そこでERにおける心臓CTがどの様に診断に寄与するかを評価したのがROMICAT I, II trial.
ROMICAT I; 心電図正常, 心原性酵素上昇のない急性胸痛患者103名において, 心臓CT検査を施行. 冠動脈硬化プラーク, 冠動脈狭窄の有無を評価.
全例入院管理とし, 最終的に心電図や血液検査, 負荷試験にてACSと判断されたのが14%.
アウトカムをACSとしたとき, 初診時の心臓CTの感度, 特異度は,
CT所見
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Sn(%)
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Sp(%)
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LR(+)
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LR(-)
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Plaque(+)
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100[81-100]
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46[35-57]
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1.85
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∞
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Stenosis(>50%)
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100[81-100]
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82[72-89]
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5.56
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∞
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確実にプラークや狭窄が無いと判断できる場合は当然ACS由来の胸痛は否定可能.
石灰化などで評価困難な場合もある事に注意 (Circulation 2006;114:2251-60)
ROMICAT II; 40-74歳の急性胸痛でACS疑いだが, 初期のECG, トロポニン検査は正常の1000名のRCT.
すぐに心臓CT検査を施行群 vs 通常の経過観察群に割り付け, 入院期間, 28日以内の冠動脈イベントを比較. (NEJM 2012;367:299-308)
母集団は, 5分以上の胸痛でERを受診. ACSを除外困難な患者群. ECGは洞調律.
除外項目はACSの既往(+), ECG, Tropで虚血所見あり, Cre>1.5mg/dL, 血行動態不安定, 造影剤アレルギー, BMI>40.
マネージメントは, 心臓CT, 経過観察にてACSが否定的ならば帰宅(CTではプラーク, 狭窄>50%が無い場合).
アウトカム;
最終的にACSと判断されたのは75名(8%). 両群ともACSの見逃しは無し.
心臓CTの方が退院までの時間や, ERから直接退院する割合(47% vs 12%), 入院期間が有意に短縮可能.
また, 低〜中等度のACS疑いの患者1370名のRCT (NEJM 2012;366:1393-403)
心臓CT vs 通常の経過観察群に割り付け, 30日以内のACS発症, 死亡リスクを評価.
患者群は, 30歳以上で胸痛を主訴にERを受診, ECGは正常, もしくはTIMI score 0-2だが, 心臓精査を必要と判断された患者群.
908名が心臓CT, 462名が通常の経過観察群に割り付けられた(2:1)
アウトカム; 心臓CT群の908名中, 実際にCTを施行できたのは767名(84%) 施行できなかった理由は主にHRが下がらない為.
心臓CTにて狭窄<50%の640名中, 30日以内のACS, 死亡したのは0例[0-0.57]
両群でACS発症, 死亡リスクは同等. ROMICAT IIと同じく心臓CT群のほうがより早期にACSが除外可能であり, 帰宅率が高く, 入院期間も短くて済む.
Non-STEMI疑いの際に6時間もの間数回のECG, 血液検査を繰り返すくらいならば早期に心臓CTで否定しておくというマネージメントはありと思う.
当院心臓内科でも結構やっているマネージメント.
対費用効果は知りません。経過観察でも除外はできることから考えると, CT群の方が高いのか, それとも入院期間が減らせるので安上がりなのか?