80台男性。1週間の経過の呼吸苦、咳嗽あり。
画像所見では両側下肺、末梢優位のスリガラス影あり、Cellular NSIPととれるような所見。
SLE、SSc、皮膚筋炎、RAといった膠原病を示唆する身体所見も一切無し。
自己抗体はANA含めて全て陰性だが、抗CCP抗体が60IU(正常値~4IU)と上昇。RFは弱陽性程度。
RAの所見は一切ないが、抗CCP抗体が陽性の間質性肺炎。
これはどう解釈すべきか?
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RA所見が全くないが、抗CCP抗体陽性のOrganizing Pneumoniaで、
8ヶ月後にRA所見が出現したCase reportが国内からあり、RAに先行する間質性肺炎もありえるのは確か。(Inter Med 49: 1605-1607, 2010)
抗CCP抗体陽性だがRAを含め、他の膠原病の所見を認めない間質性肺炎、気管支病変(+)の74名の解析
(Respiratory Medicine 2012;106:1040-47)
CCP抗体価を弱陽性、陽性、強陽性で分類;
正常値 <20IU、弱陽性 21-39IU, 陽性 40-59IU, 強陽性 ≥60IU
患者のベースライン;
CT所見;
気道病変のみのパターンが最も多い。ILDや気道病変+ILD例、肺線維症、肺気腫例ではCCP抗体価も高い傾向にある。
この74名をフォローし、RAを発症したのは3名のみ。
しかも抗CCP抗体 強陽性群からだけで、弱陽性、陽性群からはRAは発症しなかった。
強陽性群33名中、3名が発症。発症までの期間は449日[328-579]
発症した3名の抗CCP値は其々 175IU, 136IU, 92IU,
リウマチ因子値は其々 366IU, 陰性, 718IUであった。
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このStudyからは、抗CCP抗体が陽性のILDがRAの初発症状である、とは言い難い印象。
そもそも
無症候の患者群で抗CCP抗体を測定することが通常なく、臨床的意義が不明
原因不明の関節痛、関節炎群では測定する価値があることは分かっている。
抗CCP抗体は原因不明の関節炎群において、3年以内のRA発症を感度50%, 特異度97%で予測可能(Arthritis and Rheumatism 2004;50:709-15)というデータがあるのみ。
もうすこしデータが集まらないと何とも言えない感じ。