それは理解した上で、
なかなかドレナージしにくい部位; 肝膿瘍や腎膿瘍や、脳膿瘍、腹腔内膿瘍などにおいて
どのサイズまでならば抗生剤で押し切れるかというのは難しい問題。
例えば、
脳膿瘍ならば2.5cm以上では穿刺吸引が推奨されるが、そのエビデンスはない。(N Engl J Med 2014;371:447-56.)
硬膜外膿瘍ならば神経圧迫がある場合はデブリ、ドレナージすべき。
憩室炎で膿瘍を認めた場合は4cm以上ならばドレナージを考慮すべき。(NEJM 2007;357:2057-66)
などの推奨はある。
古いStudyであるが、
465例の膿瘍患者(主に肝臓, 脳, 腎臓)において, ドレナージをせず、抗生剤のみで治療したCase reportのreview. というものがある (Clinical Infectious Disease 1996;23:592-603)
膿瘍部位と抗生剤のみでの治療成功率
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全体
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治療成功率
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肝膿瘍
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176例
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81.2%
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脳膿瘍
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143例
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89.5%
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腎膿瘍
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55例
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80.0%
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硬膜外膿瘍
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44例
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90.9%
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眼窩骨膜下膿瘍
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19例
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94.7%
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脾膿瘍
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17例
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88.2%
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膵膿瘍
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6例
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100%
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心臓, 弁膿瘍
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5例
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100%
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精嚢膿瘍
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1例
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100%
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治療失敗のリスク因子は,
≥5cmの膿瘍 OR 37.7[2.1-691]
多数菌の感染 OR 5.2[1.54-17.5]
Gram陰性菌 OR 3.4[1.3-8.8]
抗生剤投与期間<4wk OR 49.1[6.2-388]
アミノグリコシドのみで治療 OR 11.8[2.1-65.7] であった。
多数菌の感染 OR 5.2[1.54-17.5]
Gram陰性菌 OR 3.4[1.3-8.8]
抗生剤投与期間<4wk OR 49.1[6.2-388]
アミノグリコシドのみで治療 OR 11.8[2.1-65.7] であった。
複数の膿瘍は治療失敗のリスク因子とはならない
このデータを元に、<5cmの腎膿瘍49例を抗生剤のみで治療したStudyがあり、
(平均3.6cmの膿瘍で、その50%が大腸菌が原因) その前例が抗生剤で治療可能であったという報告もある。(Yonsei Med J 51(4):569-573, 2010)
個人的な経験でも刺しにくい場所の腎膿瘍とか、多房性の肝膿瘍を長期間の抗生剤で押し切れたことも少なからずある。
肝膿瘍や腎膿瘍ではこの5cmという大きさを一つの指標と考えても良いのかもしれない。
ただしエビデンスレベルはこの程度しかないということは認識しておく必要があるでしょう。
当然リスクが少なく刺しやすいところならば当然刺すべきですけども!