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2015年4月30日木曜日

下肢静脈血栓症、肺塞栓症に対するIVCフィルターについて

下肢静脈血栓症、肺塞栓症に対するIVCフィルター

IVCフィルターによる肺塞栓予防効果を評価したRCTはPREPIC 1,2 trialの2つ

PREPIC 1では近位部のDVT患者400例に対する恒久的IVCフィルターの留置を評価したRCT (NEJM 1998;330:409-15)

留置後2年、8年でアウトカムが解析されており、
留置~12D
Filter(+)
Filter(-)
OR
NNT(H)
PE
1.1%
4.8%
0.22[0.05-0.90]
27
Major bleeding
4.5%
3.0%
1.49[0.53-4.20]

死亡
2.5%
2.5%
0.99[0.29-3.42]

留置~2yr
Filter(+)
Filter(-)
OR
NNT(H)
DVT再発*
20.8%
11.6%
1.87[1.10-3.20]
10.8
症候性PE
3.4%
6.3%
0.50[0.19-1.33]

Major bleeding
8.8%
11.8%
0.77[0.41-1.45]

死亡
21.6%
20.1%
1.10[0.72-1.70]

8yr
Filter(+)
Filter(-)
OR
NNT(H)
症候性PE
6.2%
15.1%
0.37[0.17-0.79]
11.2
症候性DVT
35.7%
27.5%
1.52[1.02-2.27]
12.2
症候性静脈血栓症
36.4%
35.4%
1.12[0.78-1.62]

Postthrombotic syn
70.3%
69.7%
0.87[0.66-1.13]

死亡
48.1%
51.0%
0.97[0.74-1.28]

Major bleeding
15.4%
18.5%
0.84[0.50-1.42]

(Circulation 2005;112:416-22)

短期的には肺塞栓の発症は予防される一方、
2年間でみると肺塞栓リスクは有意差なし。DVT再発リスクは増加する結果。
8年間での評価では肺塞栓予防効果は認められている。

PREPIC 2は急性の肺塞栓 + 下肢DVT合併患者で、さらにリスク因子を1つ以上有する患者群* 399例を対象として、除去可能なIVCフィルター + 抗凝固薬 vs 抗凝固薬のみに割り付け比較したRCT (PROBEデザイン) (JAMA. 2015;313(16):1627-1635. )

*リスク因子は以下の1つ以上を満たす.
 >75歳, 活動性の悪性腫瘍, 慢性の心疾患, 呼吸器疾患,
 脳梗塞で下肢麻痺が6ヶ月以上ある,
 DVTの部位が総腸骨Vか両側性
 右心不全徴候や心筋障害が認められる

IVCフィルターは留置後3ヶ月で除去するように予定。実際除去されたのは153例。
抗凝固薬は6ヶ月間使用した。

アウトカム
肺塞栓の再発リスク、死亡リスクに有意差はない結果

不安定な肺塞栓患者(ショックや呼吸器管理が必要となる患者群)ではIVCフィルターは有用かもしれない。
肺塞栓患者に対するIVCフィルターの効果をNationwide inpatient sampleより患者を抽出して評価

 1999-2008年に肺塞栓で入院した2110320例を解析
 安定したPEでDVT(-)ではIVC filterによる死亡リスク改善効果あり
 ただしNNT 100以上と効果はイマイチ.
 不安定患者では死亡リスク改善効果が特に高い(NNT <10)
(The American Journal of Medicine (2012) 125, 478-484 )

このコホートで不安定患者のみを評価したStudyではどの年齢層でもIVCフィルター留置群で予後改善効果が認められた。(The American Journal of Medicine (2014) 127, 222-225 )

IVCフィルターの推奨
(J Am Coll Cardiol Intv 2013;6:539–47)

明らかなIVC filterの適応としては,
 抗凝固薬が使用できない場合
 抗凝固薬で効果が乏しい場合の2つのみ
 また不安定なPEでは予後改善効果が見込める

Free floating venous thrombosisはIVC filterの適応とはならない.
 Free floating venous thrombosisの存在は特にPEのリスクとはならない点, 上記血栓が認められる場合, すでに大半のPEが発症している点が理由となる (Blood Reviews 27 (2013) 225–241)

また、”除去可能”IVCフィルターといっても、実際除去されているのは半分以下という報告がある。(Blood Reviews 27 (2013) 225–241)
施設によっては<10%のところも。(JAMA Intern Med 2013;173:513-517)

2015年4月19日日曜日

チラーヂンの投与タイミング

チロキシンの投与タイミングを朝食1h前, 眠前(夕食後2h), 朝食中の3つで比較したStudy
 それぞれを8wkずつ行い, 血中TSH値を比較. (J Clin Endocrinol Metab 94: 3905–3912, 2009) 
 朝食前の内服が最もTSH値が低い. >> 吸収率が良い
 食中が最も悪い. 食後2hでも吸収率は劣る結果.

甲状腺機能低下症患者で, 治療にて安定している105例を対象としたDB−RCT(クロスオーバー) Arch Intern Med 2010;170:1996-2003
 朝食前30分の内服群と眠前に内服群に割り付け, TSHを比較
 3ヶ月で両群を入れ替えて再度比較

このStudyでは眠前の内服の方がよりTSHの低下が良好の結果

 これらの結果より、空腹時での内服が最も吸収率が良好であると考えられます。起床時か、眠前とするかはどちらでも良いですが、その選択に際していくつか考慮せねばならない問題があります。
 原発性甲状腺機能低下症では基本的にTSH値でフォローするため、内服のタイミングはいつでも良いです。早朝か、眠前かはアドヒアランスが良い方を選びましょう。
 続発性甲状腺機能亢進症ではフォローはFT4、FT3の値で行います。この値は投薬のタイミングに左右されてしまいます。採血はチラーヂン内服前に行う必要があり、したがって眠前投与ですと外来フォローが行いにくい欠点があります。(J Clin Endocrinol Metab. 2012 Sep;97(9):3068-78. ) これらの点も考慮して選択しましょう。

また、カルシウム製剤、スクラルファート、水酸化アルミニウム、鉄剤、コレスチラミン、制酸剤、コーヒーと内服するとチロキシンの吸収率は低下します。(Med Clin N Am 96 (2012) 203–221)
ビタミンCとの併用では吸収はUPします。(J Clin Endocrinol Metab 99: E1031–E1034, 2014) 
これも覚えておきましょう。

2015年4月15日水曜日

炎症性腸疾患と大腸癌

[炎症性腸疾患の悪性腫瘍リスク、フォロー]
 潰瘍性大腸炎では年間0.1-0.12%で、クローン病では年間0.07%大腸癌を発症する。長期間、広範囲の腸炎では大腸癌発症リスクも高い。(N Engl J Med. 2015 Apr 9;372(15):1441-52.)

大腸癌発症のリスク因子
 長期間の罹患、若年からの罹患(<15歳の発症でリスクは4倍)。
 広範囲の腸炎(潰瘍性大腸炎において肝湾曲部まで病変があればリスクは大きい)
 原発性硬化性胆管炎との合併(潰瘍性大腸炎で20年で33%、30年で40%で大腸癌合併)
 結腸、直腸癌の家族歴
 炎症が高度
 逆流性回腸炎
(World J Gastroenterol. 2012 Aug 7;18(29):3839-48.)

炎症性腸疾患における大腸癌のスクリーニング
  • UC、CD診断時には全例で大腸内視鏡を行う。
  • 初回内視鏡での所見、炎症性腸疾患の状態、合併症の有無より悪性腫瘍リスクを評価し、その後のフォロー間隔を決定する(表)。
(表) 悪性腫瘍リスクに応じたフォロー間隔
リスク

下部消化管内視鏡検査の期間
低リスク群
全結腸型UCで内視鏡, 組織所見的に活動性病変を認めない
左側結腸型UC
CDで結腸の<50%の罹患
5年毎
中リスク群
全結腸型UCで以下のいずれかを満たす
内視鏡, 組織所見的に軽度の活動性病変
炎症後ポリープを認める
第一親等に大腸癌の家族歴(>50歳で発症)
3年毎
高リスク群
全結腸型で以下のいずれかを満たす
内視鏡, 組織所見的に中等度以上の活動性病変
5年以内の腸管狭窄歴
5年以内の異形成所見
原発性胆汁性硬化症の合併、治療歴
第一親等に大腸癌の家族歴(<50歳で発症)
1年毎
(World J Gastroenterol. 2012 Aug 7;18(29):3839-48.)

  • 初回内視鏡時に評価困難な異形成を認めた場合は6-12ヶ月後に再検査を行う。
  • 初回内視鏡時に低悪性度~高悪性度の異形成を認めた場合
     単一~少数の異形成で内視鏡的切除術が可能ならば切除を行い、6ヶ月後に再検査。
     複数の異形成、内視鏡切除術が困難な低悪性度では6ヶ月後に再検査。
     複数の異形成、内視鏡切除術が困難な高悪性度では大腸切除術を行う。
     6ヶ月後の内視鏡再検査にて再度異形成が認められた場合は大腸切除術を考慮する。
     6ヶ月後の内視鏡再検査にて再度異形成が認められなかった場合は以後1-2年毎にフォロー。
  • 初回内視鏡時に進行性癌が認められた場合は大腸切除術を行う。(N Engl J Med. 2015 Apr 9;372(15):1441-52.)

2015年4月12日日曜日

IgG4関連胆管炎 vs 原発性硬化性胆管炎

原発性硬化性胆管炎(PSC)とIgG4関連胆管炎は病態が似ているものの、ステロイドへの反応性が大きく異なるため、鑑別が重要となる。

PSCは基本的に治療薬は乏しく、対症療法が基本。肝硬変となるリスクが高い
IgG4関連胆管炎ではステロイドが著効する。他のIgG4関連疾患との合併も多い。

PSC患者ではIgG4値を測定し、疑わしければ組織検査を行い両者を鑑別するのであるが、IgG4関連疾患におけるIgG4カットオフ(>140mg/dL)をしばしば超えるPSCもあるため、両者の鑑別が困難となることがある。

HEPATOLOGY 2014;59:1954-1963 
IgG4関連胆管炎 73例, PSC 310例, PBC 22例(コントロール群)でIgG4を評価したStudyより
 IgG4>140mg/dLとなるのはPSCの15%, IgG4胆管炎の90%
 >560mg/dLでは特異度100%となるが, 感度も42%のみとなる。

IgG4/他のサブクラス 比が両者の鑑別に有用な可能性があり,
 特にIgG4/IgG1比は両者の鑑別に有用かもしれない.

IgG4>140mg/dLの患者群において, IgG4/IgG1 >0.24は感度92%[82-97], 特異度 64%[49-78]でIgG4関連胆管炎を示唆する
ただし, IgG4>280mg/dL群ではIgG4/IgG1比は診断に寄与しない
IgG4 140−280mg/dL群では感度80%[51-95], 特異度 74%[57-86]でIgG4関連疾患を示唆.

これを踏まえてアルゴリズムを作成
 IgG4値≥560mg/dLならばIgG4関連胆管炎と診断
 IgG4<140では除外(IgG4関連胆管炎の可能性は3%)
 IgG4 140−280ではIgG4/IgG1比を評価し, 比<0.24ならば検査後確率は10%、PSCと判断
  比>0.24ならば検査後確率は55%. 組織検査を行う.
 IgG4 280−560では検査後確率 74%, 比は使用できないため、組織検査を行う.

 このアルゴリズムで感度86%、特異度 95%でPSCとIgG4関連胆管炎の判別が可能としている.

 今後の追試次第ですが、他にいろいろなIgG4関連疾患の診断のヒントに使用できればいいです。


2015年4月8日水曜日

葉酸による脳梗塞の一次予防効果

JAMA. 2015;313(13):1325-1335. 
CSPPT trial: 中国において, 高血圧(+), 脳梗塞(-), MIの既往(-)を満たす患者20702例を対象としたDB−RCT
 MTHFR C677T genotypeを評価(CC,CT,TT)し, 遺伝子型も評価.
 MTHFRはMethylenetetrahydrofolate reductaseで葉酸代謝に関連.
 MTHFR C677T TTは上記酵素の活性が低下し, 葉酸が低下し, 動脈硬化リスクとなることがわかっている.
 TT型は日本人では10数%と言われている

上記を満たす患者群を 
エナラプリル10mg + 葉酸 0.8mg/d vs エナラプリルのみに割り付け, 脳梗塞, 脳虚血の発症率を評価.

母集団: 中国ではCC 27%, CT 49%, TT 24%の分布

遺伝子型別の葉酸値、葉酸値の変化
 TT型では葉酸値は低い傾向. 葉酸投与の有無に関わらずStudy終了時には葉酸値は上昇している。

アウトカム:
全体の評価では葉酸を投与した群でよりStrokeリスクは低下.
ADD 0.7%, NNT 141[85-426]/4.5年間

遺伝子型、葉酸値別の評価
CCとCT型では葉酸値が低いほどStrokeリスクは高い。
 葉酸値が平均よりも低い場合は葉酸の補正にてStrokeリスク軽減効果が期待できる。

TT型では葉酸値に関わらずStrokeリスクが高い. 
 葉酸値が低くても葉酸補充によるStrokeリスクの軽減効果は乏しい。

--------------------
MTHFR C677T TT型では葉酸が低いため、補充でStrokeリスクが改善するかどうかというと実はしない。
むしろ遺伝子型がCC, CTの患者で葉酸が低い場合は葉酸補充でリスクが改善するという結果。
一般人口ではCC CT型の方が多い為、葉酸値を評価して低い場合は補充、という考えはアリかもしれない。
その場合のカットオフは< 9ng/mL程度となる。

2015年4月3日金曜日

成人における自己炎症性症候群の予測スコア

成人例の繰り返す発熱を呈する患者群において、成人の発症もありえる家族性地中海発熱とTRAPSの原因遺伝子であるMEFV遺伝子、TNFRSF1A遺伝子変異の存在を予測する因子を抽出し、329例でValidationを施行。

FMF、TRAPSの可能性を上昇させる因子は
発症年齢(OR 0.43)、
繰り返す発熱の家族歴がある(OR 5.81)、
発熱時に胸痛がある(OR 3.17)、
発熱時に腹痛がある(OR 3.80)、
発熱時に皮膚所見がある(OR 1.58)であった。

(Delivation, Validation: Int J Immunopathol Pharmacol. 2010 Oct-Dec;23(4):1133-41.)
(Validation: Int J Immunopathol Pharmacol. 2011 Jul-Sep;24(3):695-702.)

これらからスコアを作成
因子

スコア
因子

スコア
発症年齢
>60歳
51−60歳
41−50歳
31−40歳
21−30歳
11−20歳
<10歳
-2.315
-1.574
-1.110
-0.390
-0.261
-0.591
0
胸痛*
常にあり
しばしば
時に
なし
1.297
1.235
0.763
0
腹痛*
常にあり
しばしば
時に
なし
2.107
0.898
0.586
0
皮疹*
常にあり
しばしば
時に
なし
0.771
0.228
0.110
0



家族歴†
あり
なし
2.865
0
*発熱時の症状として認め、他の理由がない。†繰り返す発熱の家族歴。

スコア = -0.15 + [年齢] + [腹痛] + [胸痛] + [皮疹] + [家族歴]で計算
スコア≥-0.985で感度73%、特異度73%、LR+ 2.7、LR- 0.37でFMFもしくはTRAPSの遺伝子異常がある可能性が示唆される。(Autoimmun Rev. 2012 Nov;12(1):10-3.)

2015年4月2日木曜日

市中肺炎の治療: マクロライドの併用について(Up Date)

市中肺炎の治療: マクロライドの併用について
入院が必要な市中肺炎, 菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎では, Macrolideを併用することで予後が改善する可能性がある.
 理由は2つあり, 1つは非定型カバー目的, もう1つは, いくつかのObservational studyにて有意差を認めている点. Eur Respir J 2007; 30: 525–531


ただし, Studyは全てObservational studyであり, Evidence Levelは低い.
(併用群は非定型を考慮する患者で多い = 若年, 基礎疾患が少ない)
 現時点での認識は, 重症市中肺炎, 菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎のみ, Macrolide + β-Lactamとの併用が効果的である可能性がある程度.
 しかも, 重症肺炎の “重症”の定義は曖昧. Chest 2005;128;940-946

44814名の市中肺炎患者の解析(Retrospective) Chest 2003;123;1503-1511
 重症肺炎は除外.
 CTRX, 他のCephem, MC, PC, FQの単剤治療と, 各薬剤 + MC併用群を比較. 
 MC単剤治療群は軽症, 若年が多い.

薬剤単剤 vs MC併用で比較すると,
 死亡率は明らかに併用群の方が低い.
 ARR -5% ~ -3%あり, NNTは20-33とかなり良いが...
 母集団をみると, 単剤群と比較して, MC単剤, MC併用群は5歳前後若く, リスクもA-Bが多い.
 併用群の母集団はむしろMC単剤群に近い印象.
 MC単剤群の死亡率は2.19%と低く, やはりBiasが強い印象がある.

入院適応の市中肺炎に対するMacrolideの併用療法; Propensity scoreを用いた解析. Eur Respir J 2007; 30: 525–531
 Prospective observational trial;  
 169名の単剤療法群と282名のMacrolide併用療法群を比較.
 併用群はより若年, 基礎疾患(COPD)が少ない傾向. 寝たきりも有意に少ない.
全体の死亡率は単剤群で22%, 併用群で7%と有意に併用群の方が死亡率は低い.
Propensity scoreを用いた解析(各群27名抽出)では,
 各群で死亡者は3名(11%).
 Propensity score, PSIで調節した死亡OR 0.69[0.32-1.48]と有意差無し

Macrolideによる市中肺炎治療のmeta-analysis Clinical Infectious Diseases 2012;55(3):371–80
 23 trials, N= 137574, (5 RCTs, 18 cohort trials) 
 Macrolideは有意に死亡率を低下させる (3.7% vs 6.5%, RR0.78[0.64-0.95])
 ただし, Macrolide併用 vs FQ単剤群の比較では有意差無し (RR 1.17[0.91-1.50]) 
 5 RCTsのみのMeta-analysisでも有意差は認めれず. (RR 1.13[0.65-1.98]) 
 Cohort trialsのみで有意差を認めるという結果 (RR 0.75[0.61-0.92]) 
 やはりSelection biasが強い可能性がある.

580例の市中肺炎で入院した患者を対象としたRCT (Open-label, non inferiority trial.) JAMA Intern Med. 2014;174(12):1894-1901. 
 ≥18歳, 免疫正常群, 14日以内の入院歴なし, 施設入所者ではない. 中等症の市中肺炎(PSI category ≤IV)
 β-Lactam単剤 vs β-Lactam+Macrolide併用群に割り付け, 予後を比較
 レジオネラ肺炎と判断された際は, 両群でMacrolideを使用.
 Macrolideはクラリスロマイシン 500mg 2回/日, 経口 or IVを使用.
母集団
アウトカム
 Primary outcomeは7日目に臨床的安定を得られない状態と設定
 臨床的安定とは以下を満たす場合.
  HR <100bpm, sBP>90mmHg, BT<38度, RR<24, SpO2>90%(RA)
 アウトカムは退院後30日の際入院率が単剤投与群で高いのみで他は有意差なし.

Sub解析では,
 非定型肺炎でのみ併用によるアウトカム改善効果が認められる.
 PSIやCURB−65, 年齢別の評価では有意差なし.

CAP−START: 市中肺炎患者を4ヶ月毎にβラクタム単剤, βラクタム+マクロライド, FQの治療をローテーションし, 治療効果を比較したCluster−RCT. (N Engl J Med 2015;372:1312-23.)
平均年齢は70歳
 βラクタムで治療したのが 656例, 90日死亡率は9.0%
 βラクタム+マクロライド 739例, 90日死亡率は11.1%
 FQ 888例, 90日死亡率は8.8%
 どの群でも死亡率は有意差なし

VAP+敗血症患者群 200例を対象としたDB−RCT Clinical Infectious Diseases 2008;46:1157–64
 抗生剤治療 [+ Placebo] vs [+ Clarithromycin 1g/d] 3日間投与で比較.
 VPAの期間, 人工呼吸期間, 28d敗血症由来死亡率を比較. 
アウトカム

 VAP改善までの期間は併用群で有意に短期間となる.
 また, 死亡率は有意差無いが, 死亡までの期間はClarithromycin併用でより延長する. >> 臨床的な意義は?

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市中肺炎に対してマクロライドの併用は予後を改善させる、と言われてはいたが、コホートの結果からが殆どであり、RCTからは有意差はないという結論となる。
重症ならばどうかはまだStudyがない。
VAPについては併用すると早く改善する可能性があるかもしれないが、予後は改善させない。使っても良いのかもしれない、程度。

一つ言えることは普通の市中肺炎に使用する意義はないと思う。