ICU患者のストレス潰瘍予防; PPI vs H2阻害薬のmeta-analysis
(Crit Care Med 2013;41:693-705)
ICU患者のStress潰瘍予防目的のPPI vs H2-blockerを比較した14 RCTsのMeta-analysis(n=1720)
アウトカムでは, PPIの方がH2阻害薬よりも潰瘍, 出血予防効果は良好となる...が,
アウトカム
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RR
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消化管出血
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0.36[0.19-0.68]
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著明なGI出血
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0.35[0.21-0.59]
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死亡
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1.01[0.83-1.24]
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院内肺炎
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1.06[0.73-1.52]
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Funnel plotを見てみると,
どうもPPI有利のStudyが多く発表されているようだ.
*Funnel plotとは, 縦軸にそのRCTの母集団数, 横軸に結果(RR)をプロットしてゆくもの.
母集団数が多ければ, より現実に近い結果となり, 母集団が少なければそのバラツキも大きくなるので, 通常真のRRを頂点として三角形となる.
その形がおかしい場合, 今回の場合は, PPI vs H2BのRRが>1となるStudyが明らかに欠けている印象があり, つまりPPIに不利な文献が出版, 発表されていないことが予測される.
= 出版バイアスの可能性が高いと判断できる.
三角形の頂点はどうやらRR1付近にありそうであり, 潰瘍予防効果はPPI>H2阻害薬だ!!
とは思わない方が良いのかもしれない。
ICUでの潰瘍予防はどの患者に対して行われるべき?
基本的にICUならば全患者で行われるべきと言えますが,
以下のStudyが個人的に面白いと思っている.
(Crit Care Med 2010;38:2222-8)
H2阻害薬によるストレス潰瘍予防について調査した17 RCTsのMeta
結果は以下の通り;
Outcome
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母集団全体
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非経腸栄養群
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経腸栄養群
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消化管出血OR
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0.47[0.29-0.76]
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0.37[0.23-0.61]
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1.26[0.43-3.70]
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院内肺炎OR
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1.53[0.89-2.61]
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1.26[0.68-2.32]
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2.81[1.20-6.56]
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死亡OR
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1.03[0.78-1.37]
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0.87[0.36-1.19]
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1.89[1.04-3.44]
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H2-R blockerは, 非経腸栄養中の患者への使用では, 消化管出血リスクを軽減する効果を示すが, 経腸栄養中の患者への使用では消化管出血リスク低下効果は無し. それどころか, 院内肺炎, 死亡リスクを上昇させる.
ストレス潰瘍予防目的の制酸剤は経腸栄養開始後は速やかに中止する!
だらだらと投与しないほうが良い.
ICU以外では潰瘍予防はどうするの?
(Arch Intern Med. 2011;171(11):991-997)
≥18yr, 3d以上入院している患者 78394名のCohort.
元々GI出血にて入院されている患者は除外.
制酸剤使用; H2阻害薬, PPI使用と定義.
患者の平均年齢は56yr. 男性41%. 制酸剤使用したのは59%. GI出血合併率は0.29%
Propensity scoreで調節した結果では, 制酸剤使用はGI出血 OR 0.63[0.42-0.93],
臨床的に明らかなGI出血 OR 0.58[0.37-0.91]と有意差認めるが, NNTにすると770とかなり高い値.
ICU以外では重症度に応じて決めるべき.
薬剤による予防効果は認めるけど, NNTはかなり高く, 実感できる程の効果もない.
対費用効果も不明.
リスクに応じて考えるべきで,
基本的に絶食の人や抗血小板薬, 抗凝固薬使用中, 高用量ステロイド投与中ではやったら? という感じ.