ブログ内検索

2016年7月22日金曜日

ベッドサイド飲水試験による誤嚥リスクの評価

嚥下機能の評価として, 飲水試験がある.
・ベッドサイドにて, 少量の水分を摂取してもらい, むせ込み, 咳嗽, 声の変化などを評価する.

成人患者における飲水試験の感度, 特異度を評価したMeta.
(CHEST 2016; 150(1):148-163)
・RSはNasoendoscopy, Videofluoroscopyによる評価とし, 前向きに評価した22 trialsでMeta-analysisを施行.
22 trials, N= 4617であるが, 単一のStudyでN=3000のものがあり.
母集団の基礎疾患は神経疾患(51%), CVA(34%), 認知症, 変性疾患, 外傷性脳挫傷がそれぞれ1-2%. 他には頭頸部癌(12%), 呼吸器疾患(10%)

飲水試験の誤嚥に対する感度, 特異度
・咳嗽や窒息, 咳払い, 声の変化(痰が絡むような声, うがい様の声など)があれば誤嚥リスクありと評価する.
 Single sips: 1回の少量の飲水で評価
 Consecutive sips: 1回の90-100mlの多量の飲水で評価
 Progressive challenge: 徐々に飲水量を増やして評価(2-90ml)

 誤嚥のReference standardはNasoendoscopy, Videofluoroscopy


これより,
・少量の水分でも蒸せる場合, 声が変わる場合は強く嚥下機能低下を疑う
多量に飲ませて大丈夫ならば, 誤嚥リスクは低い「かも」しれない.
 ただし, LR-は0.3程度.

「これは誤嚥するねー」とは言えるが
「これは大丈夫だねー」とは言いにくい

2016年7月21日木曜日

間質性肺炎ではNail-fold capillaryの異常をチェックする習慣を

以前 Nail-fold capillaryの評価は強皮症診断や皮膚筋炎診断において重要,
さらに強皮症におけるNail-fold capillaryの異常は肺高血圧や間質性肺炎との関連性が高いということを記載した.
詳しくはこちら

個人的には, 強皮症疑いの患者以外に, 間質性肺炎所見がある患者でも必ずNail-fold capillaryをチェックしている.
たまに間質性肺炎 + Nail-fold capillary(NFC)異常が認められ, 後々 ANA speckled が陽性, Scl-70が陽性。。。など強皮症に矛盾しない検査結果や所見が得られることも多い.

個人的な印象では 間質性肺炎患者においてNFC異常があれば, CTD-ILDの可能性が高いと思っている.



然しながら,


強皮症患者において, NFCを評価し, 間質影との相関性を評価しているStudyは多いが,
ILD患者において, NFCを評価し, SSc由来ILDやCTD-ILDとの相関性を評価しているStudyは少ない.

いくつか調べていると,

50例の特発性ILD, CTD-ILD, コントロール患者において, NFCを評価.
(Tuberk Toraks 2015;63(1):22-30)
・患者は
 特発性ILD(18): さらに特発性IPF(8), 特発性NSIP(10)
 膠原病肺(CTD-ILD)(15): さらにRA-ILD(7), SJS-ILD(8)に分類
 肺病変(-)コントロール群(17): さらにRA単独, SJS単独群に分類の3群, 6サブグループに分類し, Nail-fold capillary所見を評価.

Nail-fold capillaryは以下で評価
・正常: 毛細血管数 7-10本/mmで, ヘアピン様のループが並列している. 出血や蛇行, 交差, 血管新生は認められず
・軽度異常: 7-10本/mmで, 蛇行が<50%で認められる. ループは並列で, 出血や血管新生は認められず
・高度異常: 毛細血管の減少あり. 蛇行が>50%で認められる. 拡張やループの変形, 出血あり. >50%の血管新生, 拡張, 微小出血を認める.

アウトカム: 拡張所見はCTD-ILDで多く認められる

・毛細血管数はCTD-ILDで少ない傾向がある
・特発性ILDでもNFC異常所見は認められ, 特にねじれ所見が多い.
 拡張所見や微小出血, Bushy(もじゃもじゃした所見), 奇妙な所見はCTD-ILDで多い所見. 

ただし, このStudyではRAやSJS由来のILDのみであり, 強皮症由来ILDは含まれていない.

Lung-dominant CTD 52例の解析.
(J Bras Pneumol. 2015;41(2):151-160 )
・LD-CTDの定義はILD症例において,
 特異的なCTDの確定診断に足る肺外所見が乏しく(= 症状/所見は1つ以上ある)
 他のILDの原因が認められず, 
 さらに以下の1項目以上の自己抗体が陽性 or 2項目以上の組織所見を満たす
・CTD症状は関節痛, 関節炎, 朝のこわばり, 日光過敏, 皮膚所見, Gottron徴候, Heliotrope疹, レイノー現象, Sicca症候群, 難治性のGERD症状など

LD-CTDにおけるHRCT所見

・NSIPパターンが最も多い.
・CTで食道異常所見をチェックするのも大事.

Nail-fold capillaryの評価は22例で施行され, 17例(77%)で異常.
異常は強皮症様パターンが多い.

---------------
いろいろ調べてはみましたが, やはりILD→NFCチェックというアプローチの論文は少ないようです。

ILD患者においてNail-fold capillaryの異常を認めた場合, CTD-ILDの可能性は上昇するものの, 特発性ILDでも蛇行くらいはあり得る.

拡張所見や出血, もじゃもじゃ, 変なNail-fold capillaryはやはりCTD-ILDかもしれないと捉えるべきか。

2016年7月20日水曜日

キノロン系抗生剤の副作用

キノロン系抗生剤, 特によく使用されるのレボフロキサシン(LVFX)であるが, 経口での吸収率がよく, 組織移行性もよく, 抗菌スペクトラムも広く, そして副作用も少なく, ととても外来で使用しやすい薬剤.

外来での処方頻度が多く, その結果LVFX耐性菌が巷で蔓延しているくらい.
これはとても問題.

また, 腎排泄であり, 腎機能に応じて投与量の調節が必要であるが, あまりその辺注意がされておらず, 高齢者や腎不全患者に通常量が使用されていることも多く目にする.
これもとても問題.

救急で処方された薬剤で副作用が多いもの一覧
Drug 年間合併率
インスリン 8%
ワーファリン 6.2%
Amoxicillin 4.3%
アスピリン 2.5%
ST合剤 2.2%
アセトアミノフェンヒドロコドン 2.2%
イブプロフェン 2.1%
アセトアミノフェン 1.8%
Cephalexin 1.5%
クロピドグレル 1.6%
Penicillin 1.5%
Amoxicillin-clavulanate 1.3%
Azithromycin 1.3%
Levofloxacin 1.2%
ナプロキセン 1.2%
フェニトイン 1.1
(JAMA 2006;296:1858-66)

・これを見ると, 抗生剤の副作用はやはり多い.
・抗生剤ではペニシリン系、ST合剤が目立つが, LVFXも副作用は多い.

薬剤性障害で救急受診する患者のうち, 19.3%が抗生剤由来である
アレルギーが78.7%[75.3-82.1]を占め, 副作用は19.2%[15.8-22.6]
薬剤別の頻度(ED visit/ 10 000 outpatient prescription)
薬剤
頻度
ペニシリン系
13.0[10.3-15.6]
セフェム系
6.1[4.5-7.7]
キノロン系
9.2[7.0-11.5]
ST合剤
18.9[13.1-24.7]
マクロライド
5.1[3.8-6.4]
テトラサイクリン
5.2[3.7-6.8]
メトロニダゾール
7.6[5.1-10.1]
Nitrofurans
9.7[5.8-13.5]
バンコマイシン, リネゾリド
24.1[10.9-37.3]
その他, 不明
14.7[9.6-19.8]
(CID 2008;47:735-43)

・このデータからは, 抗生剤による副作用で多い原因はペニシリン系とST合剤, バンコマイシンなど抗MRSA薬
 次いで2位集団にキノロン, セフェム, メトロニダゾールがいるような感じ.

さらに副作用別の頻度を見ると以下のようになる
薬剤
軽度
アレルギー
中等-重度
アレルギー
神経,
精神障害
GI障害
その他
ペニシリン
7.6[6.0-9.1]
2.2[1.7-2.7]
0.4[0.3-0.6]
1.1[0.6-1.6]
0.7[0.4-0.9]
セフェム
2.8[2.0-3.5]
1.3[0.9-1.7]
0.3[0.2-0.5]
0.7[0.3-1.0]
0.4[0.2-0.6]
キノロン
2.8[1.9-3.7]
2.4[1.8-3.1]
1.2[0.9-1.6]
1.1[0.6-1.5]
0.7[0.4-0.9]
ST合剤
8.3[5.8-10.7]
4.3[2.9-5.8]
1.7[0.9-2.4]
2.0[0.8-3.1]
1.2[0.6-1.9]
マクロライド
1.7[1.2-2.2]
1.1[0.7-1.4]
0.3[0.2-0.4]
1.0[0.6-1.4]
0.4[0.3-0.6]
クリンダマイシン
8.4[5.1-11.7]
2.8[1.3-4.2]

3.0[1.5-4.6]

テトラサイクリン
2.0[1.3-2.6]
1.2[0.6-1.8]

0.7[0.4-1.0]
0.4[0.2-0.6]
その他
4.0[2.9-5.1]
1.9[1.2-2.7]
1.4[0.8-1.9]
1.7[0.9-2.4]
1.2[0.6-1.8]
(CID 2008;47:735-43)

キノロン系の副作用
(Clinical Infectious Diseases 2005;41:S144–57)(Clinical Infectious Diseases 1999;28:352–64)
(Clinical Infectious Diseases 1999;28:352–64)

FQによる消化管症状
・2-20%で認められるが, 軽症のことが多く, 薬物中断の必要は少ない
 悪心嘔吐, 食欲低下, Dyspepsia, 腹痛, 下痢など. CDIも含まれる.
・FQでの消化管症状の頻度は Fleroxacin, grepafloxacin > torovafloxacin > sparfloxacin, Pefloxacin > ciprofloxiacin, levofloxacin > norfloxacin > enoxacin > ofloxacin.

CNS症状
・1-2%で認められ, 消化管症状に次いで2番目に多い副作用
 頭痛やめまい, ふらつき, 傾眠などが生じる.
・<45歳の女性で多い傾向あり
・投与開始後早期に出現し, 中止と共に改善を認める
・他には幻覚やせん妄, 痙攣などの報告もあり. 
・LVFXはFQの中でもリスクが低い

FQ投与中に精神症状を認めた590例の解析
多い症状は昏迷 51%, 幻覚 27%, 焦燥感 13%, 妄想 12%, 不眠 8%, 傾眠 4%.
(Rev Med Interne. 2006 Jun;27(6):448-52)
・国内からも症例報告されている(日老医誌 1999;36:213-7)

LVFXを高齢者や腎不全患者への使用,CYP450 1A2と競合する薬剤,阻害する薬剤と併用する際には痙攣に注意.
・Literature Reviewでは2009年までに6例報告あり, どれも競合する薬剤が併用されていた.
(Eur J Clin Pharmacol (2009) 65:959962)

FQによる肝障害
・2-3%で生じる. AST, ALTの上昇をきたすことが多い
 通常軽症であり, 薬剤中止と共に改善する

66歳以上で肝障害の既往の無い患者群, 広域抗生剤を使用して30日以内に急性肝障害で入院した群とその群に年齢, 性別をMatchさせた, 同様のAbxを使用し, 肝障害(-)であったControl群を比較.
・Moxifloxacin(アベロックス), LVFX, CPFX, Cefuroxime axetil, Clarithromycinのいずれか
・最終的に抗生剤曝露後の急性肝障害で入院したのは144例. 
 うち88例(61.1%)は入院中に死亡.
・Clarithromycinと比較して, 
 Moxifloxacinは肝炎リスク OR 2.20[1.21-3.98]
 LVFXは OR 1.85[1.01-3.39]と高リスク.
 CPFXとCefuroxime axetilは有意差無しという結果であった
( 2012 Oct 2;184(14):1565-70.)

腎泌尿器系の障害
・FQによる腎障害は稀であるが, 血尿や間質性腎炎, 急性腎不全の報告例はある.
・報告例のほとんどが50歳以上, 特に>65歳が多く, 高齢者では注意
・腎毒性は過敏性反応による機序や直接的に腎毒性を示す機序がある
・FQが尿中に析出するCrystalluriaを呈することもあり. 
 尿中pHが上昇すると析出し, 腎障害を起こすため, FQ投与中の患者では脱水を避ける必要がある点と尿pHを上昇させる治療は避ける(生理的範囲内であればまずCrystalluriaのリスクはない).

高血糖, 低血糖リスク
糖尿病患者で抗生剤を使用した78433名の解析.
・入院, ER受診が必要な高血糖, 低血糖の頻度は以下の通り
・Macrolideと比較して, どれもリスクになる. 
・Moxifloxacinが最もHigh riskとなる.
(Clinical Infectious Diseases 2013;57(7):971–80)

皮膚障害
・FQは稀であるが日光過敏症のリスクとなる
・日光過敏症には2タイプあり,
 Photoallergic reactionは稀で, 薬剤曝露後数日経過して生じる.
 Phototoxic reactionは比較的多く, 初回投与後でも生じる. 薬剤の暴露と反応するのに十分な量の紫外線があれば生じ得る.

過敏性反応
・過敏性反応は0.6-1.4%で認める. 
・紅斑や掻痒感, 蕁麻疹が多い. 他に過敏性血管炎, 血清病, アナフィラキシー.

筋骨格系障害
・関節症はFQ投与例の~1%程度で認められ, 特に下肢関節で多い.
 また患者は<30歳の若い年代で多く, 関節痛や強張り, 関節腫脹を呈する
・腱炎と腱断裂リスクあり. アキレス腱で多い
 関節症と異なり, 腱障害は>50歳の高齢者で多い. 報告例は25-84歳
 ステロイド併用でさらにリスクは上昇する

FQによる腱断裂: Literature reviewにて98 caseを評価 (CID 2003;36:1404-10)
・Pefloxacinによるものが37%で800mg/dが最も多い
 Ciprofloxacinによるものが25.5%で500-2500mg/d
 Norfloxacinは11.2%, 800mg aid
 Levofloxacinは8.2%, Ofloxacinが6.1%
最も多い部位はAchilles腱; 89.8%
 44.3%で両側性, 83.7%でTendinitisを認める
・他の部位は稀だが, 三頭筋腱, 手指屈曲筋腱, 母指屈筋腱, 膝蓋腱, 棘上靭帯, 大腿四頭筋, 肩甲下筋, 肩板の報告がある
投与開始より17.6±19.5Dで生じる
 50%が投与開始から6日以内に発症
 投与後2hr~6moと幅広い

腱断裂の症状, 対応
FQ投与中の突然発症の重度の疼痛, 圧痛, 浮腫, 発赤, 腫脹には注意
・診断は超音波, MRIが良い
FQの中断, 内科的治療が中心. たまに外科治療もFQの減量により症状の改善も認められる
・FQの再開も, 高用量ならば再発も認めるが, 低用量, 他のFQの使用にて投与継続可能との報告もアリ
患者側のRisk Factor
 発症年齢; 59±16yr (28-92yr), M:F = 1.9:1
 ステロイド併用患者での発症が多い傾向
 他は透析, 腎不全, 腎移植, RA, 糖尿病, 痛風, 副甲状腺機能亢進, 甲状腺機能低下, 運動への参加 がリスクとして挙げられる可能性がある

FQによる心血管系障害
・一部のFQではQTc延長リスクがある
 LVFXでは基本的にはないとされている.
・またEMよりも軽度であり, それが原因で不整脈を呈することは稀
・様々な因子が重なり, 不整脈リスクとなる

その他
FQと網膜剥離 (JAMA. 2012;307(13):1414-1419)
カナダにおける989591名のCohort study.
その内網膜剥離を来した4384名と43840名のControl群を比較.
・経口FQのCurrent userは網膜剥離RR 4.50. NNH 2500.
 Recent, Past userは有意差無し
・内服薬ではCPFXが82.7%, LVFX 7.2%, Norfloxacin 4.9%, Moxifloxacin 4.0%, Gatifloxacin 1.1%
 β-Lactam, β-agonistは有意差無し

高齢者ではClCrを意識して, LVFX投与量を決めた方が良い
岐阜市民病院における報告:
 ≥75歳の高齢者でLVFXを使用する際に薬剤師により腎機能を評価し, 適切な投与量に調節するようにマネージメント. (Pharmazie 68: 977–982 (2013) )
・上記介入を行った142例と, 非介入コントロール群98例において, 薬剤の副作用頻度を比較した.
・介入群では, LVFXはClCr≥50で500mg/d, ClCr 20-50で初日500mg, 以後250mg/d, ClCr<20では初日500mg, 以後250mg/2dで継続するように指導, 調節した.

母集団と副作用頻度

・介入群における副作用頻度は4.2%, 非介入群では13.3%と有意に介入群で副作用リスクは低下する.
・副作用にかかる費用の軽減効果も見込める

副作用は
・介入群: 掻痒感2例, 黄疸, 肝障害2例, 下痢
・非介入群: 悪心/嘔吐, 脱力による転倒, 結膜充血, 掻痒感, 下肢の強張り, 幻覚, 紅斑, 下痢, 痙攣など.

---------------------
良い薬だからこそ, しっかりと知って, 適応, 量, 期間を考えて使いたいものですね...