近年, 特発性VT/VFの原因の1/3を占めるという報告があり, 注目されている.
206名の特発性VT/VF患者と, 年齢, 性別, 人種, 身体活動度をMatchさせた412名のControl群を比較. NEJM 2008;358:2016-23
早期再分極(+)は有意にVT/VF群で多いという結論(31% vs 5%).
また, 早期再分極(+)群ではVT/VFの再発, 発症率も有意に高かった. HR 2.1[1.2-3.5]
39名の特発性VT/VF患者のCase-control studyでは, (Am J Cardiol 2009;104:1402-6)
VT/VF群ではV4-5誘導のJ point notchを認めるタイプの早期再分極が多いと報告
(44% vs 5%, 44% vs 8%, p=0.001-0.006)
さらに, 平均年齢44±8.5歳の10864名の33±11年間フォローにおいて
ECG所見と心血管死亡率, 死亡率, 不整脈死亡率を評価したstudyでは,
(NEJM 2009;361:2529-37)
全体で, 早期再分極(≥0.1mVの上昇)は5.8%に認められ,
下壁誘導にST上昇を認めるのが3.5%, 側壁に認められるのが2.4%.
また, J-point上昇が>0.2mVとなっていたのは0.6%(側壁0.3%, 下壁0.3%)認められた.
フォロー期間中に死亡したのは56.5%(心原性32.1%)であり,
心電図所見と心原性死亡HRを評価すると,
Variable
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心原性死亡RR
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QTc 延長
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1.20[1.02-1.42]
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LVH
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1.16[1.05-1.27]
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J-point 上昇>=0.1mV
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1.28[1.04-1.59]
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J-point 上昇>0.2mV
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2.98[1.85-4.92]
|
と, J-pointの上昇 = 早期再分極はQTc延長と同程度の心原性死亡リスクの上昇に関連.
しかもJ-point >0.2mVの上昇ではさらに高リスクとなっている。
これら早期再分極における死亡リスク、不整脈リスクの上昇から,
いままで良性と思われていた早期再分極の中に、悪性のものがあると考えられ,
悪性早期再分極症候群と提唱された(Malignant Early Repolarization syndrome)
早期再分極症候群は主に3つのタイプに分類され
Type 1; 早期再分極が側壁誘導で認められる ⇒ 特にVFのリスクにはならない
Type 2; 早期再分極が下壁, 下壁+側壁で認められる ⇒ VFのリスクとなり得る
Type 3; 早期再分極が下壁全体, 側壁, 右誘導で認められる ⇒ 最も高リスクとなる
(Heart Rhythm 2010;7:549-558)
また、Type 1に似ていても、V2にJ-wave >0.2mVの上昇がある場合はブルガタ型心電図となり, VF/VTのリスクとなり得る.
(ブルガダは下記の表の通り、右室に異常があるとされている)
原因として, 心筋組織のイオンチャネル異常が指摘されており,
ブルガタ症候群も悪性早期再分極症候群もそのイオンチャネルの異常が関連している。
結構このへんの定義がグチャグチャしていて、
J wave syndromeと悪性早期再分極とブルガタ症候群の明確な線引きがされていない。
今後されると思われる(もしかしたらもうされている?)が、
以下の図が個人的に分かりやすかったので採用したい。
ブルガダも悪性早期再分極症候群も同じ "J wave syndrome"であり、
その原因はイオンチャネル異常によるもの。
そして異常があるチャネルの違い。
(Heart Rhythm 2010;7:549-558)
とても簡単に区別すると、
側壁(V4-6)に≥0.1mVのJ波がある場合がType1で特にリスクにはならない。
側壁(V1-3)に>0.2mVのJ波を認めるのをブルガダ、
下壁(II, III, aVF)に≥0.1mV(>0.2mVの方がよりHigh RIsk)のJ波を認めるのがType2-3の早期再分極症候群で不整脈リスクになり得るという認識。。。でいいのかなぁ。
(H24年 7/25追加)
(Mayo Clin Proc 2012;87:614-619)
早期再分極における心血管死亡リスク因子には同誘導のQ波, T-wave inversion(TWI)所見も重要との報告.
米国のPalo Alto Veterans Affairs Health Care CenterのRetrospective cohort.
外来患者で, Af, AF, HR>100, QRS>120, PM, PVC, MIを除外した29281名のECG所見と予後を評価.
87.2%が男性で, 平均年齢は55-56歳. フォロー期間は7.6±3.8年.
早期再分極の分布;
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前璧で
≥0.2mVのST上昇 |
*
|
後壁で
≥0.1mVのST上昇 |
*
|
側壁で
≥0.1mVのST上昇 |
*
|
全体
|
326(1.1%)
|
10%
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485(1.7%)
|
6.4%
|
1481(5.1%)
|
3.8%
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Q wave, T-wave inversion(-)
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301
|
8%
|
424
|
6.4%
|
1447
|
3.2%
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TWI≥0.05mV (@ERの誘導)
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5
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20%
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19
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21%
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30
|
23%
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Q wave(+) (@ERの誘導)
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21
|
43%
|
52
|
21%
|
8
|
25%
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TWI + Q wave
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1
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100%
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10
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20%
|
4
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25%
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* そのうち, 心血管由来の死亡の割合(%)
心電図所見の心血管由来死亡 HR(年齢, 性別調整)
ECG所見
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HR
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前壁 ≥0.2mVのER
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2.0[1.4-2.8]
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前壁 TWI
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1.6[1.2-2.2]
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前壁 Q wave
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2.1[1.7-2.6]
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側壁 ≥0.1mVのER
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0.9[0.3-0.6]
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側壁 TWI
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2.6[2.3-3.0]
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側壁 Q wave
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1.6[1.0-2.5]
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下壁 ≥0.1mVのER
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1.6[1.1-2.2]
|
下壁 TWI
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2.2[1.9-2.6]
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下壁 Q wave
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2.0[1.8-2.3]
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全ER + TWI or Q wave(同じ誘導)
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3.4[2.4-5.0]
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早期再分極のリスク評価には, Q waveやTWIの所見も重要となる