腎周囲の毛羽立ちがあるので(ないので)腎盂腎炎だと思います(ではないと思います)という会話は”残念”ながら周りでそれなりに聞く頻度が高い.
国内より, 急性腎盂腎炎 89例と, 腎生検を行う患者319例のCT所見を後ろ向きに評価し, 腎周囲脂肪織混濁(毛羽立ち所見)の腎盂腎炎への有用性を評価した報告.
(International Journal of General Medicine 2017:10 137–144 )
・全患者での評価では, 腎周囲の毛羽立ち所見は感度72%[61-81], 特異度 71%[66-76]で急性腎盂腎炎を示唆する所見.
LR 2.5[2.0-3.1]と結構微妙な所見.
・また高齢者, 男性, 腎機能低下があると偽陽性が上昇
・これら要素, 背景をpropensity score matched analysisで評価すると,
感度 72%[61-81], 特異度 58%[48-69]となる
韓国において, 女性の急性腎盂腎炎 125例のCT所見を評価
(Korean J Urol 2014;55:482-486)
・平均年齢は42.8歳±13.5と若い.
・CT所見で最も多いのは腎周囲脂肪織混濁の55%
所見の有無別の差: 腎周囲脂肪織混濁は, より炎症反応が高く, 膿尿も高度な患者で多い
----------------------------------
FBで知った論文です.
個人的にはアテしていません. やはり経過, CVA叩打痛, そして尿検査で十分で, 尿路閉塞や膿瘍を評価するにはエコーで十分.
むしろ毛羽立ちの偽陽性で色々議論が飛んでいるのを見ているとイライラします.
敗血症で全身血管透過性が亢進している場合や, AKIでは結構偽陽性となります.
その場合は両側性となるので, 両側性のこの所見をみたらまずそっちを疑います.
そもそも両側性の腎盂腎炎って非常に稀ですから
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
ページ
▼
2017年7月30日日曜日
2017年7月27日木曜日
巨細胞性動脈炎(GCA)に対するトリシズマブ(アクテムラ®)
新規発症, 再燃例のGCA 30例において, Tocilizumab(8mg/kg) 4wk毎投与, 52wk継続群 vs Placebo群に割り付け比較したRCT (Phase 2)
(Lancet 2016; 387: 1921–27)
・患者は50歳以上でACRの1990年の診断基準を満たす群
・両群ともPSLを併用 (PSL 1mg/kg/dより開始し, 通常通りTapering)
8週までは0.1mg/kg/週で減量, その後0.05mg/kg/週で減量し, 12週で0.1mg/kg/dまで減量. 以後は1mg/月で減量する.
・アウトカムは12wk以内の寛解率(PSL 0.1mg/kg/dまで減量できた患者で定義)
・Tocilizumab + PSL群は20例(うち16例が新規発症)
Placebo + PSL群は10例(うち7例が新規発症)
母集団データ
アウトカム:
・CRは有意にTocilizumab群で良好.
・Tocilizumab群では8割がPSLを終了可能. 一方でPSL単独群では2割のみ
・Tocilizumab終了後は再燃リスクは上昇.
GiACTA trial: GCAに対するTocilizumabを評価したPhase 3 trial
(N Engl J Med 2017;377:317-28.)
・GCA患者(側頭動脈生検, 血管造影, CTA, MRA, PETで診断) 251例を対象とし,
・Tocilizumab 162mg/wk + PSL 26wkで減量群
・Tocilizumab 162mg/2wk + PSL 26wkで減量群
・Placebo + PSL 26wkで減量群
・Placebo + PSL 52wkで減量群 に割付け, 1年後の寛解率を比較.
・PSLは初回投与量20-60mg/dとし, ≥20mg/dの投与量はopen-label.
それ以下ではBlindとし, 減量を進める.
・再燃の定義は症状の再増悪, もしくはESRが≥30mmHgとなり, GCA以外の原因が否定されること.
・寛解は再燃を満たさず, さらにCRP<1mg/dLを満たすことで定義
母集団
アウトカム
・52wk時点での寛解維持率はTocilizumab投与群で53-56%とPlaceboと比較して有意に高い
・PSL投与量もTocilizumab投与群では有意に低く, ほぼ予定通りに減量もできる
副作用, 合併症
--------------
現時点ではGCAの治療はPSLが基本で, MTXの併用で再燃リスクを軽減可能、という認識.
bDMARDとくにインフリキシマブは "no benefit"とされている.
MTXでもコントロール困難な場合の選択肢としてトシリツマブ(IL-6モノクローナル抗体)は有効な選択肢と言える.
(Lancet 2016; 387: 1921–27)
・患者は50歳以上でACRの1990年の診断基準を満たす群
・両群ともPSLを併用 (PSL 1mg/kg/dより開始し, 通常通りTapering)
8週までは0.1mg/kg/週で減量, その後0.05mg/kg/週で減量し, 12週で0.1mg/kg/dまで減量. 以後は1mg/月で減量する.
・アウトカムは12wk以内の寛解率(PSL 0.1mg/kg/dまで減量できた患者で定義)
・Tocilizumab + PSL群は20例(うち16例が新規発症)
Placebo + PSL群は10例(うち7例が新規発症)
母集団データ
・Tocilizumab群では8割がPSLを終了可能. 一方でPSL単独群では2割のみ
・Tocilizumab終了後は再燃リスクは上昇.
GiACTA trial: GCAに対するTocilizumabを評価したPhase 3 trial
(N Engl J Med 2017;377:317-28.)
・GCA患者(側頭動脈生検, 血管造影, CTA, MRA, PETで診断) 251例を対象とし,
・Tocilizumab 162mg/wk + PSL 26wkで減量群
・Tocilizumab 162mg/2wk + PSL 26wkで減量群
・Placebo + PSL 26wkで減量群
・Placebo + PSL 52wkで減量群 に割付け, 1年後の寛解率を比較.
・PSLは初回投与量20-60mg/dとし, ≥20mg/dの投与量はopen-label.
それ以下ではBlindとし, 減量を進める.
・再燃の定義は症状の再増悪, もしくはESRが≥30mmHgとなり, GCA以外の原因が否定されること.
・寛解は再燃を満たさず, さらにCRP<1mg/dLを満たすことで定義
母集団
・52wk時点での寛解維持率はTocilizumab投与群で53-56%とPlaceboと比較して有意に高い
・PSL投与量もTocilizumab投与群では有意に低く, ほぼ予定通りに減量もできる
・Placebo群では予定通りの減量は困難といえる.
副作用, 合併症
--------------
現時点ではGCAの治療はPSLが基本で, MTXの併用で再燃リスクを軽減可能、という認識.
bDMARDとくにインフリキシマブは "no benefit"とされている.
MTXでもコントロール困難な場合の選択肢としてトシリツマブ(IL-6モノクローナル抗体)は有効な選択肢と言える.
2017年7月25日火曜日
起立時のバイタルサインの変化は1分以内に行う
失神や起立時のふらつきの評価では起立時のバイタルサイン評価を行う.
方法は 10-20分程度臥位で安静とし, 起立させて3分後に評価する方法がガイドラインでも推奨されている方法であるが, どのタイミングで評価するのがよいのか?
・ARIC: 米国の4地域において, 1987年-1989年に45-64歳であった15792例を前向きにフォローした報告.
・起立時のバイタルサインは20分間の安静臥位とし, 起立後25秒間隔で5回測定.
・起立性低血圧はsBP 20mmHg, dBP 10mmHg以上の低下で定義
・どの時点での評価が最もイベント, 予後との相関性があるかを評価した
母集団
起立時のふらつき症状の頻度とバイタルサインの変化
測定タイミング:
1: 28±5.4秒
2: 52.6±7.5秒
3: 75.4±9.1秒
4: 100±10.4秒
5: 115±4.6秒
・起立時のふらつき症状は, 起立直後(25秒程度)の血圧低下所見との相関性が最も高い.
他の症状: 転倒, 骨折, 失神, 交通外傷, 死亡
・転倒や骨折, 失神, 交通外傷との相関性が高いのは起立後〜1分前後のバイタル変化と言える.
・2分に近くなると転倒や骨折, 交通外傷は有意差はなくなる.
-----------------------------------
起立時のバイタル変化は3分待つ必要はなく, 起立直後から数回測定する方が時間の節約, 且つ病態把握に有用な可能性はある.
ただし, 遅延型起立性低血圧の場合は3分以上は評価必要なのは注意
方法は 10-20分程度臥位で安静とし, 起立させて3分後に評価する方法がガイドラインでも推奨されている方法であるが, どのタイミングで評価するのがよいのか?
Association of History of Dizziness and Long-term Adverse Outcomes With Early vs Later Orthostatic Hypotension Assessment Times in Middle-aged Adults. JAMA Intern Med
ARIC study(The Atherosclerosis Risk in Communities)において, 起立時のバイタルサイン変化とその後のフォローにおける起立時ふらつき, 失神などのイベント発症リスクを評価・ARIC: 米国の4地域において, 1987年-1989年に45-64歳であった15792例を前向きにフォローした報告.
・起立時のバイタルサインは20分間の安静臥位とし, 起立後25秒間隔で5回測定.
・起立性低血圧はsBP 20mmHg, dBP 10mmHg以上の低下で定義
・どの時点での評価が最もイベント, 予後との相関性があるかを評価した
母集団
起立時のふらつき症状の頻度とバイタルサインの変化
測定タイミング:
1: 28±5.4秒
2: 52.6±7.5秒
3: 75.4±9.1秒
4: 100±10.4秒
5: 115±4.6秒
・起立時のふらつき症状は, 起立直後(25秒程度)の血圧低下所見との相関性が最も高い.
他の症状: 転倒, 骨折, 失神, 交通外傷, 死亡
・転倒や骨折, 失神, 交通外傷との相関性が高いのは起立後〜1分前後のバイタル変化と言える.
・2分に近くなると転倒や骨折, 交通外傷は有意差はなくなる.
-----------------------------------
起立時のバイタル変化は3分待つ必要はなく, 起立直後から数回測定する方が時間の節約, 且つ病態把握に有用な可能性はある.
ただし, 遅延型起立性低血圧の場合は3分以上は評価必要なのは注意
側頭動脈炎, GCAで認める頭痛
GCA, 側頭動脈炎では頭痛を伴うことは有名.
・初発症状として頭痛を認めるのは32%, 全経過を通じて68%で頭痛を認める.
(CMAJ 2011;183:E301-5)
・他の報告では初発症状として35%, 全体で73%で認める報告もあり, 大体この辺りの数字
(Curr Neurol Neurosci Rep (2015) 15: 30 )
どのような頭痛となるか?
日本国内からの報告.
頭痛外来を受診し, GCAと診断された19例の解析
(Intern Med 50: 1679-1682, 2011)
・男性9例, 女性10例, 発症年齢は78.1±4.8歳.
19例中17例が他病院の受診歴があるが, 2例しかGCAの診断には至らなかった
・初発症状は頭痛が89.5%, 耳痛が5.3%, 下顎痛が5.3%
・頭痛の部位は側頭部が12例(63.2%), 後頭部が2例(10.5%), 前頭部が2例, びまん性が1例(5.3%)
・拍動性頭痛が10例(52.6%), 9例は非拍動性
・頭痛の程度は重度が8例(42.1%), 中等度が7例(36.8%), 軽度が4例(21.1%)
・持続性の頭痛が11例(57.9%), 発作性の頭痛が8例(42.1%)
・他の症状: 全身倦怠感10例, 発熱5例, 体重減少3例, 眼症状は2例で認められた.
顎跛行は3例, PMRの合併も3例, 三叉神経麻痺も1例で合併
・18例が側頭動脈の圧痛(+), 10例で側頭動脈の突出や拡大, 8例で拍動の消失, 低下を認めた.
GCA 240例の臨床症状, 所見を評価.
スペインの単一施設において, 1981-2004年に生検にて診断されたGCA症例
(Medicine 2005;84:269–276)
・側頭動脈生検で診断された症例 = 側頭動脈病変陽性例.
・上記のうち頭痛を認めたのは84.6%.
・頭痛(+)群では側頭動脈の異常所見が80%で認められる.
・側頭骨の圧痛は4割程度
・38度以上の発熱は8.9%のみと少ない
------------------------------
側頭動脈炎, GCAで認められる頭痛は緊張型, 片頭痛型で, 頭痛のタイプ, 部位, 程度は様々で固定されたものはなさそう.
症例報告レベルではTAC様の頭痛を呈する例も報告されている.
発熱や消耗症状もそこまで多く認めるわけではなく, 高齢者の新規発症の頭痛では側頭動脈の診察, 側頭骨の圧痛は意識して, しっかりと評価する方が良い.
・初発症状として頭痛を認めるのは32%, 全経過を通じて68%で頭痛を認める.
(CMAJ 2011;183:E301-5)
・他の報告では初発症状として35%, 全体で73%で認める報告もあり, 大体この辺りの数字
(Curr Neurol Neurosci Rep (2015) 15: 30 )
どのような頭痛となるか?
日本国内からの報告.
頭痛外来を受診し, GCAと診断された19例の解析
(Intern Med 50: 1679-1682, 2011)
・男性9例, 女性10例, 発症年齢は78.1±4.8歳.
19例中17例が他病院の受診歴があるが, 2例しかGCAの診断には至らなかった
・初発症状は頭痛が89.5%, 耳痛が5.3%, 下顎痛が5.3%
・頭痛の部位は側頭部が12例(63.2%), 後頭部が2例(10.5%), 前頭部が2例, びまん性が1例(5.3%)
・拍動性頭痛が10例(52.6%), 9例は非拍動性
・頭痛の程度は重度が8例(42.1%), 中等度が7例(36.8%), 軽度が4例(21.1%)
・持続性の頭痛が11例(57.9%), 発作性の頭痛が8例(42.1%)
・他の症状: 全身倦怠感10例, 発熱5例, 体重減少3例, 眼症状は2例で認められた.
顎跛行は3例, PMRの合併も3例, 三叉神経麻痺も1例で合併
・18例が側頭動脈の圧痛(+), 10例で側頭動脈の突出や拡大, 8例で拍動の消失, 低下を認めた.
GCA 240例の臨床症状, 所見を評価.
スペインの単一施設において, 1981-2004年に生検にて診断されたGCA症例
(Medicine 2005;84:269–276)
・側頭動脈生検で診断された症例 = 側頭動脈病変陽性例.
・上記のうち頭痛を認めたのは84.6%.
・頭痛(+)群では側頭動脈の異常所見が80%で認められる.
・側頭骨の圧痛は4割程度
・38度以上の発熱は8.9%のみと少ない
------------------------------
側頭動脈炎, GCAで認められる頭痛は緊張型, 片頭痛型で, 頭痛のタイプ, 部位, 程度は様々で固定されたものはなさそう.
症例報告レベルではTAC様の頭痛を呈する例も報告されている.
発熱や消耗症状もそこまで多く認めるわけではなく, 高齢者の新規発症の頭痛では側頭動脈の診察, 側頭骨の圧痛は意識して, しっかりと評価する方が良い.
2017年7月21日金曜日
手術部位感染症予防の抗菌薬はどのタイミングで投与するか
手術部感染: SSI
SSIは院内感染症の21.8%を占め, 予後の増悪, 入院期間の増加や医療コスト増大につながる
・術前に抗生剤の予防投与を行うことで, 感染リスク軽減効果があるが, 具体的にどのタイミングで投与するかは議論があるところ.
・術前60-120分以内に投与すべきとの推奨が多い.
SSIの予防的抗生剤投与のタイミングと感染リスクを評価した14 trialsのMeta-analysis. N=54552.
(Medicine (2017) 96:29(e6903))
・RCTはなく, Observational studyのみ.
アウトカム:
・術開始後投与 vs 術前投与: OR 1.89[1.05-3.40], NNT 40
・術前>120min投与 vs 術前<120min投与: OR 5.26[3.29-8.39], NNT 4
・術前 60-120min投与 vs 術前 0-60min投与: OR 1.22[0.92-1.61]
・術前 30-60min投与 vs 術前 0-30min投与: OR 1.07[0.53-2.17]
--------------------------------
予防的抗菌薬投与は術前 120分以内に投与するのがベスト.
内科医, 救急医としてはERに来た緊急手術が必要な患者で, 救急室で投与開始しておくことが優しさか. 理解してくれないかもしれないけども.
SSIは院内感染症の21.8%を占め, 予後の増悪, 入院期間の増加や医療コスト増大につながる
・術前に抗生剤の予防投与を行うことで, 感染リスク軽減効果があるが, 具体的にどのタイミングで投与するかは議論があるところ.
・術前60-120分以内に投与すべきとの推奨が多い.
SSIの予防的抗生剤投与のタイミングと感染リスクを評価した14 trialsのMeta-analysis. N=54552.
(Medicine (2017) 96:29(e6903))
・RCTはなく, Observational studyのみ.
アウトカム:
・術開始後投与 vs 術前投与: OR 1.89[1.05-3.40], NNT 40
・術前>120min投与 vs 術前<120min投与: OR 5.26[3.29-8.39], NNT 4
・術前 60-120min投与 vs 術前 0-60min投与: OR 1.22[0.92-1.61]
・術前 30-60min投与 vs 術前 0-30min投与: OR 1.07[0.53-2.17]
--------------------------------
予防的抗菌薬投与は術前 120分以内に投与するのがベスト.
内科医, 救急医としてはERに来た緊急手術が必要な患者で, 救急室で投与開始しておくことが優しさか. 理解してくれないかもしれないけども.