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2017年11月14日火曜日

血管浮腫の鑑別

浮腫では局所性浮腫, 全身性浮腫, 血管浮腫の3つに分けて考えると良い

血管浮腫は血管透過性亢進による浮腫であり, 非圧痕性, 左右非対称性, 非重力依存で一過性の浮腫を呈する.

好発部位は眼周囲や口唇, 舌, 四肢, 腸管など.
・腸管の浮腫では下痢や腹痛, 嘔吐など消化管症状を呈する
・喉頭浮腫では致命的となり得る
(ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2014;21:469–484 )

血管浮腫, またはクインケ浮腫で救急や外来を受診する患者はたまにいる.
その場合しっかりと系統立って鑑別することが重要.

私個人的な診療フローチャートはこんな感じ

・まず多臓器障害や気道狭窄があればアナフィラキシーや気道緊急として対応する.
 それがなければ, 血管浮腫の鑑別に入る.

血管浮腫の鑑別では,
 ①じんま疹の有無, 好酸球増多の有無をチェック.
  じんま疹を伴う場合, ヒスタミン関連の血管浮腫と判断する
  好酸球増多を伴う場合, 好酸球性血管浮腫を考える
   参考:好酸球性血管浮腫
 ②上記を認めず, また明らかなアレルギーを疑う状況ではない場合, 非ヒスタミン関連性血管浮腫を考慮する. 主にブラジキニンが関連する
  ここには薬剤性(ACE阻害薬が主. NSAIDは厳密にはヒスタミン関連性), 遺伝性血管浮腫, 後天性血管浮腫がある. これらが否定的ならば特発性.

両者の浮腫, 症状の比較
(International Journal of Emergency Medicine (2017) 10:15)

経過の比較
・ヒスタミン関連性は出現も早く, 改善も早い
・ACE阻害薬や遺伝性血管浮腫(非ヒスタミン関連)は1日かけて増悪し、数日で改善

それぞれの鑑別疾患
ヒスタミン関連性
(主にじんま疹を伴う)
備考
アナフィラキシー反応
皮膚, 粘膜, 消化管, 呼吸器, 循環器(血圧低下), 中枢神経障害(意識障害)など多臓器障害を呈する
アレルギー反応
食物, 薬剤, 洗剤, 化粧品などに対するアレルギー反応
ヒスタミン不耐症
薬剤性
NSAIDやアスピリンで多い
じんま疹を伴わないこともあり
物理的じんま疹
皮膚描記症, 遅発性圧じんま疹, 振動性じんま疹, 寒冷じんま疹, 温熱じんま疹, 日光じんま疹
他のじんま疹
コリン性じんま疹, 特発性じんま疹

非ヒスタミン関連性
(主にじんま疹を伴わない)
備考
遺伝性血管浮腫
発症年齢は2-13歳と若年
家族歴が75%で陽性
薬剤性
ACE阻害薬で多い
後天性血管浮腫
MGUSやB細胞リンパ増殖性疾患, リンパ網様体形悪性腫瘍, SLEなどの自己免疫疾患で合併する.
好酸球性血管浮腫
繰り返すタイプ(1-2割)と繰り返さないタイプ(8-9割)がある.
じんま疹は1/3から半数程度で認めることがある.
特発性血管浮腫
明らかな原因を認めない場合
(Int J Emerg Med2017 Dec;10(1):15.) (Acad Emerg Med. 2014 Apr;21(4):469-84.)( Crit Care Med. 2017 Apr;45(4):725-735. )( Immunol Allergy Clin North Am. 2014 Feb;34(1):73-88.)を参考に作成

じんま疹(-)の繰り返す血管浮腫 929例の解析
(CMAJ 2006;175(9):1065-70)
・原因の判明した776例
原因
頻度(%)
:女比
発症年齢
特異的な因子に関連*
16%
0.51
39[13-76]
自己免疫疾患/感染症
7%(55)
0.62
49[3-78]
ACE阻害薬関連
11%
0.93
61[32-84]
C1-inhibitor欠損
25%(197)


 先天性

0.88
8[1-34]
 後天性

1.8
56.5[42-76]
不明(Idiopathic)
38%


 Histaminergic

0.56
40[7-86]
 Nonhistaminergic

1.35
36[8-75]
末梢, びまん性浮腫
3%
0.17

*薬剤, 食事, 虫刺され, 環境, 身体刺激

自己免疫性疾患/感染症の内訳


各論
ACE阻害薬による浮腫についてはこちらを参照

遺伝性血管浮腫
(Lancet. 2012 Feb 4;379(9814):474-81. )(Medicine (Baltimore). 1992 Jul;71(4):206-15.)
・C1エステラーゼインヒビター(C1 INH)の異常が主な病態.
 C1 INH自体が低下する1型(85%), 
 C1 INH活性のみ低下する2型(15%).があり.
 またC1 INHと関係のない3型(XII因子遺伝子異常)があるが, 国内からの報告はない.
タイプ
頻度
病態
検査所見
I
85%
C1インヒビターの分泌, 活性が低下
C3正常, C4低下
C1インヒビターは活性, 蛋白量ともに低下
C1q
は正常
II
15%
C1インヒビターの活性のみ低下
C3正常, C4低下
C1インヒビターは活性のみ低下
C1q
は正常
III
国内からの報告例なし
C1インヒビターは正常.
女性のみ生じる
上記以上は認めない

10歳未満での発症が多く, 20歳までに85%が発症している. 30歳以降での発症は1%程度と稀.
・血管浮腫は精神的,身体的なストレスや月経に付随して生じることが多い. 発作頻度は年1回程度〜月1回以上と様々. 浮腫は24時間程度かけて増悪し, 2-3日かけて消退する経過となる.
・血液検査では発作時にC3正常, C4低下が認められるが, 補体低下は後天性血管浮腫(SLEや血液腫瘍)でも認められるため注意が必要. C1インヒビター活性の検査は保険適応あるが, C1インヒビターの定量検査は保険適応外となるため注意.
 検査はSRLで受け付けている.

後天性血管浮腫
・40歳以降の発症が多く, 血液悪性腫瘍と自己免疫疾患が原因となる
・血液悪性腫瘍ではMGUSやB細胞リンパ増殖性疾患.
 C1インヒビターの消費が主な病態. また一部でC1インヒビター抗体の産生もある
・自己免疫疾患ではSLEが有名. これもC1インヒビター抗体の産生.
 SLEではじんま疹様の皮膚症状も呈するため注意. また補体も低下する.

2017年11月11日土曜日

好酸球性血管浮腫

好酸球が関連する血管浮腫には繰り返すEpisodic(Gleich症候群)と繰り返さないNonepisodicの2つのタイプがある.
・双方ともサイトカインを介した機序で血管浮腫を呈する
・Episodicが1-2割, Nonepisodicが8-9割を占め, アジア人からの報告が多い
(Dermatology 1998;197:321-325)(Allergy Asthma Immunol Res. 2014 July;6(4):362-365. )

Episodic angioedema with eosinophilia(EAE)
(Immunol Allergy Clin N Am 2006;26:769-81)
・再発性の好酸球増多を伴う血管浮腫 ± じんま疹
・男: = 1:2, 平均発症年齢は15.9yr, と若年女性に多い.
・10-20%の体重増加を伴い, 発熱も伴うことが多い.
好酸球増多以外にはIgM, IgEの上昇も認められる.
白血球増多も著明であり, 最大で10/µL(Eo 88%)となる.
他の臓器障害は来さない.

血管浮腫の機序はいまだ不明確
・IL-5Eosinophilia, 血管浮腫に関与している可能性が高い

EAEの臨床経過

・Eo上昇を伴う, 再発性の血管浮腫, じんま疹
 掻痒感, 発熱, 体重増加, IgM上昇, 乏尿, WBC上昇も認める.
・数週間数ヶ月毎に生じることが多く発作の間は完全に無症状となる.
・月経周期や妊娠に関連することも.
血中のEoは症状に相関する.
他の臓器障害(-)ならば予後良好
現在はEAEHES1つとして考えられている.
・治療は低用量ステロイドで, PSL 10mg/d程度で著効する

Non-episodic angioedema with eosinophilia(NEAE)
(Clin Rheumatol (2006) 25: 422425)
・EAEと比較して軽症であり, 再発を認めないtype
じんま疹を伴わない両手足の浮腫で, Eo上昇を伴う若年(20-40yr)女性が典型的. 男性例は先ず無し.
・平均発症年齢は25.9yr[21-37]
地域性も強く, 報告例の殆どが日本と韓国.
季節性も強く, 秋に多い傾向.(69%9-11月発症)
・インフルエンザワクチン接種後や肺炎球菌性肺炎, マイコプラズマ肺炎罹患後の発症例の報告もあり
高熱を伴うことは無く, 好酸球増多もEAEよりも軽度.
・IgMEAEでは上昇することが多いが, NEAEでは3.3%のみ.
浮腫の部位も, NEAEでは手足の浮腫が多いがEAEでは四肢の近位部, 顔面に浮腫が及ぶことがある.
・NEAEで皮膚病変(じんま疹)を伴うのは33%.
浮腫, 好酸球増多(4900-10400/µL)3ヶ月以内に改善する.¥

日本人女性のNEAE 33例のLiterature review
(Dermatology 1998;197:321-325)

・20-37歳でじんま疹は1/3で認める
症状の期間は1-2M持続

NEAEの組織所見
(Am J Dermatopathol 2016;38:124–130) 
・NEAE 12例の皮下組織所見を評価したところ3タイプに分類された.
 好酸球性肉芽腫性脂肪織炎が7/12と最多.
 好酸球性皮膚炎で肉芽腫性脂肪織炎を伴わないのが3/12
 Invisible dermatosis2/12




37例のLiterature review(日本人36)では
 好酸球性肉芽腫が10
 好酸球性皮膚炎が22,
 Invisible dermatosis5
・平均年齢は29.1[21-45]
じんま疹は
 好酸球性肉芽腫(+)4/8(50%)
 好酸球性皮膚炎で12/22(55%)
 Invisible dermatosis1/4(25%) で認められた.

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個人的な経験からも, やはり秋頃に診療する機会が多いと思います
毎年〜数年に1回、秋頃に診療するため, なんか季節感を感じる疾患の1つです

2017年11月8日水曜日

ACE阻害薬+DPP-4阻害薬の併用でさらに血管浮腫リスクが上昇

ACE阻害薬ではブラジキニン分解抑制が生じ, ブラジキニン関連の血管浮腫を生じる.
その機序にSubstance-Pも関わっている.

一方でDPP-4阻害薬はSubstance-Pのようなペプチドの分解を抑制するため, 両者の併用では血管浮腫のリスクが上昇する可能性が示唆されている.

Vildagliptin(エクア®)を評価したClinical trials(RCTs)より血管浮腫を合併した症例を抽出
(Hypertension. 2009;54:516-523.)

・N=13921例中, 27例で明らかな血管浮腫と判断.
 そのうち19例がVildagliptin, 8例が対照群(Placebo, Metformin, Pioglitazone, rosiglitazone, glimepiride, acarbose).

これらデータより血管浮腫のリスクを評価
・Vildagliptin自体は血管浮腫のリスクとはならないが,
 ACE阻害薬と併用することで有意な血管浮腫リスクとなる.
 また, 高用量ほどリスクも上昇する.
・ARBとの併用では関係はない.


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ACE阻害薬もDPP-4阻害薬も比較的よく使用される薬剤なので気に留めておくと良いと思います.

2017年11月4日土曜日

大動脈弁狭窄症では亜硝酸薬はダメか?

[Ann Emerg Med. 2015;66:355-362.] より

重症ASでは心拍出は前負荷に依存するため前負荷を軽減するような亜硝酸薬は禁忌とされる.
・遷延性の低血圧をきたすリスクがあるとされているがそれを証明した報告はまだない

カナダの2箇所の病院における後ろ向き解析
・急性心原性肺水腫で受診し, ニトログリセリンの舌下投与, 経静脈投与を行った患者群を解析.
中等症~重度のAS(+)群と(-)群で臨床的に関連のある低血圧*を評価した.
 *ニトロを中止する, 補液負荷が必要, 昇圧薬が必要な低血圧, 心停止
 また, 30分以上持続するsBP<90mmHgのリスクも評価

ASの重症度はACC/AHAガイドラインで定義
・中等度: AV area 1.0-1.5cm2, Mean gradient 25-40mmHg, Ao jet velocity 3-4m/sで定義
・重度: AV area <1.0cm2, Mean gradient >40mmHg, Ao jet velocity <2m/s

・受診から12ヶ月以内にエコーを施行していない患者は除外

母集団データ
治療内容

アウトカム

・臨床的に関連のある低血圧はAS(+), (-)群で有意差なし
sBP<90mmHgとなるのは重症ASで多い傾向がある

急性心原性肺水腫患者におけるニトロの使用で中等度~重度のAS臨床的関連のある低血圧, sBP<90mmHg30分以上持続するリスクにはならない結果.

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確かに急激に前負荷を軽くしてしまうと重症AS患者の心不全では低血圧となるリスクはあると思うが, ボーラス投与を避けたり, 慎重に増量, 調節すれば投与可能であると考えられる.
ちなみにミリスロールや二トロールの添付文章上はASは禁忌ではない.