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2017年10月12日木曜日

結核と血清CA-125

CA-125(Cancer antigen 125)は卵管内皮細胞, 子宮内膜, 胸膜内皮細胞, 心外膜, 腹膜に発現するGlycoprotein.
・卵巣癌や肺癌, 乳癌, 大腸癌, 膵癌で上昇する一方,
 非腫瘍性疾患でも上昇する. 子宮内膜症, 肝硬変, 心不全など

血清CA-125は活動性結核でも上昇することが知られている

活動性の肺結核40, 非活動性の肺結核20, Control 36名で評価
(Respir Med. 2001 Aug;95(8):666-9.)
血清CA-125(U/mL); Baselineと治療開始後の評価

Group
Baseline
2mo
4mo
6mo
3yr
活動性肺結核
77.5[81.8-137.5]
28[27.4-48.1]
12[12.0-20.8]
8.8[8.5-13.5]
9.0[8.5-12.2]
非活動性肺結核
13.5[10.8-18.2]




健常人(Control)
10.0[8.1-13.9]




・活動性結核では有意にCA-125は高値となり, 治療により低下する結果.

活動性結核42, 非活動性結核35, 健常人20例においてCA-125を評価した報告
(Clin Invest Med 2012; 35 (4): E223-E228. )
・活動性結核では治療開始後もフォローした.
活動性結核(Group 1)は非活動性結核(Group 2), 健常人(Group 3)と比較して有意にCA-125は高値となる結果
・また, 治療後はCA-125は低下する.

64例の結核患者においてCA-125値をフォローした報告
(Jpn. J. Infect. Dis., 64, 367-372, 2011)
・肺結核が40, 胸膜炎が13, 心外膜炎8, 腹膜炎3
・肺結核の45%, 結核性漿膜炎の全例でCA-125は上昇.
結核性漿膜炎症例の方がCA-125は高値であった.

・また, 治療とともにCA-125は低下を認めた.

活動性肺結核 100例を前向きにフォローした報告
(Tuberculosis 93 (2013) 222e226 )
・CA-12538.9±41.4U/mL. 38%で上昇していた.
・CA-125上昇に関連する因子は女性, 喀痰抗酸菌染色陽性例肺空洞性病変, 広範囲の病変.

治療開始後は有意にCA-125は低下する

  • 韓国における結核性腹膜炎48例と卵巣癌370例で
  • 血清CA-125値を評価した報告
  • (Yonsei Med J 54(5):1241-1247, 2013 )
    結核性腹膜炎ではCA-1253桁程度
     1000U/mLを超える場合は卵巣癌の可能性が高い

    他の疾患ではCA-125はどうか?

    各肺疾患と血清CA 125の評価
    (Jpn J Infect Dis 2008;61:68-9)
    Group
    CA 125(U/mL)
    活動性肺結核(30)
    118.46(248.41)
    非活動性肺結核(37)
    40.80(50.95)
    , 胸膜悪性腫瘍(25)
    57.77(65.59)
    市中肺炎(28)
    47.76(60.76)
    COPD急性増悪(13)
    50.02(74.15)
    その他(13)
    76.45(54.46)
    ・他の胸部疾患でも上昇はするが, 活動性肺結核の方が上昇は高度となる.
    ・活動性肺結核35, 他の胸部疾患54名の評価ではCA 125>32.5U/mLSn 68.6%, Sp 77.8%肺結核を示唆する

    NTMにおけるCA-125はどうか?
    (Respirology (2010) 15, 357–360 )
    ・NTM症例 53例でCA-125を評価した報告
    28例の肺結核症例と比較した.
    ・両群でCA-125値は有意差なし
    ・また, NTMの臨床経過とCA-125の変動も一致する

    血清ではなく, 腹水, 胸水CA-125はなんでも上昇するため注意
    非癌性の胸水 38, 腹水 46例において胸水, 腹水CA-125を評価.
    ・胸水貯留はTB, 膿胸, 肝硬変, デング熱, 心拡大, 肺アメーバ
    ・腹水貯留は卵巣癌, 感染性, TB, アルコール性肝炎, 肝炎, 肝硬変, 腎不全等.
    CA-125はほぼ全例で上昇したとの結果(CA-125 >65U/mL)

    ・胸水, 腹水中CA-125の値.
     結核と感染症は高値となりやすい.
    ・CA-125を評価するならば血清にしておくべきで, 体液中のCA-125上昇には意義は乏しい
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    ・原因不明の腹水貯留でCA-125が上昇している場合, 卵巣癌が思い浮かぶと思いますが, 結核も合わせて想起したいところ.
    ・活動性結核と血清CA-125値には相関性があり, 治療により低下する
    ・特に結核性漿膜炎や, 肺結核でも喀痰抗酸菌染色陽性, 空洞性病変, 広範囲の病変ではCA-125は高値となりやすい
    ・結核ではCA-125が1000U/mLを超える場合もあることはあるが, 基本的に3桁程度までと考えるべき. 4桁行く場合はやはり癌を考えた方が良いかもしれない.

    ・また結核以外にもNTMでも上昇するし, 他の疾患でも上昇する可能性はあるため注意.
     子宮内膜症肝硬変心不全は有名. これらによる胸水貯留, 腹水貯留ではないかどうかは気にしておくべき.
    ・胸水, 腹水中のCA-125はなんでも上昇するため, 鑑別には役に立たない.