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2017年5月8日月曜日

たこつぼ型心筋症なのか、心筋梗塞なのか

ICU管理において, 心臓壁運動が低下し, ST上昇や陰性T波なんぞあると,
ストレスによるストレス性心筋症(たこつぼ型心筋症)か、STEMIなのか非常に迷う。

例えば心電図で見分けるとすると, それはQT延長の有無が重要となる.
たこつぼ型心筋症ではQTが延長することが多く, 平均QTcは 450-500msecとなる.
(Ann Intern Med 2004;141:858-65)

ただし, STEMIでも延長しないかというと, そうでもなく,
QT延長 = MIではないとは言えない. これはむしろ, 感度が高い所見であり,
QT延長が無い = MIを先ず疑うべき という様に捉える必要がある所見.

ちなみに, 心電図変化はどんなものがあるか, どの誘導で変化が出やすいかというと,

Study(n)
[1] (88)
[2] (30)
[3] (17)
[4] (16)
[5] (13)
[6] (9)
[7] (7)
ST上昇
90%
100%
82%
81%
46%
100%
86%
前壁ST上昇
85%
97%
81%
38%
100%
86%
異常Q wave
27%
6%
31%
31%
QTc 平均
500ms
501±55ms
450ms
HF, 肺水腫
22%
3%
44%
46%
29%
感情ストレス
20%
17%
18%
38%
23%
22%
14%
身体ストレス
43%
17%
77%
44%
46%
33%
71%

[1] J Am Coll Cardiol 2001;38:11-8
[2] Am Heart J 2002;143:448-55
[3] J Am Coll Cardiol 2003;41:737-42
[4] Am J Cardiol 2004;94:343-6
[5] Heart 2003;89:1027-31
[6] Jpn Circ J 2000;64:156-9
[7] QJM 2003;96:563-73

Leads
ST elevation
T-wave inversion
入院時
48hr
入院時
48hr
I
48%
0
14%
62%
II
3%
0
3%
59%
III
3%
0
0
0
aVR
0
0
0
0
aVL
48%
0
17%
62%
aVF
3%
0
0
0
V1
0
0
0
3%
V2
17%
0
0
28%
V3
24%
0
14%
59%
V4
59%
0
24%
62%
V5
59%
0
24%
62%
V6
59%
0
24%
62%

J Cardiovasc Med 2008;9:916-21

こんな感じであり, 前側壁で多く, これも大した鑑別点とはならない.

心原性酵素はどうかというと,
・たこつぼ型心筋症の86.2%[79.0-91.2]でトロポニンは陽性となり, CKの上昇は56%, CK-MBの上昇は73.9%で認められるため, 酵素上昇の有無でも見分けることは困難.
・ただし, 酵素上昇は通常軽度で済むことが多いことが1つのポイント.

たこつぼ型心筋症 59例と, 同時期に受診したSTEMI 60例を比較したRetrospective study
(Am J Cardiol 2014;113:429-433)
タコツボ型心筋症ではより女性が多く, 高齢者. 
・また, Troponin I値は双方で上昇するが, STEMIで有意に高値となる.
・LVEFはタコツボ型心筋症の方が低下する.
・タコツボ型心筋症では, EFがより低く, Trop Iも低い.

Troponin-EF product(TEFP) = [Peak Trop I] x [LVEF]で評価すると,
・TEFP ≥250は, 感度95%, 特異度87%STEMIを示唆する.
・またTEFPはTrop I単独よりもSTEMIの診断能は良好.

このStudyではValidationが無いため, このまま臨床に応用するのは危険だが,
"Tropや心原性酵素上昇が, EF低下の割にショボい" という印象は1つのたこつぼ型心筋症を疑う切っ掛けとなるのではないか.

また, EFが40%台と軽度の低下程度はSTEMIの方が多いかもしれない. という嗅覚.


タコツボ型心筋症 58例とAMI 97例において,  心筋バイオマーカーを比較した後ろ向き報告
(J Cardiac Fail 2014;20:2-8)
・タコツボ型心筋症の診断は以下:
 急性のACS様症状で, ST, T変化+CKMB, Trop T上昇を認め典型的な壁運動低下, 且つ完全に改善を認める症例
 また>50%の血管狭窄を認めないことで定義.
・18歳未満, eGFR<60mL/min, AKIを認める症例CHF(LVEF<45%)の既往がある症例, 心筋症既往がある症例, 敗血症性ショック, 肺塞栓, 重症ASを認める症例は除外.
心筋バイオマーカーは最初に, 同時に評価されたマーカーを使用した

母集団とマーカーの比較

・QT延長はタコツボ型心筋症で多い.
・TnTは有意にAMI群の方が高値となる.
一方でBNPはタコツボ群の方が高値.
 BNP/TnTでは両者の差が大きくなる.

AMI(STEMI, NSTEMI) vs タコツボ型心筋症の鑑別
・BNP/TnT, BNP/CKMBを指標とすると両者鑑別における感度が高くなるが, それでも7割満たない程度.

CK-MBとBNPの分布
・タコツボではCKMBの上昇が軽度の割にはBNPが高値となりやすい.

タコツボ型心筋症 39, STEMI 48, NSTEMI 34例における心筋バイオマーカーを比較した報告
(International Journal of Cardiology 154 (2012) 328–332)
・診断にはMayo Clinic criteriaを使用:
 一過性の心臓壁運動低下, 冠動脈狭窄がない, 新しいST上昇, 陰性T, 軽度トロポニン上昇, 褐色細胞腫や心筋炎を認めない.
虚血性心疾患既往, 心筋症既往, eGFR<30mL/minとなるような腎不全, ペースメーカー波形の患者は除外
STEMI, NSTEMIはタコツボ群と年齢, 性別を合わせて抽出

母集団の比較
・EFはタコツボ型心筋症群が最も低い

タコツボ型心筋症群のデータ

バイオマーカーの値と変動


・タコツボ型心筋症ではCK-MBTnT値が最も低い(単位はµg/Lであり, 国内のng/mLにそのまま置き換えてOK)
一方でNT-proBNPは最も高値となる.
また, MIにおけるTnTCK-MBのピークは入院後のフォロー時となるがタコツボ型心筋症では入院時のTnTがほぼピーク値となっている.
・NT-proBNPのピークはさらにその1日後となる.

NT-proBNPTnT, CK-MB値によるタコツボ vs MIの比較.

---------------------------------------
「EF低下やBNP, NT-proBNP上昇の割には, TropやCK-MBなど心原性酵素上昇がしょぼい」というのがタコツボ型心筋症の一つの特徴と言えそう.

これを定量的に評価する方法として、
心原性酵素 x EF
BNP, NT-proBNP / 心原性酵素 という評価が行われている.

また、経時的変化も重要.
 タコツボでは心原性酵素は初回評価でほぼピークとなる一方, その後のフォローでさらに上昇している場合はやはり虚血の疑いが強い.
 BNPやNT-proBNPはday 2でピークになることがほとんど.
 時期によっても上記計算式は調節せねばならないのかもしれないし, 基本腎不全症例は除外されているので, AKI合併例では要注意(Tropが高値に出やすい)

2017年5月7日日曜日

ベーチェット病におけるHLAタイピング

ベーチェット病ではHLA-B51が陽性となることは有名.
厚生労働省のクライテリアではHLAは参考所見としており,
・HLA-B51陽性例は5-6,
・HLA-A26陽性例が2-3割認められる.

他にもHLA-B5はベーチェット病との関連性があるとされており,
HLA-B5, B51とベーチェット病の関連を評価したMeta-analysisではHLA-B51/B5BD発症OR 5.78[5.00-6.67]
(Arthritis Rheum. 2009 Oct 15;61(10):1287-96.)


地域別の評価:
・東アジアではBD患者の55%で陽性.
・Control
群では20%程度
・HLA-B51もB5双方ともベーチェット病に対するOR 5.6-5.9と高い.

HLA-B51/B5陽性例では眼球やCNS病変,  大血管病変との関連性はない

日本国内よりBD症例384例とControl 384例を比較.
(MOJ Immunol 2014, 1(3): 00013)
・BD発症と関連性があるHLAHLA-A26HLA-B51

日本国内のBD + ブドウ膜炎患者88例の解析
(Clin Exp Rheumatol 2010; 28 (Suppl. 60): S39-S44. )
HLA-B51陽性率は46.6%.
またHLA-A26陽性率も37.5%と高い.
両者どちらかが陽性となる例が77.3%.
同時に陽性となる例は稀.

HLA-B51とHLA-A26陽性例の特徴比較
HLA-B51の有無では視力予後に差はないもののHLA-A26陽性例では視力予後不良に関連する可能性がある

韓国におけるBD 223例において, HLA-Aタイプを評価.
(Arthritis Research & Therapy 2011, 13:R49 )
・BD発症と関連性を認めたのは以下の3タイプ:
 HLA-A*02:07 (OR 2.03), HLA-A*26:01(OR 1.85), HLA-A*30:03(OR 2.51)
一方でHLA-A*33:03BD発症リスクの低下を認めた(OR 0.59)

上記以上を日本国内のCohortでも評価
・HLA-A02, HLA-A26はベーチェット病との関連を認める.
・HLA-A33はベーチェット病の可能性を下げる結果.

陽性パターンと皮膚病変, ブドウ膜炎のリスク
・HLA-A26はブドウ膜炎との関連がある. HLA-B51も認めるが, それよりも高リスク

スペインのBD症例 304例と313例のControlの比較ではBDに関連性のあるHLAタイプは以下のとおり
(Arthritis Research & Therapy 2013, 15:R145 )
・HLA-A24, B51, B57はリスク上昇
HLA-B35, B58はリスク減少

----------------------------------
・ベーチェット病ではHLA-B51とHLA-A26が関連している.
 HLA-A26は眼病変や眼予後との相関性が高い可能性がある.
・他にはHLA-B5, HLA-A2も関係しているかもしれない.

・また, これらは人種により差がある

2017年5月2日火曜日

肺結核による咳嗽の経過

ペルーにおいて, 喀痰培養で証明された肺結核 64例の咳嗽頻度と, 治療開始後の咳嗽の経過をフォローした前向きStudy
(Clinical Infectious Diseases® 2017;64(9):1174–81)
・対象はHIV陰性の18歳以上で, 培養より薬剤感受性の良好な結核が証明された患者.
・咳嗽は半自動録音装置を用いて評価.
 以前の報告ではこの装置に咳嗽検出能力は感度75.5%, 特異度99.3%
 騒音が大きくて聞き取れない場合は除外された
・咳嗽の回数は, それぞれの咳嗽が2秒以上空いていれば別の咳嗽と判断しカウント. 咳き込みは1回でカウントする

母集団

咳嗽の日内変動と治療開始後の経過
・治療開始前の咳嗽は午後の時間帯に多い.
全体的に夜~深夜にかけては咳嗽は少ない傾向(大体2:1くらい)
治療開始とともに咳嗽の頻度は低下する

治療10日間で咳嗽RR 0.37と半分以下となる