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2019年6月11日火曜日

成人発症の川崎病

30代女性, 数日間持続する発熱, 頸部LN腫大, 手足から体幹に広がった皮疹にて受診.
皮疹は点状の丘疹が主だが, 色々. 非特異的な印象
伝染性単核症様症候群として対症療法を開始した.

初診時, フォローの診察にて舌の発赤(ややイチゴ舌), 軟口蓋の粘膜疹, 眼瞼結膜充血もあり.

 Neuは80%でLy優位でもなかった. 異形Lyも無し
 結果的にEBV, CMV陰性. マイコやパルボも陰性.
 旅行例や山野への侵入といったダニリスクもない. 動物接触歴もなし

しばらくフォローすると, Day 5-6頃に手指, 足末端の落屑が生じ始めた.
ASO, ASK陰性.

・・・・・・・あれ? これってまさか川崎病じゃ?(小児科ローテ以来だよ...)


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(J Am Coll Cardiol 2016;67:1738–49) 
川崎病は原因不明の急性, Self-limitedの血管炎で乳児, 小児で多い.
・80%5歳未満の小児例
 日本における頻度は高く, この年代での有病率は10万人あたり265
 (米国では19. アジア/Pacific Islanderが多いハワイでは210, カルフォルニアでは50.4例と人種差が大きい)

高熱, 皮膚粘膜炎症, 頸部リンパ節腫脹, 冠動脈・他の動脈炎
・血管炎は発症後1週間程度より中型血管の内腔側, 外膜側より生じ10日頃には全層性の炎症へ波及する
・壊死性動脈炎, 亜急性/慢性血管炎, luminal myofibroblastic proliferation(LMP)の所見が認められる
(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769. )
IVIGで治療しない場合, 小児例の1/5は冠動脈瘤を生じる

川崎病の既往は若年発症のACSリスク因子となる
・米国において, 40歳未満で生じたMI5%で川崎病の既往がある.
日本にける若年例のMI, 突然死の9.1%で川崎病の既往がある
・また, 冠動脈造影検査にて川崎病による冠動脈異常が認められるが川崎病の既往がない患者もおり, 無症候性の川崎病の存在も示唆されている
(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769. )

初期に冠動脈瘤を認めた川崎病患者の長期予後
(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769. )

川崎病の診断・症状
(AFP 2006;74:1141-8)
有用な検査は無く, 臨床所見にて診断
Clinical Criteria ; 5日以上の発熱 + 4項目以上
結膜充血
頚部リンパ節腫脹
・口腔内粘膜変化
多型性の皮疹
・四肢の腫脹, 発赤

他の鑑別診断の除外も重要なcriteria
上記3項目 + 冠動脈病変でも診断可 
・発熱は5日以内でも疑わしければ診断可能
5日間の発熱 + Criteria 2項目を満たす患児はさらに川崎病の臨床所見を評価する Atypical KDの可能性

症状
・発熱は平均11日間持続. 一部で数週間持続する例もある
・結膜所見は両側性で非化膿性. 疼痛や光過敏は認めない
・四肢の浮腫は手首, 足首で境界明瞭となる. 
 爪周囲より始まる表皮剥離は発症後2-3週で生じる
・口腔所見は発赤, 唇のひび割れ, イチゴ舌. びまん性の所見となる
・皮疹は発症5日以内で多く, 体幹〜鼠径優位となる. 点状丘疹, 紅斑, 多形性紅斑様

鑑別疾患
・ウイルス感染症(麻疹, アデノ, エンテロ, EBVなど)
・Scarlet fever
・Staphylococcal scaleded skin syndrome
・TSS
・薬剤過敏症候群
・SJS
・若年性関節リウマチ
・リケッチア、レプトスピラ

成人発症の川崎病
(Autoimmunity Reviews 15 (2016) 242–249 )
成人例 43例の報告(平均年齢30±11, 18-68)
・男女比は1:2で女性に多い.
発症~診断まで13日間, 範囲8-21
・症状頻度
・粘膜皮膚障害は四肢の変化が91%と多い
 またびまん性の皮疹を生じる
・眼所見は結膜炎が81%
・他に関節・筋症状や消化管症状, 神経症状も認められる.

IVIG79%で施行. 発症~開始までは11[9-18]
・ASA86%で投与された
・早期治療群(<9), 晩期治療or治療無しの群の比較ではLarge Vessel Vasculitisの頻度は両群で変わらない.


・画像検査における冠動脈瘤は初期では19%, 6ヶ月後には14%, 最終フォロー時には9%と減少>>持続性の冠動脈瘤は9%程度

川崎病の治療
(J Am Coll Cardiol 2016;67:1738–49)

急性期治療
・急性期治療の目標は全身性, 組織における炎症をいち早く抑制すること.
・発症10日未満の患者で, 未だ炎症が高い場合, 発熱がある場合, 冠動脈拡張がある場合はIVIGを使用する
・IVIG後36h経過して再発した発熱で, 他に原因が考えにくい場合, 他の抗炎症治療を検討する(Influximabやステロイドなど). この場合A, B型血液ではIVIGによる溶血反応が生じやすい可能性がある
・冠動脈拡張(zスコア>2.0)を認める患者では週2回の心エコーで, 所見が安定するまでフォローする. この場合も積極的な抗炎症治療を行うべき.
・所見が安定後も巨大冠動脈瘤がある場合は, 最初の3ヶ月間は頻回にエコーをフォローする. 動脈瘤と血栓形成評価を目的とする
・巨大冠動脈瘤(zスコア≥10)は最も血栓形成リスクが高く, 動脈瘤が改善するまで抗凝固療法+抗血小板療法を検討すべき

IVIGは2g/kg, アスピリンは80-100mg/kg/d(小児例)で使用
・高用量ASAは解熱後48-72h, または発症後14日間まで継続
 その後は低用量 3-5mg/kg/d(小児例)で継続する

IVIGとPSL併用で冠動脈病変リスクが低下する報告もある

RAISE study; 日本国内の多施設Open-label, RCT.
(Lancet 2012; 379: 1613–20)
・川崎病248名を, IVIG 2g/kg 24hr + ASA 30mg/kg/d 解熱までその後ASA 3-5mg/kg/dを最低28日間投与群
  vs IVIG + PSL 2mg/kg/d, CRP陰性化すれば5日毎に減量. 15日で中止(Max 60mg/d, 2mg/kg/d → 1mg/kg/d → 0.5mg/kg/d → off)
冠動脈評価はBaseline, 1wk, 2wk, 4wkで心エコーを施行.

アウトカム: 冠動脈異常頻度は有意にPSL群で低い
・RD 0.20[0.12-0.28]NNT 10(4wk), 5(Study終了時)

慢性期治療
・発症数週間における心エコーで, 冠動脈拡張を認めない場合(エコーでしっかりと観察できる場合に限る), その後の冠動脈病変リスクは低いと判断する
・冠動脈瘤がフォローにて改善を認めた場合, 正常径となっていても, 病理ではLMPが認められ, 動脈の反応異常が認められるため注意は必要
・持続性の冠動脈瘤では長期的な血栓リスクやACSリスクがある
 長期的な心血管系のフォローが必要

日本と米国のガイドラインの比較(Heart. 2017 Nov;103(22):1760-1769.)


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2019年6月9日日曜日

パルボウイルスB19感染による皮疹

30台の男性. 発熱にて受診.
数日前に子供が発熱, 皮疹のエピソードあり, 近医にてウイルス感染症と診断された.
子供は軽快傾向にある.

本人は2日前より発熱があり, 下肢の皮疹に気づき受診.

皮疹は上下肢に広く分布する点状出血斑が主. 一部浸潤を触れる.
疼痛, そう痒感はない.

血液検査ではWBCの低下, PLTの低下を認め, ウイルス感染による血管炎を考慮した.
家族歴や血球減少からパルボの可能性もあると判断.

>>結果的にパルボIgMが陽性であった

ところで, パルボウイルスB19感染における皮疹ってどのようなパターンがあるのか?

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成人のParvovirus B19の初感染症例29例における皮膚所見
( J Am Acad Dermatol 2014;71:62-9.)
・女性が17. 年齢中央値は38[18-89]
・各症例の詳細:

皮疹パターンの分布
・発疹が最も多いが, 他のパターンとして血管炎様皮疹, 関節屈側に分布する皮疹, 手袋-靴下型の皮疹の大きく4パターンに分類される.
・皮膚所見は,
 紅斑が86%(掻痒感69%)と最多
 部位は下肢93%, 体幹55%, 上肢45%, 顔面20% 
・他には網様紅斑, 環状・円形紅斑手袋靴下型の紅斑, 関節屈側の紅斑血管炎様皮疹がある.

もう一つの報告より, 14例における皮疹パターンと臨床的特徴
(Hum Pathol. 2000 Apr;31(4):488-97.)
古典的皮疹パターンの2例と丘疹性皮膚炎の2
・手足の点状出血は古典的パターンの1つに含まれている

Sweet症候群に類似した3例の特徴

膠原病に類似した症例
・血清陰性関節炎(生検にて環状肉芽腫)と皮膚筋炎に類似した症例

ループス類似症例とPalpable purpuraを呈した症例
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パルボB19感染による皮疹は様々.
皮疹のタイプは
 非特異的な皮疹
 点状出血斑, Palpable purpura
 Sweet病様のスミレ色の結節
 環状紅斑
 
分布は
 非特異的な分布
 顔面・頬部
 手袋-靴下型に分布した後半や紫斑
 関節屈側

皮膚筋炎に類似した皮疹

といったパターンがありえる.

2019年6月7日金曜日

カテーテル感染症に対する抗菌薬ロック療法

中心静脈カテーテル感染症において, CV抜去は重要な治療の一つではあるが,
どうしても抜去困難な場合は, 限定された症例においてのみ抗菌薬ロック療法が試される

抗菌薬ロック療法 = Antibiotics Lock Therapy : ALTと呼ばれる

(Lancet Infect Dis 2016; 16: e241–50)

ALTを考慮する患者は以下:
ALTはカテーテル抜去が困難で状態が安定し, さらに毒性が低い細菌で考慮する(CNSなど) 
 また, 状態が安定しており, 他部位に感染巣がなければ腸球菌やCorynebacterium, Gram negativeでも考慮.
・敗血症性塞栓や局所の感染兆候合併(IEや血栓性静脈炎, 敗血症性塞栓, 化膿性脊椎炎)がある患者では避けるべき
・黄色ブドウ球菌におけるALTの成功率は低く, 避けた方が無難.
・ALTは抗菌薬の全身投与と合わせて行う.
(Enferm Infecc Microbiol Clin. 2018;36(2):112–119)

ALTの方法
・無菌調剤した薬液を, カテーテル内に満たすだけ投与しそのままロックする.
薬液は1日に12h以上ロックした状態で, 24-72時間毎に繰り返す.
 繰り返す際はカテーテル内の薬液を除去したのちに新しい薬液を注入
ALT10-14日間継続する

薬剤と想定する起因菌, それに対する浸透性, 浸透速度
(Infection and Drug Resistance 2014:7 343–363)

・細菌はカテーテル内腔にBiofilmを形成しており, そこに作用する必要がある.
 そのため, 薬剤の浸透率や浸透速度を踏まえてALTを行う必要がある.
・MRCNSではVCMが使用されることが多いが, 浸透速度は遅いため, 長時間のロックを検討した方が良い. また浸透率や速度を考慮するとDaptomycinは良い選択肢となり得る.


使用される薬剤の濃度
(Infection and Drug Resistance 2014:7 343–363)
・報告より, ALTに使用される薬液は以下の通り:
 ペニシリンG: 50000U/mL
 アンピシリン: 2-10mg/mL
 ピペラシリン: 10-100mg/mL
 ピペラシリン/タゾバクタム: 10mg/mL
 セファゾリン: 5-10mg/mL
 セフタジジム: 0.5-10mg/mL, 一部では83-333mg/mLの報告もあり
 セフトリアキソン: 83.3-166.6mg/mL
 シプロフロキサシン: 0.1-10mg/mL
 レボフロキサシン: 0.05-5mg/mL
 アミカシン: 0.02-40mg/mL
 ゲンタマイシン: 0.1-5mg/mL
 バンコマイシン: 0.025-10mg/mL
 テイコプラニン: 0.02-10mg/mL
 リネゾリド: 0.2-2mg/mL
 ダプトマイシン: 1-25mg/mL
・さらにヘパリンを混ぜてロックとすることも多い

ALTの効果を評価したRCTはほぼ無い〜小規模RCTがわずかのみ.

1997-2003年にカテーテル関連感染症でALTを施行された患者群を後ろ向きに解析, また, 2003-2006年の症例を前向きにフォローした.
(Journal of Antimicrobial Chemotherapy (2006) 57, 1172–1180)
・ポケット感染や挿入部感染症, 心内膜炎や骨髄炎, 血栓性静脈炎合併例, カンジダ血症, 血行動態不安定の患者は除外.
また前向きフォローではS aureusによる感染症を除外した
・ALT+抗菌薬全身投与で治療した症例で, カテーテル抜去症例も除外

アウトカム
原因菌はCNS70%

・抗菌薬の全身投与期間は12日間[8-14]
 ALT12日間[8-14]
治療成功例は94/115(81.7%)

治療失敗例
S aureus 21例中, 9例で治療失敗している.

CNSによるCRBSIDPTALT, 全身投与にて治療された21例の後ろ向き解析
(J Chemother. 2017 Aug;29(4):232-237.)
・DPT ALTの中央期間は3日間, 全身投与は3日間
・他RFP, FQなどを用い, 合計14日間の治療期間であった.
この治療により, カテーテルを30日以上温存, 且つ感染症が治癒した症例が74%と良好.
・DPT ALTでは短くても良いかもしれない.

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CV感染やポート感染において, どうしても抜去,入れかえが困難な状況では,
ポケット感染や刺入部感染, IE, 遠隔播種を否定した上で抗菌薬ロック療法を検討してもよいかもしれない.
ブドウ球菌では失敗率が高いため注意すべき
抗菌薬は浸透率や速度考慮し, 12時間/日 以上はロックを継続する.
 薬液の濃度は様々. 決まっていない.
全身抗菌薬投与は当然必要.