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2021年9月16日木曜日

急性膵炎後の糖尿病

急性膵炎では, 膵外分泌機能の低下, インスリン抵抗性の上昇, インスリン分泌の低下などが生じ,  糖尿病を発症するリスクが上昇する.

膵炎後に発症する糖尿病を, Post-pancreatitis diabetes mellitus(PPDM)と呼ぶ.

・別名 3c型糖尿病(Type 3c DM). 続発性DMで最も多い.

・急性膵炎後に発症するもの(PPDM-A)が4/5, 
慢性膵炎に続発するもの(PPDM-C)が1/5

・Meta-analysisでは, 急性膵炎の23%, 慢性膵炎の30%でDMを発症


 インスリンが必要なDMは15%と17%

・Nationwide cohortにおける急性膵炎例 vs 対象群を比較した報告では,

 急性膵炎におけるDM発症HRはおよそ2倍程度.

 特に発症3ヶ月未満ではHR 5.90[3.37-10.34]と高く, 3ヶ月以降はHR 2.54[2.13-3.04]

 これらCohortでは, 重症膵炎症例と膵炎全体でDM発症リスクは同等

(Medicine 95(2):e2448)(Am J Gastroenterol. 2015 Dec;110(12):1698-706.)

・急性膵炎発症後〜数ヶ月〜数年の単位でDMは発症するため, フォローにおいてDMの評価は重要.

(European Journal of Endocrinology (2021) 184, R137–R149)


PPDMのEtiologyは急性膵炎と慢性膵炎では異なる.

・急性膵炎ではInsulin resistanceが主,
再発, 慢性化すると
インスリン分泌機能が低下

・AP患者の22%が膵炎を繰り返し, 
再発を繰り返す患者の36%が慢性膵炎となる.

(European Journal of Endocrinology (2021) 184, R137–R149)


PPDM-Aの頻度を評価したMeta-analysis

2004年発表のmeta: 初回の急性膵炎を発症した成人症例で,
 退院後1ヶ月以上フォローした前向きStudyのMeta-analysis

(Gut 2014;63:818–831.)

・AP発症前にDMやPreDMがある症例, 膵切除症例は除外

・高血糖は37%[30-45], (15 studies)

・Prediabetesの頻度は全体で16%[9-24] (11 studies), Heterogeneityが高い


 重症膵炎に限定すると, 20%[13-29] (4 studies)

・DMの頻度は全体で23%[16-31] (20 studies), Heterogeneityが高い


 重症膵炎に限定すると, 30%[20-41] (10 studies).

・インスリンを要するDMは全体で15%[9-21]

 
重症膵炎では14%[9-21]

・膵炎後長期間にわたってDM発症は認められる.


2019年発表のMeta

(Front. Physiol. 10:637. doi: 10.3389/fphys.2019.00637)

・急性膵炎後のDM発症率は23%[16-31], 31 studies.
 

 インスリンを要する膵炎は15%[9-23]

・Etiology別では,


 アルコール性膵炎では28%[15-43]
 

 胆石性膵炎では12%[6-20]
 

 その他では24%[4-49]

・重症度別
 

 重症膵炎 39%[31-47] 壊死性膵炎 37%[24-51]
 

 軽症膵炎 14%[8-21] 非壊死性膵炎 11%[1-28]

・フォロー期間別


PPDMと2型DMとの違い

(European Journal of Endocrinology (2021) 184, R137–R149)

・予後はPPDMの方が悪い


・インスリンが必要となるリスクもPPDMの方が高い
.

 PPDM-Aでは5.2倍のリスク

・同様に, 2型DMと比べて, 血糖コントロールが難しい.

・血糖降下薬のStudyでは,
多くがPPDMが除外されている.


 従って2型DMと同様の
治療薬選択でよいのかどうかも
不明確である

・台湾のNationwide cohortでは, PPDMに対してメトフォルミンの使用は予後改善に関連する結果.

(Diabetes Care 2019;42:1675–1683)


よくわかってない点:

・急性膵炎における一過性の耐糖能障害患者のうち, どの程度の割合がそのまま持続するか?

 (これについてはデータが全然ない)

・急性膵炎後の糖尿病スクリーニング、フォローはどの程度の期間行うべきか?

 (大体1年間くらい行われていることが多いのが現状)

・PPDMではインスリン導入を早めるべきか, 2型DMと治療を変える必要があるか?