また溺水後の合併症で最も多いものは肺炎.
溺水という状況の元, 起因菌にも注意が必要.
1997年のReviewより, 溺水後の肺炎の起因菌をリストアップ
(CID 1997;25:896-907)
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Organism 
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発症までの期間 
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淡水 
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海水 
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淀んだ水 
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備考 
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嫌気性 
Gram-negative  | 
 
Aeromonas spp 
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24hr以内 
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+++ 
 | 
 
+ 
 | 
 
+ 
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Aeromonas hydrophilaが最多 
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Burkholderia pseudomallei 
 | 
 
2wk以内 
 | 
 
++ 
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 | 
 
+ 
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北緯20度~南緯20度, 東南アジア 
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Chromobacterium violaceum 
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>1mo 
 | 
 
++ 
 | 
 | 
 
++ 
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熱帯地域, フロリダ 
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Francisella philomiragia 
 | 
 
5d以内 
 | 
 
? 
 | 
 
++ 
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海水で多い 
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Klebsiella pneumoniae 
 | 
 
4d以内 
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 | 
 
+ 
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 | 
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Legionella spp 
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4d以内, 6wkの報告 
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+ 
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Neisseria mucosa 
 | 
 
24hr以内 
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 | 
 
+ 
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 | 
 | 
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Pseudomonas aeruginosa 
 | 
 
5d以内 
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+ 
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? 
 | 
 
++ 
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Shewanella putrefaciens 
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4d以内 
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 | 
 
+ 
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海水中に常在 
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Vibrio spp 
 | 
 
4d以内 
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? 
 | 
 
+ 
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 | 
 
海水中に常在 
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|
| 
 
好気性 
Gram-positive  | 
 
Streptococcus pneumoniae 
 | 
 
24hr以内 
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++ 
 | 
 
+ 
 | 
 | 
 | 
| 
 
Staphylococcus aureus 
 | 
 
? 
 | 
 
? 
 | 
 
? 
 | 
 | 
 | 
|
| 
 
真菌 
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Aspergillus spp 
 | 
 
7d以内 
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? 
 | 
 
+ 
 | 
 
+ 
 | 
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Pseudallescheria boydii 
 | 
 
>1mo 
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? 
 | 
 
? 
 | 
 
+++ 
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・多いのはAeromonasで, しかも溺水後24時間以内に生じる急性の経過となる.
・原因菌により発症までのタイミングも様々. 時間が経って発症したものにも注意が必要.
最近のデータを見てみると
(淡水)
2002-2010年に溺水(淡水)でCPAとなった患者で, 気道内分泌物中の細菌を評価した報告
(Resuscitation83(2012)399–401)
・患者群データ
・気道・肺内分泌物を評価した21例中19例で細菌が検出
2001-2012年に溺水後(淡水)でICU入室した49例中, 18例で肺炎を発症.
(Intensive Care Med (2014) 40:290–291)
・肺炎は新規画像所見+気道内からの細菌の検出,
 炎症反応陽性, 喀痰の増量で定義.
・原因菌一覧: 
・最も多いのはAeromonasで他の報告と同様.
・次いでStaphylococcus aureus
補足: 近隣の運河, 湖, 水路からの培養
(海水)
2003-2013年に海水で溺水し, その後ICU入室した74例中, 早期に肺炎を合併したのは36例.
(Ann. Intensive Care (2017) 7:45 )
・24例より気道分泌物が採取され, 16例より原因菌が検出
検出された細菌
・グラム陰性菌が6割, 陽性菌が4割程度.
・Enterobacterや大腸菌, 肺炎球菌, 黄色ブドウ球菌が多い
・淡水で多いAeromonasは無し
・AMC(アモキシシリン/クラブラン酸)耐性は5/16
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・溺水後の肺炎では淡水ならばAeromonas + Pseudomonasカバーは重要
 海水では腸内細菌や特殊な菌を考慮する.
・溺水後すぐに発症するのはAeromonasや肺炎球菌を,
 すぐに発症しなくても, 数日経過して発症することもあり, 注意.
ところで, おそらく日本で最も多いであろう風呂溺水後の肺炎のデータは全くと言っていいほど見つけられなかった.
・残り湯, 水換えしていないお風呂, 24時間風呂, 毎日入れ直している風呂の水を培養し, その中に含まれる菌を評価する
・実際風呂溺水後の肺炎のデータを集める
というのは立派な臨床研究になりそうですし, 風呂溺水後の推奨抗菌薬を選択する意味でも重要なんだけども, 誰かやってくれませんか?





