ページ

2016年2月12日金曜日

非アルコール性脂肪肝, 脂肪性肝炎(NAFLD/NASH): NASHの評価

NASH/NAFLD

・脂肪肝の原因として最も多いのはアルコールであるが, アルコールによらない脂肪肝、脂肪性肝炎もある.
・非アルコール性脂肪肝全体をNAFLDと呼び, さらに肝炎に移行する例を脂肪性肝炎(NASH)を呼ぶ. NASHは肝癌や肝硬変の原因となる
 一般人口の20%, 2型DM患者では70%でNAFLDを認める.
 日本国内では29.7%(男性41.0%, 女性17.7%)
 NASH(Non-alcoholic steatohepatitis)はNAFLDの第二ステージであり, 一般人口の3-5%で認められる.
(BMJ 2014;349:g4596)
・非アルコール性とは, 女性で<20g/d(2.5U), 男性で<30g/d(3.75U)のアルコール摂取量で定義される.

NAFLDは日常診療でも多く診療する機会があるが, 重要なのはその中のNASHをしっかりと拾い上げ, 対応すること.
・NASHの評価には肝生検が必要となる.
 しかしながら, 全てのNAFLD患者で肝生検を行うわけにはいかない.
 従って, どの患者群で生検を行うかを吟味する必要がある.

NASHのリスク評価
NAFICスコア
項目 カットオフ pt
フェリチン値 >200(女性), >300ng/mL(男性) 1pt
空腹時インスリン >10µU/mL 1pt
4型コラーゲン7S >5.0ng/mL 2pt
≥1ptで感度88-94%, 特異度43-48%
≥2ptで感度60-66%, 特異度87-91%でNASHを示唆する 
(World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 475-485 )

NAFLD fibrosis score
 -1.675 + 0.037x年齢(y) + 0.094xBMI + 1.13x(耐糖能障害) + 0.99xAAR -0.013xPLT(x103/µL) - 0.66xAlb(g/dL)
・耐糖能障害, 糖尿病があれば1, なければ0
・ARR: AST/ALT比
 ≥-1.455で感度77-82%, 特異度71-77%
 ≥0.676で感度43-51%, 特異度96-98%で重度の線維化を予測. 
(World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 475-485 )

FIB4 index
 年齢(y) x AST/PLT(x103/µL) x √ALT
 ≥1.30で感度74%, 特異度71%
 ≥2.67で感度33%, 特異度98%で重度の線維化を予測
(World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 475-485 )

BARD score
項目 カットオフ pt
BMI ≥28 1
AST/ALT ratio ≥0.8 2
2型糖尿病 あり 1
 ≥2ptで感度91%, 特異度66%で3−4度の線維化を示唆する.
(Frontline Gastroenterology 2014;5:211–218. )

上記のような予測スコアはあり, それらの項目を見てみると, 
 病歴, 所見: 年齢, BMI, 2型DM, 
 検査: PLT, AST/ALT比(≥0.8), フェリチン値, 4型コラーゲン7S, 空腹時インスリンあたりがリスク評価として使用は可能.

・例えば, (World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 475-485 )では以下のようなアルゴリズムが提示されている.
 FIB4とNAFICを評価し, 肝生検の適応を決めている.
 上記は計算が結構めんどくさく, すぐに計算が可能なソフトがあればそれでもよいかもしれない.

・また, JAMA. 2015;313(22):2263-2273. では,
 NAFLDにおいて, NASHのリスク因子がある場合(糖尿病, 高血圧, 中心性肥満, 高TG, ≥60歳, 糖尿病の家族歴)または肝硬変を疑う所見がある場合(AST>ALT, PLT低下, INR亢進, Bil上昇など)に, 非侵襲的な画像検査を行い, それで肝硬変の所見がない場合に生検を考慮するとしている.

・ちなみに, NAFICスコアは日本国内で評価され, Validaitonも行われているスコア.
 またBARDスコアも合わせて, 覚えやすく、計算もしやすい.
 これらをふまえると,

以下の2項目以上
 フェリチン高値, 空腹時インスリン高値( or 2型糖尿病), BMI≥28

以下の1項目以上
 4型コラーゲン高値, AST/ALT≥0.8

がある場合は生検を考慮すべきという考えもありかもしれない.
(自分個人的にはこの方法で考えています)

ちなみに, NASHにおいてAST/ALT比は重要で, 線維化が進行するとAST/ALT比は増大する.
 特に敏感になりましょう
Am J Gastroenterol 1999;94:1018–1022.