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2016年5月27日金曜日

心房細動で抗凝固薬使用中の患者における出血リスクの評価スコア

心房細動患者では抗凝固薬を使用することが多い.
その際の出血リスクの評価としてはHAS-BLEDやATRIAスコアが有名.
また, 最近ORBITスコアなども発表されている.

HAS-BLED



Score
出血 /100pt-yr
H
Hypertension; sBP>160mmHg
1
0
1.13
A
Abnormal Renal/Liver function
(
透析, Cre≥2.3mg/dL)(肝硬変, bil>2ULN, AST/ALT3ULN)
1 or 2
1
1.02
S
Stroke

2
1.88
B
Bleeding (既往, 貧血)

3
3.74
L
Labile INRs (INRコントロール不良)

4
8.74
E
Elderly



D
Drugs or alcohol (抗血小板薬, NSAIDなど)
1 or 2


・スコア ≥3で出血リスクが高いと判断する
(The American Journal of Medicine (2011) 124, 111-114)

ATRIAスコア
・貧血(Hb<13[M], <12[F]): 3pt, 
・腎不全(eGFR<30): 3pt,  
・年齢 ≥75歳: 2pt, 
・出血の既往, 高血圧: 各1pt の合計5項目で計算する.

0-3ptが低リスク, 4ptが中リスク, ≥5ptが高リスクと判断 
(J Am Coll Cardiol. 2011;58:395-401.)

ORBITスコア

HR
点数
年齢 75歳
1.38[1.17-1.61]
1
Hbの低下/貧血あり
2.07[1.74-2.47]
2
出血の病歴
1.73[1.34-2.23]
2
腎不全(GFR<60mL/分)
1.44[1.21-1.72]
1
抗血小板薬併用
1.51[1.30-1.75]
1

(European Heart Journal (2015) 36, 3258–3264)

HAS-BLED, ATRIA, ORBITの出血リスク予測能を比較
(The American Journal of Medicine (2016) 129, 600-607 )
AMADEUS trialにおいて, Afでワーファリンを使用している2293例で上記スコアを評価し, 出血リスクとの関連を評価.
・AMADEUSはAf患者におけるIdraparinuxとワーファリンを比較したopen-label RCT.

各スコアと出血率
・出血は臨床的に関連性のある出血, Major bleedingで評価
・HAS-BLED ≥5ptは出血リスクが高いことがわかる



・HAS-BLEDは最も出血リスクを評価するのに有用.
 といっても臨床的に実感できる可動かは微妙なライン.
・そもそもそこまでしっかりとリスクが評価できるわけではないということの方が重要.

2016年5月25日水曜日

AKIにおける透析導入のタイミング

AKIを合併した重症患者で, 腎不全による致死的な合併症がない場合, どの段階で透析を開始するかは意見が別れるところ.

AKIKI trial: 挿管管理 and/or カテコラミンを使用しているICU患者で, 且つ重度のAKI(KDIGO stage 3)があり, 腎不全による致命的な合併症がない患者620例を対象としたRCT
Initiation Strategies for Renal-Replacement Therapy in the Intensive Care Unit. N Engl J Med
・早期透析導入群 vs 晩期導入群に割り付け, 生命予後を比較.
 早期: 割り付け後すぐに開始 = AKI stage 3の時点で導入
 晩期: 後述の導入基準を1つでも満たせば導入

KDIGO AKIステージ: 
Stage
クレアチニン
尿量
1
基礎値の1.5-1.9倍
または
0.3mg/dLの増加
6-12時間で<0.5mL/kg/h
2
基礎値の2.0-2.9倍
12時間以上で<0.5mL/kg/h
3
基礎値の3倍以上
または
4.0mg/dLの増加
24時間以上で<0.3mL/kg/h
または
12時間以上の無尿
除外項目 & 透析開始基準
・BUN >112mg/dL, 
・血清K >6mEq/L(治療している場合>5.5mEq/L)
・ABG pH <7.15, 
・溢水による急性肺水腫でSpO2 >95%を保つために>5LのO2投与もしくはFiO2 >50%が必要となる患者

・この項目は, 晩期透析開始群の透析開始基準項目も兼ねる (= これらの1つ以上があれば透析導入)

透析中止基準:
・24時間で500ml以上の排尿が認められる場合に中止を考慮
 特に利尿薬無しで1000ml以上ある場合, 利尿薬投与下で2000ml以上ある場合は強く中止を考慮する.
・さらに自尿のみでCr値が低下する場合に透析を中止.

患者の母集団
・母集団の8割が敗血症患者となる.
・SOFAスコアは11程度

アウトカム:



60日生存率は両者で有意差無し
・晩期開始群の場合, 28日で約4-5割の患者が透析を免れる
・28日, 60日での透析継続率は
 早期群で12%, 2%
 晩期群で10%, 5%と有意差なし

ELAIN trial: 重症患者で, AKI KDIGO stage 2以上, 且つplasma neutrophil gelatinase-associated lipocalin ≥150ng/mLを満たす231例を対象とした単一施設RCT.
(JAMA. 2016;315(20):2190-2199. )
・KDIGO stage 2を満たして8時間以内に透析導入する群と 
 stage 3を満たして12時間以内もしくは透析導入をしない群に割り付け90日死亡リスクを比較
・患者は18-90歳のKDIGO stage 2を満たすAKIがあり, NGAL >150ng/mLを満たし, 以下の1つ以上の状態を認める群
 ・重症敗血症 
 ・カテコラミンを使用中
 ・コントロール不良の溢水(肺水腫の増悪, P/F<300mmHg, 体重増加>10%), 
 ・SOFA ≥2の増悪(腎臓を除く)
・CKD(GFR<30), 透析患者, 腎動脈閉塞による腎障害, 糸球体腎炎, 間質性腎炎, 血管炎, 腎後性腎不全, HUS, TTPは除外

母集団
AKIKIと異なり, 心疾患患者が半数.
 外傷や腹部手術も多く敗血症はむしろ少ない.

透析導入時の両群の状態
・晩期透析群も結局ほぼ全例で透析導入が必要となっている
 早期導入群と比較して, 晩期20時間程度遅れて導入となっている

アウトカム
早期透析導入群(stage 2で導入)は有意に死亡リスクの低下を認める
・透析期間や腎機能の改善も有意に早期導入群で低い


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AKIにおける透析導入のタイミングを評価した2つのRCTが連続して発表されました.
両者の違いは導入基準とその母集団と言えます

AKIKIではほぼ敗血症患者を対象とし, KDIGO stage 3で導入か, 
・BUN >112mg/dL, 
・血清K >6mEq/L(治療している場合>5.5mEq/L)
・ABG pH <7.15, 
・溢水による急性肺水腫でSpO2 >95%を保つために>5LのO2投与もしくはFiO2 >50%が必要となる患者を満たす場合に導入するかを比較し, 
 早期(Stage 3到達時点)に導入しても生存率改善効果や維持透析回避効果はないという結論.

ELAINは心臓外科患者, 腹部外科, 外傷患者を主に対象とし, KDIGO stage 2で導入か,
 Stage 3で導入するかを比較し, 早期に導入したほうが生命予後や腎予後を改善させる可能性があるという結論.
 また晩期導入群の大半が結局透析を必要としている点. 母集団の重症度が高い点(SOFA 15-16)も大きく異なる.

この2つのRCTの背景が違いすぎるため, 一概に透析導入が早いほうが良いとは言い難い.

敗血症によるAKIでは, stage 3となっても, 自力で改善する可能性もあり, あまり急ぐ必要がなく,
外科患者や心臓外科患者, 外傷患者ではstage 2まで行くとそのままstage 3...とどんどん増悪する可能性が高いため早期に導入すべき, とも考えられる. 

母集団、背景疾患でも導入のタイミングを考慮せねばならないのかもしれません.

2016年5月24日火曜日

門脈内ガス Hepatic portal venous gas: HPVG

門脈内ガスは文字取り, 門脈内にガス像を認める病態
(World J Gastroenterol 2009 August 7; 15(29): 3585-3590)(Can J Gastroenterol 2007;21(5):309-313)
・機序としては, 腸管壁でのガス産生, 膿瘍内ガスが門脈へ流入, 門脈内でのガス産生菌の増生の3つが考えられている.
・CT, XP, Echoといった画像検査で検出され, 肝被膜直下 2cm以内にAirを認める場合は門脈ガスである可能性が高い(胆道内ガスは中心部に多い)
  >> 門脈流は中心→末梢, 胆汁流は末梢→中心と逆のため.


・原因としては腸管壊死(72%), UC(8%), 腹腔内膿瘍(6%), SBO(3%), 胃潰瘍(3%)と腸管壊死が多く, その為死亡率も56-90%と高値. 
・ただし, 近年CTが普及してから, 無症候性, 非致死性の原因が増加しているため, 上記頻度は当てにならない. 近年では死亡率25-35%程度と報告あり.

HPVGの原因とその頻度:
(Ulster Med J 2012;81(2):74-78)

HPVGの治療
・治療に関しては以前は手術治療が第一選択であったが, 近年は保存的加療が多く行われる.
・保存的加療で改善しない場合, 腸管虚血がある場合は手術適応.
(Can J Gastroenterol 2007;21(5):309-313)

別のReviewにおける対応アルゴリズム
(Arch Surg. 2009;144(6):575-581)

ポイントは, 
・腸管虚血を見逃さない
・膿瘍や腸閉塞がある場合は要注意
・上記がない場合は経過観察も選択肢となる.

では, 腸管虚血を予測する因子には何があるか?

腸管気腫症, 門脈内ガスの患者において, 腸管虚血を予測するアルゴリズムを作成.
(J Gastrointest Surg (2010) 14:437448)
・単一施設にて最初の4年間で来院した腸管気腫 or HPVG 74例でアルゴリズムを作成, 残り1年間で来院した14名でValidation.
・腸管気腫, HPVGは主に3つのグループに分類される.
 Mechanical 38%, Ischemic 31%, 良性特発性 26%.

機械的機序, 虚血, 良性特発性を評価するアルゴリズム
・バイタルサインが異常ならば安定化させ, 必要に応じて外科手術を考慮
・画像上機械的機序が推測される場合や, 48h以内のGI処置がある場合は機械的機序を考慮し, 対応する.
・上記を満たさない場合, スコアを計算. スコアは以下の要素で計算
 動脈硬化リスク因子, 冠動脈疾患既往, 末梢血管疾患既往, 腸管血流の低下リスク, 血管閉塞, 腹部診察所見, 乳酸値, 小腸の腸管気腫所見
 このスコアが>6点ならば腸管虚血を強く示唆する
 <4点ならば虚血の可能性は低い.
これにより, 感度 89%, 特異度 100%で腸管虚血を診断し得る

HPVGにおける腸管壊死の予測因子
(Surg Today (2015) 45:156–161)
・33例のHPVG症例を後ろ向きに解析.
 14例が腸管壊死(+), 19例が腸管壊死(-)群であった.
・両群を比較したところ, sBP, LDH, 腸管気腫所見が有意な腸管壊死のリスク因子.
これより, 
 sBP≤108mmHg
 LDH >387U/L, 
 腸管気腫所見の3項目中2項目以上で感度100%, 特異度78.9%で腸管壊死を示唆する

ガスの分布と腸管虚血の関連
(European Journal of Radiology 81 (2012) 3862–3869)
47例の門脈, 腸間膜静脈内ガス症例の解析.
・68.1%が腸管虚血に伴うものであり, ガスの分布と虚血との関連性を評価.

ガス分布の評価:

 AV: arcade vessel. 腸管壁から連続
 SV: segmental V, AVから流入
 SMV: 上腸間膜静脈
 PV: 門脈
 肝内門脈 の5部位で評価.

ガスの部位と虚血の予測能
部位
感度(%)
特異度(%)
LR+
LR-
AV
93.8
70.0
3.13
0.09
SV
65.6
40.6
1.10
0.85
SMV
40.6
90.0
4.06
0.66
PV
15.6
90.0
1.56
0.94
肝内
75.0
20.0
0.9
1.3

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これらをまとめると,
門脈内ガスにおける腸管虚血のリスク因子として,
・病歴: 動脈硬化リスク: 糖尿病, 高血圧, 高脂血症, 喫煙歴
  冠動脈疾患既往, 末梢血管疾患既往歴
・所見: 低血圧やショックバイタル, 腹部所見が強い
・血液検査では乳酸値上昇, LDH上昇
・画像所見では, 大動脈やSMAの石灰化や狭窄所見や
 腸管気腫所見, Arcade vessel内のガス所見, SMV内のガス所見

 といった項目が腸管虚血に関連している可能性が高い.
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ちなみに
ERにおけるHPVGの予後不良因子は?
ERを受診した50例の門脈内ガス症例を評価した後ろ向きStudy
・全体の死亡率は56%であった.
・有意な死亡リスク因子はShock vitalと腸管気腫症所見
 Shockバイタル: OR 17.0[3.4-86.2]
 腸管気腫: OR 5.1[1.0-25.7]
・上記2項目がある場合, 死亡率は84%, 上記が認めない場合は死亡率 0%の結果.
・他, 発熱や消化管症状, 血便, 腹部所見, WBC, CRPなどは有意差なし
(American Journal of Emergency Medicine 32 (2014) 972–975)