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2014年1月20日月曜日

強皮症と肺胞出血

強皮症(SSc)に伴う呼吸器, 肺障害は間質性肺炎や肺高血圧が有名であり, ANCA関連血管炎やOverlap syndrome(RA, SLE)でもなければ肺胞出血は稀である.

 上記に当てはまらず, SSC+びまん性肺胞出血は2001年の症例報告をみると, それまでに報告された症例は5例程度しかないとの記載がある. (Med Sci Monit, 2001; 7(5): 1013-1015)

肺高血圧症 + 強皮症腎クリーゼに肺胞出血が併発した症例報告もあり, その場合はステロイド投与でさらに増悪する可能性がある. 

一方でステロイドパルスに著効した症例報告もあり, SSc+肺胞出血の症例では機序の推定が重要となる(Rheumatol 2001;7:115-119)

強皮症に伴う肺胞出血の機序としては,
小血管炎, 毛細血管炎 (ANCA関連血管炎, D-ペニシラミンによるGoodpasture-like syndrome)
免疫複合体沈着 (Overlap syndrome)
肺高血圧(クリーゼ)に伴う肺胞出血
免疫不全に伴う感染症 (細菌性肺炎, カリニ肺炎, 真菌感染) が挙げられる.

また, これらは急性腎不全を伴うことが多く(特に血管炎やクリーゼ), その場合Pulmonary-Renal syndromeと呼ばれる(PRS)
PRS15例の症例報告では,
 ● 年齢は33-68歳. ステロイドユーザーは5例であった.
 ● 血栓性微小血管溶血(TMA)合併は7/15で認められ, その内6例が血圧正常腎クリーゼ+肺胞出血であった. (ANCAや抗GBM抗体の有無は不明.)
 ● 残りの8例中, 4例でANCA陽性で血管炎所見を認めた.
 ● それ以外に4例でDペニシラミンによるGoodpasture-like syndromeの病理所見を認めた. その殆どが2-3年間使用している症例であり, ANCAや抗GBM抗体は陰性.
(Mod Rheumatol (2007) 17:37–44)

強皮症におけるPRSの原因;

強皮症における肺胞出血は稀なものの, 致命的な病態の1つとなる.
機序も1つのみではなく, 自己免疫性, 非自己免疫性としてクリーゼや感染症もある. 非免疫性の場合はステロイドがマイナスに働く可能性もあり, 注意が必要.

機序を推定し, 迅速な対応が必要な病態である.