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2016年3月21日月曜日

アスピリンは抗 黄色ブドウ球菌 効果がある かもしれない

(Crit Care Med 2016; 44:773–781)より
アセチルサリチル酸は抗Staphylococcal作用があるとの研究結果があり, ブドウ球菌菌血症に対して効果がある可能性が示唆されている.
・ASAはSpecific structural S. aureus geneを低下させる作用がある(hla, fnmaなど)
・また, 動物実験では, SA菌血症+IEにおいて, ASAの使用は弁の疣贅のサイズが縮小され, 菌密度も低下する報告がある.
・しかしながらヒトにおける臨床研究はほとんど無い

後ろ向きコホートにおいて, 黄色ブドウ球菌菌血症例 838例,  大腸菌菌血症症例 602例のうちから, Propensity scoreを用いて低用量アスピリン使用群 vs 非使用群を抽出し, 30日死亡率を比較.
・低用量は≤300mg/dで定義
・黄色ブドウ球菌菌血症は314例, 大腸菌菌血症は268例を抽出.

母集団データ

・ASA使用群ではスタチン併用も多い.

母集団データの続き と アウトカム
Propensity-score matched analysisでは, ASA使用群で有意に死亡リスクの低下効果が認められる.

黄色ブドウ球菌菌血症における 30日死亡リスクに関連する因子をPropensity-score matehced cohortで評価
多変量解析でも低用量アスピリンは死亡リスク低下効果が認められる.

ちなみに, 大腸菌菌血症群での評価では, 低用量アスピリンによる死亡リスク低下効果は認められなかった(HR 0.78[0.40-1.55])

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まさかアスピリンが効くとか!
前向きStudyを渇望!

2016年3月20日日曜日

アカラシア: 特発性と二次性(悪性腫瘍)の比較

高齢者におけるアカラシアでは悪性腫瘍を念頭におく必要がある.

どのような悪性腫瘍が原因となるか?
直接浸潤による機序
(J Gastrointest Surg. 1999 Sep-Oct;3(5):456-61.)

直接浸潤では食道癌, 胃噴門部癌, 胃リンパ腫, 中皮腫など胸膜の腫瘍,
転移性腫瘍が原因となる.

その辺は想像に難くない.

非直接浸潤(傍腫瘍症候群としての)によるアカラシアもある
肺小細胞癌では直接浸潤はなくても, 二次性のアカラシアやGastroparesisをきたす.
・腫瘍が産生する抗Hu抗体(ANNA-1抗体)が関連している
 ANNA: anti neuronal nuclear antibodies
・抗ANNA-1抗体産生は肺小細胞癌で多く認めるが, 他に前立腺癌, 乳癌, メラノーマ, リンパ腫, 肺扁平上皮癌でも報告がある.
(Am J Med Sci 2009;338(1):69–71)

特発性 vs 二次性(悪性腫瘍性)の比較

悪性腫瘍に伴うアカラシア18例と特発性421例の比較
悪性腫瘍は胃食道接合部の腫瘍が16例, 他は十二指腸が1例, 乳癌が1例
二次性の年齢は57.1歳[範囲 15-78], 特発性では47.1歳[範囲 1-90]と有意に二次性の方が高齢であるが, 特発性の範囲も幅が広い
症状出現からの期間は二次性で4.5ヶ月, 15/18が6ヶ月未満と短い
体重減少は二次性で88.2%, 特発性では57.3%と有意に多い結果
(Am J Gastroenterol. 1990 Oct;85(10):1327-30.)

6例の二次性症例と161例の特発性を比較.
二次性では平均年齢62歳, 特発性では44歳と有意に二次性で高齢.
 60歳以上で発症したアカラシアの9%が二次性(腫瘍性)
体重減少は二次性で10kg[0-23.5], 特発性で2.3kg[0-22.7]
症状持続期間は二次性で3ヶ月[1-48ヶ月], 特発性で24ヶ月[1-600]
(Am J Med. 1987 Mar;82(3):439-46.)

Literature reviewによる二次性67例, 特発性の比較

高齢, 短期間で増悪, 体重減少が高度, この3つは二次性のリスク!
(J Gastrointest Surg. 1999 Sep-Oct;3(5):456-61.)


食道造影所見も踏まえた両者の比較

悪性腫瘍によるアカラシア 10例, 特発性29例の比較
腫瘍は食道癌が3例, 胃噴門部癌が3例, 肺癌が3例, 子宮が1例.
・両者で有意差があるのは年齢, 嚥下障害の期間, 狭窄部位の長さ, 近位部の食道拡張の径.
・二次性では高齢者で, より進行が早い傾向がある
(AJR 2000;175:727–731)

二次性(17例)と特発性(30例)の食道造影所見の比較
・二次性は食道癌が10例, 胃噴門部癌が6例, 胃食道接合部のリンパ腫が1例.
特発性では初診時の年齢は39歳[18-74],  症状出現〜受診まで3.5年[3ヶ月〜10年]
 二次性では初診時の年齢は49歳[31-78], 症状出現〜受診まで3ヶ月[1-11ヶ月]
・造影所見:

特発性
二次性
狭窄部 < 椎体高
53%
24%
狭窄部 > 椎体高
27%
41%
狭窄部が2椎体高に近い
0
35%
拡張部径 < 椎体高
20%
65%
拡張部径 > 椎体高
47%
35%
拡張部径が2椎体高に近い
23%
0
Tram-track所見
57%
0
Shouldering
0
88%
Filling defects
0
94%
左右対称
100%
29.5%
Tertiary contractions
90%
23.5%
Indian J Radiol Imaging. 2015 Jul-Sep; 25(3): 288–295. 

狭窄部がより長く, 拡張部がより狭いのは二次性を疑う.
他にShoulderingやFilling defects, 左右非対象, Tram-track所見(-)は二次性を示唆する所見

特発性を示唆する所見

二次性を示唆する所見
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・まず高齢発症で, 体重減少が著明で, 経過が早いアカラシアは要注意と覚えておく.
・さらに造影所見も重要であるが, これらは直接浸潤によるアカラシアであり,
 直接浸潤によらない機序(抗ANNA-1抗体陽性例)もあるため注意する.
・抗ANNA-1抗体陽性となる腫瘍は, 肺小細胞癌, 肺扁平上皮癌, 乳癌, 前立腺癌, メラノーマであり, その辺のスクリーニングもしても良いかもしれない.

2016年3月18日金曜日

ビタミンB12欠乏と銅欠乏による神経障害

ビタミンB12欠乏, といえば巨赤芽球性貧血で有名であるが,
神経障害もなかなか多く, 重要な鑑別疾患の1つとなる.

Vit B12欠乏患者の40%で神経障害を合併する
・ビタミンB12は中枢, 末梢神経におけるミエリン合成に関わるため, 欠乏により脱髄性障害が生じる.
・Vit B12欠乏性神経障害の20%
・逆に巨赤芽球貧血患者の1/3で神経障害(-)
・末梢神経障害, 認知障害など様々な神経障害を呈する.
 また自律神経障害も伴い, 神経因性膀胱の原因にもなる(N Engl J Med 2013;368:149-60.).
神経障害
Vit B12欠乏
正常
32%
認知障害
26%
情動障害
20%
亜急性連合変性症
16%
末梢神経障害
40%
視神経萎縮
2%
(Lancet Neurol 2006;5:949-60)

ビタミンB12欠乏と末梢神経障害
・ビタミンB12欠乏による末梢神経障害は, 多発神経障害のパターンとなる.
 下肢の感覚障害, 振動覚の低下, 深部腱反射低下を認めるが, 後述する亜急性連合脊髄変性症を合併する場合は深部腱反射は亢進し, バビンスキ反射は伸展する.

ビタミンB12欠乏による神経障害の特徴として, 以下の点が挙げられる
 ・より急性に発症
 ・脊髄症状を伴うことが多い
 ・上肢から発症することや, 診断時に上下肢の症状が認められる
 ・巨赤芽球性貧血や栄養障害が認められる
(Handb Clin Neurol. 2014;120:915-26. )

324例の多発神経障害患者(そのうち27例がVit B12欠乏)の症状を評価し, 比較.
(Arch Neurol. 2003;60:1296-1301)
・Vit B12欠乏では突如発症例が30%, 
 上肢を含む神経障害が78%
 上肢から発症した症例が22%と有意に多い結果.

153例のビタミンB12欠乏症例のうち, 114例(74.5%)で神経障害が認められた
(Medicine 1991;70:229-245)
神経症状の頻度
神経症状
n=114


感覚鈍麻, ヒリヒリ感
51
失調歩行
14
上記+ 失調歩行
 + 無嗅覚, 無味覚
 + 便秘
 + 下肢脱力
14
1

1
1
上記
 +
下肢脱力
 +
巧緻運動障害
 +
排尿障害
 +
人格変化
1
上記+下肢脱力
6
記憶障害
4
上記+巧緻運動障害
5
下肢脱力
2
上記+コイン識別困難
2
起立性ふらつき
2
上記+記憶障害
1
味覚、嗅覚低下
2
上記+勃起不全
1
Paranoid psychosis
2


視力低下
1
神経症状のパターン
神経障害パターン

脊髄症±神経症
40.5%
末梢神経症
25%
脊髄症
11.8%
両側性小脳失調
8.1%
視神経症
0.5%
神経異常なしの対麻痺
14.1%
ビタミンB12欠乏と亜急性連合脊髄変性症
亜急性連合脊髄変性症は脊髄の後柱, 側柱に脱髄が生じ, 徐々に増悪する四肢の痺れ, 脱力, 感覚性運動失調, 痙性対麻痺を呈する病態
・バビンスキー反射は陽性となり, 関節位置覚や振動覚は低下する.
・通常左右対称性であり, 片側性の場合は他の原因を考慮.
・末梢神経障害や視神経障害も伴うことがある.
・亜急性連合脊髄変性症のおもな原因はVit B12欠乏であるが, 銅欠乏も同様に亜急性連合脊髄変性症を呈するため注意.
(Handb Clin Neurol. 2014;120:915-26.)

亜急性連合性脊髄変性症の画像所見
ビタミンB12欠乏における脊髄病変は頸髄〜上位胸髄の後索, 側索に生じる.
・前部の障害もまれながら報告されている
(Nutrients. 2013 Nov 15;5(11):4521-39.)

・病変部位はおもに頸髄〜上位胸髄となる
・MRI所見の感度は15-50%程度と高くはない

Vit B12欠乏による亜急性連合変性症 36例中19例(52.8%)でMRIにて脊髄病変を認めた
頸髄病変が12例, 胸髄病変が7例.
・後索病変が18例で, 1例が前部の障害
(Asia Pac J Clin Nutr. 2016 Mar;25(1):34-8.)

Vit B12欠乏による亜急性連合変性症 54例の画像評価では,
MRIで脊髄病変が検出されたのは8例のみ(14.8%)
・病変部位は頸髄がほぼ全例.
・治療により所見は改善.
(J Neurol Sci. 2014 Jul 15;342(1-2):162-6.)


銅欠乏による神経障害
・銅欠乏では失調, 痙性歩行, 神経症, 眼神経症, 運動神経変性を呈する.
・亜急性連合脊髄変性症の原因の1つ.
失調は感覚性失調が主であり, 振動覚の低下を伴うことも多く, 後索障害が示唆される.
・腱反射は減弱するが, Babinski徴候は陽性となる.
(Clinical Chemistry 57:8 1103–1107 (2011))

銅欠乏による脊髄症 13例の解析
(NEUROLOGY 2004;63:33–39 )
・年齢は45-78歳. 
・背景疾患は亜鉛や鉄の摂取, 胃摘出後, 吸収不良が多いが5例は不明.
・症状, 所見: 感覚失調, バビンスキやDTRは亢進, 感覚低下が多い.

Labでは血清Cu, セルロプラスミンの低下が認められる.
亜鉛摂取の病歴がないのに, 亜鉛値が高い例も多い.

神経内科で診断された銅欠乏による神経症 25例
(Mayo Clin Proc. 2006;81(10):1371-1384 )

症状, 血液検査所見, ビタミンB12欠乏の既往
ビタミンB12欠乏の既往がある患者が1/3で認められる.

原因としてあるのは亜鉛摂取, 胃摘出後や胃縮小術, 吸収不良症候群.
原因不明も多くある.
 >> ビタミンB12欠乏のリスク因子ともオーバーラップしている

血清銅の低下し, 血清亜鉛は正常〜上昇することが多い.

銅欠乏による神経症患者の画像評価では頸髄〜胸髄のT2高信号領域が認められる,
・画像所見の分布もVit B12欠乏による亜急性連合脊髄変性症と同様
(Mayo Clin Proc. 2006;81(10):1371-1384 )(NEUROLOGY 2004;63:33–39 )

また銅欠乏でもビタミンB12欠乏と同じように貧血や汎血球減少を呈する.
・機序は異なり, 巨赤芽球性貧血ではなく, MDS様の骨髄所見が認められる.

2003-5年で原因不明の貧血 or MDS疑いでNorth Carolinaの大学病院に紹介された患者126名.
・その内8名(6.3%)がCu欠乏症であった. 
・年齢 32-71yr, 全例女性. MCV 81-101. 7例が正球性, 1例のみ大球性.
骨髄異形成は7/8で(+). Neu減少合併7/8, 神経障害5/8.
・基礎疾患; 慢性下痢, MGUS, 胃摘後3例, IBS, 無しが2例
(Am. J. Hematol. 82:625–630, 2007)

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ビタミンB12欠乏により神経障害や精神症状を呈する.
・貧血を伴わない例も多く, それら症状がある場合は必ず鑑別に.
・ビタミンB12欠乏による神経障害の特徴は上肢も絡みやすい点, 脊髄症状も伴う点.

銅欠乏とビタミンB12欠乏のプレゼンテーションは酷似しているため, セットで押さえる.
・リスク因子もオーバーラップする.
また, 合併していることもあり得る
・Vit B12補充でも反応が軽度あるが, 不十分な場合, 銅欠乏の合併の可能性もあるため, 評価した方が良い