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2015年11月19日木曜日

緊張性気胸の症例報告のLiterature review

緊張性気胸. 
・とても致命的で, すぐに対処が必要な疾患として,
 ACLSの心停止の原因疾患として, 非常に有名な疾患.
・緊張性気胸ならば胸部XPをとる前に刺すべし!
 XPなんて撮っていたらダメだ! と言われたりすることもある疾患
 (バイタルが大丈夫ならばXP撮ってもいいのです. あくまでも心停止とか, ショックで今にも死にそうな場合のみです.)
・ただし, 実際のところあまり多くないのも事実.

緊張性気胸の場合, 陽圧換気中の緊張性気胸と, 補助呼吸がない状態での緊張性気胸で分けて考えたほうが良い.
(Ann Surg 2015;261:1068–1078) 
自発呼吸時の緊張性気胸では, リーク部に一方弁が形成され, 胸膜腔内に空気が貯留する.
吸気時にリークし, 呼気時には弁が閉じる
・非陽圧換気, 自発呼吸患者での緊張性気胸は, まず気胸に伴う低酸素が先行し, その後循環不全へ進行する
・代償機能も働きやすい(呼吸数増加, VT増加, 健側胸郭可動域の拡大)

陽圧換気では, 常にリークし続けるため, 進行も早い
呼吸器管理中の緊張性気胸は, 急速に循環不全, 呼吸不全へ進展する
・鎮静により呼吸数やVT増加の代償は働かず, 急速進行のため, 健側の胸郭可動域の拡大による代償も働かない.

(Ann Surg 2015;261:1068–1078) より,
緊張性気胸の症例報告, 症例シリーズ 156文献より, 183症例の臨床症状/所見を解析.
・人工呼吸器(補助呼吸)中の患者群と, 補助呼吸(-)に分類して評価している.
47%(86例)が補助呼吸なし, 53%(97例)が呼吸器管理中の気胸.
・両側性は補助呼吸(-)で2.3%, 補助呼吸(+)群で24.4%
緊張性気胸の原因

補助呼吸
(-)

補助呼吸
(+)


補助呼吸
(-)

補助呼吸
(+)

外傷
19.8%
14.4%
原発性気胸
16.3%
0
Barotrauma
3.5%
51.6%
続発性気胸
24.4%
3.1%
CVC挿入
2.3%
16.5%
 COPD
5.8%
2.1%
CVC意外による穿刺
5.8%
2.1%
 喘息
2.3%
0
NG, 気切チューブ挿入時の合併症
4.7%
3.1%
 包虫嚢胞破裂
9.3%
0
心肺蘇生時
0
1.0%
 その他
7.0%
1.0%
胸腔ドレーンの合併症
7.0%
8.2%
消化管穿孔
10.5%
2.1%
 部位の異常, チューブが小さい
0
7.2%
 上部消化管穿孔
8.1%
2.1%
 キンク, 閉塞
1.2%
1.0%
 CFによる大腸穿孔
2.3%




不明
10.5%
7.2%

緊張性気胸の臨床症状/所見
症状/呼吸症状, 酸素状態
臨床症状/所見
補助呼吸
(-)

補助呼吸
(+)

胸痛
52.3%
0
呼吸苦
38.4%
0
息切れ
31.4%
0
呼吸困難
41.9%
8.3%
呼吸数≥20/
46.5%
NA
呼吸数≤12/
1.2%
NA
SpO2<92%, PO2<60mmHg(RA)
10.5%
5.2%
O2投与必要
39.5%
86.6%
P/F 中央値
75.8[53-215.6]
67.5[44-127.8]
P/F <300
77.4%
96.4%
P/F 200-300
4.2%
3.6%
P/F 100-200
20.8%
32.1%
P/F <100
75.0%
60.7%
呼吸停止
9.3%
NA

頸部/胸部の診察所見
頸部/胸部の診察所見
補助呼吸
(-)

補助呼吸
(+)

JVD
4.7%
9.3%
反対側への気管偏倚
17.9%
2.9%
皮下気腫
10.5%
30.9
患側の胸部所見


 胸郭の低膨張
3.5%
1.0%
 胸郭の過膨張
2.3%
2.1%
 胸郭可動域の低下
7.0%
12.4%
 胸郭可動域の増加
0
0
 打診にて反響音の増大
26.7%
8.3%
 聴診にて呼吸音の減弱
58.1%
45.4%
健側の胸部所見


 胸郭の低膨張
0
0
 胸郭の過膨張
0
0
 胸郭可動域の低下
0
1.5%
 胸郭可動域の増加
0
0
 打診にて反響音の増大
0
1.5%
 聴診にて呼吸音の減弱
9.5%
8.8%
循環所見
循環所見
補助呼吸
(-)

補助呼吸
(+)

心拍数 中央値
116[98-130]
110[90-136]
心拍数 ≥100bpm
43.0%
30.9%
心拍数 ≤60bpm
5.8%
8.3%
低血圧(MAP≤60mmHg)
16.3%
66.0%
心停止
2.3%
28.9%
 初期波形VF
NA
8.3%
 初期波形PEA
NA
75.0%
 初期波形Asystole
NA
16.7%
血圧, 発症形式
補助呼吸中の患者の緊張性気胸はより急速発症が多く, 低血圧も多い.

症状/所見頻度のまとめ

当たり前の話ですけども,

補助換気がない患者の緊張性気胸は比較的緩徐に発症することもあるし, いろいろ代償反応, 症状があるので分かりやすい.
一方で陽圧換気中の気胸では, 緊張性気胸となり, 突如発症の低酸素と心停止と至ることがあるので注意しましょう.

挿管患者の急変では必ず肺エコー必須、ということで.

2015年11月18日水曜日

小児の繰り返す気道感染症に対するアジスロマイシン

JAMA. 2015;314:2034-2044より

前学童期の小児の14-26%が繰り返すWheezeや気道感染症状を認め, しばしば入院や受診が必要となる

12-71ヶ月の小児で, 繰り返す重度のWheeze, 下気道感染症症状を呈する患者群を対象としたDB-RCT.
・この患者群を, 気道感染症状を認めた際
 早期にAZM 12mg/kg/d 5日間投与群 vs Placeboに割り付け
 下気道感染症のリスクを比較した.
・投与のタイミングは各患者に応じて決定

患者は過去1年以内に以下を満たす群
 1) Wheezeが>3回あり, そのうち1回以上は受診が必要
 2) >2の受診が必要なほどのWheeze
 3) ≥4ヶ月のコントローラーを使用し, >1回の受診が必要なエピソード
 (全身ステロイド投与は受診に含む.)
除外項目は, 
 >4回のステロイド使用, 
 >1回の入院, 
 >8ヶ月のコントローラーの使用, 
 2wk以内の経口ステロイド使用, 
 連日の喘息症状, 
 2wk以内に≥2回の夜間喘息症状, 
 1ヶ月以内のAbx使用歴.

母集団データ


アウトカム
・患者群は607例で, 期間中に1回以上の呼吸器感染症状を認めたのは443例(治療群 223, Placebo 220).
・AZM群は有意に下気道感染症リスクを軽減する結果.
 下気道感染症進展リスクはAZM群で5%, Placebo群で8%, HR 0.64[0.41-0.98], ARD 3%[0-6]
 4回の気道感染症エピソードの総計では, AZM群で24%, Placebo群で40%
NNTは1回の気道感染症で33, 
 2回で14, 
 3回で10, 
 4回で7
気道症状は, 下気道感染症移行例ではAZMで症状緩和される(あたりまえ)
下気道感染症非移行例ではAZMに症状緩和効果はない(あたりまえ その2)

サブ解析では
9-11月の気道感染症エピソードではAZM投与であまり利点がない?

-------
何の因果かWHOよりSAVE Antibiotics, SAVE Children.という運動中に発表されたRCT.
大事なのはStudyの母集団.
1年に平均4.5回も喘鳴があり,  2.5回も救急を受診し, 全体の14%が入院をしている.

自分も経験者ですが、小児が入院すると親は結構大変です。
いわゆる高リスクな小児ではこの様な対応も許容されるのかもしれない.

ただし、このStudyでは耐性菌の評価やリスクはまだされていないため, そこは注意が必要.

この知識は引き出しの奥にしまっておいて, 限定的な状況において, こんな方法もあるかも、という感じの知識でおいておきたい.


2015年11月17日火曜日

ヘルペス脳炎後の自己免疫性脳炎

HSV脳炎後 自己免疫性脳炎
(Neurology® 2015;85:1736–1743)

HSV脳炎は通常 増悪し、改善すればそれで終わる経過であるが,
HSV脳炎患者でCSFからウイルスが消失し, 治療が終了した数週間後に再度脳炎を生じることがある.

この場合, 自己免疫による機序が考えられており, それらの患者の多くでNMDA受容体のGluN1サブユニットに対する自己抗体が検出される.

これをHSV脳炎後自己免疫性脳炎と呼ぶ.
主に小児例での報告が多く, 小児では舞踏病様アテトーゼと呼ばれる症状が出現するため, HSV脳炎後舞踏様アテトーゼと呼ばれることもある.

HSV脳炎後の非ウイルス性再発例 14例の前向きStudy.
(全例でCSF HSV PCRは陰性.)
・2013年~2015年に上記診断された14例中, 8例が10歳台〜成人症例.
・10台〜成人症例では, 年齢中央値 40歳[13-69], 男性例が5/8
・小児例では年齢は13ヶ月[6-20]

・発症時期はHSV脳炎発症から12-51日目(中央値39日[26-43])で発症
 小児例では27日[17-40]

・10台〜成人例における症状は急性脳炎様が3例, 精神行動異常が7例. 1例が難治性てんかん発作であった.

・8例中5例にNMDA受容体抗体が陽性(CSF(5), 血清(2))となり, 3例は未知のneuronal cell surfaceタンパクに対する抗体が認められた(CSF(3), 血清(1))

・MRI検査では新規病変が5/6で認められる

・免疫抑制療法を行った7例では前例が反応し, 症状の改善あり.

10台〜成人例と小児例と比較すると, 
・舞踏病アテトーゼが成人例ではない(0/8 vs 6/6)
・また意識レベル低下も少ない(2/8 vs 6/6)

10台〜成人例の8例

HSV脳炎で治療し, 数週間後に再増悪する場合, 
 ウイルス性脳炎の再燃以外に自己免疫機序の脳炎も考慮するべき.
ウイルスが否定的ならば免疫抑制剤が治療となる.