SMA(上腸間膜動脈)解離は稀な疾患と言われてはいるものの,
気づかれていないだけでそれなりの数はあると思われる.
解離に伴う血流低下による腹部アンギナ, 腸管虚血が問題となり,
治療は手術治療やステント, 抗凝固療法が試されるが, 症例数も少なくまとまった報告はない.
単一施設において, 8年間で診断した特発性SMA解離で抗凝固薬で治療を行った52例を解析.
(Medicine 95(16):e3480)
・発症後11日目で48例で症状は改善.
・改善しなかった4例中, 3例は血管内治療, 1例は外科手術を施行された.
・抗凝固薬の投与期間は9ヶ月[3-60]
・出血性副作用は2例のみ.
・血管のリモデリングは41例で認められ, 変化を認めなかったのは7例.
CT血管造影所見の変化
完全なリモデリングは42%で認められる
I) Entry, re-entryが保たれている
II) re-entryがなく, 盲端となっている
III) 偽腔内血栓閉塞があり, 潰瘍様の造影が認められる
IV) 偽腔内血栓閉塞があり, 潰瘍様の造影が認められない
V) SMAの解離と狭窄を認める
VI) 部分的, 完全閉塞
SMA解離の報告のまとめ
・抗凝固薬で治療を行うのは15-100%, その後腹腔内出血をきたすような報告もなく, 安全に使用は可能と考えられる.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2016年4月30日土曜日
2016年4月26日火曜日
PMRにおけるステロイド反応性
PMR(リウマチ性多発筋痛症)はステロイドが著効する疾患として有名.
ステロイド投与後に速やかに改善すると, やはりPMRだね〜と言ったりすることもある位.
PMR診断基準の会議におけるエキスパートのコンセンサスでも, 「ステロイド反応性良好」という項目の賛同が50%以上あった(J Rheumatol 2008;35:270-7)
しかしながら 「ステロイドは全ての疾患を一時的に改善させる(ように見せる)」薬剤であり, 「著効」というのがどの程度のことなのか, 他の疾患との区別がつくのかはよく分からない.
EULAR/ACRのPMRスコアリングからはその項目は外れている
PMRにおける短期的なステロイドへの反応
何例かの関節炎患者において, ビタミンC , PSL(15mg), ビタミンCを1週間ずつ投与し,
その間症状がどのように変化したかをフォロー (J R Coll Physicians Edinb 2012;42:341-9)
患者はPMR 4例, RA 3例, Capsulitis 2例.
症状の変化は以下通り
・PMRの4例では投与開始翌日〜翌々日には症状が1/10程度まで改善している.
そして投与終了すると2-3日の経過で再度10/10まで増悪する
・RA患者ではPSL開始すると徐々に症状が改善する経過となる. 投与中止後も徐々に増悪する経過
・Capsulitisではあまり症状の改善は認められていない.
従って, ステロイド投与への反応性を評価する際は, 投与した1-2日での著名な改善を有意と考えるべきであろう.
長期的にはどうか?
PMRにおいてPSLを開始後〜どの程度の期間でどの程度改善するかをまとめたStudyは見つけられず. 幾つかの報告から抽出すると,
・経口ステロイド投与後 3週間後にはESRは正常範囲となる
(British Journal of Rheumatology 1998;37:189–195).
・経口PSL投与後〜寛解までの期間は20.3日.
一方でmPSLを使用した場合, 15.2日と有意に短縮する(PSL 25mg/日, mPSL 20mg/日)
(Rheumatol Int. 2015 Apr;35(4):735-9. )
・ステロイド開始から4週以内に73%で臨床的改善が認められた結果.
臨床的改善とはVASの70%以上の改善で定義
(J Rheumatol. 2012 Apr;39(4):795-803.)
ということから, 大体3-4週間程度で炎症反応が陰性化, 症状の改善, 寛解が認められるのが典型的なのかもしれない.
たまにPMRと診断しても, ステロイドの効きがなかなか遅い患者もおり, その場合はちょっと不安になります. そのような場合はやはり注意した方が良いのかもしれません.
ステロイド投与後に速やかに改善すると, やはりPMRだね〜と言ったりすることもある位.
PMR診断基準の会議におけるエキスパートのコンセンサスでも, 「ステロイド反応性良好」という項目の賛同が50%以上あった(J Rheumatol 2008;35:270-7)
しかしながら 「ステロイドは全ての疾患を一時的に改善させる(ように見せる)」薬剤であり, 「著効」というのがどの程度のことなのか, 他の疾患との区別がつくのかはよく分からない.
EULAR/ACRのPMRスコアリングからはその項目は外れている
PMRにおける短期的なステロイドへの反応
何例かの関節炎患者において, ビタミンC , PSL(15mg), ビタミンCを1週間ずつ投与し,
その間症状がどのように変化したかをフォロー (J R Coll Physicians Edinb 2012;42:341-9)
患者はPMR 4例, RA 3例, Capsulitis 2例.
症状の変化は以下通り
・PMRの4例では投与開始翌日〜翌々日には症状が1/10程度まで改善している.
そして投与終了すると2-3日の経過で再度10/10まで増悪する
・RA患者ではPSL開始すると徐々に症状が改善する経過となる. 投与中止後も徐々に増悪する経過
・Capsulitisではあまり症状の改善は認められていない.
従って, ステロイド投与への反応性を評価する際は, 投与した1-2日での著名な改善を有意と考えるべきであろう.
長期的にはどうか?
PMRにおいてPSLを開始後〜どの程度の期間でどの程度改善するかをまとめたStudyは見つけられず. 幾つかの報告から抽出すると,
・経口ステロイド投与後 3週間後にはESRは正常範囲となる
(British Journal of Rheumatology 1998;37:189–195).
・経口PSL投与後〜寛解までの期間は20.3日.
一方でmPSLを使用した場合, 15.2日と有意に短縮する(PSL 25mg/日, mPSL 20mg/日)
(Rheumatol Int. 2015 Apr;35(4):735-9. )
・ステロイド開始から4週以内に73%で臨床的改善が認められた結果.
臨床的改善とはVASの70%以上の改善で定義
(J Rheumatol. 2012 Apr;39(4):795-803.)
ということから, 大体3-4週間程度で炎症反応が陰性化, 症状の改善, 寛解が認められるのが典型的なのかもしれない.
たまにPMRと診断しても, ステロイドの効きがなかなか遅い患者もおり, その場合はちょっと不安になります. そのような場合はやはり注意した方が良いのかもしれません.
2016年4月22日金曜日
脳梗塞の再発リスク予測
脳梗塞後 90日以内の再発率を評価する再発スコアが以下のURLにて計算可能 (Recurrence risk estimator: RRE)
http://www.nmr.mgh.harvard.edu/RRE/
・MRI所見, TIAや脳梗塞の既往, 脳梗塞のEtiologyからリスクを算出し7日以内の再発率, 90日以内の再発率を評価.
・MRI所見がない場合は臨床所見のみで計算する
RREの成り立ち:
(Neurology® 2010;74:128 –135)
2003年-2006年に受診した発症72h以内の脳梗塞症例1458例において, 90日以内の脳梗塞再発リスク因子を評価.
・初期にMRI評価がなされていない症例は201例であった.
・90日以内の再発例は60例.
・再発(-)例 vs 再発例の比較
有意な再発リスク因子を抽出し, スコア化
RRE 和訳
* 大血管の動脈硬化, 他の機序(解離など)の場合に1点, 他は0点で計算
急性脳梗塞におけるREEと90日以内の再発リスク
・MRI評価の有無にかかわらず, 3点以上では再発リスクが高い.
米国と韓国からのコホートにおいて, 1468例の急性脳梗塞患者でRREスコアを評価.
・RREスコアと90日以内の再発率を評価した.
・母集団のデータ:
90日再発症例は59例
・RRE(MRI+臨床)と再発率は以下のとおり.
・オリジナルStudyよりはリスクは低いものの, 3点以上では10%以上の再発率がある.
・国別の再発率の比較では, 韓国の方が再発率は少ない.
RREと90日以内の脳梗塞再発率のまとめ
http://www.nmr.mgh.harvard.edu/RRE/
・MRI所見, TIAや脳梗塞の既往, 脳梗塞のEtiologyからリスクを算出し7日以内の再発率, 90日以内の再発率を評価.
・MRI所見がない場合は臨床所見のみで計算する
RREの成り立ち:
(Neurology® 2010;74:128 –135)
2003年-2006年に受診した発症72h以内の脳梗塞症例1458例において, 90日以内の脳梗塞再発リスク因子を評価.
・初期にMRI評価がなされていない症例は201例であった.
・90日以内の再発例は60例.
・再発(-)例 vs 再発例の比較
有意な再発リスク因子を抽出し, スコア化
RRE 和訳
MRI所見あり
|
点数
|
MRI未検査
|
点数
|
MRI: 時期の異なる脳梗塞が複数認められる
|
1
|
脳梗塞の機序:
大血管の動脈硬化性
|
2
|
MRI: 他血管支配領域の急性, 亜急性脳梗塞所見あり
|
1
|
脳梗塞の機序: 心原性, 大動脈原性の塞栓
|
2
|
MRI: 多発性脳梗塞所見
|
1
|
脳梗塞の機序:
小血管閉塞
|
0
|
MRI: 単一の皮質梗塞所見
|
1
|
脳梗塞の機序: 他の原因
|
3
|
1ヶ月以内のTIA, 脳卒中の既往がある
|
1
|
脳梗塞の機序:
機序不明
|
1
|
脳梗塞の機序*
|
1
|
1ヶ月以内のTIA, 脳卒中の既往がある
|
1
|
急性脳梗塞におけるREEと90日以内の再発リスク
・MRI評価の有無にかかわらず, 3点以上では再発リスクが高い.
米国と韓国からのコホートにおいて, 1468例の急性脳梗塞患者でRREスコアを評価.
・RREスコアと90日以内の再発率を評価した.
・母集団のデータ:
90日再発症例は59例
・RRE(MRI+臨床)と再発率は以下のとおり.
・オリジナルStudyよりはリスクは低いものの, 3点以上では10%以上の再発率がある.
・国別の再発率の比較では, 韓国の方が再発率は少ない.
RREと90日以内の脳梗塞再発率のまとめ
RRE
|
MRI所見あり*
|
MRI所見あり**
|
MRI未検査*
|
0点
|
0.7%[0.0-1.8]
|
0.8%[0.0-1.6]
|
1.1%[0.0-3.3]
|
1点
|
3.9%[1.5-6.3]
|
3.5%[1.7-5.3]
|
3.4%[1.5-5.3]
|
2点
|
4.2%[1.6-6.8]
|
5.4%[2.7-8.1]
|
5.9%[3.6-8.1]
|
3点
|
27.3%[17.8-36.8]
|
11.9%[6.0-17.8]
|
19.1%[11.1-27.2]
|
4-6点
|
38.8%[17.2-60.5]
|
25.0%[11.7-38.3]
|
45.3%[6.0-84.6]
|
*オジリナルのスタディより(Neurology. 2010 Jan 12;74(2):128-35.)
**米国, 韓国のコホートによるValidation(JAMA Neurol. 2016 Apr 1;73(4):396-401.)