを評価,
2011年4月~2012年12月に入室した患者で上記10項目に対する介入を施行.
両期間でのVAP発症率を比較した.
・VAPはXP, CTで肺炎像があり, ≥38度の発熱もしくはWBC≥12000, ≤4000を満たす患者で, 以下の1項目以上を満たす場合に定義
新規の膿性喀痰の出現/喀痰の性状の変化,
咳嗽/呼吸苦/頻脈,
肺炎を示唆する呼吸音の異常,
酸素化の増悪
・2nd肺炎は初期と異なる画像所見や初期と異なる細菌による肺炎, 臨床的改善を認めて2日以上開けて増悪する肺炎で定義
予防の10項目
介入前のこれら項目へのアドヒアランス
介入前後のVAP発症頻度
・介入後早期よりVAP頻度は低下している
介入後1年半経過したころから約数まで低下.
-------------------------
VAPを減らすための10か条(すべてが必要かどうかはわかりませんが)をしっかりとやることでVAPの頻度は長期的に半分にまで減らせる可能性がある.
こういうのをほぼ国全体でやれるのが正直スゴイなぁと思う.
日本とは仕組み自体が違うのだろうけども.
(Crit Care Med 2018; 46:181–188)
・VAP予防も10項目を行うように介入(7項目は必須, 3項目は強く推奨)した前後のVAP発症率を前向きに評価.
・患者は成人例で24時間以上ICUに滞在する症例を対象
2010年4月~6月の3ヶ月間に入室した患者群でVAP発症率のBaselineを評価,
2011年4月~2012年12月に入室した患者で上記10項目に対する介入を施行.
両期間でのVAP発症率を比較した.
・VAPはXP, CTで肺炎像があり, ≥38度の発熱もしくはWBC≥12000, ≤4000を満たす患者で, 以下の1項目以上を満たす場合に定義
新規の膿性喀痰の出現/喀痰の性状の変化,
咳嗽/呼吸苦/頻脈,
肺炎を示唆する呼吸音の異常,
酸素化の増悪
・2nd肺炎は初期と異なる画像所見や初期と異なる細菌による肺炎, 臨床的改善を認めて2日以上開けて増悪する肺炎で定義
予防の10項目
介入前のこれら項目へのアドヒアランス
介入前後のVAP発症頻度
・介入後早期よりVAP頻度は低下している
介入後1年半経過したころから約数まで低下.
-------------------------
VAPを減らすための10か条(すべてが必要かどうかはわかりませんが)をしっかりとやることでVAPの頻度は長期的に半分にまで減らせる可能性がある.
こういうのをほぼ国全体でやれるのが正直スゴイなぁと思う.
日本とは仕組み自体が違うのだろうけども.