日本国内の平成元年〜22年に報告された自然毒の中毒症頻度
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
全国どこでもあり, 家庭内での中毒が多い
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
中毒キノコの種類と件数
キノコ中毒による死亡例
・ドクツルタケ, シロタマゴテングタケ, タマゴタケモドキ, タマゴテングタケの毒成分はアマニタトキシンであり, 死亡例の大部分はAmatoxinが関連している
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キノコ中毒にはどのような症状パターンがあるのか?
28018例のキノコ中毒症例より摂取~発症までの時間と症状から中毒症状パターンを分類
(Crit Care Med 2005; 33:427–436)
・全部で14パターンあることが判明
早期発症(<6h)で8タイプ
晩期発症(6-24h)で3タイプ
遅発(≥1d)で3タイプ
早期発症タイプ: 摂取後6時間以内に症状が出現(主に消化管症状)
症状タイプ
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原因キノコ
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神経障害
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コリン作働性
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ヤブシメジ(Clitocybe spp.)
アセタケ類(Inocybe spp.) |
ムスカリンを多く含み, 末梢のコリン症状を呈する. 中枢移行はない. 唾液や流涙, 排尿の増加, 下痢, 嘔吐, 縮瞳, 気管分泌物の増加を認める. 対症療法で数時間で改善.
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グルタミン作働性
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ベニテングダケ(Amanita muscaria)
テングダケ(Amanita pantherina) |
含まれるイボテン酸が中枢のグルタミン受容体を刺激し, 過敏や興奮, ミオクローヌス, 痙攣を生じる(小児で多い)
ムシモールはGABA受容体を刺激し. ふらつきや傾眠, せん妄, ジストニア, 幻覚を呈する(成人で多い) |
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てんかん誘発性
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シャグマアミガサタケ属(Gyromitra spp.)
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摂取後4-6hで消化管症状と頭痛, 脱力を認める
神経症状では失調, 倦怠感, 眼振, 振戦, めまいがある. てんかん発作まで至るのは稀. 肝障害も認める |
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幻覚誘発性
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シビレタケ属(Psilocybe spp.)
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サイロシビンによるLSD様の幻覚症状を呈する.
失調, 幻覚, 過活動 |
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アレルギー性
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免疫溶血性
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ヒダハタケ(Paxillus involutus)
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摂取後30分-3時間で消化管症状を呈し, その後免疫複合体による溶血, 腎障害を呈する.
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肺臓炎
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ホコリタケ(Lycoperdon spp.)
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胞子の吸入によるアレルギー性の肺臓炎を呈する
摂取後早期に消化管症状. その後数日の経過で過敏性肺炎 |
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消化管障害
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ジスルフィラム反応
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ヒトヨタケ(Coprinus atramentarius)
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その他
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消化管症状のみ
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ヤマドリタケ(Boletus spp)
オオシロカラカサタケ(Chlorophyllum spp.) ハルシメジ(Entoloma spp.) |
晩期発症タイプ: 摂取後6-24時間で症状が出現するタイプ
症状タイプ
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原因キノコ
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肝障害
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Amatoxin
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テングタケ(Amanita)
ケコガサタケ属(Galerina spp.) キツネノカラカサ属(Lepiota spp.) |
Cyclopeptideによる中毒. Amatoxin, phallotoxin, virotoxinを含む
三相性の経過で, 摂取後6-24hで非特異的な消化管症状. 18-36hで一過性の改善を認め, 2-6日で急性肝不全を呈する.
キノコ毒で最も致死率が高い. 劇症肝炎となり肝移植を考慮することもある
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腎障害
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Amanita proxima
Amanita smithiana (テングタケ類) |
上記経過に腎不全も合併し, 透析を必要とする場合もある
肝障害よりも腎不全を主とする症例も報告されている |
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四端紅痛症
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Clitocybe acromelalga
Clitocybe amoenolens (ヤブシメジ類) |
キノコ毒による四端紅痛症がある. 摂取後1日以降で出現し, 8日〜5ヶ月で徐々に改善
日本からもヤブシメジ摂取後3日で四端紅痛症を発症した報告あり(Clitocybe acromelalga) |
・四端紅痛症もキノコ毒でありえる
遅発タイプ: 摂取後1日以降で症状が出現するタイプ
症状タイプ
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原因キノコ
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腎障害
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オレラニン
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フウセンタケ
(Cortinarius spp.) |
オレラニンは尿細管間質性腎炎を誘発する
摂取後24-36h(平均3日)で消化管症状を呈する 数日〜数週経過(平均8.5日)して間質性腎炎を発症し, 晩期では間質の線維化を生じる 大半が腎機能は改善するが, 透析となる例もあり |
横紋筋融解症
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キシメジ(Tricholama equestre)
ニセクロハツ(Russula subnigricans) |
摂取後24-72hで横紋筋融解症や筋痛, 筋脱力を認める. 近位筋での障害が多い
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神経障害
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タマチョレイタケ
(Hapalopilus nidulans) |
摂取後24時間以上経過して視力障害, 傾眠, 脱力. 筋緊張の低下を認め, 血液検査では電解質異常や肝障害, 腎障害を認める
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香港におけるキノコ中毒の解析
2005-2015年に中毒センターに報告された中毒症例
(Hong Kong Med J 2016;22:124–30 )
・67例報告され, 60例(90%)は消化管症状, 嘔吐, 下痢, 腹痛
・このうち53例は摂取後6時間未満の早期発症で, 対症療法で改善
・7例は6時間以降での晩期発症タイプで, 重症の経過をたどった.
・重症経過ではAmatoxinが関連.
・晩期発症タイプの大半がAmatoxin関連
死亡や肝移植例, ICU症例も晩期発症で多い
香港におけるキノコ中毒症候群のタイプ
・コリン作用, 消化管症状タイプ, 幻覚タイプ, Amatxinタイプの4タイプが主な中毒パターンであった.
(以下2019/12/2 Update)
これまでの分類でカバーできなかったキノコ中毒を大きくGroup 1-6に分類し,
鑑別アルゴリズムを作成した報告
(Toxicon 157 (2019) 53–65)
・分類は大きく,
Group 1: 細胞毒性. 1-1 肝障害, 1-2 腎障害
Group 2: 神経毒性
Group 3: 筋障害
Group 4: 代謝/内分泌障害
Group 5: 消化管
Group 6: 他. シイタケ皮膚炎, 四端紅痛症様, ヒダハタケ症候群, 脳症
それぞれの症状と時間経過
これらの症状や経過からの鑑別アルゴリズム
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ついでに, シイタケ皮膚炎のReviewより
(Int J Dermatol. 2017 Jun;56(6):610-616.)
シイタケ(Lentinula edodes)の細胞壁を構成するPolysaccharideであるLentinanに対する皮膚反応.
生焼けのシイタケを摂取することで稀に生じる.
・Systematic review(n=50)によると, 平均年齢は44.6歳[25-86]
・線状の鞭で打たれたような皮膚炎(98%)が特徴的.
丘疹や蕁麻疹が80%, 掻痒感を伴うのが78%
他には点状出血(14%), 紫斑(2%), プラーク(6%)
焼けるような痛み(2%), Blanching(2%), 膿疱(2%).
・全身症状は発熱(6%), 下痢(4%), 手の感覚低下(2%), Urticarial dermographism (2%), 口腔内, 粘膜潰瘍(4%), 嚥下障害(2%), 結膜炎(2%)
・摂取~発症まで42.4時間(範囲2-120時間)
・皮膚生検は非特異的な所見となる
・治療なしで12.5日間[7-28]で自然に改善
外用ステロイドでは11.2日間[2-35日],
全身ステロイドでは9.3日[7-14]
Group 1: 細胞毒性. 1-1 肝障害, 1-2 腎障害
Group 2: 神経毒性
Group 3: 筋障害
Group 4: 代謝/内分泌障害
Group 5: 消化管
Group 6: 他. シイタケ皮膚炎, 四端紅痛症様, ヒダハタケ症候群, 脳症
それぞれの症状と時間経過
これらの症状や経過からの鑑別アルゴリズム
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ついでに, シイタケ皮膚炎のReviewより
(Int J Dermatol. 2017 Jun;56(6):610-616.)
シイタケ(Lentinula edodes)の細胞壁を構成するPolysaccharideであるLentinanに対する皮膚反応.
生焼けのシイタケを摂取することで稀に生じる.
・Systematic review(n=50)によると, 平均年齢は44.6歳[25-86]
・線状の鞭で打たれたような皮膚炎(98%)が特徴的.
丘疹や蕁麻疹が80%, 掻痒感を伴うのが78%
他には点状出血(14%), 紫斑(2%), プラーク(6%)
焼けるような痛み(2%), Blanching(2%), 膿疱(2%).
・全身症状は発熱(6%), 下痢(4%), 手の感覚低下(2%), Urticarial dermographism (2%), 口腔内, 粘膜潰瘍(4%), 嚥下障害(2%), 結膜炎(2%)
・摂取~発症まで42.4時間(範囲2-120時間)
・皮膚生検は非特異的な所見となる
・治療なしで12.5日間[7-28]で自然に改善
外用ステロイドでは11.2日間[2-35日],
全身ステロイドでは9.3日[7-14]