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2017年2月14日火曜日

脳梗塞による頭痛

脳梗塞は基本的に頭痛はきたさない、と学生時分に習いましたが,
脳梗塞でも頭痛は伴うことがある.

Taiwan stroke registry: 11523例の初発脳梗塞症例を評価した報告では
(Stroke. 2013;44:1852-1858.)
・脳梗塞時に頭痛を伴っていたのは7.4%
・脳梗塞のタイプと梗塞血管の頭痛への関連は以下のとおり
脳梗塞タイプ
RR
循環
RR
血管
RR
大血管動脈硬化
1.28[1.14-1.44]
前方循環
0.79[0.73-0.85]
ACA
0.92[0.75-1.12]
小血管病
0.72[0.64-0.81]
後方循環
1.39[1.27-1.51]
MCA
0.78[0.72-0.85]
心原性塞栓
1.27[1.00-1.61]
前方, 後方両方
1.22[0.99-1.50]
PCA
2.16[1.86-2.50]
Specific cause
1.80[1.27-2.56]
不明
2.02[1.70-2.39]
視床
0.74[0.61-0.89]
不明
1.01[0.85-1.20]


中脳
1.20[0.99-1.46]





0.91[0.78-1.07]




延髄
2.14[1.86-2.45]




小脳
2.24[1.97-2.55]




前方, 多発
0.88[0.72-1.07]




後方, 多発
1.89[1.65-2.16]
・後方循環系の脳梗塞, 小脳や延髄の梗塞で頭痛を伴う頻度が高そう

頭痛を伴う脳梗塞患者 50例と, 頭痛(-)の脳梗塞患者 50例において, 梗塞部位を比較したStudy
(BRAIN 2016: 139; 217–226)
・頭痛(+)群と頭痛(-)群での梗塞巣をSubtraction mapで示すと

・島回, 尾状核, 体性感覚野, レンズ核, 被殻の梗塞は頭痛に関連している.

頭痛を伴う脳梗塞の部位と頭痛の性状, 随伴症状を評価した報告
(Cephalalgia. 2016 Jan 1:333102416686342.)
・急性の頭痛を伴う脳梗塞症例49例で画像所見, 症状を評価

頭痛の強度と相関性のある部位は島皮質後部, 小脳, 側頭弁蓋.

頭痛の性状: 拍動性頭痛は皮質や皮質下の梗塞巣と関連性あり
緊張性頭痛様や刺されるような頭痛については相関性はない

悪心: 後頭葉上部, 中部, 視床外側, 小脳が関連.

脳自律神経症状: 三叉神経の自律神経症状(支配領域の発汗, 結膜充血, 鼻汁, 流涙)は側頭葉上部, 中心後回, 上頭頂葉病変に関連

音過敏症状は小脳病変に関連する.
一方で光過敏症状には関連する部位は認められなかった.

2017年2月12日日曜日

顔面帯状疱疹の半分以上は疼痛が先行する

帯状疱疹では典型的な皮疹が生じる前に, 神経痛を生じることがある.
・特に顔面や頭部では鑑別に困る場合が多い.

韓国において, 頭部帯状疱疹で皮疹出現後10日以内に受診した152例の解析.
(Clinical Neurology and Neurosurgery 152 (2017) 90–94)
・罹患神経は, 三叉神経が100例, 中間神経が34例, 上位頚神経18例
皮疹前に疼痛を生じたのが112例(73.7%)
 疼痛〜皮疹まで3.0±1.3日[1-6日間] 

罹患神経による比較

・三叉神経では66%, 中間神経では94.1%, 上位頸神経では77.8%が皮疹前に疼痛を生じている.(中間神経はただ皮疹に気づいていない可能性もあるか)
 *中間神経は小脳橋角部よりでて, 鼓索神経で舌前2/3の味覚を支配, 
 また、外耳道, 耳介の感覚を支配し, 
 副交感線維により顎下腺や耳下腺を支配する

疼痛先行例 vs 皮疹先行/同時例の比較

・疼痛の性状は両者で有意差なし. 疼痛は刺されるような疼痛が多い
・皮疹前に疼痛が出現する場合, 疼痛は重度となる

2017年2月10日金曜日

発作を起こしやすい喘息は?

Am J Respir Crit Care Med Vol 195, Iss 3, pp 302–313, Feb 1, 2017 より
喘息には発作を起こしやすいサブタイプがあるが, 明確な定義や特徴はまだ不明瞭.
・このサブタイプをExacerbation-prone asthma(EPA)と呼ぶ.

SARP-3 cohortにおいて, 1年以内の発作回数(ステロイド3日以上の使用を必要とする発作で定義)が0, 1-2回, ≥3回の3群に分類し, 比較
・また上記で有意差を認める因子をSARP-1,2 cohortでも評価した
  SARP(NHLBI Severe Asthma Research Program)
・患者は6歳以上で医師が喘息と診断した患者群を対象.
 高用量ICS + 他のコントローラーを3ヶ月以上使用している患者

SARP-3の709例中, 発作0回は294例, 1-2回が242例, ≥3回が173例

EPAに関連する因子

・副鼻腔炎, GERDの存在は有意なリスク因子となる
・また, SABA吸入後の改善度, BMI, 血中好酸球数もリスク.

他のCohortでの評価

・副鼻腔炎, GERD, BMI, Eo値は同じくEPAのリスクとなり得る.

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今の時点ではこれらの要素, EPAで治療が変わることはありませんが, 今後研究が進めば新たな分類, 治療推奨が変更となるかもしれませんね.

今は このような要素がある患者では注意しておこう, という認識で。

慢性腎疾患患者に対するメトフォルミン

メトフォルミンは内服後24hでその90%が腎臓より排泄される(半減期4時間程度).
排泄率はGFR 60-90では23-33%低下, GFR 30-60では74-78%低下することがわかっており, 慢性腎疾患患者では投与を避けるように添付文章にはある.
(JAMA. 2014;312(24):2668-2675 )

国内ではMetforminは
・“中等度”以上の腎機能障害と重度の肝障害で投与禁忌.
・この中等度とは国内臨床検査の除外項目である男性でCre≥1.3mg/dL, 女性で≥1.2mg/dLとしている(参照であり, 明言はしていない)

海外ではいままでは男性でCr ≥1.5, 女性で≥1.4で禁忌としていた.

しかしながら, 慢性腎疾患患者を対象とした報告が出てきており, 2016年にFDAはMetforminの禁忌をCr値ではなく, eGFRで定義し直した.
具体的には<30mL/min/1.73m2では投与しないように勧告し直したことで, 従来では禁忌に当たる患者の一部も使用可能となっている.

(Ann Intern Med. 2017;166:191-200.)より,
CKD, CHF, 慢性肝疾患患者対するMetforminの使用を評価したSystematic review.
・CKD(eGFR<60mL/min/1.73m2), CHF, 慢性肝疾患患者で糖尿病を合併している患者群を対象し, Metforminを含む治療群 vs 含まない治療群で死亡リスク, 副作用などを比較しているStudyを抽出.
・CKD患者を対象とした6 trials, CHF患者を対象とした11 trials, CLD患者を対象とした3 trialをReviewした

CKD患者における評価

・CKD患者(eGFR 30-60mL/min/1.73m2)でのMetforminの使用は有意に死亡リスクを軽減する結果.
・心血管系副作用は有意差ないか, ごく軽度の心不全再入院リスク低下効果が期待できる(HR 0.91[0.84-0.99])
・低血糖リスクはSU剤やインスリンよりも低い(OR 6.0[3.8-9.5], 7.9[5.0-12.4])

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慢性腎疾患を合併した糖尿病患者でも, メトフォルミンによる予後改善効果は期待できる.
添付文章にはあくまでも参考としてCr値のカットオフが記載されている(小賢しいが)ので、eGFRで判断してもそう責められることはない。。。かもしれない(が、よく分からない。後ろから撃ってくる同業者もいるだろうし。。。)

個人的にはJAMA 2014のReviewで推奨されている方法はリーズナブルで気に入っており, 紹介する;

慢性腎疾患患者では,
・eGFR 45-60であり, 安定していれば腎機能に注意しつつメトフォルミンを使用する方法もあり.
・腎機能が不安定, 増悪傾向があれば避けるべきである.
・メトフォルミン使用中の患者が, 徐々に腎機能が増悪し, それがDMや原疾患によるものと考えられるならばeGFR 30−45程度でも使用は継続可能. ただし減量は必要.
・eGFR <30では使用しない.
(JAMA. 2014;312(24):2668-2675 )

急性心不全における退院時のBNP, NT-proBNPと予後

以前, 急性心不全における利尿の指標について書きました。(心不全 急性期治療における利尿薬の指標はどうする?)

BNPやNT-proBNPを指標とした場合, どの程度をカットオフとするとよいのか?
Ann Intern Medより以下のようなMetaが発表されていましたので紹介します。

急性心不全症例における, 退院時のBNP, NT-proBNPと死亡, 再入院リスクを評価したMeta-analysis
(Ann Intern Med. 2017;166:180-190.)
・患者は急性心不全で入院となり, 利尿薬で治療された患者群を対象

BNPを指標とした際のカットオフ, アウトカム

NT-proBNPを指標とした際のカットオフ, アウトカム

・BNP, NT-proBNPを退院時までに十分低下させられれば, その後の予後は良好な可能性が高い.
・BNPを指標としたStudyでは, もっとも多く用いられた閾値は
 BNP 250pg/mL, もしくは30%以上の減少.
 フォロー期間は30d~4年, 6ヶ月前後が最多
NT-proBNPも同様に30%程度の減少をカットオフとしていることが多い

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国によって入院期間も異なるでしょうし, 入院期間が比較的長期間となりがちな日本国内では, 退院までにBNP, NT-proBNPをさらに低下させてることもできるのでしょうが, とりあえずの目標として30%程度低下を早期に達成すると良さそうです.

2017年2月8日水曜日

梅毒検査における生物学的偽陽性

梅毒の検査にはnon-treponemal test(STS: Serologic test for Syphilis)とTreponemal test(TP抗原検査)がある.

STSにはVDRL(venereal disease research laboratory)とRPR(rapid plasma reagin)があり
TP抗原検査にはEIA, TPHA(T pallidum hemagglutination assay), TPPA(T pallidum particle agglutination test), FTA-ABS(fluorescent Treponemal antibody with absorption test)がある.

STSは梅毒感染におけるカルジオリピンーレシチンに対する抗体の産生を検出する検査で, 感染後2-4週で陽性化する. ただし偽陽性(生物学的偽陽性)が問題となる.
生物学的偽陽性の原因として有名なのが抗リン脂質抗体症候群
 他には急性ウイルス感染症(EBV, 肝炎, 麻疹など), マイコプラズマ感染症, クラミジア感染症, 予防接種, 妊娠など.

TP抗原検査は梅毒に特異的な抗原を評価する検査であり, 特異性が高いが, STSよりも2-3週間遅れて陽性となる.

>> したがって, STS 陽性, TP抗原検査 陰性 では感染早期か, 生物学的偽陽性を考慮する.


生物学的偽陽性の頻度, 背景疾患にはどのようなものがあるか?

ジャマイカにおける19067例の血液サンプルを用いた解析では
(Genito urin Med 1990;66:76-78 )
・生物学的偽陽性は一般人口の0.59%, 妊娠女性の0.72%(有意差なし)
・SLE患者の11.8%で認められた.

日本国内の人間ドッグのデータでは生物学的偽陽性は0.18%
(健康医学 1993;8:67-70)

オーストラリアの大学病院において, 300000例の血液サンプルを評価した報告
(International Journal of STD & AIDS 2005; 16: 722–726)
・VDRLの生物学的偽陽性は736例で認められた(0.24%).
・女性で有意に多く(0.27% vs 0.20%), さらに60歳以上がリスクとなる(0.34% vs 0.25)

・HIV陽性患者では特にリスクが高い(2.1% vs 0.24%)

・定量での評価では, >1:32では真の陽性を示唆する(この報告では1:1-2は除外)

中国における63765例の血液サンプルでの評価では,
(International Immunopharmacology 20 (2014) 331–336)
・生物学的偽陽性率は0.32%(206例)で認められた.
・女性例, ≥80歳, 16-35歳で有意に多く認められる.

背景疾患のカテゴリ
・妊娠, 出産に関連した患者での生物学的偽陽性が多い.
・また, 血液や免疫に関連する疾患でも多い

背景疾患の頻度
悪性腫瘍, 頭位分娩, じんま疹, 皮膚炎, 脳梗塞, SLEなど
 様々な背景疾患がある

2017年2月6日月曜日

癒着性小腸閉塞におけるガストログラフィンの効果

癒着性小腸閉塞において, NGチューブからのガストログラフィン(水溶性経口造影剤)は診断、治療双方に有用な可能性がある.

NGを留置し, 胃内容物を吸引した後にガストログラフィン®を50-100ml程度注入する.
その後6-24時間あけて腹部XPを評価する.

癒着性小腸閉塞に対するガストログラフィンの効果を評価した, 2015年までに発表されたStudyのMeta-analysis
(The American Journal of Surgery (2016) 211, 1114-1125)
・癒着性イレウスに対する水溶性造影剤の使用の効果を評価
 使用量は40-150ml, 大半が100mlを使用.

診断目的: 投与〜規定時間以内に右横行結腸に造影剤が認められた場合, 感度 92%, 特異度 93%で手術治療なしで治療可能と判断
・評価までの時間別の感度, 特異度
・投与後24-36hで評価する方法が最も感度, 特異度が良好.

治療目的: 外科手術回避効果
・水溶性造影剤の投与は有為に手術治療必要リスクを低下させる結果(OR 0.55[0.37-0.82])

治療目的: 他
・非手術例における入院期間の短縮効果: WMD -2.12日[-2.63~-1.60]
・改善までの期間の短縮効果(非外科治療例): WMD -28.25時間[-40.13~-16.37]
・合併症, 死亡リスクは有意差を認めない.

再発リスクには影響するか?
202例のSBO症例(造影剤投与群は114例)を1年以上フォローし, 再発リスクを比較.
(journal of surgical research 202 (2016) 43-48)
再発リスクは両者で同等.