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2014年11月14日金曜日

心房細動 治療: Rhythmコントロールについて

心房細動 治療: Rhythmコントロールについて
心房細動のリスク因子はこちら
心房細動と脳梗塞リスクについてはこちらを参照
心房細動 治療: Rate vs Rhythmコントロールはこちら
心房細動 治療: Rateコントロールについてはこちら
心房細動 治療: Rhythmコントロールいついてはこちら
心房細動と心不全はこちら

よく使用される抗不整脈薬 BMJ 2009;339:b5216

維持量
HFでの使用
副作用
Class IA
disopyramide(リスモダン®)
非適切
避ける(死亡率↑)
避ける(死亡率↑)
Class IC
Flecainide(タンボコール®)
50-200mg q12hr
不可(陰性変力作用あり)
弁膜症患者では死亡率
HF, GI, 神経症状, 複視

Propafenone(プロノン®)
150-300mg q8hr
Gi症状, めまい, 不整脈
Class III
Sotalol(ソタコール®)
80-160mg q12hr
不可(陰性変力作用)
低血圧, 徐脈, HF, 神経

Dofetilide(未承認)
125-500mg q12hr
QT
延長に注意
可能
頭痛, めまい, 悪心
徐脈, 不整脈

Amiodarone(アンカロン®)
100-200mg/d
可能
徐脈, AV-B, 甲状腺
前立腺, 虹彩, 肝傷害

こういう薬剤を使用しますが、もうすこし受容体にこだわると
有名なSicilian Gambit (心房細動ガイドライン2008より)
各受容体の役割
Ch, 受容体

Na-ch Paf, 期間の短いAfの除細動に効果的とされる.
Fast, Med, Slow
とあり, Fastは即効性, Slowは洞調律維持に関与
副作用としてQRS延長に関わる.
K-ch 7日以上持続したAf, リモデリングが進んでいる場合にはK-chブロッカーが効果的.
QT
延長に関わる
α

β

M2 食後のPaf出現. など, 副交感神経が関与するAfにおいて予防効果, 除細動効果が期待できる.
発症48hr以内のAfではNa-ch阻害薬が効果的
 ピルジカイニド(サンリズム®); 副作用が少ない, 心抑制も低い
 シベンゾリン(シベノール®); 心抑制あり. K-ch阻害
 プロパフェノン(プロノン®); 心抑制あり
 ジソピラミド(リスモダン®); 副作用が多め.
 フレカイニド(タンボコール®)

発症48-7dの心房細動では, Slow kinetic Na-ch阻害薬を.
 除細動前の抗凝固が必要.

発症7d以上経過したAfのリズムコントロール
 心房細動発症初期にはNa-chを標的とすることがベスト.
 長期持続, 繰り返すAfでリモデリングが進行すると, Na-chがDown regulationを受けるため, Na-ch遮断薬の効果が低下. 催不整脈性に働く可能性がある.
 その時点ではK-ch遮断作用の持つ薬剤が効果的である可能性.
 心機能低下が無く, QT延長も無く,  Na-ch阻害薬で除細動困難な症例では,
 ベプリジル(ベプリコール®); Ca-ch阻害作用もあり
 ソタロール(ソタコール®); β阻害作用もあり
 アミオダロン(アンカロン®); 心抑制無いが, 副作用は多い.
 ベプリジルによる除細動困難例では, アプリンジン(アスペノン®)の併用も効果的.
 心機能低下例ではアプリンジン, ベプリジル投与が推奨される.
*リモデリング; 心筋の不応期の短縮. 洞調律で24hr経過すればBaselineに戻る.

上記で示したようなAfが生じる状況, 持続期間の情報と,
薬剤の代謝経路
陰性変力作用があってもよいかどうか(心不全の有無) から使用する薬剤をチョイスする.

薬剤の代謝経路

国内の薬剤投与量

メモ)アミオダロンの使い方
 アンカロン注 150mg/3mL
 125mgを5%TZ 100mlに溶解し, 10分で投与.
 その後, 5A(750mg)を5%TZ 500mlに溶解し, 33ml/hrで6時間(200ml), その後17ml/hrで18時間(300ml)
 翌日, 750mgを5%TZ 500mlに溶解し, 17ml/hrで24時間投与し, 終了

海外のReviewより
除細動目的で使用される薬剤と洞調律維持目的で使用される薬剤
(Lancet online first, 2011, Dec)



除細動時の抗凝固について 心房細動ガイドライン2008
クラスI クラスIIa
発症後48hr以上持続, 持続時間不明例では
除細動前3wk, 4wkのワーファリン治療が必要(INR2-3, ≥70yrではINR1.6-2.6)
電気的, 薬剤除細動両方.
発症後48hr未満のAfでは, 除細動後の抗凝固は患者のリスクに応じて行う.
発症後48hr以上持続するAf, 血行動態不安定なため直ちに除細動が必要な場合はヘパリン投与によりAPTT1.5-2倍とし, 除細動後はワーファリン療法を4wk行う. 除細動前の経食道エコーによる左心耳, 左房内血栓の有無の確認(発症48hr以上経過したAf)
 血栓(-)の場合, ヘパリン投与し, 迅速な除細動. その後は最低4wk以上のワーファリン療法
 血栓(+)の場合, 最低3wkのワーファリン療法を行い, 除細動施行. 除細動後は4wkのワーファリン療法を継続.
発症後48hr未満ならば抗凝固なしで除細動可能. 心房粗動では心房細動と同様の抗凝固.
発症48h以内の除細動時の血栓症リスクについて
フィンランドのRetrospective cohort.  JAMA 2014;312:647-649
 除細動したタイミングと血栓症頻度を評価.

<12h
12-24h
24-48h
血栓症イベント
0.3%[0.1-0.6]
1.1%[0.7-1.6]
1.1%[0.4-1.8]
女性
0.4%[0-0.8]
2.4%[1.1-3.6]
2.5%[0.5-4.6]
男性
0.3%[0-0.6]
0.6%[0.2-1.0]
0.5%[0-1.1]
CHADS2 0-1
0.2%[0-0.4]
1.0%[0.5-1.5]
0.9%[0.2-1.6]
CHADS2 >1
1.0%[0-2.0]
2.0%[0.4-3.7]
1.9%[0-4.1]
CHA2DS2-VASc 0-1
0.2%[0-0.4]
0.4%[0-0.8]
0.9%[0-1.8]
CHA2DS2-VASc >1
0.5%[0.1-0.9]
2.0%[1.1-2.9]
1.2%[0.2-2.3]
初回除細動
0.4%[0.1-0.8]
1.3%[0.6-2.1]
2.0%[0.6-3.3]
繰り返す除細動
0.2%[0-0.6]
0.6%[0-1.4]
0.6%[0-1.9]
 血栓症のリスク因子
 48時間以内でも血栓症のリスクはありえる. できれば12h以内がよいかもしれない.
 また, DMやHF, 高齢者では高リスクとなりえる.

経食道エコーを用いた除細動時の血栓評価
ACUTE trial; ≥48hr持続しているAf患者1222名のRCT. NEJM 2001;344:1411-20

 TEEで確認し, 除細動施行群* vs Conventional-treatment群**に割り付け
 *TEEにて血栓確認★
  → 血栓(-)ならばヘパリン投与後に除細動, その後4wkのワーファリン治療
  → 血栓(+)ならば3wkのワーファリン治療. その後再度TEE → ★
 **除細動前3wk~除細動後4wkのワーファリン治療
除細動成功率;
 TEE群では, 68.7%が早期に電気的除細動施行(3.0±5.6d)
  その内80.9%が成功.
 Conventional群では55.2%が電気的除細動(30.6±10.6d)
  その内79.9%が成功.自然, 薬理除細動例は127例.
血栓症頻度, 死亡率は有意差なし.
出血リスクはややConventional群で高い.

除細動後の抗不整脈薬の期間は?
209名の症候性, 再発性Af患者を対象としたRCT;  JAMA 2008;300:1784-92
 Episodic vs Continuous treatmentで比較, 1.5yrフォロー
 Episodic; 洞調律1Mo維持後に中止, Af再発にて再開
 Continuous; Amiodaroneを継続内服. Amiodarone 600mg/d 4wk ⇒ 電気的除細動 ⇒ 200mg/d継続
Outcome
Episodic
Incidence rate
Continuous
Incidence rate
Incidence rate
Difference
Amiodaroneによる副作用(/100人年)
10.0[6.4-15.5]
12.0[7.9-18.2]
-2.0[-8.7~4.6]
基礎心疾患による影響(/100人年)
8.5[5.3-13.6]
4.9[2.6-9.4]
3.6[-1.6~8.7]
Outcome
Episodic
Continuous
Absolute Difference
全死亡, 心血管障害による入院(%)
53%
34%
18.8[1.0-36.7]
 Amiodaroneによる副作用; 皮膚障害, GI症状, 肝傷害, 肺障害, 甲状腺亢進, 低下, 神経障害, 眼症状, 心血管障害
 基礎心疾患による影響; 虚血, 心不全, 出血, 血栓症, 死亡
投与方法により副作用の頻度は変わらないが, 再発率, 死亡・入院のRiskは継続投与のほうが少ない.

≥18yrの持続性Af患者で, 待機的なCardioversionを施行.
除細動に成功した635名のOpen-label RCT. Lancet 2012; 380: 238–46
 全例で除細動48hr前よりFlecainide 100mg bid~tidで投与.
 その後除細動行い, 除細動後に抗不整脈薬無し(Placebo) vs Flecainide 4wk vs Flecainide 6mo に割り付け, 6ヶ月間評価. 持続性Af再発, 死亡リスクを評価.
アウトカム;
 最初の4wkで, PlaceboよりもFlecainide投与群の方が再発率が有意に低くとなったため, Placebo群への割り付けはそこで終了.
 以後Flecainide 4wk vs 6moのみの割り付けとなった. (70.2%[63.0-77.3] vs 52.5%[41.4-63.6], p=0.0160)

持続性Afの再発率は, 4wk投与群で46%, 6mo投与群で39%.
 Per-protocol population(A), ITT(B)双方で両者に有意差は無し(p=0.208, p=0.107)
 死亡例は両者で1例もなし.
最初の1moに再発, 死亡(-)群を, 1mo以降フォローした評価では,
 6mo投与群の方が有意に死亡, 再発率は低い (Difference 14.3%[5.1-23.6])(HR 0.31[0.18-0.56]) 
 QOLは4wk群, 6mo群で同等.

心房のAction potentialは洞調律化してから2-4wkで正常化するため, その間の抗不整脈薬が推奨されている.
投与期間は長い方が良好だが, 4wkのみの投与でも殆どのAfを予防することは可能.
抗不整脈薬の副作用との兼ね合いで期間は決めるとよい

アブレーション治療について
MANTRA-PAF trial; 治療歴のないPaf患者 294名のRCT. N Engl J Med 2012;367:1587-95.
 Radiofrequency catheter ablation vs 抗不整脈薬(IC,III)に割り付け,3, 6, 12, 18, 24moに7日連続Holter ECGを行い, Pafを評価.
 患者はリズムコントロールが適切と判断可能なPaf患者で, 抗不整脈薬の使用歴が無い患者.
 >70y, LAD>50mm, EF<40%, 心不全(NYHA III-IV), 心奇形, 感染, 甲状腺機能亢進症は除外.
 アブレーションの前3wkからWarfarinを開始し, INR 2.0に維持.
 施行前日にTEEを行い, 血栓が無いことを確認し, 施行.
 平均年齢は55±10歳.
Paf-freeは~18moまでは両者同等.
 @18moからはアブレーション群の方が有意にPafは減少する.
 症候性Pafは7% vs 16%とアブレーション群の方が少なく, 薬剤投与群の36%がアブレーションを施行.
 アブレーションした患者群で1名が脳梗塞を合併し死亡, 3例で心タンポナーデを合併.

DISCERN Af study; Ablation前後のAfの頻度を比較 JAMA Intern Med. 2013;173(2):149-156.
 Implantable cardiac monitorを用いて, Ablationの3ヶ月前〜試行後18ヶ月までの不整脈頻度を評価したProspective trial. N=50. 
アウトカム;
 Af, AF, AT頻度は有意に低下.
 不整脈の持続時間も短縮する.
 無症候性の割合も有意に増加.

RAAFT-2 trial; 未治療のPaf 127例を対象としたRCT JAMA. 2014;311(7):692-699.
 抗不整脈薬群 vs アブレーション群に割り付け, 24mフォロー.
 患者は症候性の30秒以上続くPafを認める患者(6mで4回以下)で, 6ヶ月以内に抗不整脈薬の使用歴が無い患者群
 EF<40%, LAD>5.5cm, 中等度〜重度のLVH, 弁膜症, 冠動脈疾患, 心臓手術後6ヶ月以内, ヘパリン, ワーファリン禁忌の患者は除外.
 抗不整脈群の薬剤選択, Dose upはガイドラインに準じた使用で, 90日間かけて投与量は増加させてゆく.
 90日間の治療でも改善ない場合はアブレーションへ移行可能. (副作用で継続困難な場合, >30secの症候性Pafを認める場合)
アウトカム: Pafの再出現率(A), 症候性のPafの再出現率(B)

 アブレーション群のほうが有意にPafのリスクを軽減させる.
 死亡や脳梗塞は両群で認めず,  アブレーション群で4例の心タンポナーデを認めた.
 QOLは両者で同等.