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2015年10月8日木曜日

敗血症患者の解熱剤の使用、クーリング

発熱は体内の免疫機能の亢進, 病原体の活動性の低下作用, 抗生剤の効果を増強させる可能性が示唆されている.
 敗血症病初期の高体温は死亡リスクの低下やICU入室リスクの低下と関連があるとのObservational studyがあるが, Evidence levelは低い.

敗血症性ショック患者への体外からのクーリングが、昇圧剤使用量の減少効果、14日死亡リスクの低下効果が期待できるというStudyは以前ブログでも書いた。

敗血症性ショックにはCoolingを!


では、解熱剤の使用ではどうか?

重症患者で発熱を認める患者群を対象として解熱剤を使用する群とControl群を比較した3つRCTのMeta. (einstein. 2014;12(4):518-23 )
 1966-2013年に発表されたRCTのMeta-analysis
 Control群は治療なしか、プラセボ
 3 RCTsがあり, N= 320.
アウトカム; 解熱剤の使用は死亡リスクに影響しない結果(RR 0.91[0.65-1.28])

ICU患者を対象した, 解熱薬 vs Controlを比較した5 RCTsのMeta 
(Journal of Critical Care (2013) 28, 303–310 )
 Control群は治療なしか, 解熱剤使用の体温閾値の設定を変えた群
 解熱剤使用群の体温閾値は38.3-38.5度, Control群の閾値は40度
アウトカム: ICU死亡リスクは両群で有意差なし(RR 0.98[0.58-1.63])

敗血症患者への解熱剤の使用を評価したメタでは死亡リスクには関連しない結果であるが、小規模Studyしかなかった.
で、今回NEJMより二重盲検化ランダム化比較試験が発表

Acetaminophen for Fever in Critically Ill Patients with Suspected Infection. NEJM 2015
感染症による発熱を認める700例のICU患者を対象としたDB-RCT
 アセトアミノフェン 1g IVを6時間毎に施行する群 vs. プラセボ群に割り付け, ICU退室, 解熱, 抗生剤終了まで継続した.
 39.5度以上の発熱があればクーリングの施行は許可されている.
・患者は16歳以上で感染症(疑い含む)に対して抗生剤が使用されており, ≥38度の発熱を認めている患者群
・急性の中枢神経疾患や肝障害でアセトアミノフェンが使用不可の群は除外.
・患者のほぼ100%が敗血症を満たし, 重症敗血症は82-83%, 敗血症性ショックは18.7-21.2%, APACHE IIスコアは介入群で19.1±6.7, プラセボ群で18.7±7.5

ウトカム
 アセトアミノフェン使用群、プラセボ群で死亡リスク, ICU管理機関に有意差なし.

敗血症患者への解熱剤の使用は予後には関連しない.
体外クーリングについてはStudyが乏しく、まだ(Am J Respir Crit Care Med 2012;185:1088–1095)しかRCTはない。
今後体外クーリングと解熱剤を比較したりするデザインもあるかもしれない(盲検化は無理でしょうが)

また、39度以上の発熱では解熱剤使用は死亡リスクとなるというようなうしろ向きデータベース解析もある。

ICU患者のデータベース(MIMIC−II)より, 敗血症患者を抽出し解熱剤 or クーリングの死亡リスクへの関連を評価. (PLoS One. 2015 Mar 30;10(3):e0121919.)
 データベースより15268例を抽出し, 解熱剤/クーリングの死亡リスクへの関連を評価
 全体では解熱剤/クーリングは死亡リスクには影響しないが, 体温>39度の群では死亡リスクが上昇する結果であった

敗血症でICU管理となる患者ではとりあえず体外クーリングは積極的に行い、体温を下げる。
解熱剤は、正直どちらでもよい。患者の発熱へのストレスに応じて考慮する、という感じ。
まあ、アセトアミノフェンのIVなぞわざわざICUで使いませんな・・・実際。
坐薬か、経管投与か・・・。
えっ、メチロン!? ハハハ ご冗談を。