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2012年8月12日日曜日

胸痛患者に対するERでの心臓CT (ROMICAT I, II trial)

急性胸痛で来院したが, 心電図正常, 心原性酵素上昇が無い患者群では, Non-STEMIの可能性を考慮して経過観察, 心電図, 心原性酵素フォローを行う流れが普通.

そこでERにおける心臓CTがどの様に診断に寄与するかを評価したのがROMICAT I, II trial.

ROMICAT I; 心電図正常, 心原性酵素上昇のない急性胸痛患者103名において, 心臓CT検査を施行. 冠動脈硬化プラーク, 冠動脈狭窄の有無を評価.
 全例入院管理とし, 最終的に心電図や血液検査, 負荷試験にてACSと判断されたのが14%.
 アウトカムをACSとしたとき, 初診時の心臓CTの感度, 特異度は,


CT所見
Sn(%)
Sp(%)
LR(+)
LR(-)
Plaque(+)
100[81-100]
46[35-57]
1.85
Stenosis(>50%)
100[81-100]
82[72-89]
5.56


 確実にプラークや狭窄が無いと判断できる場合は当然ACS由来の胸痛は否定可能.
 石灰化などで評価困難な場合もある事に注意 (Circulation 2006;114:2251-60)

ROMICAT II; 40-74歳の急性胸痛でACS疑いだが, 初期のECG, トロポニン検査は正常の1000名のRCT.
 すぐに心臓CT検査を施行群 vs 通常の経過観察群に割り付け, 入院期間, 28日以内の冠動脈イベントを比較. (NEJM 2012;367:299-308)
 母集団は, 5分以上の胸痛でERを受診. ACSを除外困難な患者群. ECGは洞調律.
 除外項目はACSの既往(+), ECG, Tropで虚血所見あり, Cre>1.5mg/dL, 血行動態不安定, 造影剤アレルギー, BMI>40.

 マネージメントは, 心臓CT, 経過観察にてACSが否定的ならば帰宅(CTではプラーク, 狭窄>50%が無い場合).

アウトカム;
 最終的にACSと判断されたのは75名(8%). 両群ともACSの見逃しは無し.

心臓CTの方が退院までの時間や, ERから直接退院する割合(47% vs 12%), 入院期間が有意に短縮可能.

また, 低〜中等度のACS疑いの患者1370名のRCT (NEJM 2012;366:1393-403)
 心臓CT vs 通常の経過観察群に割り付け, 30日以内のACS発症, 死亡リスクを評価.
 患者群は, 30歳以上で胸痛を主訴にERを受診, ECGは正常, もしくはTIMI score 0-2だが, 心臓精査を必要と判断された患者群.
 908名が心臓CT, 462名が通常の経過観察群に割り付けられた(2:1)

アウトカム; 心臓CT群の908名中, 実際にCTを施行できたのは767名(84%) 施行できなかった理由は主にHRが下がらない為.
 心臓CTにて狭窄<50%の640名中, 30日以内のACS, 死亡したのは0例[0-0.57]
 両群でACS発症, 死亡リスクは同等. ROMICAT IIと同じく心臓CT群のほうがより早期にACSが除外可能であり, 帰宅率が高く, 入院期間も短くて済む.



 Non-STEMI疑いの際に6時間もの間数回のECG, 血液検査を繰り返すくらいならば早期に心臓CTで否定しておくというマネージメントはありと思う.
 当院心臓内科でも結構やっているマネージメント.
 対費用効果は知りません。経過観察でも除外はできることから考えると, CT群の方が高いのか, それとも入院期間が減らせるので安上がりなのか?

2012年8月11日土曜日

スタチンは糖尿病のリスクとなり得る

JUPITER study;
 LDL<130mg/dL, 高感度CRP≥2mg/L, 心血管イベントの既往(-)の17802名のDB-RCT
 患者群は男性≥50歳, 女性≥60歳.

 Rosuvastatin(クレストール) 20mg/d vs Placeboに割り付け, 心血管イベントリスクを評価.
1.9年間フォローでのアウトカムは, (NEJM 2008;359:2195-207)
Outcome
Rosuvastatin
Placebo
HR
NNT
Primary End point
0.77
1.36
0.56[0.46-0.69]
167
MI
0.17
0.37
0.46[0.30-0.70]
500
Stroke
0.18
0.34
0.52[0.34-0.79]
625
Arterial Revascularization
0.38
0.71
0.54[0.41-0.72]
303
UAPによる入院
0.09
0.14
0.59[0.32-1.10]

全死亡
1.00
1.25
0.80[0.67-0.97]
400

 心血管イベント, Stroke, 再灌流療法, 心血管死亡は有意にRosuvastatin群で低下.
 また, 副作用としては血糖コントロールが悪化することが多くなる.

このJUPITER studyを, 以下の群別に解析したStudy(5年後フォロー) (Lancet 2012;380:565-71)
 メタボリック症候群, 耐糖能障害, BMI≥30, HbA1c>6%のいずれかを満たす群が11508名.
 リスクファクターを認めない群が6095例. それぞれの群でアウトカムを評価.

 上記リスクがある患者群では, 134例の心血管イベントを減少させる一方で54例の新規糖尿病の発症が増加するという計算. リスク(-)群では糖尿病のリスクとはならない.
 Risk-benefitを考慮するとそれでもスタチンと投与したときの利点が大きいが, 知っておいた方がよいであろう事項。

2012年8月9日木曜日

ドキシサイクリンはC difficile腸炎のリスクを下げるかも

C difficile腸炎(CDI)は主に抗生剤による腸炎として有名.

抗生剤投与はCDI発症リスク OR 8.2[6.1-11.0] (CMAJ 2006;175:745)
抗生剤の種類別のリスクは(CMAJ 2008;179:767)


Antibiotics
RR
抗生剤全体
10.6[8.9-12.8]
テトラサイクリン
1.1[0.1-8.6]
ST合剤
1.2[0.4-3.3]
マクロライド
3.9[2.5-5.9]
レボフロキサシン
4.1[2.4-7.1]
ペニシリン
4.3[2.8-6.4]
シプロフロキサシン
5.0[3.7-6.9]
モキシフロキサシン
9.1[4.9-17.0]
セファロスポリン
14.9[10.9-20.3]
ガチフロキサシン
16.7[8.3-33.6]
クリンダマイシン
31.8[17.6-57.6]
その他
1.7[0.4-6.8]


また, 抗生剤暴露から発症までの期間は20日がピーク

上記の表ではテトラサイクリンはCDIのリスクにはなりにくい.

入院患者でCTRXを使用した患者2305名, 2734例において, CDI発症率を評価.
 CTRXに加えてドキシサイクリン(DOXY)を併用したのは1066例, 非併用群は1668例.

 全体で, CTRX曝露後30日以内のCDI発症率は5.60/10000患者-日.
 DOXY併用群では1.67/10000患者-日,
 DOXY非併用群では8.11/10000患者-日.
 多因子調節HRは0.73[0.56-0.96]/1日使用あたり と, 有意にCDIのリスクを低下させるという結果.

例えば, 市中肺炎の治療として,
CTRX+マクロライド5日間使用 vs CTRX+DOXY 5日間使用を比較すると,
 CDIのHR 0.15[0.03-0.77],
CTRX+FQ 5日間使用 vs CTRX+DOXY 5日間使用を比較すると,
 CDIのHR 0.13[0.03-0.62] となる.
(Clin Infect Dis 2012;55:615-20)

これからは市中肺炎で非定型カバーを考慮したときはDOXYか!?

一過性全健忘症

一過性全健忘症 Transient Global Amnesia (TGA)
 一過性の前向性, 後向性の健忘で24時間以上は続かないもの.
 健忘は前向性が主となる, 後向性は少ないがあり得る.

疫学;
 発症率は3-8/100000/yr, 男女差は無し.
 好発年齢は50-70歳で, 75%を占める. <40歳は稀であり, 他疾患を考慮すべき.
 再発は非常に稀とされるが, 6-10%/yrで再発するとの報告もある. 51名のTGAを7年間フォローしたところ, 再発率は8%であった報告がある.

Neurol Clin 29 (2011) 1045–1054


発症のトリガーを認めるのは50-90%
 精神的, 身体的ストレス, 性行為, 急性の疼痛, 体温の変化や水との接触がトリガーとなり得る.


 男性例では身体的なストレス,
 女性例では精神的なストレス,
 <56歳での発症例では片頭痛がトリガーとなることが多い. Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

TGAの経過, 健忘について
 TGAの発作中の記憶は欠如するため, 診察にて何度も同じ事を聞いたり, 状況が理解できず, 不安を強く訴えたりする事が多い(前向性健忘). また, 発作時よりも数時間前の記憶も欠如する事が多い(後向性健忘).
 発作後は, 発作期間中の記憶は欠如. 発作終了後からの記憶は残存している.
 後向性健忘は改善していることが多いが, 一部残存することもある.
記憶障害以外には頭痛や嘔吐, めまいの合併はあり得る.

TGAの診断Criteria

 前向性健忘を認め, 認知障害や神経症状, 脳症, 痙攣, 頭部外傷が否定され, 24hr以内に改善する事が診断に必要. Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

鑑別診断として,
 脳梗塞(側頭葉を障害), せん妄, ウェルニッケ脳症, 精神疾患, 片頭痛, Transient epileptic amnesia, Nonconvulsive status epilepticus, 低血糖, 薬剤性が挙げられる.

 Transient epileptic amnesiaとは, てんかん発作に関連した一過性全健忘であり, 複数回の健忘がある場合, てんかん発作を伴う場合に考慮すべき疾患. 診断Criteriaは以下の通り
Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

日本国内のTGA 27例の報告 (弘前医学 1992;44:107-113)
 発症年齢は38-70歳, 平均56.5歳. 男性13例, 女性14例.
 発作の平均持続時間は5.1時間[1.5-9.1]
 発症時期は冬期(12-2月)に51.9%, 春期(3-5月) 33.3%と多い. 発症時間には分布差無し.
 発症時のトリガーとしては, 以下の通り.
状況
%
状況
%
飲酒(前夜)
22.2%
家事
7.4%
鼻すすり
14.8%
内服後
7.4%
入浴
11.1%
排便
7.4%
起き上がり
11.1%
その他
11.1%
仕事中
7.4%




TGAの原因 Neurol Clin 29 (2011) 1045–1054
 海馬の異常が原因となる. 障害の原因は未だ不明.
 静脈還流の異常によるうっ血説もあるが, 証明は難しい(TGAでは内頚静脈弁逆流が多いとの報告もある)
 203例のTGA患者にてMRI-DWIを行ったところ, 海馬にHighを認めたのが16例であった.

TGAの画像所見 Lancet Neurol 2010; 9: 205–14

海馬における, 画像所見で異常を認める事が多い部位

2012年8月6日月曜日

ICU患者のSOFA scoreと死亡リスク

SOFA scoreとはSequential Organ Failure Assessment Scoreのことであり, 多臓器不全の評価に使用される事が多い. 以下の項目から求められる.
(JAMA 2001;286:1754-58)

ICU入室患者352名のSOFA scoreと死亡率を比較したStudy (JAMA 2001;286:1754-58)
入室時と48時間毎にSOFAを評価し, 平均値, 変化値, 初期値と28日死亡率を評価.
患者の平均年齢は59歳(18-95), 内科ICU患者が55.4%, 外科ICU患者が44.6%.

SOFA scoreと死亡リスク
 初期のSOFA 9では死亡率33%, >11では95%に及び,
 最大SOFA 10では死亡率40%, >11では80%に及ぶ.
変化値も予後推定に重要であり, SOFAのフォローにて値が上昇, 不変, 低下にて死亡率も異なる.
 SOFAの初期値と, フォローの変化別の死亡率

このStudyがよくSOFAの死亡リスクを評価する際に使用されているが、これは内科、外科双方のICU患者が含まれており, 敗血症性ショック患者における死亡リスク推定に使用できるかは不明.

敗血症性ショック患者を対象としたRCTにて, SOFA scoreと死亡率が評価されているものを抜き出してみてみると,
PROWESS study(NEJM 2001;344:699-709, APC vs Placeboを比較)におけるプラセボ群のSOFA scoreと死亡率は,
SOFA
28 死亡率
0-7
20.6%
8-9
28.2%
10-11
34.5%
>11
44.9%

(Crit Care Med 2003;31:12-9)

CORTICUS trial(NEJM 2008;358:111-24, Steroid vs Placeboを比較)におけるプラセボ群のSOFAは10.6±3.2, 死亡率は31.5%

上記JAMA 2001年のstudyではSOFA 10-11における死亡率は50%となる一方,
敗血症性ショック患者を対象としたStudyのプラセボ群ではSOFA 10-11で死亡率は31.5-34.5%となる.

外傷, 外科患者での多臓器不全ではやはり死亡リスクが高いという事を意味しているのか.

こういう数字を知っておく事の意味?
それは, デザインがしょぼいstudyのバイアスを見抜く眼を養うためと, 自分の施設での管理のレベルがどうかを評価するのに使えるからなのさ。

2012年8月2日木曜日

菌血症の所見 JAMA Rational Clinical Examinationより


JAMA. 2012;308(5):502-511
JAMAのRational clinical examinationより, 35 trialsのmeta; 4566例の血培陽性例, 25946例の陰性例で菌血症(血液培養陽性)を予測する所見を評価.
免疫不全, 好中球減少は除く.

母集団と, 血液培養陽性の検査前確率

母集
菌血症率
Low Risk
蜂窩織炎
2%

外来患者
2%

市中肺炎
7%

市中発症の入院が必要な発熱疾患
13%
Intermediate
腎盂腎炎
19-25%
High Risk
Severe Sepsis
38%

急性細菌性髄膜炎
53%

Septic Shock
69%

発熱と悪寒の菌血症に対する尤度比(LR)

LR(+)
LR(-)
発熱+悪寒
2.2[1.4-3.3]
0.56[0.41-0.76]
悪寒(全患者)
1.6[1.3-1.8]
0.84[0.77-0.90]
発熱
1.0[0.96-1.1]
0.95[0.88-1.0]

悪寒の程度
LR(+)
Shaking chill
4.7[3.0-7.2]
Moderate chill
1.7[1.0-2.8]
Mild chill
0.61[0.26-1.4]
None
0.24[0.11-0.55]

体温別
LR(+)
LR(-)
≥40
0.3[0.13-1.0]
1.1[1.0-1.2]
≥39.0
1.1[0.79-1.6]
0.95[0.83-1.1]
≥38.5
1.4[1.1-2.0]
0.50[0.30-0.82]
≥38.3
1.2[1.0-1.4]
0.80[0.61-1.0]
≥38.0
1.9[1.4-2.4]
0.54[0.38-0.78]
≥37.8
1.5[1.2-1.9]
0.65[0.50-0.86]



発熱の程度では菌血症は判断できない.
悪寒は菌血症を疑うのに非常に有用な情報となる. 特に悪寒の程度を評価するのは重要.
ちなみに, この悪寒の程度と菌血症の可能性を評価したのは沖縄県立中部病院のStudyであり(Am J Med 2005;118:1417),
Mild chill; 上着を必要とする悪寒
Moderate chill; 毛布を必要とする悪寒
Shaking chill; 毛布をかぶっても全身性の震えがある悪寒 で定義

組み合わせの所見による菌血症の予測

感度
特異度
LR(+)
LR(-)
SIRSを満たす
96%[74-100]
47%[41-53]
1.8[1.6-2.0]
0.09[0.03-0.26]

80%[64-90]
27%[19-37]
1.1[0.89-1.4]
0.75[0.35-1.6]
Clinical prediction rule




 Derivation
98%[96-99]
29%[27-31]
1.4[1.3-1.4]
0.07[0.03-0.18]
 Validation
97%[94-100]
29%[27-31]
1.4[1.3-1.4]
0.10[0.03-0.32]

Clinical prediction ruleは, 以下のMajor1項目以上 もしくは Minor 2項目以上を満たすもの
Major
心内膜炎の疑い
BT>39.4
カテーテル留置あり

Minor

BT 38.3-39.3
sBP<90
年齢 >65
WBC>18000
悪寒
Cre>2mg/dL
嘔吐




結局これも除外にしかえない. 良くある高齢者での熱発はやはり血液培養は必要ということか...