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2014年2月27日木曜日

Common Variable Immunodeficiency (CVID)

Common Variable Immunodeficiency
(Am J Rhinol Allergy 27, 260–265, 2013)

B cell分化の障害により低免疫グロブリン状態を呈する病態
最も多い原発性の免疫不全症で, 細菌感染を繰り返す.
 様々な原因があり, 上記病態を呈する. 未だ不明なものも多い.
 発症年齢も様々で小児〜成人まである. 20-40歳が最も多いが, 20歳未満の発症も20%で認める.
 1/25000-50000人の割合だが, 未診断例も含めるともっと多い.
 発症〜診断までの期間は5-10年間と言われている.

CVID患者ではB cellは40-50%低下している.
 一部でB cellが増加している症例もあるが, その場合はpolyclonalなリンパ球の臓器浸潤や自己免疫機序によるものが多い.
 B cellが著明に低下している or 消失している症例は10%と稀. この場合, 病勢の進行も早く, X-linked agammaglobulinemiaやGood’s syndrome(B-cell aplasia associated with thymoma)の除外が必要.

免疫グロブリンの低下はTerminal B-cellがMemory B-cell, 形質細胞への分化障害に関連している
 Class-switched memory B cellは80-90%低下している.

CVIDの機序, 原因
大半のCVIDの原因は不明. 家族歴陽性なのは10-20%のみ.
 一部で遺伝子の異常が判明するが, 稀.
 多い異常としてはTNFRSF13Bの変異. TNFRSF13BはTransmembrane activator, Ca modulator, Cyclophilin ligandをコードする遺伝子(TACI).
 TACIの変異はCVIDの~8-10%で認められる. 
 TACIの変異がある患者ではより自己免疫疾患や脾腫を合併することも多い傾向がある.

他の遺伝子異常では, 
 T-cell costimulator (ICOS), CD19, CD81, CD20, CD21, B-cell activating factor of the tumor necrosis factor family-R(BAFF-R).
 これらの遺伝子異常はTACIと含めてもCVID全体の<10-15%程度の頻度.
Arthritis Research & Therapy 2012, 14:223

CVIDの症状

最も多い症状は繰り返す細菌感染症.
 上気道, 下気道感染症が多い(中耳炎, 気管支炎, 副鼻腔炎, 肺炎)
 原因菌はEncapsulated bacteria(H influenzae, Streptococcus pneumoniae). 他はMycoplasma, Ureaplasma等の非定型細菌も原因となる.
 日和見感染は<10%程度と少ない.

先天性の無ガンマグロブリン症(X-linked agammablobulinemia)と異なり, CVIDではT cellの異常も認められる.
 CVIDで “Late-onset combined immune deficiency”と呼ばれる日和見感染 + T cell低下(CD4<200cell/mm3)を呈する病態では, 消化管障害や肉芽腫性疾患, 脾腫, リンパ腫を発症し得る.

消化管感染症は無ガンマグロブリン症と同じCampylobacter jejuni, Salmonella sp, Giardia lambliaが多い.
 肝炎の頻度もCVID患者では~12%と高い. C型肝炎もCVID患者では急速に進行する.

感染症の頻度;

(1) N=248
(2) N=473
(3) N=252
再発性呼吸器感染症
98%
94%
91%
肺炎
76.6%
40%
58%
髄膜炎
<1%
NS
7.9%
ウイルス性肝炎
6.5%
3.4%
1.2%
Giardia腸炎
3.2%
2.3%
13.9%
再発性帯状疱疹
3.6%
2.5%
11%
カリニ肺炎
2.8%
1.3%
<1%
サルモネラ感染
1.2%
<1%
7.5%
マイコプラズマ感染
2.8%
<1%
NS
カンジダ症
1.2%
<1%
<1%
Mycobacteria感染
<1%
<1%
<1%
Papilloma virus
NS
<1%
<1%

(1)Clin Immunol 1999, 92:34-48. (2)Blood 2011,119:1650-1657. (3)Clin Infect Dis 2008, 46:1547-1554.
原因菌の頻度 (252例のCVID症例の解析)(Clinical Infectious Disease 2008;46:1547-1554)

感染症以外のCVIDに合併する疾患

肺病変
 肉芽腫性, リンパ増殖を認める間質性肺炎(Lymphocytic IP, Follicular bronchiolitis, Lymphoid hyperplasia), Granulomatous lymphocytic ILD(GLILD)はCVIDの~10-25%で合
 ILDの合併も予後に強く関連する(13.7年 vs 28.8年: ILD(-)例)

非乾酪性肉芽腫性病変は様々な部位に認められる
 肺, 骨髄, 肝臓, リンパ節.
 サルコイドーシスと類似しているが, ステロイド反応性はない.
 肉芽腫性疾患に加えて, リンパ節へのPolyclonalはリンパ球の浸潤, 非悪性の過形成を20%程度で認められる.
 リンパ球浸潤は肺や肝臓, 腎臓等他の臓器にも認められる.

CVID患者の~15%で悪性腫瘍を合併.
 非ホジキンリンパ腫, 胃癌が多い. リンパ腫ではExtranodal, B cell由来, 非EBV関連が多く, 40-70歳台.

CVID患者では外来抗原に対する抗体産生は低下するが, 自己抗体産生は亢進する.
 CVIDに自己免疫疾患が合併する割合は~20-25%. 最も多いのはITPとAIHAで11-12%で合併する.

(1) N=248
(2) N=473
(3) N=311
AIHA
4.8%
7%
5.4%
ITP
6%
14.2%
13.2%
Neutropenia
<1%
<1%
3.2%
関節リウマチ
3.6%
3.2%
2.6%
白斑症
NS
<1%
3.9%
Sicca syn, Sjogren syn.
<1%
<1%
4.2%
自己免疫性甲状腺疾患
糖尿病, 多発性硬化症
<1%
<1%
3.9%
脱毛症
1.6%
1.1%
NS
悪性貧血
1.2%
<1%
NS
SLE
<1%
<1%
<1%

(1)Clin Immunol 1999, 92:34-48. (2)Blood 2011,119:1650-1657. (3)J Autoimmun 2011, 36:25-32.
AIHAは主に温式抗体であり, DATはIgG+C3パターンが最多.
 C3のみ凝集するパターンも稀ながらあるが, 寒冷凝集素は認められない.
(Medicine 2008;87:177–184)

CVIDの消化管症状
 最も多い症状は一過性, 慢性の下痢症で21-57%で認める.
 細菌, 寄生虫感染症に加えて, 慢性胃炎, IBDも合併し得る.
 小腸障害(celiac disease with short villi, crypt hyperplasia, intraepithelial lymphocytosis)を生じ, それが下痢や低栄養, 吸収障害に関連.

473例のCVID症例の解析 (Blood. 2012;119(7):1650-1657)
男性208例, 女性265例. 発症時の年齢は男性24歳, 女性27歳.
CVID症例の検査値の分布

合併症の頻度

CVIDの診断クライテリア
 ◯ IgGの低下と, IgA, IgMの低下を認める.
 ◯ ワクチン接種で免疫がつかない
 ◯ IgGが低下するようなPrimary immunodeficienciesを除外
 ◯ IgGが低下する様な二次性の疾患を除外
 ◯ 2歳以上である.

CVID患者では, 診断時IgG値は<450mg/dLであるのが94.2%
 ほぼ全例でIgA低下(<5mg/dL)を伴うが, IgM低下は半数で認められる程度.
ワクチン後の免疫反応の評価では
 Tetanus, Diphtheria toxoid, H influenzae B, 肺炎球菌ワクチン等 接種後3-4wkで抗体の増加を評価する.
2歳以上という項目は, <2yでは無ガンマグロブリン症との鑑別が困難であるという理由のため

CVIDと鑑別が必要な疾患
他の原発性免疫不全症
 X-linked agammaglobulinemia
 XLP(X-linked lymphoproliferative disease)
 Hyper-IgM syndrome
二次性の原因
 薬剤性(ステロイド, アザチオプリン, サイクロスポリン, Dペニシラミン, 金製剤, スルファサラジン, カルバマゼピン, レベチラセタム, Oxcarbazepine, フェニトイン, リツキシマブ等)
 消化管, 腎臓からの蛋白漏出
 B細胞リンパ腫
 骨髄抑制, 不全


CVIDの治療
 治療は免疫グロブリンの補充で,ガンマグロブリン 400-600mg/kg/moで補充を開始する.
 静注ならば3-4wk毎, 皮下注ならば1-2wk毎に上記を分割投与.
 皮下注の方が安全に投与可能との報告がある.
 投与量はIgG値で調節するのではなく, あくまでも感染症予防目的.
 ただし, 治療前のIgG値の評価は行われることが多い.
 肺病変(+)患者ではより多量の投与を必要とする.
 IgG値は6-12m毎にフォローし, トラフ値を500mg/dLで維持する.

CVIDによるITP, AIHAではRituximabが有効な可能性がある
 CVIDにAIHA, ITPを合併した33例のRituximab使用経験では, 反応率は85%. CRは74%であった. ただし再発例も多い. (British Journal of Haematology, 2011;155:498–508)

 脾摘も有効ではあるが, 感染予防の観点から避けるべき(Am J Rhinol Allergy 27, 260–265, 2013)