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2017年4月29日土曜日

術前のステロイド投与は術後の嘔吐を減らす

術後の嘔吐, 嘔気(Postoperative nausea and vomiting)は腸管手術における最も多い合併症の1つで, 30%程度で認める

DREAMS trial: 腹腔鏡, 開腹で腸管の手術を行う患者1350例を対象としたRCT.
(BMJ 2017;357:j1455)
対象は18歳以上で待機的腹腔鏡, 開腹手術を予定している患者.
 悪性疾患, 良性疾患は問わず.
妊婦, 腸管閉塞, DM, 緑内障, 活動性胃潰瘍, ステロイド使用患者は除外

麻酔導入時にDexamethasone 8mg IV追加群 vs 通常の管理群に割付け, 術後の嘔吐, 制吐剤使用頻度を比較.
麻酔科医師は割付けがわかっているが, 術後管理スタッフ, 患者本人はBlindされている.

母集団データ

処置内容


アウトカム

・24時間以内のPONVは有意にDexamethasone群で少ない結果.
 ARD -4%, NNT 25
・24時間以内に食事+水分が摂取できる患者も有意に増加する
・制吐剤使用頻度も低下.


・72時間, 120時間での評価では特に差はない.
・また, ステロイドによる副作用や合併症は特に認められず.


2017年4月27日木曜日

脊椎関節炎におけるHLA型

脊椎関節炎, 血清陰性関節炎ではHLA-B27との関連性が高く, 診断基準にも含まれている.

白人における疾患とHLA-B27保有率は以下のとおり
(Ann Intern Med 2002;136:896-907)
Disease
HLA-B27保有率
Ankylosing Spondylitis
90%
Reactive Arthritis
40-80%
Juvenile Spondyloarthropathy
70%
Enteropathic(IBD)
35-75%
Psoriatic
40-50%
その他 分類不能
70%
急性前眼房性ぶどう膜炎
50%
A弁閉鎖不全 + ブロック
80%

HLA-B27保有者の中で, 発症するのは10%のみであり, スクリーニングは必要なし
家族内で発症者(+) + 本人のHLA-B27(+) 発症率は30%

地域別のHLA-B27保有率は以下のとおり
(Current Opinion in Rheumatology 2001;13:285-90)
地域
HLA-B27保有率
SpA有病率
白人
10%
0.1-0.9%
インドネシア
10%

中国
8%
0.2%
日本
1%
0.01%
・日本人におけるHLA-B27保有率1%に満たず, したがって脊椎関節炎の頻度も低い.

上記のHLA-B27以外に関連するものはあるか?

HLA-B27と交叉反応を示すタイプにHLA-B7, B22, B39, B40, B42, B60があり, これらも脊椎関節炎発症と関連性があると指摘されている (Modern Physician 2010;30:1525-28).

日本国内の症例におけるHLAタイプ
(J Orthop Sci (2015) 20:1070–1077)
・ばらつきはあるが, これらタイプも関連性がある可能性.

インドにおけるHLA-B27陰性SpA症例100例の解析
(Hindawi Publishing Corporation Autoimmune Diseases Volume 2014, Article ID 327315)
・HLA-B7は有意にSpAリスクとなるタイプ
HLA-B40はリスク減少

コロンビアにおける健常人100例とSpA 178例の解析では, SpAに関連するHLA型はHLA-B27B15のみ.
(BMJ Open 2015;5:e009092.)
・HLA-B2770, HLA-B1534例で認められた.

・HLA-B15とHLA-B27は脊椎関節炎のリスク因子となる


HLA-B27陽性例と陰性例で差はあるか?
708例の炎症性背部痛(654例で1つ以上のSpAクライテリアを満たした)症例において, HLA-B27陽性群, 陰性群を比較
・患者は18-50歳で, 3ヶ月以上, 3年未満の炎症性背部痛を認め, SpAを示唆する症状を有する群を対象
HLA-B27陽性例は61.5%で認められた.

両群の比較

・HLA-B27陽性例では男性が占める割合が高い(51.2% vs 37.4)
またHLA-B27陽性率は若年発症ほど高い

陽性例の方がMRIにおける関節炎症所見が高度となる


2017年4月18日火曜日

ステロイド+LABAの吸入はARDSを予防する可能性

アメリカの5施設におけるDB-RCT.
(Crit Care Med 2017; 45:798–805)
・ERより入院した, ARDS発症リスクがある患者 61例を対象.
エアロゾル化したBudesonide/formoterol vs Placebo群に割付け吸入療法を併用. 5日間継続.
・投与量はBudesonide 0.5mg/2mL, Formoterol 20µg/2mL12, 5日間
 参考: Budesonideはパルミコート吸入液® 0.5mg
  Formoterolはオーキシス® 9µg
  Budsonide/Formoterol合剤のシムビコートは1吸入あたり160µg/4.5µg

・アウトカムはS/F (SpO2/FiO2)の変動を比較.

・ARDSリスクは以下の1つ以上を満たす場合で定義:
 LIPS ≥4, 
 急性の呼吸不全でSpO2 92-98%を保つために2L/分以上の酸素投与が必要となる患者.

・ICS/LABAを使用している患者(7日以内), 適応となる疾患がある患者不整脈など禁忌である患者, ステロイド使用中の患者は除外

母集団

・Control群ではショックが有意に多い.
来院~吸入までは9時間以内

アウトカム

・ICS, LABA吸入群では有意にS/Fが高値となる
ARDS以降例は0 vs 7
・人工呼吸器使用率は 21% vs 53%

・サブグループ解析でもステロイド+LABA吸入群では酸素化増悪の予防効果, ARDS進行予防効果が期待できる

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小規模のPhase II studyで, 今後大規模Studyが組まれると思いますが, 興味深い結果です.
期待して結果を待ちたいと思います.

気管挿管したくない人で, ギリギリの呼吸状態だなぁ、と思うような場合に試してみよう

2017年4月14日金曜日

COPDでも呼吸機能検査は重要

Primary care physicianによる問診, 身体所見からの印象とスパイロメトリー結果の相関性を評価.
(The American Journal of Medicine (2015) 128, 629-637)
・COPD1年以上前に診断された患者群をCOPDを診療しているPrimary care physicianが評価しCOPDの重症度, FEV1を予測
実際の値との相関性を評価した.
実際のFEV1, 重症度は30%で一致, 41%でより軽症と判断していた.

カナダ, オンタリオで2005-2012年に診断されたCOPD 68898例の解析では, 診断前に呼吸機能検査をされていたのは41.2%.
(CMAJ 2017 April 10;189:E530-8.)
・患者は43歳以上で, 医師によりCOPDと診断された患者群
・COPDは以下を満たす場合に診断し, 呼吸機能検査の有無を問わない.
 35歳以上で, 過去2年以内にCOPDに由来する入院を1回以上か, COPDによる救急受診を3回以上している患者で定義.
・この定義では特異度95%, PPV 81%COPDを示唆する
・上記を満たす 68898例中, 診断前に呼吸機能検査をされていたのは41.2%

母集団:

アウトカム

呼吸機能検査施行群の方がより入院や死亡リスクが低い結果

特に3回以上の救急受診患者群において, 呼吸機能検査による予後改善効果が期待できる

治療内容の比較では,
・呼吸機能検査を行なった方が, より長期作用型気管支拡張薬の使用が多い
・呼吸機能検査を行わない場合, 軽症に見積もる可能性がある?
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COPDを臨床所見や病歴のみで診断する場合, 軽症に見積もり, その場合投薬が不十分で予後増悪につながる可能性がある.
やはり客観的に呼吸機能検査も併用し, 治療方針を組み立てるべきなのだろう.