シェーグレン症候群の診断はAECGやACRクライテリア, 国内では厚生労働省の診断基準などがある.
詳しくはココを参照
診断に用いる症状, 所見はどの基準も重なっているが, 一部異なるところもある.
ACR/EULAR criteria 2016にて新たな診断スコアが提唱されたため, 紹介.
(Ann Rheum Dis 2017;76:9– 16. )
AECG, ACR criteriaより診断に有用な項目を抽出し, 専門家による重みづけ(MCDA)を経て項目を絞り, Development cohort, validation cohortにて各項目の有用性を評価
Development, validation cohortは以下の3つ前向きCohortを使用
・SICCA cohort(N=3514), Paris-Sud cohort(N=1011), OMRF cohort(N=837).
これらはpSSを疑う症状を持つ患者群を対象としたもの.
MCDAによる各項目の評価
診断に重要な項目として以下の5項目が抽出された,
・リンパ球性唾液腺炎(Focus score ≥1foci/4mm2): 3点
・抗SSA/SSB抗体陽性: 3点
・OSS≥5(van Bijsterveld ≥4): 1点
・シルマー試験 ≤5mm/5min: 1点
・非刺激唾液分泌 ≤0.1mL/min: 1点
補足: OSS, van Bijsterveld
(Ann Rheum Dis 2014;73:31–38.)
スコアのカットオフと感度, 特異度
・Criteria 4点以上では感度96%, 特異度89%,
5点以上では感度80%, 特異度98%でpSSを示唆する結果.
ちなみに厚生労働省の診断基準は以下の通り
・組織所見は同じ.
・口腔所見では唾液腺造影が含まれている.
唾液分泌量はガムテストやサクソンテストで評価している点が異なる
・眼所見ではシルマー試験のカットオフは同じであるが, van Bijsterveld scoreのカットオフが異なる(≥3点と≥4点). またシルマー試験のみではなく, 組み合わせでの判断のため, ACR/EULAR 2016よりも判定が厳しい。
・血清学的検査は同じ
これらの基準の1-4のうち2項目以上満たす場合に診断されるため, [1 and/or 4] + [2 and/or 3]の組み合わせと考えるとACR/EULAR 2016とほぼ同じ.
2+3のみだと2点であるため, ACR/EULAR 2016では満たさないことになる.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2017年1月30日月曜日
2017年1月28日土曜日
CPA蘇生後の低体温の体温目標値は36度でOK
心肺蘇生後(Vf,VTのby standarあり)では低体温療法をおこなった方が神経機能予後改善効果, 死亡率低下効果を認めるとの報告が 2002年のNEJMで報告(NEJM 2002;346:549-56)
院内CPA症例26183例の後ろむきCohortにおいて, 低体温療法を施行した患者群と, Propensity scoreを合わせて抽出した患者群で予後を比較した報告では, 低体温療法を行わない方が予後が良い結果であった.
(JAMA. 2016;316(13):1375-1382. )
・低体温療法施行したのは1568例, そのうち1524例と, Control群3714例を比較.
目標体温として, 36度台(Normothermia)群と33度(Hypothermia)を比較した2つのRCT
TTM trial; 心臓由来と思われる院外CPA症例で自己心拍再開した950例を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2013;369:2197-206.)
蘇生後の低体温療法において, 目標体温を33度とする群 vs 36度とする群に割り付け, 予後を比較.
蘇生後の低体温療法において, 目標体温を33度とする群 vs 36度とする群に割り付け, 予後を比較.
患者は≥18yで院外CPA蘇生後の患者. 入院時のGCS <8を満たす群. CPAは心原性と推定されるCPAで, 初期波形は問わない.
除外項目は, 蘇生〜割り付け時まで240分以上経過した例, 目撃例のないAsystoleのCPA, 頭蓋内出血やStrokeが疑われる例, 最初から体温が30度以下の例
低体温は28時間維持し, その後徐々に復温し, 最終的に36時間で中断するレジメ.
初期波形は,
VFが74-77%,
脈無しVTが3-5%,
Asystoleが12%,
PEAが6-8%
VFが74-77%,
脈無しVTが3-5%,
Asystoleが12%,
PEAが6-8%
両群の体温の推移
アウトカム;
両群で死亡率や, 180日後の神経予後は有意差無し.
神経スコアの分布も両群で有意差無しという結論.
THAPCA trial: 院内CPAとなった小児症例(48h-18y)を対象としたRCT.
(N Engl J Med 2017;376:318-29.)
・蘇生後 低体温療法施行群(33度) vs 正常体温維持群(36.8度)に割り付け, 予後を比較.
・患者は48h-18yの小児で院内CPAとなり2分以内に蘇生が開始され, 蘇生後人工呼吸器管理となった群.
・除外項目はGCSのM 5-6, 蘇生後6h以内に割り付けできない患者, 活動性, 難治性の出血, もともと余命12ヶ月未満, 侵襲的治療を希望されない患者.
・33度群では, 33度[32-34]を48h継続し, その後16hかけて復温. 36.8度[26.0-37.5]で合計120時間維持.
36.8度群では, この体温を120時間維持する.
StudyはN=329の時点で低体温療法が無益であることが指摘され中断となった.
母集団
・波形は小児例であり, VF, VTは少なく10%のみ.
徐脈, PEAが多い
アウトカム
・神経予後, 生命予後は両者で有意差はない
-----------------------------------
・蘇生後の低体温療法有用性は懐疑的となってきている.
・また, 行うならば33度とする必要性は乏しく, 正常体温を保つマネージメントでも十分と考えられる.
・蘇生後は中枢性の高体温などで発熱しやすいため, その点に気をつけるというのが現時点での印象.
今後の報告では低体温療法や”正常体温維持療法” 自体過去のものとなるのかもしれない.2017年1月27日金曜日
Clostridium difficile感染症に対するトキシンA, B モノクローナル抗体
Clostridium difficile感染症は近年増加傾向で, 市中感染症も増えてきている.
抗生剤投与でリスク上昇することは有名.
再発率も高く, 難治性の場合, 再発を繰り返す場合の対応が難しい.
トキシンA, Bに対するモノクローナル抗体治療が最近まで治験でも行われており,
この度MODIFY 1,2 trialが発表されたのでまとめます.
最初は2010年のNEJMでその存在を知りました.
C difficile toxin A, Bに対するHuman monoclonal抗体治療の84日間の再発率を評価したDouble blind RCT.
(NEJM 2010;362:197-205)
#CDI患者で経口抗生剤治療を行われた200例を2群に割り付け,
CDA1, B1 antibodies 10mg/kg 1回投与 vs Placeboで比較
Outcome; CDADの再発は32名: 7% vs 25% (p<0.001)
・下痢自体の再発率は28% vs 50%(P=0.002)
下痢の重症度, 他の症状, 改善までの期間は有意差無し.
・副作用はPlaceboよりも少なく, 目立ったものは無し.
CDB1抗体がBezlotoxumab
CDA1抗体がActoxumab
今回大規模のphase III trialであるMODIFY 1,2が発表された
MODIFY 1,2 trial: 初回, 再発性CDIにおいて経口抗生剤治療を行った患者群を対象としたDB-RCT.
(N Engl J Med 2017;376:305-17.)
・上記患者群を以下の4郡に割り付け, 再発率を比較
Bezlotoxumab 10mg/kg IV群
Bezlotoxumab + Actoxumab群
Actoxumab 10mg/kg IV群
Placebo群.
・MODIFY 1では上記4群で評価されたが, Actoxumab単独の効果が認められず, MODIFY 2ではActoxumab単独投与群には割り付けされていない.
母集団データ
・再発患者は25-30%程度.
・65歳以上の高齢者は5-6割程度をしめる
・重症例は2割弱
アウトカム:12wkにおけるCDI再発リスク
・Bezlotoxumab投与群では有意な再発リスク低下効果が認められる
・Actoxumab単独使用, 追加使用の意義はない
サブ解析: どの患者群でも再発予防効果は期待できそう
副作用頻度
・特に有意な副作用増加はない.
---------------------------
・治療後に1回投与でおよそ10%程度の再発リスク低下効果が期待できる. NNTは10前後.
・全例で使用する必要はなさそうですが, 再発性の患者, 再発リスクが高い症例, 長期間の抗生剤投与が必要な症例などではよいかもしれない.
トキシンAに対する抗体がダメで、Bに対する抗体が再発予防になるのは興味深いところ
抗生剤投与でリスク上昇することは有名.
再発率も高く, 難治性の場合, 再発を繰り返す場合の対応が難しい.
トキシンA, Bに対するモノクローナル抗体治療が最近まで治験でも行われており,
この度MODIFY 1,2 trialが発表されたのでまとめます.
最初は2010年のNEJMでその存在を知りました.
C difficile toxin A, Bに対するHuman monoclonal抗体治療の84日間の再発率を評価したDouble blind RCT.
(NEJM 2010;362:197-205)
#CDI患者で経口抗生剤治療を行われた200例を2群に割り付け,
CDA1, B1 antibodies 10mg/kg 1回投与 vs Placeboで比較
Outcome; CDADの再発は32名: 7% vs 25% (p<0.001)
・下痢自体の再発率は28% vs 50%(P=0.002)
下痢の重症度, 他の症状, 改善までの期間は有意差無し.
・副作用はPlaceboよりも少なく, 目立ったものは無し.
CDB1抗体がBezlotoxumab
CDA1抗体がActoxumab
今回大規模のphase III trialであるMODIFY 1,2が発表された
MODIFY 1,2 trial: 初回, 再発性CDIにおいて経口抗生剤治療を行った患者群を対象としたDB-RCT.
(N Engl J Med 2017;376:305-17.)
・上記患者群を以下の4郡に割り付け, 再発率を比較
Bezlotoxumab 10mg/kg IV群
Bezlotoxumab + Actoxumab群
Actoxumab 10mg/kg IV群
Placebo群.
・MODIFY 1では上記4群で評価されたが, Actoxumab単独の効果が認められず, MODIFY 2ではActoxumab単独投与群には割り付けされていない.
母集団データ
・再発患者は25-30%程度.
・65歳以上の高齢者は5-6割程度をしめる
・重症例は2割弱
アウトカム:12wkにおけるCDI再発リスク
・Bezlotoxumab投与群では有意な再発リスク低下効果が認められる
・Actoxumab単独使用, 追加使用の意義はない
サブ解析: どの患者群でも再発予防効果は期待できそう
副作用頻度
・特に有意な副作用増加はない.
---------------------------
・治療後に1回投与でおよそ10%程度の再発リスク低下効果が期待できる. NNTは10前後.
・全例で使用する必要はなさそうですが, 再発性の患者, 再発リスクが高い症例, 長期間の抗生剤投与が必要な症例などではよいかもしれない.
トキシンAに対する抗体がダメで、Bに対する抗体が再発予防になるのは興味深いところ
2017年1月25日水曜日
ANCA関連血管炎による中耳炎
(Mod Rheumatol, 2017; 27(1):87–94)
AAVでは中耳炎の合併も認められる.
・AAVに合併する中耳炎をOMAAV(otitis media with AAV)と呼ぶ.
OMAAVは以下の(A)-(C)を満たす場合に診断
(A) 抗生剤投与や耳管挿入でも改善しない浸出液, 肉芽組織を伴う難治性中耳炎で発症する
(B) 以下の1つ以上を認める
(1) MPO-, PR3-ANCA陽性
(2) 組織的にAAVを考慮する(小血管の壊死性血管炎±血管外の肉芽組織を伴う炎症像)
(3) AAVに関連する耳以外の臓器障害を伴う
(C) 他の中耳炎疾患が除外(細菌性, コレステロール肉芽腫, Choleastoma, 悪性腫瘍, 結核, 好酸球性, 他の血管炎)
診断基準(案) (耳鼻臨床 2014; 107: 587―598. )
OMAAVの耳病変は3パターンある
・慢性中耳炎(COM)
・滲出性中耳炎(SOM)
・感音性難聴(SNHL)
・PR3-ANCA陽性例では慢性中耳炎と滲出性中耳炎が多い.
・MPO-ANCA陽性例では滲出性中耳炎となることが主
・鼻症状を伴うのはPR3-ANCAで多いがMPO-ANCA陽性でも副鼻腔炎は多い
日本国内の耳鼻科123施設において, 10年間で報告されたOMAAV 235例の解析.
・抗体はMPO-ANCA陽性例が6割
・初期症状としては難聴が必発. 他にはめまいや頭痛もある.
・他の臓器障害では, 顔面神経麻痺, 肥厚性硬髄膜炎, 鼻, 肺, 腎臓など
陽性となる抗体別の評価
・MPO-ANCA陽性例は高齢発症で多い
・PR3-ANCA陽性例では鼻や肺障害の合併が多い
・抗体陰性例では肥厚性硬髄膜炎を伴う頻度が高い.
OMAAVの全体像のイメージ
(Allergology International. 2014;63:523-532 )
AAVでは中耳炎の合併も認められる.
・AAVに合併する中耳炎をOMAAV(otitis media with AAV)と呼ぶ.
OMAAVは以下の(A)-(C)を満たす場合に診断
(A) 抗生剤投与や耳管挿入でも改善しない浸出液, 肉芽組織を伴う難治性中耳炎で発症する
(B) 以下の1つ以上を認める
(1) MPO-, PR3-ANCA陽性
(2) 組織的にAAVを考慮する(小血管の壊死性血管炎±血管外の肉芽組織を伴う炎症像)
(3) AAVに関連する耳以外の臓器障害を伴う
(C) 他の中耳炎疾患が除外(細菌性, コレステロール肉芽腫, Choleastoma, 悪性腫瘍, 結核, 好酸球性, 他の血管炎)
診断基準(案) (耳鼻臨床 2014; 107: 587―598. )
OMAAVの耳病変は3パターンある
・慢性中耳炎(COM)
・滲出性中耳炎(SOM)
・感音性難聴(SNHL)
・PR3-ANCA陽性例では慢性中耳炎と滲出性中耳炎が多い.
・MPO-ANCA陽性例では滲出性中耳炎となることが主
・鼻症状を伴うのはPR3-ANCAで多いがMPO-ANCA陽性でも副鼻腔炎は多い
日本国内の耳鼻科123施設において, 10年間で報告されたOMAAV 235例の解析.
・抗体はMPO-ANCA陽性例が6割
・初期症状としては難聴が必発. 他にはめまいや頭痛もある.
・他の臓器障害では, 顔面神経麻痺, 肥厚性硬髄膜炎, 鼻, 肺, 腎臓など
陽性となる抗体別の評価
・MPO-ANCA陽性例は高齢発症で多い
・PR3-ANCA陽性例では鼻や肺障害の合併が多い
・抗体陰性例では肥厚性硬髄膜炎を伴う頻度が高い.
OMAAVの全体像のイメージ
(Allergology International. 2014;63:523-532 )
2017年1月24日火曜日
バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用ではAKIに注意すべき
近年, VCMとPIPC/TAZの併用によるAKIリスク上昇についての報告が増加している.
VCM+PIPC/TAZの併用とAKIリスクを評価した14 observational studies(N=3549)のMeta-analysisでは,
・AKIリスクは有意に上昇する. OR 3.11[1.77-5.47]
成人症例ではOR 3.15[1.72-5.76]
小児症例ではOR 4.55[2.71-10.21]
VCM+PIPC/TAZの併用とAKIリスクを評価した14 observational studies(N=3549)のMeta-analysisでは,
・AKIリスクは有意に上昇する. OR 3.11[1.77-5.47]
成人症例ではOR 3.15[1.72-5.76]
小児症例ではOR 4.55[2.71-10.21]
Clin Infect Dis. 2016 Dec 10. pii: ciw811. [Epub ahead of print]
Systematic Review and Meta-Analysis of Acute Kidney Injury Associated with Concomitant Vancomycin and Piperacillin/tazobactam.
後ろ向きコホートにおいて, VCM+PIPC/TAZ併用患者とVCM+Cefepime併用患者を抽出し, 疾患の重症度, ICU管理内容, 抗生剤併用の期間, VCM投与量, 腎毒性を有する薬剤使用の背景を合わせて, 両群のAKI発症リスクを比較.
(Clinical Infectious Diseases® 2017;64(2):116–23 )
・抗生剤は48h以上継続している患者を抽出
・血清Cr >1.2mg/dLや透析患者は除外
・AKIはRIFLE, AKIN, VCM consensus guideline definitionの3 criteriaで定義
母集団の比較
・VCM+PIPC/TAZ併用群の方が膠原病, 高血圧が少なく, 皮膚軟部組織感染症の頻度が高い
また, Enterobacteriaceaeの頻度が少ない.
アウトカム: AKIの頻度
・AKIはVCM+PIPC/TAZ群で29%, VCM+Cefepime群で11%と有意にPIPC/TAZ併用群で多い結果.
・発症までの期間も3日 vs 5日とVCM+PIPC/TAZ群で早い
トラフ値別の評価
・VCM+PIPC/TAZではVCMのトラフ値に関わらず, AKIリスクが高い.
・VCM+Cefepimeではトラフ値に比例してAKIリスクが上昇する
-----------------------------
VCMとPIPC/TAZの併用ではVCMのトラフ値に関わらず, AKIリスクが上昇するというのは興味深い報告である.
注意すべきでしょう
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VCMとPIPC/TAZの併用ではVCMのトラフ値に関わらず, AKIリスクが上昇するというのは興味深い報告である.
注意すべきでしょう
2017年1月21日土曜日
心筋症の原因となる膠原病は?
心筋症の約半数が特発性であり, 他には心筋炎, ウイルス感染症, 虚血性心疾患, 浸潤性疾患(サルコイドなど), 薬剤(ドキソルビシン), 内分泌疾患(甲状腺), 沈着症(ヘモクロマトーシスやアミロイドーシス), 栄養障害(チアミン)など、、、様々な原因がある.
その二次性の1つに膠原病が挙げられるが, どのような膠原病が原因となるのか?
その前に, そもそも特発性心筋症の中にAnti-heart antibodies(AHA)と呼ばれる自己抗体の存在がわかっており,
特発性拡張型心筋症では, β1 adrenoceptor, α, β-myosin heavy chain, myosin light chain, Troponinに対する自己抗体陽性例が30%で報告されている. またその場合血縁者の20-30%でも陽性となり, 家族性発症の原因としても指摘されている.
(Lancet 2010;375:752-62)
今回は ”自己免疫性” ではなく膠原病に合併する心筋症では, どのような疾患が原疾患として多いか, を調べて見る.
あまり報告は多くなく, 見つかったのは以下の報告のみ.
(Am J Cardiol 2007;100:513–517)
Johns Hopkins Hospitalにおいて, 1983-2003年に原因不明の心筋症で筋生検を施行した 1700例のうち, 71例(4.2%)が膠原病に伴うものと判断された(5.1年のフォローにおいて)
・最も多いのはUCTD, SLE, SS.
ついでPN, PM/DMなど.
SLE, UCTD, SSによる心筋症と特発性DCMの比較
・発症年齢は膠原病性と特発性でほぼ同じくらい
・膠原病性ではやはり女性が多い. ただしUCTDは除く.
・SLEでは心筋炎を伴う例が1/3と他よりも多い.
予後への影響
・SSによる心筋症では特発性と比較して死亡リスクが高い(HR 2.06[1.15-3.70])が, UCTD, SLEによるものは有意差なし.
(SLE 0.63[0.26-1.53]), (UCTD 1.79[0.97-3.30])
その二次性の1つに膠原病が挙げられるが, どのような膠原病が原因となるのか?
その前に, そもそも特発性心筋症の中にAnti-heart antibodies(AHA)と呼ばれる自己抗体の存在がわかっており,
特発性拡張型心筋症では, β1 adrenoceptor, α, β-myosin heavy chain, myosin light chain, Troponinに対する自己抗体陽性例が30%で報告されている. またその場合血縁者の20-30%でも陽性となり, 家族性発症の原因としても指摘されている.
(Lancet 2010;375:752-62)
今回は ”自己免疫性” ではなく膠原病に合併する心筋症では, どのような疾患が原疾患として多いか, を調べて見る.
あまり報告は多くなく, 見つかったのは以下の報告のみ.
(Am J Cardiol 2007;100:513–517)
Johns Hopkins Hospitalにおいて, 1983-2003年に原因不明の心筋症で筋生検を施行した 1700例のうち, 71例(4.2%)が膠原病に伴うものと判断された(5.1年のフォローにおいて)
・最も多いのはUCTD, SLE, SS.
ついでPN, PM/DMなど.
SLE, UCTD, SSによる心筋症と特発性DCMの比較
・発症年齢は膠原病性と特発性でほぼ同じくらい
・膠原病性ではやはり女性が多い. ただしUCTDは除く.
・SLEでは心筋炎を伴う例が1/3と他よりも多い.
予後への影響
・SSによる心筋症では特発性と比較して死亡リスクが高い(HR 2.06[1.15-3.70])が, UCTD, SLEによるものは有意差なし.
(SLE 0.63[0.26-1.53]), (UCTD 1.79[0.97-3.30])
2017年1月20日金曜日
生後半年で鶏卵を少量から摂取させた方がアレルギーは少ない
小児期の食物暴露が少ないほど食物アレルギーのリスクとなる
生後半年程度で色々な食事を食べさせると食物アレルギーリスクは低下するかも
でも紹介したように, 生後半年前後で色々食べさせると食物アレルギーリスクは低下する.
その国産のエビデンスが発表されたため, 紹介
(Lancet 2017; 389: 276–86)
PETIT trial: 日本国内の2施設で行われたDB-RCT.
・生後 4ー5ヶ月のアトピー性皮膚炎を有する乳児を対象とし, 鶏卵摂取群 vs 非摂取群に割付け, 生後12ヶ月まで継続.
鶏卵アレルギーのリスクを比較.
・鶏卵摂取群は加熱鶏卵をパウダー状にして, 6ー9ヶ月は50mg/d, 9-12ヶ月では250mg/dを摂取.
* 50mgあたり, 25mgの鶏卵タンパクを含有. 15分茹でた卵 0.2g分.
初回投与時と増量時は病院を受診し, 2時間の経過観察を行いつつ摂取.
・除外項目: 37週未満での出生, 鶏卵/鶏卵製品の摂取歴がある, 鶏卵に対して早期アレルギー反応の既往がある, 食品に対して非早期アレルギー反応の既往がある, 重症疾患を合併している患者
・アウトカムは12ヶ月におけるOral food challenge(OFC)で評価された鶏卵アレルギーの頻度を比較.
母集団のデータ
・StudyはN=200を予定していたがN=100時点での中間解析により有意差を認めたため, 途中で終了.
アウトカム
・鶏卵アレルギーは有意に摂取群で低下する結果
RR 0.221[0.090-0.543], NNT 3.40[2.30-6.52]
特異的Igの評価
・鶏卵摂取群では, 12ヶ月でのIgE値は低く, IgG, IgAは高い
副作用の頻度: 両者で有意差はない
------------------------
生後半年くらいから色々なものを食べさせ始める, というのは後のアレルギー予防にも大事なのであろう.
じんま疹やらアトピー性皮膚炎やら, リスクがある患者ほど嫌厭してしまいがちであるが, むしろそちらの方が, 少量から少しずつ増やすことで予防効果が期待できる.
NNT 3.4というのは, 超すごいということです.
じんま疹やらアトピー性皮膚炎やら, リスクがある患者ほど嫌厭してしまいがちであるが, むしろそちらの方が, 少量から少しずつ増やすことで予防効果が期待できる.
NNT 3.4というのは, 超すごいということです.
2017年1月18日水曜日
成人で診断された喘息の1/3が 一過性, もしくは喘息ではない
カナダの10都市で施行された前向きStudy.
(JAMA. 2017;317(3):269-279. )
・ランダムに電話し, 過去5年以内に喘息と診断された成人症例を抽出.
長期全身性ステロイド使用, 妊婦, 授乳婦, スパイロメトリー施行が困難な患者, Bronchial challenge testが禁忌の患者(大動脈, 脳動脈瘤, 3ヶ月以内のMI, Stroke既往), 10 pack-years以上の喫煙歴がある患者は除外.
上記を満たす患者群でスパイロメトリー, 刺激試験を行い, 診断アルゴリズムに沿って再度喘息を評価.
・4回の受診により喘息に対する投薬を順次中止し, フォロー.
・最終的に1年後に再度評価を行い, 喘息の診断について評価.
・経過中に発作を来した場合は再評価を行う.
対象となった1026例中, 701例で同意が得られ, 評価.
・701例中203例(33.1%[29.4-36.8])で現在の喘息は否定された.
・12ヶ月のフォローにて最終的に喘息ではないと判断された症例は181例(29.5%[25.9-33.1])
両者の比較:
・年齢や性別, 喫煙歴などは関係なし.
・診断にスパイロを使用された患者は本物が多い.
・ER医や呼吸器医師に診断されたものは本物が多い
持続性の喘息, 真の喘息である可能性に影響する因子
・Airflow testが診断時にされている場合は, 持続性の喘息の可能性が高い
・喘鳴を繰り返している場合も同様.
・専門医に診断されても, 本物の可能性をあげる訳ではない
"Current Asthma"ではないと判断された213例における呼吸器専門医による評価結果
-----------------------------
・成人で診断された喘息の1/3が一過性, もしくは喘息ではない他の疾患であった可能性がある.
・特に診断時に呼吸機能検査をされていない場合は要注意.
・そのような患者では再評価を行うことで, 不要な投薬を減らせる可能性がある.
(JAMA. 2017;317(3):269-279. )
・ランダムに電話し, 過去5年以内に喘息と診断された成人症例を抽出.
長期全身性ステロイド使用, 妊婦, 授乳婦, スパイロメトリー施行が困難な患者, Bronchial challenge testが禁忌の患者(大動脈, 脳動脈瘤, 3ヶ月以内のMI, Stroke既往), 10 pack-years以上の喫煙歴がある患者は除外.
上記を満たす患者群でスパイロメトリー, 刺激試験を行い, 診断アルゴリズムに沿って再度喘息を評価.
・4回の受診により喘息に対する投薬を順次中止し, フォロー.
・最終的に1年後に再度評価を行い, 喘息の診断について評価.
・経過中に発作を来した場合は再評価を行う.
対象となった1026例中, 701例で同意が得られ, 評価.
・701例中203例(33.1%[29.4-36.8])で現在の喘息は否定された.
・12ヶ月のフォローにて最終的に喘息ではないと判断された症例は181例(29.5%[25.9-33.1])
両者の比較:
・年齢や性別, 喫煙歴などは関係なし.
・診断にスパイロを使用された患者は本物が多い.
・ER医や呼吸器医師に診断されたものは本物が多い
持続性の喘息, 真の喘息である可能性に影響する因子
・Airflow testが診断時にされている場合は, 持続性の喘息の可能性が高い
・喘鳴を繰り返している場合も同様.
・専門医に診断されても, 本物の可能性をあげる訳ではない
"Current Asthma"ではないと判断された213例における呼吸器専門医による評価結果
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・成人で診断された喘息の1/3が一過性, もしくは喘息ではない他の疾患であった可能性がある.
・特に診断時に呼吸機能検査をされていない場合は要注意.
・そのような患者では再評価を行うことで, 不要な投薬を減らせる可能性がある.
2017年1月13日金曜日
ダビガトランとシンバスタチンの併用には注意
(CMAJ 2017 January 9;189:E4-10.)
・Dabigatran etexilateは腸管より吸収される際, 腸管P-glycoproteinに拮抗される. また, carboxylesteraseによりdabigatranに代謝され, 作用する
・Simvastatin(リポバス®)とlovastatin(国内承認なし)はP-glycoprotein, carboxylesteraseを阻害作用を有しており, Dabigatranとの併用により作用を増強/減弱させる可能性がある.
Ontarioにおいて, 2012-2014年にDabigatranを開始された66歳以上の患者群を対象としたcase-control study.
・Ontario’s administrative health databaseでの解析
・上記患者でStroke, TIAを来した患者群をStudy 1, Major bleedingを来した患者群をStudy 2とし, 年齢, 性別を合わせたControl群と比較.
Caseにおけるスタチンの使用頻度
Simvastatin, lovastatinは他のスタチンと比較して,
・Stroke, TIAリスク因子にはならない(OR 1.04[0.72-1.51])が
・Major bleedingリスクは有意に上昇(OR 1.46[1.17-1.82])結果であった.
・Dabigatran etexilateは腸管より吸収される際, 腸管P-glycoproteinに拮抗される. また, carboxylesteraseによりdabigatranに代謝され, 作用する
・Simvastatin(リポバス®)とlovastatin(国内承認なし)はP-glycoprotein, carboxylesteraseを阻害作用を有しており, Dabigatranとの併用により作用を増強/減弱させる可能性がある.
Ontarioにおいて, 2012-2014年にDabigatranを開始された66歳以上の患者群を対象としたcase-control study.
・Ontario’s administrative health databaseでの解析
・上記患者でStroke, TIAを来した患者群をStudy 1, Major bleedingを来した患者群をStudy 2とし, 年齢, 性別を合わせたControl群と比較.
Caseにおけるスタチンの使用頻度
Simvastatin, lovastatinは他のスタチンと比較して,
・Stroke, TIAリスク因子にはならない(OR 1.04[0.72-1.51])が
・Major bleedingリスクは有意に上昇(OR 1.46[1.17-1.82])結果であった.
高齢発症の関節リウマチとリウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症(PMR)と高齢発症の関節リウマチは症状が類似しており、しばしば鑑別が難しい。
PMR 15例, EORA 7例においてPET-CTを施行した報告
(PLoS ONE 11(7): e0158509. )
PMRで有意に集積を認める9箇所:
・肩甲上腕関節周囲,
・恥骨筋付着部,
・大腿直筋付着部付近,
・股関節,
・大転子側面,
・坐骨結節,
・下位頚椎の棘突起,
・腰椎椎間関節,
・腰椎棘突起
上記を各1点としてスコアリングを作成すると,
・EORA群は0[0-4],
・PMR群は8[3-9].
・≥5点は感度86.7%, 特異度 86.7%でPMRを示唆する結果.
画像の例
PMR-like onsetの116名中, 19%がRA ACR criteriaを満たした.
最初にPMRと診断されても, 12moのFollowにて20%がRAと診断. (ACR criteriaにて診断)
最終的にPMRと診断された65名, RAと判明した19名を比較すると, 体重減少, 近位筋萎縮, 末梢の滑膜炎で有意差あり
症状
|
PMR(65)
|
RA(19)
|
p値
|
体重減少
|
38.5%
|
10.5%
|
0.02
|
近位筋委縮
|
1.5%
|
15.8%
|
0.03
|
末梢の滑膜炎
|
26.2%
|
78.9%
|
0.0001
|
RA陽性
|
12.3%
|
36.8%
|
0.03
|
発熱, 朝のこわ張り, 頭痛は有意差無し
LabではRFのみ有意差あるも, 臨床的に有用と言える感度、特異度ではない
(Ann Rheum Dis 2001;60:1021-4)
(Ann Rheum Dis 2001;60:1021-4)
両上肢の圧痛もSn 75% vs 13%(p<0.01) で有意差あり (Ann Rheum Dis 1991;50:619-22)
高齢発症のRA(EORA) 10例とPMR 27例でFDG−PET/CTを評価
EORAでは発症年齢 74.2±10.0歳, 男性例が 8/10
PMRは77.3±10.0歳, 男性例が 9/27
PMRは77.3±10.0歳, 男性例が 9/27
PET/CTの集積を比較:
坐骨結節, 棘突起の集積 → よりPMRで多い
環軸関節, 手首, 肘関節の集積 → EORAで多い
環軸関節, 手首, 肘関節の集積 → EORAで多い
集積パターンでは,
肩関節の周囲に線状, 円状に集積がある場合 → EORA
股関節の前方に集積がある場合 → PMRを示唆する
PET所見の感度、特異度 (EORAよりもPMRを示唆する所見)
所見
|
感度
|
特異度
|
LR+
|
LR-
|
坐骨結節の集積
|
96.3%
|
40.0%
|
1.61
|
0.09
|
棘突起の集積
|
81.5%
|
40.0%
|
1.36
|
0.46
|
手首の集積がない
|
59.3%
|
100%
|
∞
|
0.41
|
孤発性の腸恥包の集積
|
59.3%
|
90%
|
5.93
|
0.45
|
肩関節の線状, 円状の集積がない
|
70.4%
|
90%
|
7.04
|
0.33
|
PMR 15例, EORA 7例においてPET-CTを施行した報告
(PLoS ONE 11(7): e0158509. )
PMRで有意に集積を認める9箇所:
・肩甲上腕関節周囲,
・恥骨筋付着部,
・大腿直筋付着部付近,
・股関節,
・大転子側面,
・坐骨結節,
・下位頚椎の棘突起,
・腰椎椎間関節,
・腰椎棘突起
上記を各1点としてスコアリングを作成すると,
・EORA群は0[0-4],
・PMR群は8[3-9].
・≥5点は感度86.7%, 特異度 86.7%でPMRを示唆する結果.
画像の例
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アクセスや費用の面でそう簡単にPET/CTは評価できないですけども、
このような集積の違いを知っていると身体所見、圧痛部位、分布での注目するポイントが明確となります。
このようなデータを把握しつつ、所見を取る、これが臨床のセンスを磨くコツと思っています。