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2015年5月29日金曜日

ワーファリンかNOACか

心房細動において、抗凝固療法は重要 (参考 心房細動に対する抗凝固薬)

新規経口抗凝固薬(NOAC)は塞栓症予防効果はワーファリンと同等で、出血リスクは低下する利点がある。ただし消化管出血リスク軽減効果はない。
薬剤
塞栓症
重大出血
消化管出血
ダビガトラン 150mg bid
0.66[0.53-0.82]
0.93[0.81-1.08]
1.50[1.20-1.89]
ダビガトラン 110mg bid
0.91[0.74-1.12]
0.80[0.69-0.93]
1.11[0.87-1.42]
リバロキサバン 20mg
0.88[0.74-1.04]
1.03[0.89-1.19]
1.46[1.20-1.79]
アピキサバン 5mg bid
0.78[0.65-0.94]
0.69[0.60-0.80]
0.88[0.68-1.79]
エドキサバン 60mg
0.87[0.74-1.02]
0.79[0.69-0.90]
0.88[0.68-1.14]
エドキサバン 30mg
1.14[0.98-1.32]
0.46[0.40-0.54]
1.22[1.01-1.48]
BMJ Open 2014;4:e004301.  2015 May;47(5):429-31. 
他にはNOACは動態が安定しており、INRフォローを必要としない利点もある、が費用は高い。

Bioavailability
腎排泄率
蛋白結合率
半減期
投与量
減量基準
禁忌
術前中止時期
費用(/日)
ダビガトラン
(プラザキサ®)
6%
80%
35%
12-17h
150mg 2回/日
110mg 2回/日
CCr 30-50, ベラパミル, アミオダロン併用, 70歳以上, 消化管出血既往
CCr30, ITCZ併用時は禁忌
24−48h前
CCr 50-80では36-72h
CCr 30-50では48-96h
545.6円
478.6円
リバロキサバン
(イグザレルト®)
100%
30-40%
90%
5-9h
15mg 1回/日
10mg 1回/日
CCr 15−49
CCr15, 中等度肝障害, 感染性心内膜炎, アゾール系, 抗HIV薬併用
24-48h前
CCr 15−30では36−48h
545.6円
383円
アピキサバン
(エリキュース®)
50%
27%
87%
12h
5mg 2回/日
2.5mg 2回/日
80歳以上, 体重60kg以下, Cr1.5のうち2つ以上
CCr15
24-48h前
CCr 15−30では36−48h
545.6円
298円
エドキサバン
(リクシアナ®)
50%
35%
55%
9-11h
60mg 1回/日
30mg 1回/日
80歳以上, CCr 30−50
CCr30, 感染性心内膜炎
不明
758.1円
748.1円
ワーファリン

55-133h
INRで調節


5日前
28.8円/1mg

ワーファリンを用いる場合、>70%の時間でINRを目標域とすることが望まれる。
 ただし、ワーファリンを常にモニタリングすることも困難であり、NOACと異なり併用薬や患者の状態で血中濃度も変化してしまう。
 
ワーファリンでもNOACと同様に安定したコントロールが可能な患者群もおり、それを評価するスコアをSAME-TT2R2スコアと呼ぶ
(The American Journal of Medicine (2014) 127, 1083-1088 )

SAME-TT2R2スコア
スコア0−1ならばワーファリンでも安定した治療目標域維持が可能な可能性が高い.
≥2ptではワーファリンによるコントロールでは変動が大きく, 治療域維持が困難である可能性が増加する.

non-valvular Afでワーファリン使用中, INR 2.0−3.0を6M維持している972例においてSAMe-TT2R2 score別のアウトカムを比較 (The American Journal of Medicine (2014) 127, 1083-1088 )
 治療域達成時間の比較

 どの群も70%を超えているが, Scoreが高いほど達成率も低下する
 スコアが上昇するほど出血リスクも増加
 特に≥4では出血リスク上昇を認める

( 2015 May 19;313(19):1950-62.) のReviewでは
SAME-TT2R2スコア 0−2ならばワーファリンで
 >2ならばNOACで治療することが推奨されている。

日本人の時点で2点となってしまうものの、
SAMe-TT2R2スコアのオリジナルでは、人種は”マイノリティー”となっている。
(Chest. 2013 Nov;144(5):1555-63.)
確かに日本人ではワーファリン量が少なくてもINRが伸びやすいため、慣れている、慣れていないという点はコントロールに関与する。
我々が日本人を相手にワーファリンを使用する場合は、2点は無視してもよいのかもしれない、となるとSAMe-TT2R2スコアは有用かも。

2015年5月21日木曜日

腹腔内感染症の抗生剤は感染巣コントロールがついていれば5日間程度でOK

(N Engl J Med 2015;372:1996-2005.)
複雑性腹腔内感染症で感染巣コントロールがついた518例を対象としたRCT.
 解熱, 白血球増多(<11000/µL), イレウス改善後2日間(最大10日間)の抗生剤投与群
  vs. 4±1日間の抗生剤投与群に割つけ, 比較.
 アウトカムは30日以内の再発, 創部感染, 死亡リスク.

母集団
アウトカム
 抗生剤投与期間が5日程度でも創部感染症, 再発, 死亡リスクは両群で変わらず.
 感染巣のコントロールがやはり超重要。

2015年5月15日金曜日

セフトロザン/タゾバクタム

そのうち発売されると思われます、新しい抗生剤
第四世代セフェム + βラクタマーゼ阻害薬の合剤であるCeftolozane-tazobactamの2つのRCT.

ASPECT−cIAI (Clinical Infectious Diseases® 2015;60(10):1462–71 )
複雑性腹腔内感染症で入院中の患者993例を対象としたDB−RCT(非劣性試験).
 複雑性腹腔内感染症で腹腔ドレナージ, 開腹手術を24h以内に施行している患者群を対象

 ceftolozane/tazobactam(1.5g) + metronidazole(500mg) q8h投与群とMeropenem(1g) q8h投与群に割り付け, 4−14日間継続.

患者群の診断は以下のとおり

アウトカム
 両者で臨床的治癒, 細菌学的治癒に有意差無し.

ASPECT−cUTI (Lancet 2015; 385: 1949–56 )
複雑性下部尿路感染症, 腎盂腎炎 1083例に対してLVFXと効果を比較したDB−RCT(非劣性試験)
 ceftolozane-tazobactam 1.5g q8h vs LVFX 750mg/dを7日間継続
患者群
アウトカム

治癒率は76.9% vs 68.4%とLVFXよりもceftolozane/tazobactamの方が有意に良好であった

菌種別の評価を見ると
 腸内細菌群では有意にceftolozane/tazobactamで治癒率は良好。特にESBL産生株やProteusなどで差がついている。
 非ESBL産生の腸内細菌群でも10%近い差がついているが、LVFX耐性の腸内細菌群が増加しているのは実感としてもある(外来における濫用のせいであろう)。

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というわけで、
新薬はLVFXよりも効果的で、メロペンと同じくらいで、、、、という売り文句となるのだろうか。。。

比較するならPIPC/TAZだろうがっ、と心の中で思いつつ、
僕はそんな状況ならばやはりPIPC/TAZか、もしくはグラム染色をしつつ、あえてNarrowでいきながら調節するのでしょうね。
 

2015年5月6日水曜日

ピロリ除菌のレジメに整腸剤は入れておくべし

H. pylori除菌を行う患者804例を対象としたDB−RCT (Medicine 94(17):e685)
 通常の治療 + 整腸剤を併用 vs Placeboに割り付け14日間継続. 治療に伴う消化管症状, 除菌成功率を比較.
 整腸剤はLactobacillus rhamnosus GG(LGG), Bifidobacterium(BB-12)を108−1010含有したカプセルを、抗生剤使用の2時間前〜使用後のいずれかのタイミングで1日2回投与。

アウトカム: 追跡率は80%.
 除菌成功率は整腸剤併用群で87.4%[84.3-90.2] vs 72.6%[69.7−75.8], OR 2.62[1.71-4.02], NNT 7[5-12]と有意に整腸剤使用群で良好.

抗生剤に由来する症状リスクは
 有意に整腸剤併用群で少ない結果.
LactobacillusはミヤBM®, ビオスリー®, ビオラクチス®
Bifidobacteriumはラックビー®, ビオフェルミン®, ビオスミン®, レベニン®に含有。
LGGはヨーグルトだけ。

どれを使うかは迷いますが、整腸剤の併用はこれから増やそうとおもいます。