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2015年10月26日月曜日

ACE阻害薬の肺炎予防効果

ACE阻害薬はSubstance Pを誘導し,  喉頭過敏とすることで咳嗽が出現するが, それが嚥下機能の上昇に関連する可能性がある.

脳梗塞, TIA既往のある6105例を対象としてPerindopril vs Placeboを比較したRCT(PROGRESS trial.)で, 肺炎リスクを評価
(Am J Respir Crit Care Med Vol 169. pp 1041–1045, 2004 )
・オーストラリア, 西欧, アジアで行われたRCT

3.9年間で肺炎は261例.
・ACE阻害薬群とプラセボ群で肺炎リスクに有意差はなし
・しかしながらアジア人においてのみ有意差あり. 肺炎リスクを47%低下させる.(2.2% vs 4.1%, NNT 53)


2012年のMeta-analysis
ACE阻害薬と肺炎のリスクを評価したMeta-analysis (その大半が肺炎をアウトカムとしていない. 降圧薬として用いる薬剤を評価したStudy)
(BMJ 2012;345:e4260)
・18 RCTs, 11 cohort trialsをを含む37 trials抽出

肺炎リスク
・ACE阻害薬 OR 0.66[0.55-0.80], NNT 65[48-80]/2年
・ARBではOR 0.95[0.87-1.04]
・ACE阻害薬 vs ARBでは OR 0.70[0.56-0.86]

脳卒中患者における肺炎リスク
・ACE阻害薬 OR 0.46[0.34-0.62]
・ARBでは OR 0.86[0.67-1.09]

心不全患者での肺炎リスク
・ACI阻害薬 OR 0.63[0.47-0.84]
・ARBでは OR 0.85[0.49-1.47]

アジア人における肺炎リスク

・ACE阻害薬 OR 0.43[0.34-0.54], 非アジア人では OR 0.82[0.67-1.00]
・ARBでは OR 1.04[0.59-1.84]

ということで, ACE阻害薬は肺炎リスクを軽減する可能性がある.
市中肺炎もSilent aspirationが発症に関与している可能性も示唆されており, 肺炎全体のリスクを軽減させると認識してもよい.
ただし, これらのStudyは全て, 他の疾患に対してACE阻害薬を使用している場合のPost hoc analysisであるため, 純粋に誤嚥性肺炎予防, 肺炎予防目的でACE阻害薬を導入する場合は注意が必要となる.

純粋に誤嚥性肺炎予防としてACE阻害薬を導入したRCT
脳血管疾患にて嚥下機能が低下し, 2週間以上の経管栄養を行っている高齢者 93例を対象としたRCT.(JAMDA 16 (2015) 702-707)
・Lisinopril 2.5mg/d vs Placeboに割り付け, 26週間継続.
 12週, 26週における肺炎リスク, 死亡リスク, 嚥下機能を比較.
・嚥下機能はRoyal Brisbane Hospital Outcome Measure for Swallowingを使用(10段階で評価し, 高いほど嚥下機能は正常)

アウトカム: 15例が脱落し, 最終的に71例が26週継続.
・ACE阻害薬使用群の方が死亡リスクが上昇する結果.

・12wkにおける嚥下機能も両者で有意差はない

・死亡原因はどれも有意差はない
 肺炎による死亡例がプラセボ群で18.4%, ACE阻害薬群で42.4%と数値として開きはあるが, 統計学的有意差はない. 

肺炎の予防, 嚥下機能の改善を主目的としたACE阻害薬の使い方はまだ議論がある.
現時点で正しい使い方としては,
高血圧で最初に用いるのはARBではなくACE阻害薬であるということ
・嚥下機能の低下した高齢患者で、もしARBを使用していれば、ACE阻害薬に変更するということ