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2015年4月2日木曜日

市中肺炎の治療: マクロライドの併用について(Up Date)

市中肺炎の治療: マクロライドの併用について
入院が必要な市中肺炎, 菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎では, Macrolideを併用することで予後が改善する可能性がある.
 理由は2つあり, 1つは非定型カバー目的, もう1つは, いくつかのObservational studyにて有意差を認めている点. Eur Respir J 2007; 30: 525–531


ただし, Studyは全てObservational studyであり, Evidence Levelは低い.
(併用群は非定型を考慮する患者で多い = 若年, 基礎疾患が少ない)
 現時点での認識は, 重症市中肺炎, 菌血症を伴う肺炎球菌性肺炎のみ, Macrolide + β-Lactamとの併用が効果的である可能性がある程度.
 しかも, 重症肺炎の “重症”の定義は曖昧. Chest 2005;128;940-946

44814名の市中肺炎患者の解析(Retrospective) Chest 2003;123;1503-1511
 重症肺炎は除外.
 CTRX, 他のCephem, MC, PC, FQの単剤治療と, 各薬剤 + MC併用群を比較. 
 MC単剤治療群は軽症, 若年が多い.

薬剤単剤 vs MC併用で比較すると,
 死亡率は明らかに併用群の方が低い.
 ARR -5% ~ -3%あり, NNTは20-33とかなり良いが...
 母集団をみると, 単剤群と比較して, MC単剤, MC併用群は5歳前後若く, リスクもA-Bが多い.
 併用群の母集団はむしろMC単剤群に近い印象.
 MC単剤群の死亡率は2.19%と低く, やはりBiasが強い印象がある.

入院適応の市中肺炎に対するMacrolideの併用療法; Propensity scoreを用いた解析. Eur Respir J 2007; 30: 525–531
 Prospective observational trial;  
 169名の単剤療法群と282名のMacrolide併用療法群を比較.
 併用群はより若年, 基礎疾患(COPD)が少ない傾向. 寝たきりも有意に少ない.
全体の死亡率は単剤群で22%, 併用群で7%と有意に併用群の方が死亡率は低い.
Propensity scoreを用いた解析(各群27名抽出)では,
 各群で死亡者は3名(11%).
 Propensity score, PSIで調節した死亡OR 0.69[0.32-1.48]と有意差無し

Macrolideによる市中肺炎治療のmeta-analysis Clinical Infectious Diseases 2012;55(3):371–80
 23 trials, N= 137574, (5 RCTs, 18 cohort trials) 
 Macrolideは有意に死亡率を低下させる (3.7% vs 6.5%, RR0.78[0.64-0.95])
 ただし, Macrolide併用 vs FQ単剤群の比較では有意差無し (RR 1.17[0.91-1.50]) 
 5 RCTsのみのMeta-analysisでも有意差は認めれず. (RR 1.13[0.65-1.98]) 
 Cohort trialsのみで有意差を認めるという結果 (RR 0.75[0.61-0.92]) 
 やはりSelection biasが強い可能性がある.

580例の市中肺炎で入院した患者を対象としたRCT (Open-label, non inferiority trial.) JAMA Intern Med. 2014;174(12):1894-1901. 
 ≥18歳, 免疫正常群, 14日以内の入院歴なし, 施設入所者ではない. 中等症の市中肺炎(PSI category ≤IV)
 β-Lactam単剤 vs β-Lactam+Macrolide併用群に割り付け, 予後を比較
 レジオネラ肺炎と判断された際は, 両群でMacrolideを使用.
 Macrolideはクラリスロマイシン 500mg 2回/日, 経口 or IVを使用.
母集団
アウトカム
 Primary outcomeは7日目に臨床的安定を得られない状態と設定
 臨床的安定とは以下を満たす場合.
  HR <100bpm, sBP>90mmHg, BT<38度, RR<24, SpO2>90%(RA)
 アウトカムは退院後30日の際入院率が単剤投与群で高いのみで他は有意差なし.

Sub解析では,
 非定型肺炎でのみ併用によるアウトカム改善効果が認められる.
 PSIやCURB−65, 年齢別の評価では有意差なし.

CAP−START: 市中肺炎患者を4ヶ月毎にβラクタム単剤, βラクタム+マクロライド, FQの治療をローテーションし, 治療効果を比較したCluster−RCT. (N Engl J Med 2015;372:1312-23.)
平均年齢は70歳
 βラクタムで治療したのが 656例, 90日死亡率は9.0%
 βラクタム+マクロライド 739例, 90日死亡率は11.1%
 FQ 888例, 90日死亡率は8.8%
 どの群でも死亡率は有意差なし

VAP+敗血症患者群 200例を対象としたDB−RCT Clinical Infectious Diseases 2008;46:1157–64
 抗生剤治療 [+ Placebo] vs [+ Clarithromycin 1g/d] 3日間投与で比較.
 VPAの期間, 人工呼吸期間, 28d敗血症由来死亡率を比較. 
アウトカム

 VAP改善までの期間は併用群で有意に短期間となる.
 また, 死亡率は有意差無いが, 死亡までの期間はClarithromycin併用でより延長する. >> 臨床的な意義は?

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市中肺炎に対してマクロライドの併用は予後を改善させる、と言われてはいたが、コホートの結果からが殆どであり、RCTからは有意差はないという結論となる。
重症ならばどうかはまだStudyがない。
VAPについては併用すると早く改善する可能性があるかもしれないが、予後は改善させない。使っても良いのかもしれない、程度。

一つ言えることは普通の市中肺炎に使用する意義はないと思う。