20台前半の男性。特に既往は無し。
体力テストにて100mの全力疾走後、数時間経過してから腰背部痛が出現。
近位受診し、投薬うけるが改善せず、2日後に浮腫が出現したため、再度受診。
血液検査にてCre 8台と著明高値であり、紹介入院。その際の尿酸値4.0mg/dL。
CPK正常。
さて診断は?
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Exercise-induced acute renal failure associated with renal hypouricemia
(Nephrol Dial Transplant 2004;19:1447-53)
低尿酸血症を伴う運動誘発性急性腎不全
先天性の腎性低尿酸血症を示し, 運動後にARFを併発する病態.
54名の解析では48名が男性と男性で多い. 初発年齢は17yr[11-46].
尿酸値は通常0.70±0.25[0.1-1.4]と低値を示す.
ARF時はCre 5.45±3.33mg/dL, UA 4.40±2.49. Cre>UAとなるのが特徴.
FENaは0.013-9.5%, 平均2.0%, <1.0%が9例, 1-2%が11例.
60例の解析によると, 症状頻度は以下の通り. 悪心嘔吐や腹痛, 鼠径部痛が多い.
悪心 嘔吐
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51/60
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腹痛
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22/60
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倦怠感
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16/60
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鼠径部痛
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35/60
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発熱
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7/60
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乏尿
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0/60
|
発症のタイミングは,
運動後12hrで75%,
24hrで84.6%,
48hrで98.1%,
72hrで100%発症している.
発症季節は春と秋が多い
4-6月は体力測定, 9-10月は運動会が多いため, ARFエピソードも多い
男性の頻度が多いのも, 運動習慣に関連している可能性が高い.
24.1%が再発を繰り返し, 一番多い例は6回のエピソード.
尿酸調節障害を評価したのは35/54で,
26例でPre-secretory reabsorptive defect,
2例でPost-secretory reabsorptive defect,
2例でTotal reabsorptive defect,
5例で尿細管分泌亢進を認められた.
28例で腎生検試行
組織形は微小変化が6例,
急性尿細管壊死所見が22例認められた.
再発予防教育
運動制限, NSAID使用の回避, 運動後の飲水, ビタミン剤など
様々な指導がされるが, 有意に再発予防に繋がるのは運動制限のみ.
ちなみに, Renal hypouricemia; 男性の0.16%, 女性の0.23%
Renal hypouricemia 32名の解析では,
UA値は 0.93±0.49mg/dL, 全例で2mg/dLを超えることは無かった.
CUAは68.3±31.6ml/min, CUA/CCrは0.584±0.264.
運動誘発性急性腎不全エピソードを経験したのは3例.
尿路結石症は4例.
慢性腎不全となったのは2例のみだが, その内1例は高血圧に伴うもので, この病態自体でCKDとなる可能性は極めて低い.
(J Am Soc Nephrol 15: 164–173, 2004)