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2016年8月16日火曜日

膠原病に伴う肺高血圧症(CTD-PAH)に対する免疫抑制療法

肺高血圧症は,
 Pulmonary Arterial Hypertension(PAH),
 心疾患に由来するPH [Pulmonary Venous Hypertension(PVH)]
 呼吸器疾患に由来するPH
 慢性血栓症に由来するPH
 その他: サルコイドーシスやヒストサイトーシスなど に分類される.

PAHの原因としては, 特発性, 家族性, 膠原病, HIV, 薬剤, 毒素などが挙げられ,
膠原病では強皮症やSLE, MCTDが有名. 他にはシェーグレン症候群や関節リウマチなども原因となる.

・特に強皮症での合併が多く, 強皮症の7-12%でPAHを認める.
・他にはSLEやMCTDでの合併が多く報告されているが, 強皮症ほど多くはないとされる.
・日本からの報告では, MCTDの16%, SLEの9.3%, SScの11.4%でPAHが合併するとの報告がある.
・CTD-PAHの治療では, 特発性PAHと同様, ボセンタンやプロスタサイクリンなどを用いるが, 免疫抑制剤も一部で効果を示す報告がある.
(Allergology International. 2011;60:419-424)

1251名の特発性PAH(IPAH), 641名のCTD-PAHを評価
( 2010 Dec;138(6):1383-94.)
・SSc-PAH 399名, SLE-PAH 110名, MCTD 52名, RA 28名
・CTD-PAHの方がやや高齢(57.1±13.7 vs 50.1±17.5yr)であり, より女性が多い(90.2% vs 78.9%).
・腎機能障害もCTD-PAHでより多い(6.9% vs 3.9%)
・1年生存率はCTD-PAHの方が低い(86% vs 93%, P<0.0001)
 特にSSc-PAHが最も生存率が低い(82%)
 SLE-PAH 94%, MCTD-PAH 88%, RA-PAH 96%.となる

CTD-PAHの治療
CTD-PAHの治療も, 特発性PAHと同様, 肺血管拡張薬を使用する.


2009 ESC/ERS Pulmonary Hypertension Guidelinesより
・基本的に抗凝固薬, 利尿薬, 必要に応じた酸素投与を行い,
 Vasoreactivityを評価し, 反応があればCCBを, 反応が乏しい場合や, CCBのみで治療が困難な場合は肺動脈拡張薬を使用する.
・その場合はボセンタンやアンブリセンタン, シルデナフィル, エポプロステノールなどが選択肢となる.
(Allergology International. 2011;60:419-424 )

免疫抑制剤はどうか?

CTD-PAHの初期治療として, 免疫抑制剤(シクロホスファミドパルス)を行った症例 28例の後向き解析
(CHEST 2006; 130:182–189) 
・SLEが13例, MCTDが8例, Limited SScが5例, Diffuse SScが1例, RAが1例
・全例で抗凝固薬, 利尿薬の内服, 必要に応じた酸素投与を行い, 免疫抑制剤はシクロホスファミド 600mg/m2/月を3ヶ月間投与. 
 また, 22/28でPSL 0.5-1.0mg/kgを併用した
・治療反応性あり は, 免疫抑制療法後 1年間は肺血管拡張薬の使用無しで, NYHA I-II, 血行動態改善を維持できることで定義.

アウトカム; 8/28が治療の反応性ありと判断.
 上記のうち 5例がSLE, 3例はMCTDであった.

治療反応あり vs なし群の比較
・CRESTや強皮症では免疫抑制剤の反応は乏しい.

SLE, MCTDによるPAH症例23例において, 免疫抑制療法単独治療(16例), 免疫抑制療法+肺血管拡張薬併用治療(7例)を行い, 治療前後の血行動態を評価した.
(ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 58, No. 2, February 2008, pp 521–531 )
・全患者でワーファリン, 利尿薬, 必要に応じた酸素投与を施行.
 免疫抑制剤はシクロホスファミドパルス療法(600mg/m2/月を6ヶ月) + PSL 0.5-1mg/kg/dを4週間, 以後減量.
・治療反応性ありは, NYHA I-IIで血行動態改善(mPAP <40mmHg ± CI正常)で定義した.

アウトカム: 免疫抑制療法単独群では8/16で治療反応性あり, 併用群では, 4/7で治療反応性を認めた.

上記Studyより, CTD-PAH症例における治療アルゴリズムを提唱

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CTD-PAHでは, 強皮症関連では免疫抑制剤の効果は見込めない可能性が高い.
SLEやMCTDの要素があれば試す価値はあるかもしれない.
その場合シクロホスファミドパルス療法か、PSL 1mg/kg/日の投与が効果的であるかもしれない. (PSLによる治療の報告:  2011 Oct;20(10):1047-56.)