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2019年5月18日土曜日

低髄圧症候群を示唆する画像所見のスコア

(JAMA Neurol. 2019;76(5):580-587. )

単一施設において, 2013-2017年にSIHの精査を行われた患者のMRI所見を, ブラインドされた3名の読影医が評価
・患者は臥位で改善し, 起立時に増悪する頭痛で受診し, SIHの評価(画像, 髄液リーク)を行われた患者 
・所見はSIH+CSFリーク, 起立性頭痛でリークなし, 健常コントロール群の3群で評価した.
・所見は9項目の定量評価所見, 7項目の定性評価所見を評価し,
 SIH診断に寄与するスコアを作成.
 スコアは前向きCohort(2017-2018年)にてValidationを施行した.
・評価項目:
 定性的評価
  静脈洞の拡張, 海綿間静脈洞の拡張, 硬膜造影, 中脳の下降, 脳表の鉄沈着, 硬膜下水腫, 下垂体上部の形(凸, 凹, 平坦)
 定量的評価
  下垂体高, 橋中脳角, 鞍上槽, 前橋槽, 中脳の下降, venous-hinge angle, 乳頭橋角, 中脳扁桃陥入, area cavum veli interpositi(中間帆腔)

SIH 56例, 起立性頭痛+リーク(-)が16例, Controlが60例
ValidationはSIH 20例で行われた.

Derivationにおける母集団

評価した画像所見より, SIH+リークに関連性が強いのは以下の6項目
これら所見よりスコアを作成
・5点以上はSIH+リークを強く示唆する

SIHにおける所見のシェーマ
 太字はスコアで採用された所見

スコアのカットオフと感度, 特異度

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低髄圧症候群を疑った時の評価ポイントとして押さえておく.
単純MRIでも硬膜造影以外は評価できる.


2019年5月15日水曜日

フェブキソスタット筋症

慢性+急性腎障害でCr 6台, UA 20mg/dLで入院した患者.
背景が不明で, 当初腫瘍崩壊症候群も視野にいれ, 緊急性もあるため, 大量補液+フェブキノスタット60mgを開始した.

結果的に高血圧緊急症であり, 降圧管理にて速やかに改善
(症例自体は以下参照:
 http://hospitalist-gim.blogspot.com/2019/05/40.html
 http://hospitalist-gim.blogspot.com/2019/05/40_11.html)

ところが, ほとんどのLabが改善する一方, 入院3-4日目からCKのみ単独上昇を認めた.
入院時400程度 → Day 3には6000, Day 5には3万台へ.

高血圧緊急症やTMAとCK上昇は直接的な関係は考えにくく,
その全てが電解質異常や原疾患が原因となる.

全身状態は改善しており, 上昇タイミングも遅い為, おそらくは他合併であろうと考えた.

そこで原因となり得るのは入院後開始したフェブキソスタット.

この薬剤を中止したところ, 2日後にはCKは9000台, その後速やかに正常化した.

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フェブキソスタットと筋症, 筋炎, 横紋筋融解症

あまり報告例はないが, 急性経過の報告では同様の症例があった.

CKD+高尿酸血症患者(73歳男性)において, アロプリノールからフェブキノスタットに変更後数日で筋力低下, CK 7000台の上昇, 精査にて下肢帯の筋炎所見を認めた症例報告
・薬剤の中止にて速やかにCK, 所見は改善
(Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, 2014, 39, 328–330)

慢性経過の筋症, 筋炎, 横紋筋融解症については, 台湾より後ろ向き解析がある
(Clin J Am Soc Nephrol 12: 744–750, 2017.)

Xanthine oxidase阻害薬は主にアロプリノールとフェブキソスタットがあるが, 後者は肝代謝であり, 腎不全患者で使用しやすい.
・アロプリノールよりも副作用が少なく, 使用しやすい報告や意見もあるものの, 一部の患者で筋症状(筋痛~筋力低下, 筋けいれん, 横紋筋融解)の報告もある.

台湾において, Febuxostatを使用している1332例を後ろ向きに評価した報告.
・使用理由の大半は痛風でGFR<45mL/minのCKDがある患者や他の薬剤でUA<6.0mg/dLを達成できない患者
・薬剤を>1ヶ月使用した患者を対象とした

Febuxostat関連筋症の定義は, ACC/AHA/National Heart, Lung and Blood Institute Clinical AdvisoryのStatin関連筋症の定義を一部変更し, 以下のように定義.
・Febuxostat関連筋炎は筋症状+CK上昇(3-10ULN)で定義
・横紋筋融解症は筋症状 + CK>10ULNで定義
・筋症は上記2つを合わせたもの

アウトカム
・1332例で, Febuxostat使用期間は224日[86-441.5]
 CKDは1222例(91.7%)で, eGFR 20.8mL/分[9.0-35.4]
・41例で使用後に筋症を認め, その全例でCKDを合併.
 全体で3.1%, CKD患者の3.4%
・頻度はCKD患者のうち, 0.013[0.01-0.02]/100pt-日

(参考: スタチン関連筋症の頻度は, 0.097/100-年, Placebo群との比較では0.005/100-年の報告がある[Current Opinion in Lipidology 2007, 18:401–408])

筋症合併例と非合併例の比較
・筋症を認めるまでの期間は303日[166-515]と数カ月〜2年程度

筋炎と横紋筋融解症例
・筋炎が37例, 横紋筋融解症が4例

Febuxostat関連筋症のリスク因子
・eGFRが低いほど, 筋症のリスクになり得る.
 eGFR<12.4mL/分は, ≥29mL/分と比較して, Adjusted ORは4.21
・また, Subグループ解析では,
 <65歳の若年者の高度腎機能低下症例でリスクが高い.
 StatinやFibrateの併用はあまりリスクにはなりにくい

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フェブキソスタットはスタチンと同様に筋症, 筋炎, 横紋筋融解リスクになりえる
特にCKD合併患者でのみ報告されており, eGFRが低いほどリスクも増加する可能性が高い

急性経過で生じる横紋筋融解症もあり, 覚えておくと良いかも

2019年5月11日土曜日

続 症例: 40歳台男性、意識障害

前 http://hospitalist-gim.blogspot.com/2019/05/40.html

というわけで, Spontaneous TLSを疑ったものの, 腫瘍が見つからず空振り.
TLSと同時に鑑別に挙げていたMAHA(Microangiopathic Hemolytic anemia)を考慮した.
 ちなみにPLTは低値なものの, INR, APTTは正常範囲. D-dimer 高値からもMAHAを考慮

MAHAはTMA(thrombotic microangiopathy)とも呼ばれ, 微小血管の血栓症を呈する病態.
 微小血管内の血栓症+溶血, 塞栓症症状を呈し, 主にTTPやHUS, atypical HUSなど含まれる.

主なTMA
*Complement-mediated TMAはいわゆるatypical HUSと呼ばれる.
 Shiga toxin関連TMAがいわゆるHUS(ST-HUS)で, 他のTTP以外の病態は二次性HUSと呼ばれることが多い.
 atypical HUSと二次性HUSは論文によっては一緒くたにされていることもあり.

・この症例では薬剤歴なし. 同様のTMA既往歴なし, 家族歴なし.
・低栄養や偏食もなし.
 Vit B12欠乏や葉酸欠乏でもTMA様病態となるが, この場合は網赤血球が低下する(ほぼ全例でRPI<3を満たす)ものの, この患者では網赤血球は9万, RPI>3と増多していた.
 (Transfusion and Apheresis Science 57 (2018) 102–106 )

・背景を探ると数年前より高血圧の指摘があるが放置.
 眼底所見では高血圧性網膜症の所見がしっかりとあり,
 エコーでは心臓の全周性のLVHが認められた.
 救急の管理中にBP 220/150となることも多く, 高血圧性のMAHAを考慮した.

 しかしながら末梢血での破砕赤血球は明らかではなかった.

・また, 意識障害については頭部MRIにて後頭葉のT2WI High Intensityを, 髄液検査では髄液タンパク150mg/dL. 細胞増多無しであり, 高血圧性のPRESを考慮した.

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入院後, 前術のTLSを精査, 否定しつつ降圧療法を施行し, その12h後にはLDHやBilのピークアウト, PLTの上昇傾向が認められた.
補液により利尿もつき, それに伴いUAも有意に低下(24→15mg/dL).
血液濃縮が改善され, Hbは最終的に11台まで低下した.

その後も血圧管理を継続し, Crを除きLabは正常化, 状態は安定している.

上記経過より, 高血圧緊急症によるMAHA, PRESと判断した症例であった.

ちなみに, 補体は正常. ADAMTS13活性は病勢や経過から測定していない.
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高血圧緊急症によるTMA

・高血圧緊急症でもTMAを生じるが, その数は少なくあまりまとまったデータも乏しい.

高血圧緊急症症例におけるTMA合併例と非合併例を比較した報告
(Clinical and Experimental Hypertension, 33(2): 77–83, (2011) )
・症状は頭痛や呼吸苦, 視覚障害が多い. 他には血痰など.
・重度の高血圧緊急症では高度腎障害を伴うが,
 TMA合併の有無で異なるのはTMA合併例ではLDHがより高値, PLTが低下する点.
・また, TMA合併例のほうが血清アルドステロン値が高値となるデータもある(アルドステロン症を背景とする例が多い)

また, 最近高血圧性TMAにはatypical HUSを背景とするものがある報告が増えている
・高血圧性TMAと判断された8/17でCFH,CFI,MCP,C3遺伝子の変異あり(J Am Soc Nephrol 29: 2234–2243, 2018. )


もともと無症候性のaHUS素因がある患者で, 高血圧がトリガーとなってTMAが生じているのか, aHUS自体に高血圧を伴うバリアントがあるのかは現時点では不明. 今後あきらかになるかもしれない.

高血圧緊急症を伴うaHUSと伴わないaHUSを比較した報告
(Haematologica. 2019 Mar 19. pii: haematol.2019.216903. doi: 10.3324/haematol.2019.216903. [Epub ahead of print]
Impact of hypertensive emergency and complement rare variants on presentation and outcome of atypical hemolytic uremic syndrome.)
・高血圧緊急症を伴うaHUSでは神経障害が多く, 腎予後も悪い

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TLSにしろMAHAにしろ、緊急性を伴う病態で, 突如救急でやってくる病態です.
外来で来たこともありました.

背景疾患もわからず, 症状も非典型的で, Lab異常が顕著, という感じで診療することが個人的に多く, 対応しつつ, できる検査を素早く行い, いざという時は血漿交換をためらわない姿勢が求められます.

その割には稀なので, 知識も抜けがち. 
常に素振りしときたいところです.

2019年5月9日木曜日

症例: 40歳台男性、意識障害

受診歴, 内服歴なし.
40歳台男性, 3日前からの体動困難, 食事摂取不良あり
搬送当日, 呼びかけへの反応不良, 見当識障害あり救急要請となった.

BP 168/120, HR 101reg, RR 22, SpO2 98%(RA), BT 37.6度
身体所見上は特記すべき所見なし.
項部硬直もなし. 脳神経所見も問題なし.

血液検査にて,
 WBC 26000(Neu 84%), Hb 16.4g/dL, PLT 7.6万,
 UA 24mg/dL, LDH 2300IU/L, AST/ALT 168/62, ALP/GGT 231/56, T-Bil 2.1mg/dL(D-bil 0.4)
 BUN/Cr 63/6.2mg/dL, Na 148, K 3.2, Cl 98, P 4.3, Mg 3.2, Ca 9.2
 CRP 1.3mg/dL

と, 著明な腎障害, LDH高値, UA高値を認めた.
エコーや身体所見にて溢水所見なし. 血液ガス検査ではアシドーシスなし, Lac 3.2程度.
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著明なUA, LDHの上昇, 腎障害があり,
まず緊急性から, Tumor lysis syndromeを疑った.


Tumor Lysis Syndrome(TLS)

腫瘍細胞の崩壊による細胞内容物の漏出に伴う症候群
・高K血症, 高P血症, 低Ca血症, 高尿酸血症を来す.
・腫瘍細胞量の多い悪性腫瘍に対する化学療法がトリガーとなって生じることが主.
 腫瘍は血液腫瘍(NHL, Lymphocytic leukemia, MM, AML, CML)の治療開始後での報告が主だが, 固形腫瘍でも増殖の速い肺小細胞癌, 精巣腫瘍,  Neuroblastoma, 乳癌で生じ得る.
・治療関連では化学療法施行後12-72hで生じることが多い



Chemo後~出現

高K血症
6-72hr
腎不全で増悪
高P血症
24-48hr
腫瘍細胞中のP濃度は通常の3倍.高PがCaと結合し, 低Caを来す.また腎結石を生じ, 腎不全にも関与
高尿酸血症

尿細管内に結晶化し, 腎不全を来す

・主に電解質異常による不整脈, 意識障害, 痙攣
 高尿酸血症による腎障害
 乳酸アシドーシスが主な病態. 致死的にもなりえる.
(J Family Med Prim Care. 2018 Sep-Oct;7(5):1116-1119.)

TLSの診断基準: Cairo-Bishop基準


化学療法におけるTLSのリスク因子
(Arch Pathol Lab Med. 2019;143:386–393)

TLSリスクと化学療法における対応
(Arch Pathol Lab Med. 2019;143:386–393)

TLSの対応
・電解質異常, 高尿酸血症に対して逐一対応. 全身管理を行う.



さて, 今症例では化学療法の既往はなく, 治療に関連するTLSではない.
治療に関係なく発症するTLSを「Spontaneous TLS」と呼び, その大半が血液腫瘍(急性白血病)
([West J Emerg Med. 2019;20(2)316–322.] )
・倦怠感や脱水, 痙攣, 不整脈, 悪心嘔吐を認め, 受診する
・ケースレポートでは消化管腫瘍や肺癌, 婦人科腫瘍, 前立腺癌などでの突発性TLSの報告はある

TLSが初発症状となった悪性腫瘍の3例のLab
(J Family Med Prim Care. 2018 Sep-Oct;7(5):1116-1119.)
・腫瘍はALL, Burkitt lymphoma, Plasma cell leukemia
・UAは非常に高値となり, 腎不全も高度. アシドーシスも強い.


1999-2002年に急性腎障害でChang Gung Memorial Hospitalを受診した患者を後ろ向きにReviewでは
(J NEPHROL 2004; 17: 50-56 )
・926例の急性腎障害患者のうち, Acute spontaneous TLSは10例で診断された(1.08%)
 ASTLSはステロイドや化学療法の投与がない患者, UA高値, 尿中UA/尿Cr >1.0, LDH>500 U/L,  悪性腫瘍を認めた患者で診断.
・APTLS 10例のデータ
 腫瘍は悪性リンパ腫が7例, 白血病, Leiomyosarcoma

・10例のLab. 透析を必要としたのは7/10であった.
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ということで, すぐに対応が必要なSpontaneous TLSを検討し, 即日以下検査を施行したところ
全身CT → Massなし
骨髄穿刺, 生検 → AMLや骨髄増殖性疾患を示唆する所見なし.

ということで空振り・・・

さてなんだろう。つづきは明日。