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2017年1月5日木曜日

黄色ブドウ球菌が尿培養より生えたら?

通常S aureus(SA)は尿路感染を来すことは稀. 複雑性尿路感染症の原因菌では0.9-2.0%程度の頻度
(J of Infect Dis 2001;183:S5-8)


基本的に, 尿培養よりSAが検出された場合, コンタミ, 常在, 長期間の抗生剤などの影響を考慮する. 
そして, 菌血症に合併するSA尿症というのも考慮する.
それらが否定されればUTIの可能性を考える.

尿培養よりSAが検出された場合, SA菌血症を合併している可能性は1割程度

尿倍陽にてS aureusが検出された男性患者102名のCohort Study
(CID 2006;42:46-50)
・平均 72.8yr, 70%が施設入所者, 86%がMRSA, 82%がUrinary Catheterを使用
尿培S aureus陽性時, 33%がUTIの診断Criteriaを満たした.
13%が血培よりS aureus陽性.

尿培養よりMSSAが検出された106例のReview
(Journal of Infection (2009) 58, 119e122)
・尿培養よりMSSAが検出されたのは全体の0.18%とまれ.
・尿道バルーン留置されていたのは44%であった.
・12%はMSSA菌血症も合併.


SA菌血症患者において, UTIではなくても, 尿培養からもSAが検出されるのは1-2割.

59名のSA菌血症患者の尿培養をCheckすると,
(Am J Med. 1978 Aug;65(2):303-6.)
・27%(16名)で尿からもSAが検出.
・その内UTI症状を認めたのは6名のみ. → 10名(17%は尿への漏出?)
・他の病院では, SA菌血症中7%で尿からSAが検出.
・SA感染性心内膜炎の13%で尿からSAが検出されている.

カテーテル挿入患者を除くSA菌血症128名中,
(J Infect. 2009 Jul;59(1):37-41.)
尿からSAが検出されてのは19.5%.
・リスクは尿路手術, 閉塞, 市中SA感染症, 化膿性脊椎炎の3項目であった.

UTI症状, 所見の無いSA菌血症患者153名のRetrospective cohort
(Clinical Infectious Diseases 2007;44:1457–9)
・12名(7.8%)で尿培養よりSA検出.
・ただし, 10名は尿カテ挿入中であり, 尿カテ(-) UTI症状(-)患者群で評価すると2/79(2.5%)のみと低頻度であった.

アイスランドにおいて, 2003-2008年に報告された成人のS. aureus菌血症 166例の報告
(Journal of Infection (2012) 64, 41e46 )
・同時に尿培養からS. aureusが認められたのは16.3%(27例)
・S. aureusによるUTIを除いた152例では, 10.5%(16例)で尿培養も陽性.


S. aureus菌血症において, 尿培養も陽性であることは, 有意なIE, 複雑性SAB, ICU管理リスクとなる(尿路感染症を除く)


SA菌血症 + SA尿症の合併は予後不良因子となる
Retrospective Studyでは, SA血症+尿症の合併では
(J Hosp Infect. 2008 Aug;69(4):345-9)
ICU入室 RR 2.5[1.06-4.36]
・院内死亡 RR 2.18[1.05-3.57] と予後不良因子となる.

SA血症(+)患者で尿からも検出された群 vs 不検出群で比較したCase-control study
(BMC Infectious Diseases 2010, 10:225)
・尿培養よりSAが陽性は有意な死亡リスク因子.

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UTIにおいて, S. aureusは起因菌としては稀(1-2%)程度であり, 特に施設入所者やバルーンカテーテル挿入患者で多い.

発熱ワークアップにおいて、
・尿グラム染色でGPC cluster, 培養でSA+の場合はSAによるUTIよりもSA菌血症による二次性を念頭におく
・他に他菌によるフォーカスがある場合はおそらくコンタミ or 保菌。
・他にフォーカスなく、UTIで矛盾しない症状, 所見がある場合、除外診断的にSAによるUTIと診断する. ただし腎臓へのSeptic emboliの関連は念頭に置くべし