(Neurology® 2018;90:e1021-e1028.)
PSP患者38例とiNPH 27例, 健常人 38例において以下の歩行試験を施行.
(PSPはNeurological Disorders and Stroke and Society for PSP diagnostic criteriaで診断,iNPHはinternational iNPH guidelineを用いて診断)
・Single task: 通常, ゆっくり, 最大速度で歩行させる
・Cognitive dual task: 100から7を引いてゆく計算をさせながら歩行させる.
・Motor dual task: トレイを運びながら歩行させる
Single taskでの歩行
・通常の歩行では, iNPHはPSPよりもwide basedで1歩の歩幅は短い
Dual taskでの歩行
・考えさせながら歩かせると, 全体的に歩行速度は低下するが, PSPで特に有意
・トレイを運ばせると, iNPHでは歩行が早くなる.
一方でPSPではゆっくりとなる.
-------------------------
iNPHではPSPと比較して, 通常歩行においてwide basedで一歩は短い
計算させながら歩行させると健常人でも歩行速度は低下し, wide basedとなるが, PSPでは歩行速度の低下がより顕著となる.
また, トレイを運ばせながら歩かせると, PSPでは速度は低下する一方で, iNPHでは反対に速度が増加する.
このパターンでiNPHの歩行を評価可能かもしれない.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2018年3月23日金曜日
2018年3月22日木曜日
ピロリ除菌と胃癌のリスク
(N Engl J Med 2018;378:1085-95.)
韓国における単一施設でのRCT.
早期胃癌(粘膜, 粘膜下層に限局)もしくはHigh-grade adenomaで内視鏡的切除術を施行した470例を対象としたDB-RCT.
・患者は以下を満たす
生検で胃癌, High-grade adenomaを認め, 内視鏡的切除術を予定されている
内視鏡にて腫瘍が明確で潰瘍形成がない
CTで遠隔転移やリンパ節転移を認めない
18-75歳
H. pylori感染が証明されている
・除外項目
再発性胃癌, H. pylori除菌の既往, Poorly differentiated tubular adenocarcinoma, signet-ring-cell carcinoma, 抗菌薬で重大な副作用がある, 内視鏡的切除後に外科的切除の必要があると判断された群
これら患者群を, H. pylori除菌療法群 vs Placeboに割付け, その後5年以内の胃癌発症リスクを評価.
・除菌療法はAMPC 1000mg, CAM 500mg, PPIを7日間
Placebo群ではPPIのみ使用.
・PPIは両群とも4wk継続(潰瘍治療のため)した.
・フォローは3M, 6M, 1yで内視鏡を行い, 以後は6-12M毎に内視鏡フォロー
母集団
アウトカム
左: 除菌療法施行の有無での評価
右: 除菌成功の有無での評価
・除菌療法施行群, 除菌成功群では有意に胃癌再発リスクは低下する.
アジアにおける除菌と胃癌リスクの評価では2004年に中国からも報告がある
(JAMA. 2004;291:187-194 )
中国の高リスク地域で行われたRCT.
健常人でHP感染を認める 1630例(そのうち988例は萎縮性胃炎, 腸上皮仮性, 胃粘膜異形性を認めない患者群)を対象
・除菌群 vs プラセボ群に割り付け, 胃癌リスクを比較.
母集団
アウトカム
・胃癌リスクは除菌群, 非除菌群で同等の結果
・前癌病変(-)の群では, 有意に除菌群で胃癌リスクは低下する
------------------------
前述の論文より,
早期胃癌やHigh-grade Adenomaで内視鏡的粘膜切除を行なった患者では除菌により胃癌再発リスクは低下する.
後述の論文より,
粘膜萎縮や腸上皮仮性, 異形がない場合も除菌による胃癌リスク軽減効果が期待できる.
2015年のコクランでは除菌療法は有意に胃癌リスクを軽減するという結果: RR0.66[0.46-0.95]
(Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 22;7:CD005583.)
韓国における単一施設でのRCT.
早期胃癌(粘膜, 粘膜下層に限局)もしくはHigh-grade adenomaで内視鏡的切除術を施行した470例を対象としたDB-RCT.
・患者は以下を満たす
生検で胃癌, High-grade adenomaを認め, 内視鏡的切除術を予定されている
内視鏡にて腫瘍が明確で潰瘍形成がない
CTで遠隔転移やリンパ節転移を認めない
18-75歳
H. pylori感染が証明されている
・除外項目
再発性胃癌, H. pylori除菌の既往, Poorly differentiated tubular adenocarcinoma, signet-ring-cell carcinoma, 抗菌薬で重大な副作用がある, 内視鏡的切除後に外科的切除の必要があると判断された群
これら患者群を, H. pylori除菌療法群 vs Placeboに割付け, その後5年以内の胃癌発症リスクを評価.
・除菌療法はAMPC 1000mg, CAM 500mg, PPIを7日間
Placebo群ではPPIのみ使用.
・PPIは両群とも4wk継続(潰瘍治療のため)した.
・フォローは3M, 6M, 1yで内視鏡を行い, 以後は6-12M毎に内視鏡フォロー
母集団
アウトカム
左: 除菌療法施行の有無での評価
右: 除菌成功の有無での評価
・除菌療法施行群, 除菌成功群では有意に胃癌再発リスクは低下する.
アジアにおける除菌と胃癌リスクの評価では2004年に中国からも報告がある
(JAMA. 2004;291:187-194 )
中国の高リスク地域で行われたRCT.
健常人でHP感染を認める 1630例(そのうち988例は萎縮性胃炎, 腸上皮仮性, 胃粘膜異形性を認めない患者群)を対象
・除菌群 vs プラセボ群に割り付け, 胃癌リスクを比較.
母集団
アウトカム
・胃癌リスクは除菌群, 非除菌群で同等の結果
・前癌病変(-)の群では, 有意に除菌群で胃癌リスクは低下する
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前述の論文より,
早期胃癌やHigh-grade Adenomaで内視鏡的粘膜切除を行なった患者では除菌により胃癌再発リスクは低下する.
後述の論文より,
粘膜萎縮や腸上皮仮性, 異形がない場合も除菌による胃癌リスク軽減効果が期待できる.
2015年のコクランでは除菌療法は有意に胃癌リスクを軽減するという結果: RR0.66[0.46-0.95]
(Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jul 22;7:CD005583.)
2018年3月19日月曜日
加湿器肺
加湿器肺は文字通り加湿器に起因する過敏性肺臓炎
特に超音波式の加湿器が普及してから報告も増えている.
超音波式の加湿器は, 内部に真菌が巣食うとそのまま空気中に放出するため, 過敏性肺臓炎のリスクとなる.
・デザイン性を重要視し, しばしば中が洗浄しにくいものもある.
・加湿器以外にもアロマや空気洗浄目的での製品もある.(加湿器として認識していないこともあるため注意)
・吸入することで肺臓炎を呈するもの: Humidifier lung
吸入することで炎症, 発熱を呈するもの: Humidifer feverがある
・冬季に風邪を引き, その際に久々に出した加湿器を使用
→ 発熱や咳嗽の増悪, 肺炎の併発,という感じの病歴も多い(患者や家族が[風邪が治らない]という認識となる)
超音波式加湿器を使用し, 肺臓炎となった9例, 加湿器熱を呈した2例のデータ
加湿器内の水から培養されたもの
(Respiratory Medicine 2005;99:943-947)
チャレンジ試験を行った症例の経過
・使用再開後6~8時間でピークとなる
加湿器肺 5例, 他の過敏性肺臓炎 17例(夏型12例, 鳥関連5例)を評価した報告(国内からの報告)
(Chest 1995; 107:711-17)
・加湿器は超音波式
加湿器肺は1~3月と冬季の症例がほとんど
沈降抗体の種類
・加湿器肺ではCandida albicans, Cephalosporium acremonium
夏型ではTrichosporon cutaneum
鳥関連ではPigion dropping, Pigeon serumに対する抗体が陽性
BALFの比較
・CD4,8のバランスが3者で微妙に異なる. 診断的意義があるかは微妙
------------------------------
個人的な印象では,
・加湿器肺は冬場に多い過敏性肺臓炎
・風邪をひいて, 加湿器を使用し始め, 増悪+肺炎 というパターンが意外にある.
その場合患者や家族が風邪の増悪として認識し, 医療者もそのように思ってしまう.
しっかり病歴聞かないと加湿器という単語が出てこない.
・加湿器は超音波式がポイント.
いつ買ったか, 洗っているか, どこにしまっているか, ちゃんと聞く
・加湿器意外にも空気洗浄機やアロマの機械も超音波式.
加湿器と把握していないかも. 空気洗浄機が原因となるとはよもや患者も思うまい.
特に超音波式の加湿器が普及してから報告も増えている.
超音波式の加湿器は, 内部に真菌が巣食うとそのまま空気中に放出するため, 過敏性肺臓炎のリスクとなる.
・デザイン性を重要視し, しばしば中が洗浄しにくいものもある.
・加湿器以外にもアロマや空気洗浄目的での製品もある.(加湿器として認識していないこともあるため注意)
・吸入することで肺臓炎を呈するもの: Humidifier lung
吸入することで炎症, 発熱を呈するもの: Humidifer feverがある
・冬季に風邪を引き, その際に久々に出した加湿器を使用
→ 発熱や咳嗽の増悪, 肺炎の併発,という感じの病歴も多い(患者や家族が[風邪が治らない]という認識となる)
超音波式加湿器を使用し, 肺臓炎となった9例, 加湿器熱を呈した2例のデータ
加湿器内の水から培養されたもの
(Respiratory Medicine 2005;99:943-947)
チャレンジ試験を行った症例の経過
・使用再開後6~8時間でピークとなる
加湿器肺 5例, 他の過敏性肺臓炎 17例(夏型12例, 鳥関連5例)を評価した報告(国内からの報告)
(Chest 1995; 107:711-17)
・加湿器は超音波式
加湿器肺は1~3月と冬季の症例がほとんど
沈降抗体の種類
・加湿器肺ではCandida albicans, Cephalosporium acremonium
夏型ではTrichosporon cutaneum
鳥関連ではPigion dropping, Pigeon serumに対する抗体が陽性
BALFの比較
・CD4,8のバランスが3者で微妙に異なる. 診断的意義があるかは微妙
------------------------------
個人的な印象では,
・加湿器肺は冬場に多い過敏性肺臓炎
・風邪をひいて, 加湿器を使用し始め, 増悪+肺炎 というパターンが意外にある.
その場合患者や家族が風邪の増悪として認識し, 医療者もそのように思ってしまう.
しっかり病歴聞かないと加湿器という単語が出てこない.
・加湿器は超音波式がポイント.
いつ買ったか, 洗っているか, どこにしまっているか, ちゃんと聞く
・加湿器意外にも空気洗浄機やアロマの機械も超音波式.
加湿器と把握していないかも. 空気洗浄機が原因となるとはよもや患者も思うまい.
2018年3月17日土曜日
肺エコー: 両側性B lineの鑑別には胸膜を見よ
肺エコーで両側性、広範囲のB lineを見た場合, 心原性肺水腫なのか, ARDSなのか, 肺線維症などのIPなのか、、、迷うこともあると思います.
どのようなポイントが鑑別に有用でしょうか?
ICU管理となった成人患者のProspective study.
(Chest. 2015 Oct;148(4):912-8.)
・入室6時間以内のP/F比 <300の群を対象
・最終的な評価は59例が心原性肺水腫(CPE), 42例がARDS
33例がその他の原因であった.
・その他の原因の可能性をあげる所見は, 肺エコーにおいて, B−line比が低い所見であった
B−line比とは全領域のうち, B−lineを認めた領域の割合
CPEとARDSの鑑別には, 以下の項目が有用
・左胸水 >20mm +4点
・中等度〜重度のLV不全 +3点
・IVCの最小径 ≤23mm -2点
上記のスコアにおいて, ≤0ならばARDSを, ≥3ならば肺水腫±ARDSを疑う
ARDS患者18例, 肺水腫患者40例のエコー所見を比較した報告
(Cardiovascular Ultrasound 2008, 6:16)
・鑑別に有用なのはPleural line異常, Lung slidingの低下, Spared area, consolidation, Lung pulse
・Spared areaは密度の濃いB lineに混じって, 正常肺が認められる所見.
・Pleural lineの異常: ARDSでは胸膜ラインが歪となる
個人的に, この胸膜ラインは結構有用な所見ではないかと感じておりました.
そこに今回Chestからそのような文献がでましたのでさらに紹介します.
肺のMモードによる心原性肺水腫の評価:
心原性肺水腫症例12例と, 非心原性肺胞間質疾患(NAIS) 17例, Control群14例において, Mモードにおける胸膜, 肺所見を評価.
(CHEST 2018; 153(3):689-696)
・NAISはIPFが8例, SLEによるAIPが2例, ARDSが6例, NSIPが1例.
・肺エコーの評価はMモードにおける胸膜ラインの性状と, 肺部のMモードパターンを評価.
胸膜ライン: 持続性 or 断続性
肺パターン: 垂直 or 水平 で評価する
所見の例
各病態と所見のパターン
・心原性肺水腫では胸膜ラインは持続性となり非心原性肺胞間質疾患では断続性となる.
健常人では基本的に持続性.
・肺のパターンは, 非心原性肺胞間質疾患では垂直性, 心原性肺水腫でも垂直性が多いが, 双方ある. 健常人では水平性
これら組み合わせると,
・両側性のB lineを認めた場合, Mモードにおいて
持続性の胸膜ライン + 肺が垂直パターンならば心原性を疑う.
断続性の胸膜ライン + 肺が垂直パターンならば肺病変を考慮.
--------------------------------
前々から, 心原性肺水腫の肺エコーではB lineの割には胸膜が綺麗だなぁ、なんて思っていました.
その感覚はやはり有用だったのだなぁ、と少し嬉しく思いました
これからは意識して胸膜見ることにします.
どのようなポイントが鑑別に有用でしょうか?
ICU管理となった成人患者のProspective study.
(Chest. 2015 Oct;148(4):912-8.)
・入室6時間以内のP/F比 <300の群を対象
・最終的な評価は59例が心原性肺水腫(CPE), 42例がARDS
33例がその他の原因であった.
・その他の原因の可能性をあげる所見は, 肺エコーにおいて, B−line比が低い所見であった
B−line比とは全領域のうち, B−lineを認めた領域の割合
CPEとARDSの鑑別には, 以下の項目が有用
・左胸水 >20mm +4点
・中等度〜重度のLV不全 +3点
・IVCの最小径 ≤23mm -2点
上記のスコアにおいて, ≤0ならばARDSを, ≥3ならば肺水腫±ARDSを疑う
ARDS患者18例, 肺水腫患者40例のエコー所見を比較した報告
(Cardiovascular Ultrasound 2008, 6:16)
・鑑別に有用なのはPleural line異常, Lung slidingの低下, Spared area, consolidation, Lung pulse
・Spared areaは密度の濃いB lineに混じって, 正常肺が認められる所見.
・Pleural lineの異常: ARDSでは胸膜ラインが歪となる
個人的に, この胸膜ラインは結構有用な所見ではないかと感じておりました.
そこに今回Chestからそのような文献がでましたのでさらに紹介します.
肺のMモードによる心原性肺水腫の評価:
心原性肺水腫症例12例と, 非心原性肺胞間質疾患(NAIS) 17例, Control群14例において, Mモードにおける胸膜, 肺所見を評価.
(CHEST 2018; 153(3):689-696)
・NAISはIPFが8例, SLEによるAIPが2例, ARDSが6例, NSIPが1例.
・肺エコーの評価はMモードにおける胸膜ラインの性状と, 肺部のMモードパターンを評価.
胸膜ライン: 持続性 or 断続性
肺パターン: 垂直 or 水平 で評価する
所見の例
各病態と所見のパターン
・心原性肺水腫では胸膜ラインは持続性となり非心原性肺胞間質疾患では断続性となる.
健常人では基本的に持続性.
・肺のパターンは, 非心原性肺胞間質疾患では垂直性, 心原性肺水腫でも垂直性が多いが, 双方ある. 健常人では水平性
これら組み合わせると,
・両側性のB lineを認めた場合, Mモードにおいて
持続性の胸膜ライン + 肺が垂直パターンならば心原性を疑う.
断続性の胸膜ライン + 肺が垂直パターンならば肺病変を考慮.
--------------------------------
前々から, 心原性肺水腫の肺エコーではB lineの割には胸膜が綺麗だなぁ、なんて思っていました.
その感覚はやはり有用だったのだなぁ、と少し嬉しく思いました
これからは意識して胸膜見ることにします.
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