ブログ内検索

2014年12月22日月曜日

Tolvaptan(サムスカ®)について

長いのでまず初めにまとめると
Tolvaptan(サムスカ®)は,
⚫︎ 急性心不全で使用するとより早く利尿がつく. 症状コントロールが可能だが, 予後は改善させない.
⚫︎ 慢性心不全で使用すると, 心不全増悪による入院頻度が有意に低下する.
 >>基本的には利尿薬でVolコントロールが困難な患者で用いるべきと考える.

⚫︎ 肝硬変の難治性腹水への使用では8割で効果が期待できる

⚫︎ Euvolemic, Hypervolemic hyponatremiaへの使用では
 水制限よりもNa補正効果が良好.
 3%NaClには劣る. 注意点は最後を参照.

心不全へのTolvaptan
心不全では有効循環血液量が低下し, ADH分泌が更新している状態となり悪循環に陥る
 Tolvaptanはvasopressin V2受容体阻害薬であり, 心不全や肝不全による体液貯留, 低Naの治療薬として期待されている

急性心不全の治療におけるTolvaptan(TLV)

NYHA II-IIIのEF<40%, うっ血所見(+)の心不全患者83例 (J Cardiac Fail 2011;17:973-981) 
 Placebo vs TLV 30mg vs Furosemide 80mg vs TLV+FUROに割り付け, 7日間継続.

 塩分制限2g/dを割り付け2日前より継続.
アウトカム:尿量は有意にTLV投与群にて増加する
TLV使用群ではFurosemide併用の有無に関わらず尿中Naは低下し, 血清Na値も低下しない

EVEREST trial: 心不全で入院した4133例のDB−RCT JAMA. 2007;297:1319-1331 
 NYHA III-IVでEF≤40%, 溢水症状がある患者群.
 入院時に心筋梗塞あり, 血行動態不安定, Cre>3.5, K>5.5, Hb<9は除外.
 通常治療に加えて, Tolvaptan 30mg/d群 vs Placebo群に割り付け.
アウトカム
 死亡, 心血管イベントリスク, 心不全増悪リスクは有意差なし.
 体重減少, 呼吸苦, 浮腫改善はTLV使用群で有意に良好.
 血清NaもTLV使用群では増加する.
 副作用は口渇感, 口腔内乾燥が11-16%と高頻度で認められる.

急性心不全におけるTolvaptan vs Carperitide: AVCMA
 109例の慢性心不全のうっ血による急性増悪例を対象としたRCT. The Journal of Clinical Pharmacology 2013;53:1277-1285
 心筋梗塞や無尿, Na>147mEq/L, ショックは除外
 Tolvaptan(サムスカ®) 3.75-15mg/d vs Carperitide(ハンプ®)0.0125-0.025µg/kg群に割り付け.
アウトカム:
 Tolvaptan群のほうが有意に尿量が多いが, 飲水量も増加する
 臨床症状は有意差ないが, BNPはTLVで有意に低下.
 NaもTLVで高い

AVCMAの長期予後を評価したStudyでは再入院率, 死亡率, 心臓イベント率は有意差なし
BioMed Research International Volume 2014, Article ID 704289 

日本国内の発売後調査による副作用 (Circ J 2014; 78: 844–852) 
 口渇感と高Na血症が多く, 投与開始1−3日で出現する例が最多
 高Na血症のリスク因子としては初期Na>142, 15mg/dからの開始, 血清K<3.8mEq/Lが挙げられる。

慢性心不全に対するTLVの効果
NYHA II-III, EF≤30%の心不全患者240例 (J Am Coll Cardiol 2007;49:2151–9) 

 通常の治療に加えて TLV 30mg/d vs Placeboに割り付け
 1年後のLV end-diastolic vol.を比較したDB−RCT.
 Cre>3.0mg/dL, BUN >60mg/dLは除外
LVEDVI, 電解質, VAS全て有意差はない.
死亡は5% vs 9%, 心不全入院は18% vs 28%と有意にTLVで減少効果が認められる.
 おもにHFの入院を抑制できるかもしれない.

肝硬変に対するTLV
肝硬変による腹水貯留に対するTolvaptan(サムスカ®
難治性の肝硬変による腹水貯留患者39例において, TLV 15mg/dを5−14日間とFurosemide 40-80mg/d, Spironolactone 80-160mg/dを投与. World J Gastroenterol 2014 August 28; 20(32): 11400-11405 
 上記治療以外に塩分制限<6g/d, Alb 10−20g投与も併用.
 難治性腹水は以下を行ってもコントロール不良群
  NaCl<6g/dの塩分制限を1週間, Alb投与10-20g, 利尿薬(Furosemide 160mg, Spironolactone 200mg/d). 腹水穿刺 3−5Lを施行してもコントロール不良.
アウトカム;
 8-9割で尿量上昇, 腹囲の改善, 下肢浮腫の改善を認める.
 著明に改善を認めるのが45%
 低Na合併例ではNa値の改善効果も期待できる.

低Na血症(Euvolemic, Hypervolemic hyponatremia)に対するTLV
SALT trial: Euvolemic, Hypervolemic HypoNa患者448例を対象としたDB−RCT. N Engl J Med 2006;355:2099-112. 
 患者は心不全, 肝不全, SIADHによる低Na血症
 Cre>3.5mg/dLの腎不全は除外.
 Tolvaptan 15mg/d(~60mg) vs Placebo群に割り付け, 比較.
 血清Naの変化: (左SALT−1, 右SALT−2)

Tolvaptan
Placebo
Tolvaptan
Placebo
Baseline
128.5±4.5
128.7±4.1
129±3.6
128.9±4.5
Day 4
133.9±4.8
129.7±4.9
135.3±3.6
129.6±5.2
Day 30
135.7±5.0
131.0±6.2
135.9±5.9
131.5±5.7
 TLV群では飲水量, 尿量も増加.

SALTWATER trial: SALT-trialの長期フォロー. J Am Soc Nephrol 21: 705–712, 2010. 
 open-labelでTLVを継続した111例を701日間フォロー.
 SALT trialでPlaceboだった群もTLV内服に切り替え継続.
心不全, 肝硬変, SIADHどのタイプでもNaは上昇する.

TLV vs 水分制限
 Euvolemic, Hypervolemic HypoNa患者28例を対象したopen-label RCT (Am J Cardiol 2006;97:1064–1067) 
 TLV 10mg/d(~60mg) vs 1日1200mlの飲水制限 + Placeboに割り付け.
 TLVの方がNa改善効果は良好.

TLV vs 3%NS負荷

 低Naで入院した患者群のProspective cohort.  Journal of Research in Pharmacy Practice 2014;3:34−36
 そのうち3%NSで治療された群とTLVで治療された群, 合計60例で治療開始後24h, 48hでの血清Na変化をフォローした.

 3%NSのほうが迅速にNa補正が可能.
 急ぐ時は3%NSのほうが良いが, TLVはより緩徐に補正可能であり准緊急や慢性経過ではむしろ良いのかも

低Naに対するバソプレシンV2-R阻害薬を使用する際の注意点
The American Journal of Medicine (2013) 126, S1-S42

⚫︎ Hypovolemic Hyponatremiaを除外しましょう
⚫︎ 他の低Na血症治療との併用は控えましょう
 3%NaClの投与
 飲水制限 >> 従って挿管患者は経口摂取困難な患者、口渇感を訴えられない患者(寝たきり、胃瘻など)では自然に飲水制限になってしまう可能性があるため, そのよう患者では避けるかNaフォローをより頻回にすべきである。
⚫︎ 投与開始後24-48時間はNa濃度を6−8h毎にチェックすべき
⚫︎ 投与開始後24−48時間は補液を併用しつつ、水分摂取制限とならないように注意。急速⚫︎ にNaが上昇する可能性がある
⚫︎ 重度の症候性の低Na血症では3%NaClを優先すべきである

2014年12月19日金曜日

炎症性腸疾患とCMV

炎症性腸疾患とCMV感染症について
World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 509-517 
炎症性腸疾患, 特にUCの経過中にCMVが陽性となることがある
 CMV自体, 重症患者では陽性となることが知られており, 腸炎の経過や予後には関連しないという報告もあれば腸炎の増悪に関連しているとの報告もあり, その意義よくわかっていない.
 CMVの治療の併用についても, 寛解率の上昇や大腸切除リスクの低下が認められるという報告もあれば, 予後に影響しない報告もある.

IBD患者における組織中CMV陽性率 Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

CDよりもUCの方が陽性率が高い傾向がある.
ステロイド不応性のIBD患者におけるCMVの陽性率と結腸切除率 Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

Ganciclovirによる治療についての報告 Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

 小規模の報告のみ. また非治療群と比較されたわけでもないため, なんとも言えない.

また診断方法にも問題がある
 CMV腸炎のGold standardは組織中のCMV抗体, DNAの証明であり, 血中mRNAやアンチゲネミアでは感度, 特異度共に不十分である可能性

検査の基本は組織におけるCMV DNAの検出
 よく行われるAntigenemiaやpp67 mRNAは感度, 特異度共に不十分.
Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 

187例のUC患者を評価. (Inflamm Bowel Dis 2013;19:1156–1163)
 Group I(105): 6ヶ月間steroid−free, thiopurine-freeの患者
 Group II(82): ステロイド不応性の患者群に分類し, 血清CMV IgM, IgG, antigenemia, real-time PCRを評価.

Group 1
Group 2
IgG(+)
75.2%
81.7%
IgG(-), IgM(-)
24.8%
18.3%
IgM(+)
0
1.2%
CMV Ag(+)
5.7%
32.9%(27)
CMV DNA

10/13
組織(HE染色)

7/27
 ステロイド不応性には組織所見やCMV DNA陽性例が多い

岡山大学付属病院でのRetrospective study. World J Gastroenterol 2014 January 14; 20(2): 509-517 
 UCで治療を行った患者群でCMV antigenemiaを評価した118例を対象
 CMV陽性群, 陰性群を比較した.
 初期寛解達成までの期間はCMV陽性例で有意に長い(21d vs 16d).
 30ヶ月フォローでの再発リスクや結腸切除リスクはCMVの有無に関わらず同等であった.

38例のIBD+CMV感染症患者の長期フォロー(30例がUC, 8例がCD) Eur J Gastroenterol Hepatol 2004;26:1146–1151 
 IBD再燃 875例の入院例のうち, 38例(4.3%)でCMV感染を認めた
 CMVの診断は組織所見, Immunohistochemistry ± CMV antigen, CMV DNA
 38例中13例が抗ウイルス薬(ganciclovir 5mg/kg bid 2wk)で治療を行った.
 治療群では12Mでの寛解, 腸切除率は変わらない.
 重症例やステロイド不応性ではCMV治療群の方が寛解率が良好となる


これらから,
UC患者では効率にCMVは陽性となる可能性がある
CMV自体がUCの重症化や再燃リスクに関わっている可能性は不明。治療の必要性も不明。
ただし, ステロイド不応性のUCにおいて, CMVが陽性ならばそれを治療する価値はあるかもしれない。
CMVの評価はアンチゲネミアやmRNAではなく、組織中DNAを評価すべきである。

ということはわかる。
それを踏まえたExpert opinionとしてのアルゴリズム: Digestive and Liver Disease 44 (2012) 541–548 
ステロイド不応性のUCで, 組織CMV DNAにて>250/mgでGanciclovirを併用 

2014年12月17日水曜日

Rebamipide(ムコスタ®)を再考する

Rebamipide(ムコスタ®)はNSAIDと併用される頻度がとっても高い薬剤であるが,
あまりエビデンスもなく, 潰瘍予防効果はPPIに劣り, 本当に効果があるのか微妙とよく言われる薬剤でもある(少なくとも自分の周りは).

ここでRebamipideの効果というものを再考してみましょう

NSAID潰瘍の予防効果について
NSAID潰瘍の予防効果をMisoprostol(サイトテック®)と比較
韓国, 中国, タイで行われたopen-label RCT J Clin Biochem Nutr 2007;40:148-155
 ≥18yのRA, OA, SpAや他にNSAID長期使用が必要となる疾患で, NSAIDを12wk以上使用している患者群
 除外項目は慢性肝障害, 腎障害, 他の消化管疾患(GERD, 静脈瘤, 消化性潰瘍, 悪性腫瘍), 消化管手術歴, 4wk以内のPPI, H2−B, sucralfate, misoprostol使用歴, 他のNSAID, ステロイド, 抗コリン薬, 化学療法, 抗凝固薬使用
 患者はRebamipide 300mg/d vs Misoprostol 600µg/dに割り付け12wk継続.
アウトカム

 双方ともMLS*, 潰瘍形成リスクは同等.
 High-risk群でも有意差は認められない.
副作用の頻度はRebamipideで有意に低い結果.

*MLS: modified Lanza score
0 出血,びらんなし
1 1−2箇所の出血, びらんを1 gastric areaで認める
2 3-5箇所の出血, びらんを1 gastric areaで認める
3 出血, びらんを2 gastric areaで認める
≥6
箇所の出血, びらんを1 gastric areaで認め, 合計で10を超えない
4
出血, びらんを≥3 gastric areaで認める
胃全体で11箇所以上の病変を認める
5 胃潰瘍あり

NSAID継続使用が必要な479例を対象としたDB−RCT (Gut Liver 2014;8:371-379) 
 患者は19歳以上でRA, OA, SpA, 他のNSAID長期使用必要な患者群
 またGFでMLS<3, 胃腸症状を認めず, 以下の1つ以上のリスクを認める
  消化性潰瘍の既往, 60歳以上, PSL ≥5mg/dの使用
 除外項目は消化管手術歴, PLT低値, 凝固障害, GERD, 静脈瘤, Barrett食道, 食道狭窄, 悪性腫瘍, 消化不良, 脳血管障害, 冠動脈疾患, 慢性肝障害, 腎障害など
 Rebamipide 300mg/d vs Misoprostol 600µg/dに割り付け12wk継続.
 胃潰瘍の発症率は両者で有意差なし. 双方とも20%程度. 20%!!
 治療失敗率も有意差なし.
 胃腸症状はRebamipideで有意に低くなり, 副作用による脱落もRebamipideで少ない.

副作用の観点から, Misoprostolを使用するくらいならばRebamipideを使いましょう.
NSAID潰瘍率が20%と高い患者ではそもそもPPIやH2−Bを使いましょう

NSAID潰瘍の予防効果をH2-R阻害薬と比較
112例のNSAIDを使用中患者群を対象としたDB−RCT. J Gastroenterol 2006; 41:1178–1185 
 使用前にGFを施行し, その後Famotidine 20mg/d群 vs Rebamipide 300mg/d群に割り付け, 4wk後に再度GFを施行. 
 患者は20−75歳で4wk以上NSAIDを使用しており, さらに継続する群
 胃切, 迷走神経切除, 5年以内の悪性腫瘍, 重度の肝, 腎障害, 4wk以内のPPI, H2−B, M1RAsの使用歴, 14d以内のステロイド使用は除外
 併用して4wk後のModified Lanza scoreを比較した.
アウトカム: MLSの変化
NSAID潰瘍の改善効果はH2−Bの方が良好
Rebamipideは改善させないが, 増悪もさせない。
ちなみにピロリ菌の有無別の評価でも結果は変わらず.

RebamipideのNSAID潰瘍予防のMeta-analysisでは, 早期潰瘍予防効果はプラセボと比較してRR 1.55[1.02-2.36]と有意に認められる結果 Dig Dis Sci (2013) 58:1991–2000 
小腸病変予防効果もRR 2.70[1.02-7.16]と有意に有効.

NSAIDによる小腸粘膜障害の予防効果について.
NSAIDは胃潰瘍のみならず小腸粘膜病変も来す.また, PPIは小腸粘膜障害のリスクになるということは以前ブログでも説明した (NSAIDとPPIの小腸粘膜リスク)

Rebamipideは予防効果を示す可能性がある.
10名の健常ボランティアを2群に分け, それぞれRebamipide + Diclofenac + Omeprazole投与: A, Placebo + Diclofenac + Omeprazole投与: Bを1wkずつローテーション.
投薬前後にカプセル内視鏡を施行し, 粘膜病変を評価した J Gastroenterol 2008; 43:270–276 
Rebamipide投与群の方が小腸粘膜病変リスクが有意に低下する結果.

また同様に健常人11名でLow−dose ASA + PPIを使用し,
さらにPlaceboとRebamipide群に割り付け4wkずつローテーションし、比較したStudyでも有意に小腸粘膜病変予防効果が認められた. DB−RCT. World J Gastroenterol 2011 December 14; 17(46): 5117-5122 

Placebo群では回腸における潰瘍やびらんが増加しているが, Rebamipide群では有意に少ない.

80例の健常人を対象としたRCT.
 NSAID + omeprazoleを使用し, さらにPlacebo群 vs Rebamipide 300mg/d群に割り付け2wk継続. 治療前後にカプセル内視鏡をにて小腸粘膜病変を評価. J Gastroenterol (2011) 46:57–64 
 NSAID+PPI治療にて粘膜病変数は有意に上昇するが, 有意差は認められず.
  Control群では0.1±0.3 → 16±71
  Rebamipide群では → 4.2±7.8
 小腸粘膜病変もControl群で63%, Rebamipide群で47%と Control群で上昇傾向にあるが, これも有意差なし.
 2wkという期間が他のStudyとは異なる.

健常人ではなく, 長期ASA, NSAIDを使用している患者群を対象としたStudy
低用量ASA ± NSAIDを3ヶ月以上使用している患者群を対象 J Gastroenterol (2014) 49:239–244 
 GF, CFで明らかな病変を認めず, カプセル内視鏡にて小腸病変(潰瘍, びらん, 発赤, 点状出血など)を認める患者群
 除外項目はgastro-protective drugの使用, GI出血, GI狭窄, GI手術歴, 重度肝障害, 腎障害, 心臓肺障害.
 上記を満たす62例を対象としたDB−RCT. Rebamipide 300mg/d vs Placeboに割り付け, 4wk継続.
 治療後のカプセル内視鏡所見により小腸粘膜病変を比較した.
アウトカム;
結果はびらん, 潰瘍, 発赤病変すべてRebamipideで改善効果あり. 
さらにRebamipideでは総蛋白の上昇が認められる.
小腸粘膜病変が改善することで栄養状態も改善する可能性がある!

その他: ピロリ菌除菌後のRebamipideによる潰瘍治療
ピロリ菌陽性の胃潰瘍で1週間の除菌療法を行った301例を対象としたRCT. J Gastroenterol 2007; 42:690–693 
 患者は20歳以上で潰瘍サイズ≥5mmの単一潰瘍, H pylori陽性.
 除外項目はPPIやH2−Bを使用, NSAIDを使用, 除菌療法失敗歴あり, 十二指腸潰瘍,出血性潰瘍で出血リスクが高い患者群.
 除菌療法後 Rebamipide 300mg/d vs Placeboに割り付け7wk継続.
 7wk終了後に内視鏡検査を行い, 潰瘍の状態を評価.
潰瘍治癒率はRebamipideで有意に高い. NNTは7.2程度.

除菌成功の有無別の評価
除菌が成功していれば特にPPIやH2−Bなくても7割が潰瘍治癒する.
除菌が失敗すれば潰瘍治癒するのは半分程度のみ.
Rebamipideにより治療失敗, 成功に関わらず, 潰瘍治癒率は8割程度まで上昇する.

念のためのRebamipideという選択肢もありのなのかもしれない。

2014年12月13日土曜日

脳梗塞の急性期治療: 抗凝固 血栓療法

脳梗塞の急性期治療: 抗凝固、血栓療法

脳梗塞急性期でのt−PA以外の抗凝固、血栓療法
脳梗塞タイプ アテローム性 心原性塞栓 ラクナ梗塞
オザグレル
×
アルガトロバン
×

オザグレル(キサンボン®, カタクロット®)
 国内製品であり, 当然RCTなどEvidenceに乏しい
 トロンボキサンA2の産生阻害 ⇒ 血小板凝集抑制
 出血患者には禁忌となる
 オザグレル 80mg DIV 2hr, 2回/day. 2wk
 特にラクナ梗塞に効果が高いとされているが定かではない

アルガトロバン(スロンノン®, ノバスタン®)
 発症48hr以内の脳梗塞急性期に適応(ラクナ除く)
 抗トロンビン作用
 アテローム血栓性脳梗塞ではなるべく早期に使用する
初期2日間; アルガトロバン 6A(60mg) 24hrでDIV
3日目~7日目; 10mg 3hrでDIV, 2回/day

アテローム性塞栓患者119名に対して, アルガトロバンを使用
(RCT, DB, 28Dフォロー)
(Semin Thromb Haemost 1997;23:531-4)
 28日目のADL, 神経機能をScore化し比較
 脳出血は1/60 vs 2/59と差は無し
改善度 (人数) 発症~投与開始までの時間
<48hr >48hr
Argatroban 66.7%(30) 41.4%(29)
Placebo 22.6%(31) 25.0%(28)
Difference P P<0.01 NS

ARGIS-1 trial: NIHSS 5-22の発症12時間以内の脳梗塞171例のDB-RCT. Stroke. 2004;35: 1677-1682
 Argatroban 100µg/kg bolus後, 3µg/kg/min vs 1µg/kg/min, 
 vs. Placebo群に割り付け, 5日間継続し, 脳出血リスクを評価.
 Argatroban群は, 前者ではaPTT 2.25倍, 後者では1.75倍となるように調節
*国内ではアルガトロバン 60mg/24hrを48h, その後 20mg/dを5日間.
(体重50kg換算で, 1µg/kg/min ⇒ 72mg/24hとなり, 明らかに高用量.)

アウトカム;
 目標aPTTを達成する為に必要なArgatrobanの量は, 其々 2.7(0.9)µg/kg/h, 1.2(0.5)µg/kg/hであった.
 脳出血リスクは3者で有意差無し. ただし, High-doseほど脳出血の頻度は高い傾向にある
 90日後の神経所見の改善度は3者で有意差無し.
 日本国内よりも遥かに高用量を使用しても神経学的に変わらないアルガトロバン.......

ヘパリン
 ヘパリンが脳梗塞治療に有用であるとのエビデンスは無い
 ヘパリンはDVT予防目的で使用される(5000IU 2-3回/day SQ)
 DVT予防効果もUFHよりLMWHの方が効果が高い

1762名の急性脳梗塞後, 歩行困難の患者
 発症48hr以内にEnoxaparin 40mg SC vs UFH 5000IU q12hr 10d (Open-label, RCT) (Stroke 2009;40:3532-40)
 Outcome; 14日間のVTE Risk
Outcome Enoxaparin UFH RR
VTE 10% 18% 0.57[0.44-0.76]
PE <1% 1% NS
症候性VTE <1% 1% NS
症候性DVT <1% 1% NS
無症候性DVT 10% 17% 0.57[0.43-0.75]
 VTE予防効果はNIHSS >14, =<14群でも同様に効果的.
 出血RiskはUFHの方が若干多いか, 有意差無し
 (NIHSS>14群で, Extracranial BleedingがUFH群で多い(p=0.04))
 90日間のフォローでは, 両群の神経学的予後, 頭蓋内出血Risk, 脳梗塞再発Risk, 脳梗塞進展Riskに有意差無し
心原性梗塞後の抗凝固薬の開始タイミング
 Nonvalvular Afによる心原性梗塞では, 急性期の梗塞再発Riskが0.1-1.3%/dと高い.
 しかしながら, 心原性塞栓後の早期抗凝固療法の開始については, いまだ一定した見解は無し.

7つのRCTsのMeta-analysis(n=4624) (Stroke 2007;38:423-30)
 心原性脳梗塞後 <48hr抗凝固(UFH, LMWHなど)開始 
  vs その他の治療(Aspirin or Placebo)を比較したMeta-analysis
Outcome
OR

脳出血(7-14d)
2.89[1.19-7.01]
NNH 55
脳梗塞再発(7-14d)
0.68[0.44-1.06]
NNT 53
死亡神経学的予後(7-14d)
1.01[0.82-1.24]

発症<48hrの抗凝固療法は出血Riskを増やすのみ.
脳梗塞再発予防効果は有意差ないものの, 減らす傾向.
予後には関係しない.

Clinical trialのReview; (Cerebrovasc Dis 2008;25:289-96)
 心原性塞栓後の早期(<3-30hr)ヘパリン開始では, Stroke再発率は低下する傾向があるものの, 頭蓋内出血Riskは上昇する. また, 14dでのOutcomeに有意差は無し
 ただし, 発症後<3-6hrでの超早期でのヘパリンの導入は, 上記と同様, 梗塞再発Riskは低下し, 出血Riskは上昇するが, 長期予後(死亡, 神経所見)も改善するとの結果のため, 発症超早期(<3hr)ならば使用する価値があるかもしれない.

発症早期(<3-30hr)における抗凝固薬の開始のBenefit and Risk

Outcome
比較
OR
脳出血
抗凝固 vs Aspirin or Placebo
2.89[1.19-7.01]

抗凝固 vs Aspirin
2.62[1.22-5.64]

抗凝固 vs Placebo
2.94[0.52-16.60]
脳梗塞再発
抗凝固 vs Aspirin or Placebo
0.68[0.44-1.06]

抗凝固 vs Aspirin
0.92[0.57-1.48]

抗凝固 vs Placebo
0.59[0.30-1.17]

早期のヘパリンの開始の利点を証明したStudyは無く, 発症後7-10dは投与を控えるべきとの指摘もあり.
 抗凝固薬開始前には血圧のコントロールが必須.
 広範囲(MCA領域の>1/3)梗塞例, コントロール不良のHT, 他に脳出血Risk Factorを認める場合は, さらに抗凝固薬開始を遅らせるべき
(Cardiovascular Drug Ther 2008;22:419-25)

5つの大規模Trials (急性期脳梗塞におけるASA vs 抗凝固療法)の患者群を解析し, 塞栓症再発のHigh-risk, 脳出血のrisk別に アウトカムを評価したMetaでも, 抗凝固療法の有意性は証明できず, どの患者群で投与すべきかという結論はでなかった.
Lancet Neurol 2013; 12: 539–45

塞栓リスクが高い群は同時に出血リスクも高い.
抗凝固療法の利点も欠点も出易いため, 急性期の治療は難しい.

Low-dose UFH(5000U sc q12hr)はDVT予防に有効であり, Riskがある患者では可能ならば行うのも良いが, Risk-benefitを考慮して決定すべき.