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2014年8月3日日曜日

血管内リンパ腫 Intravascular Lymphoma

血管内リンパ腫 Intravascular Lymphoma (IVL)について
The Oncologist 2006;11:496-502

Extranodal Diffuse Large B-cell Lymphomaの一つ
小血管内でのリンパ球の増殖であり, 周辺組織は保持されることが多い
 →
リンパ節, 網内系ですら保持される
B-cell系が一般的(91%)であるが, T-cellの場合もある(9%)

症状は侵襲される臓器に由来する; 
 欧米ではCNS, 皮膚が最多となるが, アジア人では異なる(後述)
 不明熱の原因としても重要である
 診断は侵襲臓器の組織生検 ⇒ 困難のことも多い

疫学
 34-90歳, 平均70歳; 男性=女性, Asiaで多い
 CD11a, CD49dの発現が報告されている
  (内皮細胞にはCD54, CD106が発現し, CD11a, CD49dと親和性をもつ)
 予後は不良, 3年生存率32%, 平均生存期間12M (Br J Haematol 2004;127:173-183)

臨床症状
稀な疾患のため, 報告により頻度はマチマチ
 CNS浸潤ではMRIにて多発性の脱髄所見を認める (腫瘍による脳梗塞, T2, FLAIR)
 意識障害, 運動障害, けいれんなど
 皮膚障害は様々な形態をとり得る
 他, 間質性肺炎, 肺高血圧, MI, 多発関節炎など
症状
頻度
Lab test
頻度
発熱
45%
LDH上昇
86%
CNS症状
34%
貧血
63%
皮膚症状
39%
WBC減少
24%


PLT減少
29%
Br J Haematol 2004;127:173-183

IVL38例の解析: British Journal of Haematology 2004;127:173–183
平均年齢は70y[34-90], 男女比は0.9とほぼ同等.
臨床症状頻度;
症状
単一症状として
複数症状の1つとして
Total
全身症状
9(24%)
12(32%)
21
 発熱
3
4
7
 発熱+Wt低下±寝汗
5
4
9
 発熱+寝汗
0
1
1
 Wt低下のみ
1
3
4
皮膚所見
10*(26%)
5(13%)
15
神経症状
5(13%)
8(21%)
13
疼痛
1(3%)
7(18%)
8
倦怠感
0
6(16%)
6
消化器症状
0
2
2
尿路症状
1
2
3
心障害
0
2
2
浮腫
0
2
2
呼吸苦
0
1
1
皮膚症状のみの10名を, IVLのCutaneous variantと呼ぶ

まとめると, IVLのプレゼンテーションは以下のパターンが多い
 原因不明の不明熱(体重減少, 寝汗, 倦怠感を伴う)
 皮膚症状が主
 神経障害が主
皮膚所見の特徴
 広範に分布する有痛性の結節性紅斑, 皮疹.
 境界不明瞭な紫斑.
 オレンジの皮様の浮腫
 蜂窩織炎
 大型, 単独の斑状病変
 有痛性の青〜赤色のpalpable nodular discoloration,
 腫瘍性病変
 潰瘍性の結節
 小型のpalpable spots などなど
IVLの神経障害
 運動, 感覚障害
 髄膜神経根炎
 感覚麻痺
 脱色素斑
 構音障害, 嚥下障害, 片麻痺, 痙攣, ミオクローヌス
 一過性の視力障害, めまい など非特異的な所見が多い.
罹患臓器部位;

アジア, 特に日本では血球貪食症候群(HPS)との合併が非常に多い
(日本44%, 日本以外のAsia 19%, その他 0%) (Haematologica 2007;92:486-92)
血球貪食症候群合併例以外では症状に地域差は無い

Asian-Variant IVL (AIVL) British Journal of Haematology, 2000, 111, 826-834
西欧, 欧米のIVLは神経障害, 皮膚症状が多い症状だが, 日本国内のIVL報告例では, 上記は少なく, HPSの合併, 骨髄浸潤が多い.
 HPS合併, 骨髄浸潤(+)で, 皮膚や神経障害を認めないIVLをAsian-variant IVLと呼ぶ
 肝脾腫を伴うことも多い(6-7割).
 呼吸不全も多い合併症(8割). 肺の毛細血管内の腫瘍細胞浸潤が認められている.
 血球減少は貧血とPLT低下が大半.
 WBCは上昇することもあるが, 1万/µLを超えることは稀.

AIVLの診断基準: 


日本国内より, HPSを合併したIVL 16例のデータ Leukemia and Lymphoma 1999;33:489-473

IVL with HPS(16)


年齢
53-83y
貧血
87%
男:女性
13:3
WBC低下
7%
発熱
100%
WBC上昇
21%
神経症状
31%
PLT低下
93%
皮膚症状
0%
骨髄浸潤
47%
リンパ節腫大
8%
末梢血に腫瘍細胞
17%
肝腫大
73%
DD/FDP上昇
43%
脾腫大
60%
LDH上昇
100%
呼吸障害
88%
CRP上昇
90%
黄疸
42%
平均生存期間
0.5-14mo

AIVL 25例の解析 British Journal of Haematology, 2000, 111, 826-834
Monoclonal gammopathyは5/25で認められ,IgM/κが2名, Igκ, IgG/κ, IgMが1例ずつ.
AIVLの予後; 25名のフォロー
IVLの診断: 組織生検
病変部位からの生検が唯一の診断法
異常細胞を認めた部位
頻度
脳組織
43%
皮膚
39%
肝脾
26%
骨髄
32%
リンパ節
11%
Br J Haematol 2004;127:173-183

末梢血中に異型細胞が出現することは稀
 Western countries; 4%, Japanese; 5.7%, Other Eastern Countries 0%
(Haematologica 2007;92:486-92)

Random Skin Biopsyも有用である可能性
(Mayo Clin Proc 2007;82:1525-27)(Am J Med 2003;114:56-58)
亀田病院 8か月で, 6例のIVLをRandom Skin Biopsyにて診断した報告がある. The Oncologist 2006;11:496-502
 皮膚所見(+)は2/6のみであった


IVLの治療
DLBCLが多いため, CHOP療法, CD20+ならばRituximabを併用したR-CHOPが推奨される.
R-CHOPでの反応率
 Partial Response; 45%
 Complete Remission: 14%
 Overall Response Rate; 59%

3CHOP + MACE-CytaBOM
(Cyclophosphamide, Doxorubicin, Etoposide, Cytarabine, Bleomycin, Vincristine, MTX)
mBACOD + ProMACE-CytaBOM
(MTX, Bleomycin, Doxorubicin, Cyclophosphamide, Vincristine, Dexamethasone)
Br J Haematol 2004;127:173-183