1度AVBはPR間隔が0.2秒(大きいマス1つ分)以上で定義される
特にPR間隔が0.3秒以上となるものを”Marked ABV”と呼ぶ
・論文報告では稀ながら0.48秒や0.56秒に及ぶものもある.
・通常1度AVBは無症候で治療の必要もないが, Marked 1度AVBでは心房の収縮と心室の収縮がうまく連動しないため, ”ペースメーカー症候群” 様の症状を呈することがある
→ 偽性ペースメーカー症候群と呼ぶ.
左心機能が正常でも生じる
・ペースメーカー症候群とはVVIのペースメーカーを留置することで, 心房と心室の収縮に乖離が生じ, 心室→心房への逆流や, 心房→心室への血流低下を生じ, その結果心拍出量が低下. 呼吸苦や動悸, めまい, 倦怠感などを呈する.
*VVI: 心室刺激, 心室センス, 抑制モード
(Arch Cardiovasc Dis. 2013 Dec;106(12):690-3.)(BMC Research Notes 2014, 7:781 )
また, Marked 1度AVBでは心電図をフォローすると, Wenckebach型AVB, Mobitz II型AVB, III度AVBを移行したり, 1度AVBに戻ったり, ダイナミックに変化する例もある
(BMC Research Notes 2014, 7:781 )
Marked 1度AVB患者は安静時には無症候のことが多い.
・軽度~中等度の運動でPR間隔が短縮しない場合, P波(心房の収縮)が先行するQRS波(心室の収縮)に近づき, 偽性PM症候群となる.
・また, 著明なPR間隔延長が運動時にのみ出現することもある.
・したがってこのような患者ではトレッドミル負荷検査を考慮
心電図変化や症状の評価を行うべき.
(J Interv Card Electrophysiol (2006) 17:139–152 )
Marked 1度AVBで, 症状がある場合や心不全兆候を伴う場合はペースメーカー留置の適応となる(Class IIa)
・症例報告レベルであるが, このような患者においてPM留置することで症状の改善, 血流動態の改善が得られた報告が多い.
・無症候性の場合は経過観察.
(J Interv Card Electrophysiol (2006) 17:139–152 )
--------------------------------
・良性と言われる1度AVBでも症状を呈し, PM適応となるものもある.
・通常1度AVBではPR間隔は0.2をやや超える程度であるが, 1マス半(0.3秒)を超える場合は何かおかしいと思った方が良いかもしれない.