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2016年2月13日土曜日

非アルコール性脂肪肝, 脂肪性肝炎(NAFLD/NASH): NAFLD, NASHの治療

NAFLD, NASHの治療で共通するのはリスク因子への介入.
・肥満, 高脂血症, 糖尿病への介入が基本となる.

NASHとなると, 肝炎所見や線維化の改善も目標に投薬治療を併用する.
治療の一覧 (JAMA. 2015;313(22):2263-2273.)
・第一選択はビタミンE (ユベラ®)
・他に効果が見込めるのはピオグリタゾンであるが, 長期使用により膀胱癌リスクが上昇する.
・メトフォルミンは効きそうなイメージがあるが, イマイチ.

ビタミンE vs ピオグリタゾン vs プラセボ
DM(-)のNon-alcoholic steatohepatitis患者247名のRCT
・Pioglitazone(30mg/d) vs Vit E(800U/d) vs Placebo で96wkフォロー(ITT)
・脂肪肝の進行度, 重症度を評価.
・重症度はSteatosis(0-3pt), Lobular inflammation(0-3pt), Hepatocellular ballooning(0-2pt)の合計で評価 (NAFLD score). 
・1pt以上の低下を改善ととる
アウトカム
Outcome
Pioglitazone
Vit E
Placebo
vs Pioglitazone
vs Vit E
改善あり
34%
43%
19%
P=0.04, NNT 6.9
P=0.001, NNT 4.2
増悪無し
48%
51%
25%
P=0.003
P<0.001
Steatosis改善
69%
54%
31%
P<0.001
P=0.005
Loblar inflammation改善
60%
54%
35%
P=0.004
P=0.02
Hepatocellular ballooning改善
44%
50%
29%
P=0.08
P=0.01
Fibrosis改善
44%
41%
31%
P=0.12
P=0.24
プラセボと比較して, ビタミンE, ピオグリタゾンは脂肪肝, 炎症所見の改善が認められる.
肝細胞の膨化はビタミンEで有意に改善. 
線維化の改善は有意差なし
(N Engl J Med. 2010 May 6;362(18):1675-85. )

ビタミンE vs メトフォルミン vs プラセボ
TONIC trial; 8-17yrのNAFLD 173例のDB-RCT.(ITT)
・Vit E 800IU/d vs Metformin 1000mg/d vs Placeboに割り付け, 96wkフォロー
・患者は生検で診断されたNAFLD患者.
Outcome; ALTの低下(基礎値から>50%の低下 or ≤40IU/Lの達成)

Vit E
Metformin
Placebo
Vit E vs Placebo
Met vs Placebo
ALT持続的低下
26%[15-39]
16%[7-28]
17%[9-29]
0.26
0.83
Baselineからの低下
(U/L)




  @24wk
-49.2[-64.4~-33.9]
-3.0[-21.1~15.0]
-24.5[-43.0~-5.9]
0.005
0.09
  @48wk
-44.5[-60.3~-28.7]
-11.7[-45.3~22.0]
-25.0[-43.7~-6.4]
0.04
0.52
  @72wk
-44.2[-65.9~-22.5]
-20.5[-59.8~18.8]
-36.4[-57.1~-15.8]
0.29
0.51
  @96wk
-48.3[-66.8~-29.8]
-41.7[-62.9~-20.5]
-35.2[-56.9~-13.5]
0.07
0.4
ビタミンEはALTの有意な低下が認められるが, メトフォルミンは有意差なし.

組織所見の変化
 肝細胞の膨化所見の改善がビタミンE群とメトフォルミンで認められる
 メトフォルミンに組織所見の改善効果はあまり期待できない.
(JAMA. 2011;305(16):1659-1668)

スタチンはどうか?
2013年のコクランレビューではNASH/NAFLDに対するスタチンの効果を評価したRCTは2つのみ
・いずれも小規模で, 有意差は認められていない.
・肝酵素やエコー所見の改善はスタチン群で若干認められる可能性はあるが, 組織の評価はされていない.
(Cochrane Database Syst Rev. 2013 Dec 27;12:CD008623.)

そしてつい最近発表されたGLP-1受容体作動薬
LEAN trial: 肥満+NASH患者52例を対象として,
 Liraglutide 1.8mg/d 皮下注射群 vs プラセボに割り付け比較したDB-RCT.
・患者は生検で証明されたNASH患者で, BMI 25を満たす患者群.
・2型DM患者はそれぞれ Liraglutide群で35%, プラセボ群で31%.
投薬は48wk継続し, 肝生検における組織の改善を評価
・組織的に改善を認めたのはLiraglutide群で39%, プラセボでは9%と有意にLiraglutideで良好(RR 4.3[1.0-17.7])
・BMIも有意に低下(WMD -1.59[-2.66~-0.51])
副作用は消化管症状が多い
 Liraglutideで低血糖は認めず.
(Lancet 2016; 387: 679–90 )

他にはFarnesoid X nuclear receptor ligand obeticholic acidという, 
6−ethylchemodeoxycholic acid(obeticholic acid)はfarnesoid X nuclear receptorアクチベーターで, 肝脂肪組織の減少効果, 線維化予防効果, 門脈圧亢進に対する効果が期待できるという薬剤もある.
・FLINT trialでは組織所見の改善, 線維化所見の改善効果が認められた(DB-RCT)(Lancet 2015; 385: 956–65 )

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NAFLDではリスク因子への介入が主であるが, NASHを疑う患者では出来れば肝生検を.
状況的に肝生検が困難な場合は, NASHとみなして, ビタミンEを開始し, 定期的な肝酵素, エコー検査や画像フォローを行う.

DM合併があればピオグリタゾン(膀胱癌リスクがあるものの、、、)という感じであったが, そこにGLP-1受容体作動薬の選択肢も加わる可能性が高い.

同じようにインクレチン製剤であるDPP-4阻害薬も効果が見込める「かも」しれません. 今後の研究に期待.

いずれDMの合併がなくてもこれらの薬剤が使用可能となる可能性もあるでしょうが, ピオグリタゾン(アクトス®)は以前からある薬剤ですが, 適応取得の動きとかはないんでしょうか?
 膀胱がんリスクや心不全リスクで使用頻度も下火ですし, あまり力もいれてないんでしょうか? その辺の事情はよくわかりません.
 DPP-4やGLP-1R作動薬ならば適応取得となるかもしれませんね.